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★オンラインゲームファーストインプレッション★

世紀末の世界で自分ならではの生き方を探せ!
原作以上のポテンシャルを秘めた意欲作

「北斗の拳ONLINE」

  • ジャンル:サバイバルアクションRPG
  • 運営・開発:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
  • 利用料金:基本無料/アイテム課金を予定
  • 対応OS:Windows 2000/XP/Vista
  • サービス開始日: 第2次クローズドβテスト実施中(3月31日まで)



 ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社は、サバイバルアクションRPG「北斗の拳ONLINE」の第2次クローズドβテスト「誓いの時はきた! 漢祭り『翔』」を3月17日より開始している。

 「北斗の拳ONLINE」は週刊少年ジャンプに'83年から連載が始まったコミック「北斗の拳」の世界をMMORPGとして表現した作品で、プレーヤーは核戦争後の荒涼とした世界で敵と戦い、その日の食料を得ながら生き抜いていく。

 本作は2005年に製作が発表されて以来、幾度かサービス延期が行なわれ、開発に難航しているタイトルだ。2007年にようやくサービス開始の目処が付き、現在、第2次クローズドβテストが実施されている。誰でも自由に参加できるオープンβテストは今年の春に開始する予定で、アイテム課金による正式サービス開始時期は未定ながらも、年内サービスインは確実に見えてきた。

 今回のクローズドβテストでは、作品の方向性やユニークなユーザーの傾向などが荒削りながらも見えてきている。本稿ではファーストインプレッションとしてゲーム要素を紹介すると共に、改めて「北斗の拳ONLINE」に求められる、ゲームとしての可能性を考えていきたいと思う。


■ “二つ名”と“セリフ”でより強い個性を発揮し、地獄のような世界で生き残れ!

二つ名と、セリフでよりユニークなキャラクタをアピールできる。美男美女だけではなく、「悪役」としてのキャラクタ像も追求したくなる作品だ
いきなり戦いを挑まれる。後ろに下がり続けることで挑戦を断ることもできる。スタート地点でPKがこれだけできる作品は日本では珍しいだろう
現代文明が完膚無きまでに破壊された世紀末世界。プレーヤーは自分の生き方を模索していく
 原作コミック「北斗の拳」のエッセンスはやはりその第1話に凝縮されている。公式ページからのリンクでこの第1話を無料で見ることができるので、見ておくことで「北斗の拳ONLINE」に一層のめり込めるだろう。ただし、原作はその強烈な残酷表現でも話題を集めた作品なので、苦手な人は注意が必要だ。

 原作の最初のページは核爆弾の巨大なキノコ雲と、「199X年、世界は核の炎につつまれた!!」という文章から始まる。そして倒壊したビルと砂漠のような大地、「海は枯れ、大地は裂け、あらゆる生命体が絶滅したかに見えた……だが、人類は絶滅していなかった!!」という言葉と出てくるのは凶相の“モヒカン頭の悪人達”なのである。

 彼等は群れをなし、車で移動する旅人をむごたらしく殺害していく。旅人達が現金を持っているのを見て、モヒカンの悪人達はそれを笑いながらぶちまける、「今じゃケツを拭く紙にもなりゃしないってのによぉ!」。その解放された笑顔によって、読者は彼等の世界が現代の我々の価値観が全く通用しない、暴力が支配する世界であることを印象づけられる。凶相のモヒカンは、「世紀末を生きる人間」の象徴なのだ。

 「北斗の拳ONLINE」はこの世界観を再現するために生まれたMMORPGである。本作では戦うNPCはモンスターなどでなく「人間」である。彼等は群れをなし、通りかかる旅人を襲っている。悪人達に支配されている場所も多く、虐げられている人の呪詛と悪人達の笑い声に満ちている。文明は残骸のみを残し崩壊し、弱い者は強い者に踏みにじられる運命から逃れることはできない。その世界でどう生きていくのか、プレーヤーは「生き様」を問われることになる。

 ゲームではキャラクタを作ると、1話をイメージしたオープニングクエストが始まる。ここでプレーヤーは基本的な操作方法を覚え、世界観を学ぶことになる。行き倒れ寸前でたどり着いた村、突然村を襲う悪漢、プレーヤーはならい覚えた技で立ち向かう。基本的な戦い方を学んだプレーヤーは、そこで村から解放され、崩壊したビル群と近付くだけで襲って来る悪漢がそこかしこにいる世界に旅立つことになる。

 まず本作を象徴しているのが「スタート直後からPvPができる」というシステムだろう。クローズドβテスト初日は、多くのプレーヤーがオープニングクエストを終え、MMOフィールドに降り立った瞬間勝負を挑まれ、そしてわけもわからず倒されていた。そこから戦い方を学び再戦するプレーヤーも、逃げてしまうプレーヤーもいた。「初心者へのフォローは?」という憤りと疑問も感じるが、「北斗の拳」ならば許せる方向性ではないかとも思ってしまう。本作はそれだけ“特殊”なゲームであることを思い知らされるルールである。

 テスト開始から1週間が経過した現在、プレーヤーが集まるところで無差別にPKしようとする悪名高いプレーヤーや、逃げに徹するプレーヤー、PKプレーヤーに積極的に戦いを挑むプレーヤーなどが生まれている。好奇心で戦いを挑む者もいるが、自分のクエストのために挑戦を徹底的に無視するプレーヤーも多い。

 本作はPvPで倒されても対戦結果が残るだけでその場復活も可能で、ゲーム的なペナルティーはほとんどない。このルールは経験値が減ったり、アイテムを奪われることもある他のMMORPGのPvPに比べてずいぶん軽い。この手軽さがどこでもPvPが行なわれるゲーム世界を実現させていると感じた。この「軽いPvPシステム」は原作のような殺伐とした世界観を作り上げているのに大きく貢献していると思う。今後ゲームルールがどのように変更されるかは気になるところだが、殺伐としていながらも気楽に戦える方向性は残してもらいたい。

 筆者はこの作品のプレーヤーの“主張”が特に魅力的に感じた。プレーヤーはキャラクタ作成時に“二つ名”をつけることができる。筆者は自分のキャラクタである「らぎあん」に「守銭奴」という二つ名をつけてみた。名前と二つ名は“の”を挟んだ形で表示されるため、筆者のキャラクタは「守銭奴のらぎあん」となる。

 さらに敵に戦いを挑むとき、倒されたときなどのセリフも編集できる。筆者のキャラクタは「金持ってないだ? ジャンプしてみろよ!」と敵に殴りかかり、負けたときは「今日のところはこれくらいにしておいてやる」と倒れる。この二つ名とセリフ編集はユーザーの個性がモロに出てとても面白い。商品名だったり、ちょっと下ネタっぽかったり……「判定で○○(自分の名前)の勝ち!」と言って倒れるプレーヤーのセンスには思わず感心させられた。二つ名とセリフで他のMMORPGとは違った“ロールプレイ”ができることを痛感した。

 「北斗の拳」の原作は本質的にはシリアスだが、悪役達のタガのはずれた楽しそうな凶行や、やられたときの奇声、したたかで狡いところもある民衆、といったところに独特のユーモアがある。「北斗の拳ONLINE」はプレーヤーのセンスで、原作以上に幅広いユニークな味わいが加えられた世界になりそうだ。

 本作ではプレーヤーはただ悪役を倒し、PvPを行なうだけでなく、料理人や大道芸人を目指したり、かっこよく倒れる「やられ役」を目指すこともできる。また、ギルドにあたる「軍団」を結成し、一大勢力を作るということもできるようだ。「北斗の拳」の世界だからこそできるプレイ、というところに期待したい。他のMMORPGとはひと味違ったプレイスタイルや、勢力争いが展開するに違いない。

体型、髪型などをアレンジできる。キャラクタの顔パターンや髪型は決して多くないが、アバター要素でどこまで個性が追求できるか楽しみだ
スタート時のオープニングクエスト。原作の1話をモデルにしており、リンの優しさに触れたプレーヤーはその力をリンを守るためにふるう


■ アクションゲームのような戦闘システム。コマンド式の“奥義”で華麗な技をたたき込む

キーとマウスで入力する直感マウスバトル。敵のパターンを見切り一気に近付き連続技をたたき込む
最初に覚える体当たりの奥義コマンド。しばらくはこのコマンドが唯一の決め技となる
クエストやドロップアイテムで装備アイテムが手にはいる。女性キャラクタの序盤は何故かセクシーな服が多い
 「北斗の拳ONLINE」では移動したい場所を左クリックで移動、右ボタンを押したままドラッグすることで視点移動ができる。またキーによる移動も可能で、Wで前進、Sで後退、AとDで左右にキャラクタを旋回させ、スペースキーでジャンプできる。TABキーを押すとカーソルが手の形に変化し、PCか敵NPCをクリックすることで戦闘開始となる。

 本作の戦闘システムは「直感マウスバトル」という独特なものだ。戦闘時にはマウスのホイールか、WかSで敵との距離を調節し、敵に接近したらパンチのZか、キックのXを押したまま、マウスの左ボタンを押してドラッグし、マウスボタンを離すことで単発の技が出る。

 技はドラッグする距離でスピードと強さが変わる。ドラッグの距離は矢印の模様で確認でき、短いものから外枠のみ、外枠と中、完全に塗りつぶされた矢印、と変わる。塗りつぶされた矢印の場合は威力が大きいが出が遅い大技になる。判定は遅い攻撃よりも早い攻撃の方が有利で、パンチよりもキックの方が届く距離が長いが、近距離の場合はパンチの方が判定が強い。

 パンチやキックを数発与えると敵が倒れ、ふらふらと立ち上がる。このときが「奥義」をたたき込むチャンスである。キーとドラッグによって技を発動させる。奥義は奥義ツリーで習得できるが、奥義コマンドはゲーム内か、公式ページ、またはユーザーが解析した情報を共有することでプレーヤー自身が体得する必要がある。

 奥義はいくつかの「生業(なりわい)」によって変わってくる。北斗や南斗の奥義以外にも、格闘家の「ドロップキック」などの戦闘技以外にも、大道芸人の芸や、悪党のやられ技「スロー殺陣」など多彩なものが用意されている。各奥義はツリー形式になっており、戦闘中に技を使うことで得られる奥義ポイントを消費して獲得することができる。

 本作の戦闘には独特のテンポがある。今回のテストでは、敵の攻撃を見切ってから一気に近付き、ただひたすらライトパンチを連打、倒れたところに奥義をたたき込む、という方法が有効だった。実際戦うと同じ手順で勝てるため、やっていることは単調になりがちなのだが、長時間戦闘を繰り返しても飽きなかった。今回のテストではデスペナルティがなかったため、この「安心感」もあるかもしれないが、なによりも奥義コマンドをうまく入力したときの爽快感が大きかった。

 現在の敵NPCは自分から積極的に距離を詰めることはせず、プレーヤーはその場で立ち止まっている敵の攻撃パターンを見て、自分の攻撃をたたき込むというバランスになっている。難易度的にこのくらいが良いかな、とも思うが、もう少し駆け引きを楽しみたいとも思った。だがアクションゲームのようにシビアにしてしまったら、ハードルが高くなってしまう。シンプルでエキサイティングな戦闘バランスとはどのようなものだろうか。開発スタッフの「既存のMMORPGとはひと味違う戦闘を体験してもらいたい」という主張が伝わってくる戦闘システムだ。

 PvPに関してももっと練り込みが必要だと感じた。本作ではCキーでガードができるが、全体的に攻め手が有利で駆け引きに関しては後一歩という印象だ。通常技の練り込みなどをしていくのが有効だとも思うが、ずっとガードして隙を狙うというのも面白くないし、序盤から格闘ゲーム並みに複雑になってしまっては多くのプレーヤーがついて行けなくなってしまう。スタッフ、ユーザーの意見交換で“進化”していって欲しい。

 奥義コマンドの情報公開に関しても難しいところだろう。現在、運営側は奥義コマンドのほとんどを非公開にしている。これは、プレーヤーの情報交換によって解析されることを望んでいるようだが、本作をプレイする全てのプレーヤーが熱心なユーザーではないし、また矢印の長さなどはチャットでは説明しづらい。奥義のいくつかはゲーム内で説明されるが、そのコマンドの再確認もできないのも不便に感じた。プレーヤーが見つけ、体得したコマンドに関してはいつでも閲覧できるようにした上で、他プレーヤーにこれをゲーム内で「伝授」できるようなシステムを期待したい。

バトルの基本な流れ。敵に一定のダメージを与えると敵が吹っ飛びふらふらになる。このときにコマンドを入れることで奥義が発動する。コマンドは早すぎてもだめで、しばらくは本作独特のシステムになれるのに時間がかかるだろう。こつさえ覚えれば複雑なコマンドも成功するようになる
フィールドでは悪役達が集団でプレーヤーを待ち受けている。近付くと執拗に追いかけてくる コマンドは先行入力が可能だ。出の早い技を連続で出すことで敵を圧倒できる 奥義コマンドは敵がふらふら状態から復帰すると発動しない。正確に、できるだけ早く入力しなくてはいけない
ショートパンチ。連続でたたき込み敵を倒す基本技だ 放浪者の乱打。公式ページにコマンドが載っている大技だ。ゲームに馴れてきたら挑戦したい奥義である 乱打のフィニッシュには普段とは違うキャラクタの表情を見ることができる
格闘家の奥義ドロップキック こちらも格闘家のボディブロー 悪党の奥義、スロー殺陣。負ける美学を楽しむ技だ。
奥義ツリー。習得後は転業しても使うことができる


■ 特定の能力を伸ばすことでより個性的な“生業”に転業。こだわりの転業クエストも注目

敵を倒すことで成長軸に経験値が入る。成長させることで転業への道が見えてくる
ステータス画面の光点をクリックすることでサブ画面が表示される。レベルアップするとこのサブ画面の点が動き、自分の能力の成長がわかる
条件を満たすと頭上に北斗七星が光る。転業のチャンスだ
 本作は成長システムも独特だ。プレーヤーキャラクタには「強」、「謀」、「術」、「能」、の4つの成長軸が設定されている。敵を倒したり、PvPで勝利したりすることでキャラクタはこの4つのうちいずれかの経験値を得ることができ、各成長軸に設定されたゲージが一杯になることでレベルアップする。

 強と謀、術と能は相反する性質を持っており、強が1レベルアップしても、謀がレベルアップされると相殺されてしまう。どの成長軸を上げるかを考えて戦う必要がある。上がった能力はステータス画面で確認できる。

 各成長軸はプレーヤーの「生業(なりわい)」に関係してくる。プレーヤーキャラクタは最初「放浪者」としてスタートするが、各成長軸は5レベルまでしか上がらない設定になっていて、今回のテストでは強を5レベルにすると「用心棒」に、謀を5レベルにすると「悪党」に、能を5レベルにすると「料理人」に“転業”することができるクエストが始まった。

 今回は対応する各成長軸を5レベルにするだけではダメで、例えば用心棒の場合は術と能は0レベルに保たなくてはならなかった。敵を倒すことで増えた場合は、反対の属性を持つ敵を倒して相殺しなくてはならない。結果として目標の職業に就くためには、ひたすら同じ敵を倒すという展開になった。

 3月24日から敵を倒すことで得られる経験値が10倍になり、プレーヤー達は様々な可能性を模索している。彼等の情熱は、「北斗神拳求道者」か「南斗聖拳一門」への道である。筆者は用心棒から強と能を5レベルにして「格闘家」に進むことができた。プレーヤー間の情報によると、この格闘家から北斗神拳求道者へ繋がる道があるということだ。今回のテスト終了の31日までにプレーヤーが全ての職業への道を見つけられるのか、この仕様は今後のサービスに引き継がれるのか、興味を惹かれるところである。

 転業する条件を満たすとキャラクタの頭上に北斗七星が光り輝き、転業のクエストが始まる。このクエストは非常に凝っており、改めて制作スタッフの、原作世界に関しての“愛”を感じることができる。筆者は特に格闘家への転業クエストの展開が好きだ。こういったストーリー要素の強いクエストをもっと充実させてもらいたいと思った。

 経験値が10倍でも用心棒のレベルアップには時間がかかり、実際には現在実装されている以上の地域の敵と戦うことを想定しているように感じた。南斗や北斗の道はかなり険しく、中級者以上の要素になりそうな感触だ。

 転業することで奥義が増えていくシステムや、条件を探っていく楽しさは面白く感じたが、一方でやはり「目標のためにただひたすら同じ敵を倒し続ける」というシステムには疑問を感じた。このバランスでは世界を歩き様々な敵と戦っていると、結果として成長を打ち消し合ってしまう。一カ所で延々と同じ敵を狩り続けなくては、キャラクタが成長しないというのは、世界を旅する楽しさをスポイルしている。オープンβや正式サービスではここからどう進化していくか注目したい。

放浪者から転業できる用心棒は遠距離武器の専門家だ。しかし武器となる矢はドロップか武器商人を通じてしか手に入らないため、奥義は使いづらい。格闘家など次の職業への準備のための生業、という印象だ
伝説の格闘家チグリスに関わる格闘家の転業クエスト。コミカルなシナリオでいながら、熱い。スタッフのストーリーテリングのセンスが光るクエストだ
こちらは悪党の転業クエスト。各クエストの展開は公式ページのムービーで紹介されている。クエストのヒントにもなる


■ 原作世界を再現したフィールドだが、イベントは少な目。今後求められる要素とは?

マップ画面。序盤のストーリーの地域が実装されている
実装されている地域ならばほとんどの場所に上ることができ、飛び降りてもダメージはない。この自由度は面白い
テスト中は定期的に拳王や世紀末救世主(ラオウやケンシロウその人ではない)が登場する。CBTでは彼等の登場はあまりアピールされず、多くのプレーヤーに知られていないようで残念だ
 今回のテストで実装されているマップは「サザンクロスエリア」となっている。スタート地点である「砂漠の集落」、種籾を持っていた老人ミスミの住む「ミスミの村」、KINGが待ち受ける「サザンクロス」、人々が集う「オアシス」、バットが育った地である「孤児院」、ジャッカルの拠点である「ビレニィ・プリズン」といった地域に行くことができる。

 これらの地域は「北斗の拳」のジャンプコミックスでの、4巻までにあたるエピソードに登場する地域だ。原作に厳密に従うならばビレニィ・プリズンより先に「GODLAND」が登場するはずだが、こちらには現在まだ行くことができない。GODLANDは元軍人である「レッドベレー」の残党が支配する場所だが、ビレニィ・プリズンには“神をもあざむく男”として、主人公ケンシロウから徹底的に逃げながらも悪逆の限りを尽くしたジャッカルがいる。こちらを先に実装したスタッフのこだわりを評価したい。

 マップにはダイヤ、スペード、ハート、クラブのKINGの四天王など原作に登場したボスがいたり、拳王の偵察隊や、GODLANDの先遣隊など様々な敵が配置されている。チンピラや盗賊、さらには暴走族まで登場する。廃品回収業者や、墜落した飛行機の残骸を見張る男達、GODLANDに妻を奪われて誰彼かまわず殴りかかってくる男がいたりと、オリジナル要素も世紀末的な要素が入っていて面白い。暴走族は何故か滑走路で自分の足で競争していたりする。「てめえの顔が気にいらねえ」という理由で戦いを挑む奴もいて、細かいこだわりが楽しい。

 フィールドは壊れた建物や、巨大な仏像、干上がりかけた海、倒壊した高速道路、などなどデザインが凝っており、こちらでもスタッフのセンスを感じることができる。本作のフィールドの最大の特徴は「どこでも行ける」ところだろう。信じられない高い山や断崖をキャラクタは自由にのぼり、どんな高いところから飛び降りてもダメージを受けない。少し大ざっぱさを感じてしまうのも確かだが、この自由度は本作に独特の感触を与えている。

 一方で、今回のバージョンではフィールドに関連したクエストと、意味合いについては物足りなさを感じた。クエストは砂漠の集落やオアシス、サザンクロスなどで受けることができるのだが、対象NPCの情報がわかりにくいものも多く、展開も淡泊だ。テストでは特に移動にストレスがあった。フィールドがある程度広大なのは良いが、やはりイベントが少ない。ここを埋めるために車やバイクといった移動要素が予定されているが、前述の「ひたすら同じ敵と戦い続けることでの展開」と併せて、現在は世界を見て回ることでのメリットが少ない。フィールドにたくさん配置されている敵とのドラマはもっと濃密にしてもらいたいと感じた。

 今回のテストで「北斗の拳ONLINE」の方向性とオリジナリティへの志向を感じることができ、そして他の作品とはひと味違うプレーヤー社会が生まれるかもしれないという期待を持った。ゲーム要素に関してはまだまだこれから、というところだろうか。本作はアイテム課金を予定しているが、どのようなアイテムが導入されるかも注目したいところだ。

 現在のバランスではパーティープレイである「徒党」の楽しさが薄いかな、とも感じた。現在ダイヤやクラブなどボスキャラクタは一定時間でフィールドにポップするだけの仕様なため、プレーヤー達の奪い合いのような状況も見える。インスタンスフィールドでのメリハリのある展開などがあっても良いのではないだろうか。転業クエストの演出などを見ると、「ダイヤが支配する街を開放するために仲間と殴り込む」といった燃える展開のインスタンスダンジョンなどもプレイしてみたい。

 「軍団」の要素はどのような仕様になるか気になるところだ。今回、ほとんど機能が実装されていないにもかかわらず、軍団が結成のクエストが入っているのは、ユーザーに注目してもらいたいというメッセージとも感じた。軍団メニューには同盟や敵対軍団の設定、拠点の増築やガードの設置、売り子の設置などができる項目を見ることができる。仲間を集め拠点を大きくし権力を争い、KINGや拳王のようなこの世界に大きな勢力を作り出すことも可能かもしれない。プレーヤーがどのようにこのシステムを活用するか楽しみだ。

 全体的にまだまだ荒削りだというのが今回のテストの印象だが、改めて「北斗の拳」の世界をMMORPGにするというコンセプトの魅力を強く感じた。“課金アイテムで銃器を購入し、その一瞬だけ対戦で無敵気分を満喫する”という要素すら「アリなんじゃないか?」と思わせるエネルギーがこの世界にはあると思う。

 「北斗の拳」は文明が滅び、暴力が支配する殺伐とした世界だ。モラルを揺さぶる残酷表現や、アクション性が強く語られる原作だが、その根底には、地獄のような世界でも希望と優しさを失わない「人間賛歌」がテーマであることを見逃してはいけないと思っている。

 第1話、両親を目の前で殺されて口をきけなくなった少女リンが、悪漢に人質に取られているとき、助けようとするケンシロウに向かって放った“心の底からの言葉”は「逃げて!」だった。絶体絶命の状態でも、相手を思いやる言葉を叫ぶことができる人間の強さ。これこそが本作のテーマであり、そこに価値を見出しているからこそ、ケンシロウは人々のために戦うのだ。

 今後、どのような要素が追加されていくかはまだまだ未知数だが、本作には開発スタッフの原作とゲーム世界への“愛”が溢れている。人間賛歌というテーマを根底に、様々な試みとコミュニケーションを開発者、ユーザーと共にしてもらいたい。

クエスト。世界観を感じることができるが、キャラクタの成長にあまり関係ない印象だ 3月24日より実装されたショップ。指定されたアイテムを持って行くことで交換できる 軍団のメニュー。今後実装される要素のようで、期待がふくらむ
左からダイヤ、ミスミ、ハート様。なぜか「北斗の拳ONLINE」では、ハートだけ“様”をつける決まりとなっている
オアシスの裕福そうな女 オアシスの南にいる孤児院のおばあさん ビルや仏像など、フィールドには巨大な建造物が多い
街の人々を処刑するダイヤの部隊 ジャッカルの女。ゲームオリジナルの存在のようだ ボスキャラクタは得られる経験値も多く人気で、ライバルも多い
ビレニィ・プリズン。正面に巨大な仏像も。像はフィールドの様々な場所で見ることができる フィールドを歩いているとしょっちゅう敵に絡まれる。悪役の小物ぶりが楽しい 奥に見えるのがKINGの居城、サザンクロスだ
三山修練所。独自の拳法を修めた者達がいる場所だ GODLANDの扉は現在まだ閉ざされている サザンクロスの南にある干上がった海
滑走路上で何故か徒競走をしている暴走族達 特別に名前が付いたオリジナルの敵も登場する マップの北側には拳王軍の手先が。拳王の影も垣間見える

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(C)2008 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.


【北斗の拳ONLINE】
  • CPU:Pentium III 1.3GHz以上(Pentium 4 2GHz以上推奨)
  • HDD:3GB以上
  • メモリ:256MB以上(512MB以上推奨)
  • ビデオカード:VRAM64MB以上(VRAM128MB以上推奨)


□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ
http://www.gungho.co.jp/
□「北斗の拳ONLINE」のページ
http://www.hokutonoken-online.jp/
□「ガンホーゲームズ」のページ
http://www.gungho.jp/
□関連情報
【3月17日】ガンホー、WIN「北斗の拳ONLINE」
シンを守護する四天王の存在を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080317/hokuto.htm
【3月3日】ガンホー、WIN「北斗の拳ONLINE」OβT実施決定
2008年春実施予定。事前登録を3月3日より開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080303/hokuto.htm
【2月7日】ガンホー、WIN「北斗の拳ONLINE」
第2次Cβテストで実装される新要素を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080207/hokuto.htm
【2月1日】ガンホー、「北斗の拳ONLINE」第2次CBを3月17日よりスタート
世紀末を生き抜くサバイバルアクションRPG、弊誌枠テスターを5,000名募集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080201/hokuto.htm
【1月16日】ガンホー、WIN「北斗の拳ONLINE」
第2次クローズドβテストを3月に実施。参加者募集開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080116/hokuto.htm

(2008年3月27日)

[Reported by 勝田哲也]



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