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「ブライトシャドウ」は、台湾Gamaniaが初開発したタイトルで、その開発には日本スタッフの意見も多く取り入れられているという。今回のインタビューでは日本運営のディレクターの河合修平氏に「ブライトシャドウ」はどんな作品になっていくのか、日本のスタッフはどのような想いを本作に託しているのかを質問してみた。 河合氏はコンシューマゲーム開発出身で、様々な作品を手がけたという。インタビューでは河合氏の経験から生まれた「ユーザー間の繋がり」への強い想いも聞くことができた。彼の想いが今後「ブライトシャドウ」の世界にどう影響していくかも楽しみである。
■ これまでとこれからの「ブライトシャドウ」。「EPISODE2」は“熱い”場所に!?
河合氏: 昨年12月にギルドシステムを入れられてようやく軌道に乗せられたかな、というのが現状です。ギルドシステムは充実した形で「EPISODE1」と一緒に、という案もあったのですが、ギルドチャットやリストなど限定した形で良いから先に入れて欲しいと要望を強く出しました。ゲームに入ったユーザーの繋がりを強くするために絶対必要だと感じたからです。今回で開発を予定していた機能が一通り実装される予定です。 ギルドは大きなもので20人前後ですが、5~10人程度の小さなギルドが多いですね。「ブライトシャドウ」では週末にイベントをやることが多いのですが、ここで即席にパーティーを組んでもらいます。このときにできた繋がりがそのままギルド結成に繋がる、ということもあるようですね。ギルドマークに憧れるというユーザーも多いですね。 編: これまでの反省点としてはどのようなものがありますか。 河合氏: 1月から最近までサーバーダウンが頻発していたことです。ようやく原因が究明できました。エラーなどがスタックするというプログラム的なものが原因でした。現在特定できた問題に対して対応していますが、もっと早く対応できたのではないか、というのが大きな反省点です。先週この問題に関しては対処できたと思っています。 編: 現在レベルキャップに達しているプレーヤーはどのくらいでしょうか。 河合氏: 全体で1%、アクティブユーザーの割合でいけば5%くらいではないかと思っています。バランス調整を行ない、40レベルくらいまでキャラクタのレベルは上がりやすくなったのですが、そこから先はかなり頑張らないといけなくなっています。現在はパーティーを組んでレベルアップに励んでいるプレーヤーも増えましたね。 パーティーを募集できるハンターストーンというシステムや、パーティーを組むときの経験値の割り振りの調整、そしてギルドシステムでユーザーが協力しやすい状況を作ったと思います。 編: 「ブライトシャドウ」でユーザーの評価が高いところはどこでしょうか。 河合氏: やはりキャラクタのデザインですね。イラストよりもキャラクタを前面に出してポスターを作った方が良い、という声も挙がるほどです。モンスター、プレーヤーキャラクタ、オブジェクトのデザインに関しては好評です。そして軽快な操作性ですね。ゲームを初めてすぐに何をするのかわかる、シンプルなところが気に入ってもらえているようです。 編: 「ブライトシャドウ」では特にアイテム販売を“限定”で販売するという戦略が見えていますが、こちらは当初からの戦略だったのでしょうか。また、今後再販されることはあるのでしょうか。 河合氏: 最初から考えていた戦略です。台湾ではちょっと違う形ですが、やはり限定で販売していますね。再販売は検討中です。 編: 当初予定していた割引サービスや、おすすめ販売などのシステムはどうなったのでしょうか。 河合氏: 台湾でも現在はやっていません、まずゲーム要素の充実を図っています。 編: 最初にお話を聞いたとき、目移りする様なくらいラインナップを充実させていくイメージがあったのですが、今後も限定で小出しにアイテムを出していく戦略なのでしょうか。 河合氏: たくさんのアイテムを出して、ユーザーさんにレンタルの期間を決めるという方式にしたとき不評だったのです。このため3年くらい着れるアイテムが主流になっています。 編: 今回紹介されている要素以外で「EPISODE1」の大きな特徴というのはどのようなものがあるでしょうか。 河合氏: クエストのテキスト量が膨大ですね。小さなクエストが数多く増えているだけでなく、インスタンスダンジョンに挑戦できる「封霊の塔」が1フロア増えているなど、既存のマップにも手が加えられています。 編: 「EPISODE1」で3次職が導入されることで、プレーヤーのプレイスタイルは変わってくるでしょうか。 河合氏: より各職業の特色が特化されていくのではないでしょうか。プレーヤー間では自分たちなりの攻略法を見つけていて、パーティーに反映したりしているようです。現在は回復系とシューター系が人気です。シューターは以前は弱かったのですが、現在はかなり優遇されています。職業間のバランスは良く議論にも挙がりますね。 編: 「EPISODE2」~「EPISODE3」はどのようなものになっていくのでしょうか。 河合氏: 「EPISODE1」でようやく新大陸の一部が明らかになりました。今後この大陸がどんどん明らかになっていく、という展開は考えられています。地図を見るとヒントがあるのですが、山脈がありますよね。「暑い」ではなく、「熱い」ところのなのかなと。 他のゲームで入れられている要素、ユーザー間での繋がりを更につよめる要素、ギルドやパーティーという単位ではなく、男女などより小さい範囲での関係を深めていく要素などを実装していきたいと思っています……各地に“教会”もたくさんありますし。 編: アップデートを行なっていく上で、かなり日本側の意見が採用されている印象を受けます。 河合氏: こちらの実績も徐々に良くなってきて発言は評価されています。何よりも台湾の開発者が日本のゲームと、日本市場への“あこがれ”を強く持っていますのでこちらの意見を重要視してくれる部分はありますね。 私としては日本の意見をただ聞いてもらうのではなく、お互いの出していきたいテーマをすりあわせることができれば、と思っています。要素の前倒しや、重要視していく所などは話し合って決めています。基本的には、台湾の開発者の持ち味を活かしていきたいと考えているんです。台湾側で表現したいこと、アピールしたいことを日本のユーザーに向けてはどう出していけばいいか、そこを特に考えて話し合っています。 編: 内容的には台湾がやや先行している印象ですが、ゲームバランスは日本と台湾では全く同じなのでしょうか。 河合氏: 1回だけ日本が追い越した要素がありますが、基本的には1カ月半ほど台湾が先行しています。ゲームバランスに関しては台湾と日本は違っています。システム側のイベントなどが全く違いますね。台湾は「ハロウィン」の収集アイテムで2,000個集めてこいなど、かなり集中してプレイしなくては達成できないようなイベントをやりました。日本では台湾に比べると期間が短かったこともあり、200個にしました。台湾はその後も収集イベントなどではかなり高いハードルにしているようです。 前述のパーティーバランスに関しても、台湾はユーザーが多いこともあってパーティーを組むのを絞る傾向にあるのですが、日本ではパーティープレイを積極的にしたいのでここも違いますね。 編: 「EPISODE」実装以外のバランス調整などの部分では、どういったプランが考えられていますか。 河合氏: 「EPISODE2」に関しては企画書が上がっていますが、季節などに絡めたシステム的なイベントや、GMが登場するイベントを積極的に行なっていきます。コミュニティに関するものなどで要望の多いものは前倒しも考えています。 編: 今後バランスはどのくらいの期間で調整されるのでしょうか。 河合氏: はっきりしたことは言えませんが随時、積極的に、というのを心がけていきたいと思っています。 編: 「EPISODE2」の実装はどのくらいになるでしょうか。
河合氏: 台湾で夏くらい、という感じですかね。今回の進行でしっかり考えていきたいと思います。急ぎすぎてバグがあっても仕方がないですし。きちんとバランスなどを考えていきたいと思っています。 ■ 「ブライトシャドウ」の運営方針を聞く。ユーザーの繋がりがゲームの魅力を増す
河合氏: もちろんチーム全体の考えです。ただ、私は以前コンシューマだけでなく、オンラインゲームにも関わっていたときの体験として、「どんなコンシューマゲームも1カ月は続けて遊べない」というのが実感としてあります。対戦や協力プレイなど毎回プレイしていても結果が変わってくる形でなくては、プレーヤーはゲームを続けてくれないと思っているんです。 コンシューマゲームの開発をしているときは、いかにシステムを投入するかを考えていたのですが、やはりユーザーが夢中になる期間は限られてしまう。オンラインのレースゲームを手がけた時には期間を限定して、次の期間にはリセットされてしまうけど“この期間の間に最速を狙おう!”といったことをやりました。運営側の働きかけがユーザーをゲームにのめり込ませる、ということに気がつかされたんです。 もしくはユーザーからの提案に運営が協力するなどですね。コミュニティに視点を移した場合、ゲームはあくまでツールであり、“道具”であるというのがこれまでの私の経験なのです。その上でゲームを長く楽しんでもらうためには、「ブライトシャドウ」を会話のベースとしながらも、他の関係ない雑談をしてくれてもいいので、人と人の繋がりを取り持つものが「ブライトシャドウ」であって欲しい、というのが今考えていることです。 編: その上で、台湾スタッフにはどのようなコンテンツを提案しているのでしょうか。 河合氏: 反省点でもありますが、まだそういった企画を上げることができていない、というのが現状です。大きく変えることができるゲームシステムの提案はできていないですね。今はゲームの根幹部分のコンテンツの充実をはかっていって、独自色を出していくのはそれから、というところですね。 他の国のユーザーと比べても、台湾のユーザーの気質は日本のユーザーの気質とかなり近い部分があると思っているんです。強いて言えば、台湾の男の子が凄く優しいと言うところでしょうか(笑)。基本的に好むもの、求める方向性が近いものが多くて、台湾のユーザーが提案してくる要素は日本でも受け入れられそうなものが多いんです。ただ、小さな要素をすごく大きな要素だ、としてしまう傾向があってユーザーが1つのことに流されやすいため縛りをきつくする、というところもあるようです。 編: そうなるとユーザーを繋げる、という部分はゲーム内イベントの方で進めている、ということなのでしょうか。 河合氏: GMがユーザーにアイテムを渡すようなかなり“手弁当”な形のイベントを積極的に行なっています。スマートではないですが最終的にはユーザーさん達自身が行なっていくイベントをサポートしていく形にできればと思っていますね。私達が200人単位でイベントをやるよりも50人単位でいくつもやってくれればと。 要望掲示板を設置してユーザーからの要望は常に見ていますが、今後はカレンダーやユーザーのイベントをフォローしたいというアイデアは社内で挙がっています。「一緒に遊びましょう」という感じでやって行ければと思います。 編: ハートの雨や花火など、ユーザーがアピールするアイテムがありますが、これに関してのアイデアは? 河合氏: 実は台湾のアイデアでこちらは非常に多いんです。ユニークなアイテムはこれからどんどん追加していきます。桜の花びらが散るアイテムなどは既に最初から準備しているんですよね。ガチャに関してはあくまでゲームに必須なものではなく、遊びの幅を増やしていくものとして増やしていきたいですね。 編: これまでユーザーからの要望はどのようなものがあるのでしょうか。 河合氏: やはりバランスに対する要望が大きいですね。職業間、ゲーム内のバランスどちらもです。特に40から先のレベル上げがしにくい、という声が大きいです。「EPISODE1」実装後はまた変わってくるとは思います。 開発側としては、「細かいところに目が届いていない」ことを痛感しています。機能であったり、翻訳であったり、大きなものを重視するあまり、個人的に納得がいっていない部分が多いです。ユーザーからの報告もありますが自分たちでも細かい部分を直していこうと思っています。少しでも改善していきたいと思っています。 昔、男の子の名前に女の子のものをつけてしまった、といったこともありますし、大人や子供の口調の違いなど、ゲームのモデリング自体がこれだけ完成度が高いので、対応していきたいと思っています。 編: 「ブライトシャドウ」のオリジナル要素である“カード”に関しては今後どのようになっていくのでしょうか。 河合氏: 今のアップデートの予定だと“ないものになりつつある”かもしれないということで心配な部分ではあります。こちらでも積極的に提案している要素です。カードを使ってモンスターを召喚できても面白いですよね。カードのトレードでコンプリートを狙ったりと、この可能性を伸ばしていきたいです。 編: 私達日本のユーザーは「どんなゲームなのか?」というゲームのテーマ性を追求していく傾向がありますが、まだ台湾の開発者はオーソドックスなMMORPGを作るので精一杯なのかな、という印象があります。 河合氏: 毎週台湾の開発者とはテレビ会議システムで話しています。バグフィックスなどが中心ですがテーマの問いかけなどは積極的に行なっています。 編: その会議の上で河合さんが「自分はこういう考えで提案している」というテーマはどのようなものでしょうか。 河合氏: 自分が開発出身だからかもしれない、甘い考えなんですが、「開発が望まない、嫌な開発をしても良い結果は得られない」という想いがあります。台湾での事情も考えて、良い結果を出そうと思っています。 ユーザーからは常にリアルタイムで要望が出されてきます。しかし開発はどうしてもリアルタイムではコンテンツを作っていくことはできません。このギャップを埋めるのが情報の提示だと思っています。このためにブログを運営しているのです。後手後手ではありますがうまく伝える、ということを一番大事にしています。できるかできないか、やる気があるのか、こういったところをすりあわせつつ伝えていきたいと思っています。 開発運営という意味でまだやりきれていない部分はありますが、情報の提示と、収集に関しては強化して、密接に行なっていこうと思っています。 編: PVP要素に関してはどうでしょうか。 河合氏: 日本では特に慎重にして行かなくてはいけないと思っています。大会のように限定したところで行なうとか、みんなでわいわい楽しめる競技などならば良いかもしれませんが、単純に入れればいい、とは思っていません。 編: 最後にユーザーへのメッセージをお願いします。 河合氏: ゲームクオリティレベルに負けないように、運営クオリティレベルもより高みを目指してがんばります!
編: ありがとうございました。
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□ガマニアデジタルエンターテインメントのホームページ (2008年3月12日) [Reported by 勝田哲也]
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