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★PS3ゲーム・ファーストインプレッション★

USBカメラでカードを認識させる新機軸TCG
「THE EYE OF JUDGMENT BIOLITH REBELLION ~機神の叛乱~ SET.1」



 その昔「ただの紙切れが、なんでそんなに高いワケ? 理解不能!」などと揶揄されたトレーディングカードゲーム(TCG)。だが、世界中で多数のファンを擁する「Magic:The Gathering」や、国産TCGの代表格ともいえる「遊戯王」シリーズの大ブレイクにより、いまや日本でも屈指の人気を誇る一大ホビージャンルに成長した。

 今回レビューをお届けする「THE EYE OF JUDGMENT BIOLITH REBELLION ~機神の叛乱~ SET.1」は、そんなTCGとPS3を融合させた新機軸の3Dカードバトル。TCGのプレイ様式をベースに、PS3専用USBカメラ「PLAYSTATION Eye」を使い、カード情報を読み取らせてプレイする。プレイに必要な周辺機器など一式が詰まったパッケージのほか、タカラトミーから5種類のテーマデッキ(カード30枚入り:各1,575円)とブースターパック(8枚入り:各399円)も発売されている。

 本物のトレーディングカードを使ってプレイする、PS3専用タイトル。TCGファンを中心に高い関心が寄せられているが、一方で「TCGとか良く知らないし、いきなり手を出すのは気がひけるなぁ」と及び腰になっていた人も少なくないはず。そこで今回は、購入を逡巡している人向けにファーストインプレッションをお届けしようと思う。なお、全体の雰囲気を簡潔にお伝えすべく、細かいルール説明などはあえて省略している点をあらかじめご了承願いたい。


■ パッケージ内容とセッティング

 パッケージの内訳は「ソフトウェア」、PS3用USBカメラ「PLAYSTATION Eye」、「カメラスタンド」、「プレイマット」、「スターターデッキ」、「ブースターパック」の計6点。TCGでいえば「スターターセット」に相当する。

 本来であれば、別売りのテーマデッキとブースターパックを大人買いで一気に揃えたいところだが、筆者の地元では別売りカードが軒並み売り切れており、なかには「取り扱っておりません」というショップまである始末。仕方なくホビー系通販サイトをチェックすると数店で在庫が確認できたが、納期を見るとスケジュールに間に合わないため、ここはスターターセットのみで最終目的の「オンライン対戦」まで一気に突っ走ることにする。

 まずは、カメラスタンドを組み立ててUSBカメラをセット。ガタツキ、緩みなどは特になくシッカリとした作り。スタンド背面にケーブルを固定するポイントが2カ所あるため、じゅうたんの上に立ててもケーブルが原因でふらつくことはない。

 PS3本体にUSBカメラを接続し、本体電源を入れてディスクを挿入。オープニングムービーの後(スキップも可)、カメラ設定に移行する。設定画面では、テレビとUSBカメラの位置を決める。ふたりで対戦したいときは横、ひとりのときは自分の正面など、4パターンから好きなものを選択。屋内証明のタイプや光度、東西の電源周波数の違いなどもサポートされており、カードの認識精度も同時にチェックできる。

 筆者の仕事部屋は洋間6畳で、照明は一般的な蛍光灯が天井に4本(カバーつき)。床にプレイマットを敷いた状態で試してみたが、問題なく認識してくれた。念のため、暗い室内向けの設定で蛍光灯を2本に減らしてみたが、こちらもまったく問題なし。カード認識に要する時間は、1~5秒の間で自由に設定可能。慣れてくると1秒でも長いと感じるかもしれないが、誤動作やつまらないミスを防ぐ意味でも1~2秒が無難だろう。

PS3用USBカメラ「PLAYSTATION Eye」。マイク付きなのでボイスチャットにも対応する プラスティックながら、カメラスタンドの安定感は申し分なし
カメラ設定はオプション画面でいつでも調整可能。プレイマットが均一に照らされていることが最も大切。直射日光やスタンドランプなどでむらが生じないよう注意


 USBカメラのセッティングが終わったら、早速ゲーム開始……といきたいところだが、まずはチュートリアルの「ガイダンス」をチェック。ゲームの準備、ルール、操作説明などが、ムービーで丁寧に解説されるため、マニュアルを読むのが面倒という人でも大丈夫。後述するクリーチャーの配置や対象の指定など、カードを使った操作手順を映像でわかりやすく教えてくれるため、マニュアル熟読派の人も一度目を通しておくことをおすすめしたい。

ムービーで紹介されるチュートリアルは実践的でわかりやすい内容。初めてプレイするときはマニュアルだけでなくこちらも参照しておくといい



■ 3×3マップにクリーチャーを置き、先に5マス占領したほうが勝ち

 本作の遊び方やルールは“原則的に”とてもシンプル。3×3の四角で構成された9マス(フィールド)のマップ(ボード)に、手順に従いクリーチャーを1体ずつ配置していく。お互いに同じ手順を繰り返し、各ターン終了時に計5フィールドを占領していたプレーヤーが勝者となる。

 このように書くと、予備知識がない人は「なんだ、それなら先攻が圧倒的に有利じゃん」となるかもしれないが、そこは当然“TCGらしい工夫”が随所に施されている。ここは非常に重要なポイントにつき、ややくどくなるが細かめに説明していきたい。

 まずはTCGでおなじみのデッキ構築。カードには「クリーチャー」と「スペル」の2種類があり、これらを「同じカードは3枚まで」、「特定のカードは1枚のみ」など、ルールを逸脱しないように計30枚を選びデッキを構築する。クリーチャーとスペルの割合はプレーヤーの好みだが、どちらか一方に偏るとおおむねろくなことにならない。参考までに、スターターデッキはクリーチャー24枚、スペル6枚の割合となっている。

 ゲーム開始時は、デッキをよくシャッフルして5枚を引き「手札」とする。残りデッキは「山札」として伏せたまま所定の場所に配置。このとき、手札の内容が気に入らなければ1度だけ「引きなおし(マリガン)」できる。先攻と後攻を決めたら、先攻からスタート。ただし、最初のターンのみ先攻は山札からカードをドローすることができない。これは、そのままだと先攻側のプレーヤーが圧倒的に有利になってしまうための措置だ。

 各ターンにおける手順は、おおまかに説明すると以下のようになる。

  • 山札からカードを1枚引いて手札に加える
  • マナを2ポイント獲得する
  • スペルを使う、クリーチャーを配置する
  • すべて効果を清算した後、相手ターンに移行
 プレーヤーが手元に残せるカードは、計7枚まで。ターン清算処理の時点で8枚以上持っていたときは、余剰分を「ディスカード(捨てる)」しなければならない。

 「マナ」は、ひらたくいえば「ガソリン」のようなもの。マップにクリーチャーを配置するとき、すでに配置したクリーチャーを戦わせるとき、スペルを使うとき、それぞれカードに記載されたぶんのマナを消費する。ゼロになると、文字どおり「ガス欠」状態で何もできなくなる。無計画な浪費は論外だが、さりとてひたすら溜め込んでも意味がない。マップと手札の状況、山札に埋もれたカードを想定し、余裕を持たせつつ効率よく使っていくのが理想だ。

 マップにクリーチャーを置くときは、そのクリーチャーとマップ内の各フィールドに設定された「属性」がとても重要になってくる。属性には「火、水、土、木、機巧」の5種類があり、マップには、後述する「表」と「裏」に5種類のうち必ずひとつの属性が与えられている。

 属性は、クリーチャーの体力(HP)に直接影響する。属性は「火と水」、「土と木」がそれぞれ対立概念となっており、たとえば火属性のクリーチャーを水属性のフィールドに配置すると、それだけで体力がマイナス2されてしまう。逆に、同じ属性のフィールドに配置すると、体力がプラス2される。

 「なんだ、じゃぁ常に同じ属性のフィールドだけ選んでいけばいいじゃん」と思われるかもしれないが、そこにもTCGらしい“ひねり”が加えられている。本作では、各フィールドに存在できるクリーチャーは「1体のみ」で、一度配置したらスペルや特殊効果などで強制されない限り「他のフィールドに移動できない」という縛りがある。

 クリーチャーを自由に配置できるのは「マップ上に自分のクリーチャーがひとつもないとき」に限られ、1体でも存在するときは“敵味方問わずほかのクリーチャーが召喚されているフィールドの上下左右のみ召喚できる”というルール。戦いを加速させるための絶妙な制約が、序盤の攻防を退屈なものにさせない点で大きな役割を果たしている。

 フィールドの属性は、前述のスペルや特殊効果で「裏と表が入れ替わる(裏返る)」もしくは「他のフィールドと入れ替わる」ことがあり、属性が常に一定とは限らない。最初のうちは「移動できないなら、強力なクリーチャーを同属性のフィールドに配置するのが一番いい」と考えがちだが、スペルや特殊効果で対立属性のフィールドに追い込めば、一気に死亡ということにもなる。基本ではあるが、固執すると逆手に取られたときに丁度いい落とし穴となってしまうわけだ。

 これら属性の動的要素にくわえて、クリーチャー間の戦闘システムが“本作らしい”スピーディかつ密度の濃いプレイ感覚を生み出すことに成功してる。その代表ともいえるのが、クリーチャーに設定された「向き」と、個別に大きく異なる攻撃範囲と防御範囲の概念だ。

 「向き」は、カードが上下左右どちらを向いているかというもの。カードを普通に持った場合、人型の単体クリーチャーであれば、上が「正面」、左右が「横」、下が「後ろ」というのが基本だが、そこはファンタジー世界のクリーチャーゆえ、モノによっては前後左右が正面だったりと、内容は千差万別。

 攻撃と防御の範囲は、各クリーチャーカードに正面を基準にした「攻撃方法アイコン」と、反撃が可能な方向を示す「防御方法アイコン」が記載されている。これらは、ひらたくいえば自分の位置を基準に「攻撃可能なフィールド」と「攻撃されたときに反撃可能なフィールド」をイラストでわかりやすく示したものだ。

 攻撃可能なフィールドは、一般的なクリーチャーであれば正面、「二匹のゴブリン」は前後など、カードごとに多種多様。ひとフィールドだけではなく複数、さらには一定範囲内をまとめて攻撃する強烈なカードまである。クリーチャーの向きは、1ターンに1度だけ「左右90度」に変更できる。

 一度配置したら基本的には動けないが、向きは変えられる。ただし、攻撃可能な方向に相手がいなければ、当然攻撃できない。死角から攻撃できればいいが、それは相手も考えていること。一進一退の攻防を、どうすれば“一進ゼロ退”にできるか。そのためには、属性はもちろん、向きを強制的に変えたり、違うフィールドに相手を追いやるなど、クリーチャーの特殊能力やスペルの活用も欠かせない。

 3×3という限定的なマップで行なわれるせめぎ合いは、クリーチャーの密度が高まるほど激しく加速していく。ここでは、筆者がCPUと対戦したリプレイをご紹介する。設定は難易度ノーマル、スターターデッキ使用。断片的ではあるが、ゲームの流れや雰囲気が伝われば幸いだ。

【CPUとの対戦リプレイ】
CPUと対戦。手札5枚がクリーチャー(マナ1、3、5)、スペル2枚(マナ0、2)と序盤に不安を残すも引きに任せてGOサインを出す。COMはマリガンせず。いい手札のようだ 先攻はCPU。「トリトナの氷兵」を水属性のフィールドに召喚。HPがプラス2される こちらの番。ドローカードは「迷いの羅針霧」といきなり重複。すでに終わった予感がするも「ヴェルザールの歩兵」を召喚し頑張ってみる
鼻先を押さえるように「トリトナの氷兵」を置かれる。難易度がノーマルになると目先のダメージを追わないあたりが……。 ドローはスペル「パルマス教の聖宴」。クリーチャーを捨ててマナ2を獲得するカードだが、今は必要ない。真上のフィールドを「ゴーリの地割れ」で裏返す スペルカードを連続で使うことも可能。マナが1しかないためスペル「迷いの羅針霧」で「ヴェルザールの歩兵」を上向きにし、同属性の効果を失った「トリトナの氷兵」を撃破
CPUは「セ・ホーリンの不敗砦」で手元をガッチリ固めてくる。こちらはマナがないためカード蓄積をかねてドローのみでターンエンド CPU「女エルフの狂戦士」を召喚。ここでマップ上のクリーチャーが4体になり召喚制限が解除され、制限付きのクリーチャーが召喚可能に。ただし今の筆者には無関係(涙) 実は「あと1マナがあれば!」という心境。「パルマス教の聖宴」を使いたいが手札に余裕がないためターンエンド。CPU再び「女エルフの狂戦士」を召喚しチェック
チェックを解除すべくクリーチャー「三吼の巨獅子」を召喚し氷兵を撃破。直後、手前に向けて召喚すれば3方向に睨みが効いたことに気付き落ち込む。結果論として勝敗には無関係だったが、こういうミスはいただけない CPU、容赦なく「チャリオッツ」を召喚。勘のいい人なら察しているだろうが、この時点で筆者は詰んでいる。スターターデッキは攻撃力に乏しいカードが多く、次ターンで強力なカードを引いても現在の残りマナでは召喚すらかなわない ドローは「トリトナの氷兵」。手札から「ベノアの闇討ち」を召喚し「女エルフの狂戦士」を攻撃するもHPが5あるため殺しきれず
CPUにさっくり5体目を召喚されてジ・エンド。敗因は後攻で“後手”に回ったこと。博打でマリガンし、低マナクリーチャーの複数引きを期待したほうが良かったのかもしれない デュエル(対戦)中はもちろん、直後の終了画面でお互いのカード履歴がチェックできる。納得できない部分があれば、これでシッカリ反省すべし



■ オンライン対戦はカード登録が必要

 ここまで記事に目を通して「そういえば“実際にカードを使って”とあったけど、もしそうならオンライン対戦ってインチキし放題なのでは?」と疑問を抱かれた人もいるだろう。USBカメラにはプレイマップが映されるだけで、山札は外。それなら積み込み放題ということになる……が、本作はその点についてもきちんと考えられている。

 対CPUや他プレーヤーと一緒に遊ぶときは、実際のカードを使用する。だが、オンラインでは“USBカメラで認証させたカード”を使ってプレイする。山札、ドローなどはすべてCPUに管理され、プレーヤーがタッチすることはできない。つまり“プレイングに関する不正は、一切できない”ということになる。

 USBカメラを使ったデッキ登録は、カメラの前にカードをかざすか、プレイマットの上に置いて認識させるだけ。唯一の注意点は、同じカードを複数使う場合、そのカードだけをまとめて1度に認識させるといったことくらい。それ以外は適当に並べて認識させればよく、同時に4枚まで認識させられるので作業自体はほんの数十秒で終わる。

カードの登録、デッキ編集はとても簡単。同じカードを登録するときは、一緒に並べて認識させることにだけ注意すればサクサク終わる


 オンラインメニューは「ランキングマッチ」、「カスタムマッチ」、「プレーヤー設定」の3項目。ランキングマッチは、上位ランクを目指して他プレーヤーとガチンコ勝負を行なうというもの。カスタムマッチは、自分でデュエルルームを作り対戦相手の参加を待つか、もしくはすでにあるデュエルルーム(相手)を検索し好きなものを選んで戦う。ルーム検索は、言語(日本語、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、指定しない)とスタイル(真剣勝負、テンポ良く、気軽に楽しく、トレーニング、指定しない)がそれぞれ設定できる。

 デュエルルーム作成時のルールは、「言語、スタイル、ステージ選択(広場、火山帯、水の都、砂漠、森、城、ランダム)、フィールド構成(公式、連鎖なしパターン、3連鎖パターン、ステージ固有、シャッフル)、制限時間(1分~3分、5分、10分、無限)、先攻設定(ランダム、Player1、Player2)、バトルアニメ(あり、なし)からそれぞれ選ぶことができる。

 オンライン対戦はチャットとボイスの両方に対応しており、オン・オフの選択が可能。筆者のようにチキンで心が折れやすいタイプはオフ、コミュニケートを大切にしたい人はオン。正直、人によっては相当マナーが悪い人も(極一部だが)いて平然とお約束の四文字言葉を吐かれることもあるが、そういう人に当ったときは、プレーヤーネームを覚えておいて次から対戦しなければいい。

 常に制限時間一杯まで使ってくる相手でもなければ、オンライン対戦はおおむね快適。ただ、後述するように時間帯によっては対戦相手がなかなか見つからないため、時には外人さん相手でも遠慮なく挑戦してみるべし。あまりいい方法ではないかもしれないが、どうしても尻込みしてしまうという人は、ボイスとテキストチャットを両方オフにしておけば、プレイだけに集中できる。チキンハートな筆者がいってもあまり説得力がないかもしれないが、TCGは対戦相手とのコミュニケーションも魅力のひとつ。可能なら、相手の言語に対応した簡単な挨拶(そして「挨拶くらいしか○×語を知りません。ごめんなさい」などの訳文)のひとつでもして、人的な触れ合いを楽しんでおきたいところだ。

手元にあるカードと、CPUが管理する手札、山札を照らし合わせつつプレイ。最初は画面と手札を一致させつつ操作するのが手間に思えるが、30枚しかないのですぐ慣れて選べるようになる。あらかじめ属性などで分別しておくと便利



■ 統一されたフェアなオンライン対戦環境を実現 ~唯一の難点はトータルコスト?~

 一般的なコンシューマタイトルは「シングルプレイ」を前提としたものが多いが、本作は「他プレーヤーとのオンライン対戦」に特化した作りとなっている。カードを使った対CPUのシングルプレイは、あくまでも対人戦の演習。ストーリーモードさえ用意されていない点については「ずいぶんと思い切ったものだなぁ」と感じたが、それは開発陣が「対人戦の面白さ」に自信を持っていることの証左とも受け取れる。

 まだオフラインの対人戦はやっていないが、その面白さはオンライン対戦で十二分に味わえている。シンプルなルールと加速度的にヒートアップしていく展開の妙は言うにおよばず、筆者が何より素晴らしいと感じているのは、本作が“すべてのプレーヤーにフェアなオンライン対戦環境を提供している”ことだ。

 筆者は某TCGをプレイしているが、そういった対戦では(カードショップなどで行なわれる大会やフリー対戦などでは特に)カードに記載された特殊効果やルールの解釈で、対戦相手と議論になることがままある。同じ文面なのに解釈が違うなどはザラで、特殊効果が幾重にも重なったりすると「それおかしくないですか? これはそっちの効果が優先されて……」、「いや、この場合はこっちでこうだから」などといったことが珍しくない。結論が出ない場合はショップの店員さんに裁定をお願いするのだが、どちらか一方でも納得してないと、その後の雰囲気がどうもギクシャクしてしまう。フリー対戦はもちろん、真剣勝負ともなればなおさらだ。

 その点、本作はすべての処理をCPUが明確に処理してくれる。オンラインであれば山札と手札もCPUに管理されるため、カードやスリーブの隅にこっそりマーキングするなどといった姑息な反則を心配せずにすむ。また、お互いの勘違いで「実は間違っているのに、そのままプレイしていた」などということもなくなる。まだ出始めでカード総数が少なく複雑な処理が無いせいもあるだろうが、この点に関してはほぼパーフェクトな仕上がり。自宅でいつでも対戦相手が見つかるのも、TCGファンに強烈にアピールするポイントだ。

 難点としては、まず「オンラインのデュエルルームにパスワードがかけられない」ことがあげられる。フレンドに招待状を送れるのはいいが、現時点ではルーム作成直後に見知らぬプレーヤーとマッチングされてしまうことが多く、あまりアテにならない。パスワードが設定できれば特定の対戦相手とデュエルを楽しめるのだが、恐らくこれは先々のアップデートで対応してくれるだろう。

 もう1点は、TCGファンなら納得(もしくはあきらめ)済みの「総費用」。冒頭で軽く触れたように、TCGは他のホビーと比較しても“とにかくお金がかかる”傾向がある。「あれ、オンライン対戦は無料でしょ?」と思われるかもしれないが、問題はそこではない。プレイや登録に実際のカードを使用する以上、新カードを入手しないとデッキのバリエーションが増やせない。そのためにテーマデッキやブースターを購入することになるのだが、ひとつやふたつ買った程度では揃わないのがTCGの恐ろしさ。

 テーマデッキは公式サイトで内容を確認できるが、ブースターは買って中身を確認するまでわからない。カードには「レアリティ」という概念が存在し、希少なカードになるほど封入率が低くなる。ネットの掲示板などを散見していると「どこにも売っていない!」という声以上に「レアが引けない」、「BOXで買ったのに入っていなかった」という痛切な悲鳴が少なからず飛び込んでくる。初物だけにショップも慎重になっているのだろうが、正直あまりいい状況とはいえない。TCGでは「よくあること」なのだが、知らない人が見聞きしたなら、それで完全に引いてしまうかもしれない。

 売る側も商売なのだから、ある程度までは仕方ないのだが……そこのところ、TCGファンは「いいカモにされている」ことを自覚して、数万円~数十万円という金額を平然とつっこんでしまう。ぶっちゃけてしまうと、たとえば筆者が今メインでプレイしている「レンジャーズストライク」は、新弾が出るたびに「ブースター」と「自販機パック」をカートン買いしないとプレイに必要な枚数(各カード3枚)がコンプリートできない。カートン買いしてもスーパーレアなどの希少カードは必ず不足するため、トレードなどで揃わないとさらなる出費を強いられる。無理に全部揃える必要はないのだが、そこはゲーマーの悲しい性(さが)。ふと気付けば、3カ月に1回くらいのペースで福沢諭吉がお手てをつないで仲良く飛び去っていく。他ジャンルのファンから“お布施”などと揶揄されても一切反論できない状況だ。

 話を元に戻すと、本作の場合、まずゲーム本体が9,980円。PS3本体を持っていない人であれば、これに本体価格(40GB版であれば39,800円)が加わる。テーマデッキ5種類を揃えるなら1,575×5=7,850円、ブースターパックをBOXで購入したなら1BOX=12パック、399円×12=4,788円。すべて新規で購入するなら、総費用は「62,418円」になる。

 さて、このインプレッション記事に目を通したあなたは、これを高いと見るだろうか。念のため、筆者はここで「こんなにお金がかかるとは、なんてけしからんゲームだ!」などといいたいのではく、さらには「驚きのお値打ち価格!!」とTVショッピングの司会者よろしくあからさまな提灯をブンブン振り回したいわけでもない。要は、TCGに限らず「トレーディング○×」と名のついた製品やホビーは、元から「ユーザーに浪費を強いる代物」ということを、知らない人は念頭に置いていただきたいだけの話なのだ。それを承知できずTCGというジャンルに手を出しても、いいことなんて何ひとつない。

 常日頃TCGをプレイしているいちファンの立場から言わせてもらうと、本作が提供するプレイ環境は、その対価に十分見合うものだと感じている。正直、時間帯によってオンライン対戦相手がほどんと見つからない点は「もって売れていれば……」などとため息をついてしまうのだが、その点は「本作の魅力に気付いた人たちが少しずつでも増えていけば、比例してオンライン対戦も盛況になるはずだ」と前向きに考えるようにしている。システムやルールは申し分なし。興味がある人は、ぜひ一度本作を体験していただきたい。間違っても「気軽に」などというフレーズで煽ることはできないが、少なくともTCGファンなら一見以上の価値はある。


(C)2007 Sony Computer Entertainment Inc.

□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□ニュースリリース
http://www.jp.playstation.com/scej/title/eoj/
□関連情報
【10月26日】SCEJ、PS3「THE EYE OF JUDGMENT」
秋葉原で発売記念体験イベントを開催
http://watch.impress.co.jp/docs/20071026/eoj.htm
【10月18日】SCEJ、「秋葉原エンタまつり2007」
特別協賛として自社ブースを出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071018/enta.htm
【10月16日】お台場のソニー・エクスプローラサイエンス
PS3「THE EYE OF JUDGMENT」も遊べるサイバーコード展を開催中
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071016/ses.htm
【7月6日】SCEJ、PS3「THE EYE OF JUDGMENT」発売日決定
拡張版もPLAYSTATION Networkで順次発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070706/eoj.htm
【4月26日】SCEJ、PS3「THE EYE OF JUDGMENT」
USBカメラやトレーディングカードを同梱して今秋発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070426/eoj.htm

(2007年11月8日)

[Reported by 豊臣和孝]



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