★PCゲーミングデバイスレビュー★
旅客機の操縦にはヨークシステムが最適!
リアルな環境でフライトを追体験しよう
「Pro Flight Yoke System」
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- ジャンル:フライトヨーク
- 開発元:Saitek
- 発売元:ゼネラルオートサービス
- 価格:27,090円(「Pro Flight Throttle Quadrant」単体8,800円)
- 対応OS:Windows XP/Vista
- 発売日:2007年12月14日
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各種ゲーミングデバイスの国内販売を手掛ける株式会社ゼネラルオートサービスは、米Saitek製のフライトシミュレータ用コントローラシステム「Pro Flight Yoke System(ヨークシステム)」および「Pro Flight Throttle Quadrant(クワドラント)」の2製品を国内発売した。
本製品は、先日レビューをお届けしたマイクロソフトの「マイクロソフト フライトシミュレータX: 栄光の翼」の推奨デバイスとしてマイクロソフトより認定されている。発売日となった12月14日は、「栄光の翼」の発売日でもあり、両製品は同時発売の格好を取った形だ。先日の「栄光の翼」レビューに続き、本稿では「ヨークシステム」及び「スロットルクワドラント」の使用レポートをお届けする。
■ コンパクトにまとめられたデザイン。限られたスペースでも本格的なフライト環境を構築可能
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両製品のパッケージ。フライトヨークにはクアドラントが1個付属するため、複数のクアドラントを必要としない場合は、購入するのはヨークのパッケージだけで良い |
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ヨーク本体の背面には、付属クアドラント接続用の端子と、USB端子が3つ装備されている。PCへの接続はUSB1本でOKだ |
まず、「Pro Flight Yoke System」の大きな特徴は、全体的にコンパクトな設計となっており、設置のためにそれほど大きなスペースを必要としないという点だ。本体サイズは奥行き420mm、幅310mm、高さ185mm。他社製のヨークシステムを見てみると、ハンドル部の押し込み操作を行なう際に、筐体後部からハンドル軸が飛び出す仕様になっているものもあるが、本製品の軸はきちんと筐体内部に格納されている。ハンドル部の前後動作幅はおよそ±10cm程度となっているが、十分にゆったりとした操作が可能だ。
ヨークシステムのパッケージには、3本のレバーと6個のボタンを備えるクワドラントが1個付属している。3つのレバーは一般的に、右からスロットル、プロップ、混合気の制御に使うもので、リアル志向であればこれ1個でエンジン1個の完全な操作が可能、ということになる。このクワドラントは、別途「Pro Flight Throttle Quadrant」として単体でも販売されており、複数のエンジンをリアルにコントロールしたいというフライトシマーにはそちらもお勧めしたい。
ヨークシステムのPCへの接続はUSBで、使用するためには付属のACアダプタを接続して電源を供給する必要がある。付属のスロットルクワドラントの接続ケーブルは独自形状となっており、これはヨークシステム背面の専用コネクタに接続。このため、ヨーク、クワドラントの両方を使う場合でも、PCのUSB端子は1個占有するだけで済む。別売りのクワドラントはコネクタ形状がUSBとなっているが、ヨークシステムの本体背面にはUSB端子が3つ装備されているので、追加のクワドラントを使う場合はそちらに接続できるし、他のUSBデバイスを繋ぐことも可能だ。これはありがたい。
ヨークシステムのボタン数は8個で、ハンドルの右グリップ親指部分に2個、人差し指部分(裏側)に1個、左グリップ親指部分に5個という配置だ。また、左手親指部分には8方向のハットスイッチが1個備えられている。クアドラント側には3本のレバーに加えて、3つのロッカスイッチによる都合6つのボタンが装備されており、システム全体のボタン数は14個だ。これにより、フライトシムにおける一般的な操作はほぼカバーできる。
このヨークシステムで最も特徴的な機能は、ハンドル中央正面部分にあるLCDパネルと、その下部に備えられた3つのボタンだ。これは独立したクロノグラフのシステムで、電源投入時に時計とストップウォッチの機能が使える。ストップウォッチは正確なフライトプランをシミュレートする場合には非常に役立つ機能だ。機能の切り替えや制御をLCDパネル下のボタンで行なえるようになっている。飛行中にヨークから手を離さずに済むという設計だ。
デザインはSaitekらしく、全体的にコンパクトでありながら重厚感たっぷり。机への設置は付属の固定器具で行ない、最大で厚み15cm以下の板であればどこでも固定が可能だ。ハンドルのセンタリングは正確で、軸のぐらつき、ブレなどはほとんど感じられない。押し込み操作時にやや引っかかりを感じることもあるが、軸はスチール製なので、グリスを塗るなどの対策で改善が可能だ。全体的には値段相応のクオリティを備えていると評したい。
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ヨークシステムのパッケージ内容物。付属のクアドラントは専用コネクタでヨークに接続 |
クアドラントには3本のアナログレバー、3つのロッカスイッチを装備。形状はシンプルながら重厚だ |
ヨーク本体を側面から。奥行きは41cmとかなりあるが、ハンドルの軸は本体内にきっちり格納されている |
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左グリップ表には2ボタンと8方向のハットスイッチを装備。裏側には1ボタンが装備されている |
右グリップには5ボタンを配置。ギアやフラップの操作を割り当てると良いだろう |
ハンドル部の中央には液晶画面があり、時刻を計測できるようになっている |
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設定画面。デバイス的には、ヨークと付属クアドラントは1体のデバイスとして認識される。付属ドライバを使ってデッドゾーンの調整も可能だ |
■ ジョイスティックに対するフライトヨークのアドバンテージとは何か?
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民生用航空機の多くは、ハンドル形状の操縦システムを採用している。追体験のためにはフライトヨークが必要なわけだ |
フライトシム用のコントローラとしては、メジャーなところでジョイスティックがある。最近のジョイスティックはおおむね縦横2軸(ピッチ、ロール)のアナログ入力に加えて、ひねり操作によるヨー軸と、小さなレバーによるスロットル軸の入力機能を備えている。このため、フライトシムをそれなりに操作するには、手軽に入手できるジョイスティックが1本あれば事足りる。
ではなぜ、ハンドル形状のヨークシステムが必要になるのだろう。その理由は明確だ。すなわち、フライトヨークは、スティックとは全く異なる操縦デバイスであるからだ。
実機の世界では、旅客機やセスナなどの自家用機、あるいは軍用でも輸送機や爆撃機など大型機の操縦席には、この形状の操縦システムが採用されている。その理由は、ハンドル形状では精密・安定した操縦が可能だからだ。こういった航空機では、決められた角度をゆるやかに、一定の姿勢を長時間操作するような機動が求められる。いわゆる「操縦桿」タイプの操作デバイスでは、高速機動は得意だけれども、ゆるやかで安定した操縦には神経を使いすぎる。
極論すれば、セスナやジャンボジェットをジョイスティックで操縦するのは、ドライビングシムの自動車をゲームパッドのアナログスティックで操作するようなもの、といえるかもしれない。もちろん、この場合ゲームパッドには手軽さと汎用性という長所があるのだが、シミュレータ視点で見ると、「同じような操縦は可能、しかし同じ感覚での操縦からは程遠い」ということだ。「マイクロソフト フライト シミュレータX」のようなシミュレータをプレイする上で、操縦の「感覚」を実機に近づけるという視点は非常に重要なこと。より本物に近い状態で追体験することがシミュレータの醍醐味のひとつであるからだ。
さて、そこでフライトヨークである。本製品「Pro Flight Yoke System」は、まさにセスナやジャンボジェット、大型輸送機など、安定した操縦が優先される航空機の操縦を、リアルに、快適に行なう為のゲームデバイスだ。フライトヨークというものをよくご存じない読者の方に向けて御紹介しておくと、「押したり引いたりできるハンドル」だと思って欲しい。ハンドルを回すと左右にロールし、押し込めば下降、引っ張れば上昇、という操作形態になる。実機も同じ方式だ。
付属のクアドラントはエンジンコントロールの操作再現に必要なデバイスだ。単体でも販売されており、1個追加して都合2個のクアドラントを装備すれば、大型機の複数のエンジンを別々に操作するようなこともフライトシミュレータで可能になる。これは、リアル志向のフライトシマーは是非とも備えたい環境と言えるだろう。エンジンフェイル時の飛行再現や、横風が強い時の出力調整など、手元のスライダーで左右のエンジンを完全に操作できるというのはシミュレータならではの面白さである。
■ エアラインパイロットの操縦をリアルに追体験したいなら、フライトヨークシステムを是非装備したい
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筆者の設置環境はこのような感じになった。スロットルが左側なのは実機と異なるが、これは戦闘機シムをプレイしてきたクセのため |
さて、2008年も明けて10日となる。年末年始のシーズンは里帰りのシーズンでもあり、遠方にふるさとを持つ多くの人が航空便を利用したことだろう。筆者もその一人で、つい最近飛行機での旅を満喫してきたばかりだ。フライトシミュレータが好きな筆者は、旅客機に搭乗するたび、その動きを逐一観察してしまうクセがある。
離陸するときは、強力な加速を体に感じつつ、流れる窓の風景を見る。「今だいたい100ノットを越えたかな、今V1(離陸決定速度)か、よし、離陸だ」などと、頭の中でシミュレーション。着陸も同様に、降下速度、進入角度、タッチダウンの衝撃などを観察。それで、さすがにプロのパイロットはうまいものだな、などと思うわけである。
そういうわけで、飛行機での里帰りを終えるとやりたくなるのが、フライトシムでの「バーチャル里帰り」だ。「マイクロソフト フライト シミュレータX」のようなソフトを購入した人は、おそらく一度はやるのではないかという慣例行事かもしれない。筆者の場合は羽田を離陸、宮崎空港に着陸するというフライトだ。いつもはジョイスティック+ラダー+スロットルという、戦闘機向けのシステムでやるのだが、今回はこの「Pro Flight York System」一式を使ってやってみた。ちなみに、フライトヨークでの長時間フライトは初体験である。
フライトヨークを使ってすぐにわかるのが、ジョイスティックに比べ、操作の安定感が抜群であるということだ。旅客機では激しい機動は必要なく、また、してはならない。基本的に、乗客が違和感を感じないよう、ゆるやかで安定した操縦が求められる。シミュレータで旅客機にのり、つい最近実際に利用したフライトルートを再現するときには、こういった面でもきちんと真似しておきたいものだ。その点でフライトヨークは最適な操作特性を与えてくれる。
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富士山を横に見つつ、高度3万フィートをゆったりと飛行する。このようなフライトはジャンボジェットならではだ |
滑走路上に出たら、スロットルクアドラントのスロットルレバーをスッと前に押し出す。機体が十分に加速したら、ヨークをゆっくりと手間に引く。機体がゆっくりと離陸する。高度を上げ、エンジンスロットルを微調整しつつ、ハンドルを軽く傾けて、ゆるやかに旋回を開始する。一連の操作をフライトヨークシステムで行なうことで、プロのパイロットも似たような操作をしているはずだと思え、気分も上々なのである。
このような感じで、高度3万フィートそこそこを南西に長時間水平飛行して、目的地の空港にタッチダウン。長時間の姿勢安定はフライトヨークの十八番といったところで、軽い微調整を加えるだけでかなり正確に飛び続けることができ、ジョイスティックに比べると疲れは少ない。ヨーク本体を机に固定する固定具はかなり堅牢で、前後に押したり引く操作を行なうときに本体がガタつくこともなく、飛行は快適そのものだった。
本フライトヨーク付属のクロノグラフによると、飛行時間はおよそ1時間30分。こういった計測を手元でできてしまうのも本製品の特徴だ。時間短縮することなく全ルートをリアルタイムで飛んだため、さすがに疲労したものの、現実のパイロットもこんな気分なのかなあ、と一人で悦に入る。これもフライトシミュレータの楽しみである。フライトヨークは、こういったシチュエーションで大いに楽しめるデバイスだ。
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離陸した羽田を見つつ、西南西にゆっくりと旋回 |
しばらく海しか見えないフライトを終え、目的地が見えてきた |
無事タッチダウン。フライトヨークを握る手から緊張が解かれる |
■ 旅客機やセスナの操縦にはもってこい。しかし「栄光の翼」向けではない
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「栄光の翼」の「レッドブル エアレース」は激しい機動の連続であり、ヨークでの操縦はおぼつかない。シミュレータは適材適所でプレイしたい |
ヨーク式の操縦システムを採用している航空機をシミュレータで楽しむ場合、肉体的感覚も実機に近づく、という点を見ると本製品の存在はまさに効果絶大だ。この種の航空機には、大型機から小型機まで、固定翼の民生用航空機がほとんど該当する。ゆえに本製品は、この系統の航空機を標準で多数備えている「マイクロソフト フライト シミュレータX(FSX)」に最適な装備である。
ただし、拡張パック「栄光の翼」の推奨コントローラとして考えると、少々ミスマッチだ。「栄光の翼」でアドオンされる航空機はF/A-18、P-51D、EH101という、いずれも「操縦桿」タイプの操縦システムを備える航空機なのである。また、同タイトルの追加ミッションの目玉となっている「レッドブル エアレース」の機体はアクロバティックなExtra 300sであり、こちらも操縦桿タイプ。高速機動の連続となるレースをフライトヨークでやるのは荒行のような苦しさだ。そこはジョイスティックでプレイするのが穏当である。
つまり、本製品「Pro Flight York System」及び「Pro Flight Throttle Quadrant」は、「栄光の翼」推奨デバイスというより、「FSX」本編に向いたデバイスである、というのが筆者の印象だ。本製品を使えば、セスナ、リアジェット、ボーイングやエアバスの大型機、輸送機など、「FSX」本体に付属する機体のほとんどをリアルにカバーできる環境を整えられ、フライトシムの楽しみが大きく向上する。
本製品のゲーミングデバイスとしての価格は高いが、それによって実現する感覚は得がたいものだ。デバイス自体のつくり、デザインなど、製品クオリティは非常に高いレベルにある。それだけに、フライトシムというソフトウェアを通じて、エアラインパイロットの気分を味わったり、自家用機を所有している感を味わう、はたまた実機の練習に使うなど、交通手段としての航空機利用に主眼を置くフライトシマーの皆さんには、是非お勧めしたいデバイスだ。
(C) 2007 Microsoft Corporation. All rights reserved.
□ゼネラルオートサービスのホームページ
http://www.m-s-y.com/
□Saitek Japanのページ
http://www.saitekjapan.jp/
□「Pro Flight Yoke System」の製品情報
http://www.saitekjapan.jp/product/pf_yokesystem.html
□関連情報
【1月9日】PCゲームレビュー「マイクロソフト フライト シミュレータ X:栄光の翼」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080109/fsxa.htm
【2007年11月29日】ゼネラルオートサービス、Saitek製ゲームコントローラが
「マイクロソフト フライト シミュレータ X:栄光の翼」の推奨デバイスに認定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071129/fs.htm
【2007年11月20日】マイクロソフト、「フライト シミュレータ X」の拡張パックを発売
WIN「マイクロソフト フライト シミュレータ X:栄光の翼」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071120/fsx.htm
(2008年1月10日)
[Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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