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EA Asiaの戦略発表会ともいえるこの催しでの最大の注目点は、EA Canadaおよび韓国のオンラインゲームパブリッシャーNeowizが韓国でサービスしている「FIFA ONLINE 2」を、EA Asia自らがアジア10カ国で展開すると発表したことである。これは「FIFA」シリーズにおいて、いわば「支流」的な位置づけだった「FIFA ONLINE」が、EA SPORTSのフラグシップ「FIFA」シリーズに並ぶワールドワイド製品に位置付けられたことを意味する。
本稿ではこのEA SPORTSブランドに注目し、今回のイベントで発表された「FIFA」シリーズを中心に詳しくご紹介したい。
■ 日本でも存在感を増す「FIFA」シリーズの次の姿が見えてきた?
「UEFA2008」の説明を行なったのは、EA SPORTSのグローバルマーケティングディレクターを務めるRomain Rossi氏。Rossi氏はEA SPORTSに参画する以前、FIFAおよびUEFAの専属マーケティングパートナー企業で働いていたという来歴で、FIFAワールドカップに3回、UEFA欧州選手権に2回参加したことがあるという。まさにフットボールのマーケティング専門家であるようだ。筆者のひいきクラブチームがフランスのリヨンであることを伝えると、「Best Choice!」と笑顔で答えてくれた。 Rossi氏によるタイトル紹介は15分程度という短い時間ではあったが、本作がEA SPORTSのフラグシップタイトル「FIFA08」をベースにして開発されていることや、そこで新たに加えられた改善要素について情報を得ることができた。また少しだけ実際に触れることもでき、「FIFA08」に続く「FIFA09」の姿がおぼろげながら見えてきた部分もあるので、ありのままを詳しくご紹介しよう。 まず、本作の特徴としてRossi氏が強調したキーワードが“Response”、“Weather”、“Interactivity”の3つだ。 1つめの“Response”は、プレーヤーの操作に対する選手の反応を、ベース作の「FIFA08」からさらにクイックにしたということである。操作への反応性は近年のFIFAシリーズにおいて強く改善が意識され続けている部分だ。近年のシリーズでは、選手のモーションのリアルさを追及するあまり、各モーション間の整合性をとるためにゲームとして肝心な反応性が犠牲になっていた部分があった。 2007年末にリリースされた「FIFA08」ではこの点が徹底的に改善されており、一定の評価を受けるに至っている。そのシステムを受け継ぐ「UEFA2008」でさらなる反応性の改善が図られているということは、外伝的な作品独自の要素ではなく、次の「FIFA09」へ続くFIFAシリーズのメインストリーム的な進化と見ていいだろう。数分という短い時間だがXbox 360バージョンを実際に触れてみたところ、右スティックによる足技の自由度はそのままに、切り返し、パス、シュートなど良好な反応性を感じることができた。
Rossi氏が上げた2つめのキーワード“Weather”は、雨天のピッチ状況をリアルに再現し、ボールの挙動だけでなく選手のモーションにまで影響が出るというシステムだ。サッカーでは、濡れたピッチではスライディングで滑る距離が長くなったり、足場が悪いのでボールコントロールがモタついたり、急停止・急加速するような動きが難しくなる。「UEFA2008」ではこのあたりを再現することで、トーナメント戦における偶発的な天候要素をゲームにしっかりと組み込もうとしているようだ。
また、本作ならではの「CAPTAIN YOUR COUNTRY」モードが面白い。これは選手キャリアを楽しむゲームモードで、プレーヤーは国のB代表選手としてスタートする。そこから選手として、またキャプテンとしてチームを勝利に導き、A代表のキャプテンに抜擢されて欧州選手権の勝利を目指すというものだ。同じ目標に向かうライバル選手も登場し、ピッチ上のテクニックだけではなくフォーメーション設定など戦術面でも実力を問われるようだ。
一例としてRossi氏が紹介したシナリオは、ドイツ対サンマリノの後半22分、0-9でドイツがリード中というもの。このシナリオでプレーヤーはドイツを担当し、「12点取って史上最大の勝利を達成」というメイン目標を目指す。達成すると「ポイント」が与えられるのだが、14点取って勝てばさらにボーナス、さらに点を追加すればもっとボーナスが得られる。この「ポイント」の使い道となるのが、次に紹介する「BATTLE OF THE NATIONS」だ。
「UEFA2008」で搭載されるこの国別ランキングは、ゲームの題材的にUEFA加盟国が対象ということで、当然ながら日本を含むアジア各国が存在しないのが残念だ。しかし、2010年に登場が期待されるワールドカップバージョンでは日本を含む全世界でこの競争が楽しめる可能性があるので、まずはUEFA加盟国のプレーヤーたちがオンライン空間でどのような盛り上がりを見せるかを注目していきたい。
なお、本作「UEFA EURO 2008」の発売は5月20日(北米版)とされており、Xbox 360版、プレイステーション 3版、PSP版、およびWIN版の同時発売が予定されている。
■ オンラインサッカーゲームの雄「FIFA ONLINE 2」
同サービスは、EA Canadaとの共同開発(ベース作品は同スタジオ作の『FIFA 07』とされる)とはいえ、オンライン版としてアイテム課金方式をとり、グラフィックス機能を控え目にしてターゲット層を広げるなど、徹底的にリデザインされているあたりが「韓国式」となっている。したがって韓国でのサービス成功は、Neowizによるカルチャライズの功績が大といえるだろう。しかし、これまでは提供地域が韓国1カ国に限定されており、「FIFA」シリーズ全体から見れば支流のひとつという位置づけにあったことも事実だ。
さて、今回の「MEETS THE MAKER」イベントの冒頭挨拶にて、その「FIFA ONLINE 2」をアジア・パシフィック地域の10カ国でサービス提供するという発表が行なわれた。その皮切りとしてEA Asiaの運営パートナーに選ばれたのが、シンガポールに拠点を置くオンラインゲーム運営・配信企業IAH Gamesだ。
発表内容にやや歯切れの悪い部分があったのは、韓国のNeowizのように、各国ごとのローカライズやサービスを担当する企業はまた個別の話になるからだろう。例えばEAはすでに、台湾においてはGigaMediaとの、中国においてはThe9との提携を発表している。IAHがシンガポールに置くというサーバーは、それら各国サービスを繋ぐハブ的な位置づけになりそうだが、その輪の中に日本が含まれることになるかどうかはいまだ不明だ。 いずれにしても、EA Asiaが「FIFA ONLINE 2」をアジア・パシフィック地域における「FIFA」シリーズの主流の地位に据えようとしていることと、その狙いは明確だ。北米、ヨーロッパとは異なり、特に東アジア地域では「FIFA08」のようにハイエンドプラットフォームを対象にしたタイトルが普及しにくく、その代わりに、低スペックのPCでも動作するオンラインゲームが受け入れられやすい。そういった意味で「アジアで勝つ」ためのカルチャライズが、韓国版のサービスを担当したNeowizとの共同開発ですでに実現している事は前述のとおりだ。
あとはそのソフトウェアをどう広げていくかという問題だろう。ところがEA自身は各国向けにオンラインゲームポータルを展開していないので、現地企業とパートナーシップを結ぶことが現実的な戦術のひとつとなる。今回EA AsiaとシンガポールのIAHが発表したアジア・パシフィック地域を対象とする広域の事業提携からは、そういったEA Asiaが置かれた状況と意図が見てとれた。ただし日本だけは、高性能ゲーム機が普及しているにもかかわらず「FIFA」シリーズが十分なプレゼンスを示せていないという点で特殊な状況にあり、今後EA Japanが「FIFA ONLINE 2」の展開についてどのような戦略をとるかは、単なるいちオンラインタイトルの動向以上の意味を持ちそうだ。
・そもそも「FIFA ONLINE 2」って?
最大の違いは、オンライン版がアイテム課金を前提とするデザインになっている点だ。まず「FIFA ONLINE 2」のプレーヤーは、普通にサッカーを対戦する「マッチモード」だけでなく、自分のチームをマネジメントし、選手をトレードしたり、フォーメーションを調整するといった監督的なプレイをする「キャリアモード」を備えている。試合で活躍した各選手が「経験値」を得て成長していくというシステムもあり、1つのチームを長期的に遊ぶというゲームデザインだ。
今回のイベント会場内で紹介されたバージョンは韓国版ではなく、スタッフからは「UKバージョン」と説明された(シンガポール、オーストラリアなどの英語圏向けと考えられるが、具体的な対象国の説明はなかった)。そこに実装されていたアイテムは、追加のユニフォームを保持する「カードブック」と、選手の「怪我耐性」パラメータを向上させる「メディカルキット」の2種類だけだ。韓国版のサービスでは45種類のアイテムが実装されているという説明がなされたので、どうやらビジネスに直結するアイテムデザインに関しては、各国向けに大幅に調整が入るようである。 パッケージ版とは、ゲームプレイ上の違いも大きい。オンライン版は以前の「FIFA」シリーズをベースに開発されていることもあり、最新の「FIFA08」などでサポートされた新機能が入っていない点に注意したい。大きなところでは「BE A PRO」モードで実現した主観視点のプレイ、また、左右スティック操作で多種多様のテクニックを発動する「スキルムーブ」、5人対5人のネットワーク対戦(オンライン版では2対2までサポート)などだ。 日常的にハイエンドプラットフォームに触れ、パッケージ版の「FIFA08」をプレイできる層にとって、オンライン版がダウングレード版に映ってしまうか、それとも「キャリアモード」に魅力を感じるかは全く未知数だ。アジア・パシフィック全域に広がろうとする「FIFA ONLINE 2」が日本市場でどのように受け入れられるか、いずれにしてもEA Japanの対応に注目していきたい。
■ バスケットボールゲーム「NBA STREET ONLINE」は韓国・中国に展開 「FIFA ONLINE」と同じく韓国Neowizが共同開発を担当
ゲーム自体の内容については、デモンストレーションに与えられた時間が5分以下と非常に短く、プレイの様子を少しだけ見ることができただけに留まった。ゲームの主題は3対3のストリートバスケットだ。ネットワークを通じて6人のプレーヤーで対戦可能ということで、現在日本国内でもサービスされている「フリスタ! STREET BASKETBALL」の対抗馬といった位置づけに見える。
展示されていたバージョンは中文版で、スタッフの話によれば中国向けであるとのことだ。中国はヤオ・ミンなどトップレベルのNBA選手を輩出していることもあってバスケットボール人気が高く、市場としてメインターゲットに据えたいという見方があるようだ。 本作は「NBA」の名前を冠していることもあり、実在のNBA登録選手たちがゲーム中にも登場し、選手のモーションも本格的に作りこまれているなど、相当リアル寄りの雰囲気を漂わせている。プレーヤーアバターも写実的で、「顔の骨格は数千種類」あるという。このあたりは、開発力のあるEA SPORTSならではの強みだといえる。このことから、アジア地域ではすでに広くサービスされているコミカル系バスケットボールゲームと、うまく住み分けていきそうな感触を受けた。
EA SPORTS関連タイトル全般を通して、今回のプレゼンテーションでは、中核タイトルのPCオンラインサービス化によって広大なアジアに切り込もうとするEA Asiaの戦略意図を感じた。その中における中核的なパートナーシップは、開発においては韓国のNeowiz、運営においてはシンガポールのIAH Gamesという布陣が見えてきている。数十億の人口を抱えながら、ハイエンドゲームプラットフォームの普及が難しい東南アジアおよび極東アジアにおいては、この流れが今後大きな潮流となって、EA SPORTSのみならず、EA全体のタイトルに波及していくかもしれない。その皮切りとなるフラグシップタイトル「FIFA ONLINE 2」の動向に今後とも注目していきたい。
□エレクトロニック・アーツのホームページ http://www.eajapan.co.jp/ja-jp/ (2008年3月9日) [Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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