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会場:Nob Hill Masonic Center
Tommy Tallarico氏は17年の間、「メトロイドプライム」などのビデオゲーム音楽の制作に携わってきた。氏が関わったゲームタイトルは300以上といわれ、その間に25のビデオゲーム音楽の賞を受賞している。次に相棒とも言えるJack Wall氏は、アドベンチャーゲームの名作「Myst」シリーズやXbox 360のアクションSFRPG「Mass Effect」の音楽を担当している。2人とも世界最大級のゲームオーディオ・コミュニティ「The Game Audio Network Guild (G.A.N.G)」の主催者だ。「G.A.N.G」は毎年、ドルビーなどがスポンサーとなってGDCでビデオゲーム音楽にG.A.N.G. Awardsを贈っている。
「Video Games Live」は2005年7月6日、ハリウッドのハリウッドボウルで最初のコンサートが行なわれ、それ以後、ヨーロッパや韓国など世界25都市を回っている。韓国のオリンピック公園で行なわれた講演では12,000人もの人が集まったと言うから、人気の高さがうかがえるというものだ。GDCにおける「Video Games Live」は昨年より、GDCの会期終了日の夜に会場付近のコンサートホールで行なわれるようになっている。今回は会場から徒歩20分のNob Hill Masonic Centerで講演が行なわれた。
■ ここはポップコンサートの会場かと錯覚するぐらい砕けた会場 通常、クラシックのコンサートというと開場のベルとアナウンスがあり、オーケストラが入場して音程を合わせ、最後に指揮者が拍手とともに入場してスタートというのが通例だが、さすがビデオゲーム音楽のコンサートと言うことで、オーケストラも指揮者も観客も、その場にいる全員の雰囲気がユルい。 開演時間の20時を前に、観客もブラブラと会場に入り、すでに壇上にはオーケストラの面々と指揮をとるJack Wall氏がスタンバイしている。その出で立ちも、タキシードは着ているものの、ノータイでシャツもズボンの外に出しているというユルさ。そして、だいたいの観客が席に着いたところでタクトを会場に向けてヴワッっと振ると、開場から割れんばかりの反応が起きる。そのまま氏は壇上を飛び回り全部の観客にタクトを振り続け、スタート前から開場は一気にヒートアップ。演奏開始前にもかかわらず、会場の盛り上がりが最高潮に達しているのが印象的だ。
日本でゲーム音楽のコンサートというと、東京交響楽団が行なっている「ドラゴンクエスト」や、スクウェア・エニックスが主催する「ファイナルファンタジー」のコンサートなどがあるが、これらは“クラシックでゲーム音楽を聴く”という側面が強く、オーケストラに軸足を置いたコンサートで、観客や演奏者もまじめにやっている部分が大きい。しかし、「Video Games Live」はゲームの方に軸足を置いているようで、通常のオーケストラにあるような堅苦しさは微塵も感じられないのが印象的だ。さらに、「Video Games Live」もスタートからもうすぐ4年ということで、多くの固定ファンがついていることもあり、会場のボルテージも上がりやすいのかもしれない。これならば、初めてのファンもすんなりと入っていけるだろう。
■ ゲームキャラクタも登場して一曲ごとに会場は大盛り上がり!
「ポン」の後は、「スペースインベーダー」、「ミサイルコマンドー」、「フロントライン」、「ドンキーコング」、「エレベーターアクション」、「魔界村」、「ガントレット」という具合に、内容は懐かしのレトロゲームの音楽のアレンジメドレーへと移っていった。初期のレトロゲームは「ワルキューレの騎行」など、クラシックの名曲を利用した曲が多く、オーケストラとも相性がいい。オーケストラとゲーム音楽の融合という意味で、一発目にレトロゲームのアレンジを持ってきているのは上手いなと感じた。 ちなみにレトロゲームアレンジメドレーに登場したゲームは以下の通り。
「ポン」→「スペースインベーダー」→「ミサイルコマンド」→「ディフェンダー」→「テンペスト」→「センチスピー」→「ドロボトロン2084」→「ジャウスト」→「Satan's Hollow」→「フロントライン」→「ドンキーコング」→「フロッガー」→「エレベーターアクション」→「ドラゴンズレア」→「スペースエース」→「ダックハント」→「パンチアウト」→「魔界村」→「ガントレット」→「ラスタンサーガ」→「アウトラン」→「テトリス」
続けてTallarico氏は日本のクリエイターからのスペシャルメッセージということで、メタルギアシリーズの小島秀夫監督からのビデオメッセージを紹介しオープニングから始まるメタルギアメドレーへ。しかし、これでただの演奏に終わらないのがVideo Games Liveだ。演奏途中にダンボールをかぶって歩く人物とメタルギアシリーズではおなじみのゲノム兵が登場。ゲノム兵は明らかに違和感のあるダンボールには目もくれず、会場内を走り回り巡回へと戻っていった。こういうジョーク的な演出が見られるのもVideo Games Liveの面白いところだ。
「メタルギアソリッド」のあとは「ソニック」シリーズの中裕司氏のビデオメッセージに続き、「ソニック」シリーズのメドレー演奏となったのだが、壇上には「メタルギア」の演出で使われたダンボールが置かれたまま。「ソニック」シリーズの演奏の間、ずっとダンボールの中で息を潜めている様子だ。「ソニック」シリーズの演奏が終了し、Tallarico氏が登場。Tallarico氏は今日の演奏を担当したSkywalker Symphony Orchestraを紹介し、続けてピアノ奏者の紹介に入ったところで、「ところでこのダンボールはなんでまだいるんだろうね?」と観客に振ると、観客からは「中にジョージ・ルーカスがいるんだ!」などと声が飛ぶ。ダンボールに入っていたのは、「Video Games Live」でピアノ演奏を担当するMartin Leung氏。
Martin Leung氏は“Video Game Pianist”を自称するピアニストで、「Video Games Live」初期から参加している。Leung氏は「ファイナルファンタジー」メドレーをピアノソロで披露。ここで驚いたのは海外での「ファイナルファンタジー」人気のすごさだ。歓声は「メタルギア」シリーズを上回るぐらいの勢いで起こり、改めて北米での「ファイナルファンタジー」のすごさを感じさせられた。
ちなみに、今回演奏された曲目リストは以下の通り。
「メタルギア ソリッド」シリーズメドレー → 「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」メドレー → 「ファイナルファンタジー」ピアノソロメドレー → 「BIOSHOCK」メインテーマ → 「Civlization IV」メインテーマ → 「Mass Effect」メドレー → 「メトロイド」シリーズメドレー → 「ゼルダの伝説」シリーズメドレー → 「キングダムハーツ」“光”オーケストラアレンジ → 「LAIR」メインテーマ → 「クロノクロス」ピアノアレンジ → 「World of Warcraft」メドレー → 「Starcraft II」スペシャルピース → 「アウトラン2」ジャズアレンジ → 「スーパーマリオブラザーズ」シリーズメドレー → 「Halo」シリーズメドレー → 「キャッスルバニア」シリーズメドレー(アンコール)
■ 観客が最大限に楽しみ、終了後には寂しさを感じさせる感動的演奏会
「Video Games Live」が終わってみて感じるのは、クラシックの演奏ということをまったく感じさせないという点だ。それは通常のクラシックの演奏会と比べて、観客と壇上の距離が非常に近いからと言えるだろう。会場の雰囲気は非常に砕けており、観客も常に笑い声を上げ、知っている曲が多いのでニヤニヤしっぱなしという有様だ。そこにはクラシックの堅さは全くなく、ゲームを楽しむのと同じようにゲームミュージックを観客が楽しんでいる。筆者も仕事抜きで楽しませてもらい、アンコールが終わった後には寂しささえ感じてしまう、心底面白い公演であった。こういったコンサートなら日本のゲームファンもクラシックと言うことを意識することなく、最大限楽しめることだろう。昨年「Video Games Live」は韓国での公演を行なっており、現在も世界中を回って精力的に活動を続けている。ぜひ日本でも公演して欲しいものだ。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ http://www.gdconf.com/ □Game Developers Conference(日本語)のホームページ http://japan.gdconf.com/ □関連情報 【2008年2月】Game Developers Conference 2008 記事リンク集 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080221/gdclink.htm (2008年2月24日) [Reported by 戸塚直太郎]
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