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本会見は、一般ユーザーを対象としたクローズドイベント「マイクロソフト プレゼンツ ORCHESTRAL PIECES FROM ロストオデッセイ & ブルードラゴン」と同時に行なわれたもの。イベントは二部構成で、一部が「ロストオデッセイ」完成記念記者会見、二部がオーケストラコンサートとなっていた。今回は、一部記者会見の模様をお届けする。 制作に約3年半の歳月が費やされたという本作。ステージにあがった制作総指揮を執るミストウォーカーの坂口博信氏は「実は(制作)途中、チームが崩壊の危機に瀕した。若干ハードルの多かったプロジェクトなんですけども。デバッグをしているあいだに自分でも150回くらいクリアするんですけど、毎回ちょっとこう、色々な形で胸をつかまれつつ……。いい作品に仕上がったんじゃないかな、という手ごたえを感じています」と、ハードなコメントを披露。 「本当、途中“やばいな”っていうのはあったんですが、そこで救ってくれたのは、井上さんのイラストであったり。魂のこもった絵ですから、どうしても動かしたかった。あと、重松さんの話。本当にたくさんのお話を書いていただいて、新幹線のなかとかでじっくり読むんですが、つい『泣いてしまう』というか。そして、植松さんの楽曲。『ブルードラゴン』で全曲やっていただいたんですけど、今回は『ジングル』もすべて書いていただいた。あとは……すべての名前をあげきれないんですけど、開発チームのフィールプラス、ディレクターの福川、アートディレクターの大澤、FF1から一緒にやってる樋口、大石さん、あとは初期の頃にコンセプトアートの小林さん、このあと登場していただく声の役者さんたちの演技とか……色々な方々に、物凄く助けていただきました」とコメント。坂口氏は物静かに語るが、そのトーンには3年半という歳月から滲み出る「何か」がうっすらと反映されているように感じられた。
会場では、坂口氏が完成したばかりの「ロストオデッセイ」一部パートをデモンストレーション。主人公カイム、セス、ヤンセンの3人が、行く手をさえぎる大勢の敵兵と戦闘に突入。ムービーによる重厚な演出とスピーディな戦闘シーンを、会場全体が固唾をのんで見守り続ける。戦闘は、坂口氏が操作する主人公側の勝利。「勝ててよかった。前回(東京ゲームショウ2007のステージイベント)は負けてネット上で叩かれてました(苦笑)」という坂口氏。今回は、その“汚名返上”といったところか。
「小説は、いつもひとりでやっている。みんなと一緒にひとつの世界を作り上げるっていうのは、凄く新鮮だったしプレッシャーもあったけど、やって良かったかなと思っています」という重松氏の言葉に「普段書かれている話と設定が違うので(重松氏から)『何を、どう変えたらいいの?』という話が最初にあったとき、僕は変えてほしくなかった。家族の話とか、最後にほろっと涙して胸をつかまれる……それをゲームとどう融合させるかっていうのが、ひとつのテーマだった」と坂口氏が続ける。「ゲームのなかで、ぼくの小説がどんなふうに料理されているのか。まだ見ていないので、凄いものになっているんじゃないかなと思って楽しみしています」という重松氏。 「人間を描きたい! 今までのゲームとは違うものをやるんだ!」という坂口さんの殺し文句にやられたという重松氏。その言葉を受けて植松氏は「坂口さんの作るゲームって、意外とゲームゲームしていないですよ。でっかい言葉でいうと“人間の愛情”みたいなものを描こうとしているのを昔からわかっていたので、重松さんに参加していただくという話をきいたとき『あぁ、なるほどなぁ』と意外じゃなかった」とコメント。三者それぞれ、制作するうえでの役割こそ違うが、潜在的な部分で共通する“こだわり”や“志向性”があったことがうかがえる。 その一端が、エンターテインメントとしての“人間性の表現”。ゲームとしてあらわしていくことは決してたやすいことではないが、植松氏は「人間味が表現できないとは思わない。まだ、僕らの表現技術が稚拙なだけで。映画、小説など、エンターテインメントのひとつ。これからどんどん開発の余地がある。僕が一番嫌なのは、海外や日本の親御さんが(子供が)ゲーム音楽のコンサートに行くっていうと、いい顔をしないらしいんですね。いくつまでゲームをやっているんだお前は、と。ゲームは“悪”じゃないけど、そういった偏見をはやく無くしたいなぁって、凄く思うんですね」とコメント。 楽曲について植松氏は「1,000年死ねないっていうキーワードを、ずっと考えてた。それを想像、妄想するんですよ。自分が1,000年死ねなかったらどうしようって。色々な戦争があって、親、子供、恋人、奥さんが死んじゃう。それでも僕は生き続けなきゃいけない。そりゃ、どうしても明るいテーマは書けなかった。でも、そのとき……だいたいAメロ、Bメロができた。この重たいメロディでいこう。でも何かもう一味欲しいなと思ったとき、坂口さんから『女の人の声をどこかに入れたいな』というメールがあって『これだ! いただきぃ!!』と。女の人のコーラスを入れることで、重たいテーマが(一変した)」と裏話を披露。
「女性ボーカルが『母親の声に聞こえる』ような気がしたんですね。重たいけど、最後は柔らかい愛で包まれて終わるというか。僕が勝手にそう思ってるだけですけど(笑) 結構、自信作です」という植松氏。これについて坂口氏は「本当に素晴らしい。同じ曲が別の場所で流れると、ゲームって嫌になるんです。今回、それがない。同じ曲が流れても大丈夫というのは、初体験」と絶賛する。植松氏のファンはもちろん、ゲームミュージックに興味がある人にも本作は要注目といえそうだ。
主人公カイムについて豊川さんは「最初にシナリオを読んだとき、映画にしたくなるくらい、凄く深いドラマとダイナミズム、エンターテインメント性がミックスされていて、自分が(生身で)芝居をするつもりでというか……魅力的なキャラクタを少しでも汚さないように気をつけてやらせてもらいました」と謙虚なコメント。カイムのように1,000年生きられたら? という問いには「僕は……キチッと死んで生きたいですね。人間らしく。なんか、死なないと生まれてきた意味がないような気がして」とのこと。 制作中、さまざまなアドリブでキャラクタに新たな伊吹を与えたという豊原さん。「キャラクタが人間臭くて、暴れ回る。ヤンセンは非常にしゃべるキャラクタなんですよ。ヤンセンが2行しゃべる、カイム『……』、ヤンセン2行、カイム『……』、ヤンセン3行、カイム『あぁ』と。非常に不公平感があって、報酬はいったいどうなっているんだと(会場笑) 未完成のとき、レコーディング中に『英語』音声が入っていたんですね。そのかたがアドリブを多く入れていたんで、じゃぁ僕も……と、色々アドリブを言わせていただきました」という。ファンの人は、実際にプレイしてどのあたりがアドリブなのか探してみるのも面白そうだ。 カイム同様、1,000年死ねないキャラクタという設定のサラを演じた上原さん。「私の登場が、最初は悲しみから自分の姿を老婆に変えてしまっていて、そこから歌声によって元の姿に戻っていくという変化を表現するのが難しくて。でも、凄くやりがいがある役でした」とコメント。司会進行氏から「カイムとヤンセンだったら、どちらが好みのタイプ?」という質問には「サラは役どころでもカイムを愛していて、無口なんだけど男らしい姿に惹かれていく。私も感情移入してしまって……」といい、すかさず豊原さんが「凄く残念なコメントです(笑)」と突っ込むと会場中が大きな笑いに包まれる。
最後に坂口氏は「発売日はまだなんですけど、もう“生まれた我が子”という感じ。素のユーザーの気持ちでプレイして、あらためて『やる価値は、あるんじゃないかな』と思います。ぜひ、手にとっていただけたら、と思います。よろしくお願いします」とコメント。すでに注目していた人はもちろん、本記事を読んで気になった部分があればチェックしておいて損はなさそうだ。
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□Xbox 360のホームページ (2007年11月19日) [Reported by 豊臣和孝]
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