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CCP Games、「EVE ONLINE」開発者インタビュー
独特の世界観とゲーム性で成長を続ける同作の強みと日本展開への展望

9月収録



 「EVE ONLINE」は、プレーヤー自身が宇宙船の艦長となって銀河系規模の宇宙を駆けめぐるという世にも珍しいMMOPRPGだ。現在のユーザー数は全世界で約20万人のアクティブユーザーということでワールドワイド規模で見ると決してメジャータイトルに分類されるタイトルではないものの、2003年に正式サービスが開始されて以降、他に類を見ない世界観とゲーム性が高く評価され、MMORPGタイトルとしては珍しく一度もユーザー数を減らすことなく堅実な成長を続けている。

「EVE ONLINE」は宇宙船が主役となるユニークなSFMMORPGだ
 このタイトルを開発・運営しているのはアイスランドに本拠を置くCCP Games。同社は、当初から国境を意識せずに展開してきた運営スタイルにより、現在では英国・ヨーロッパと北米を中心に多くのユーザーを獲得しているほか、日本を含むアジア地域にも万単位のアクティブユーザーを抱えている。

 そこで近年、CCP Gamesが力を入れ始めているのが、各国の言語にあわせたローカライズへの取り組みであり、日本語対応にも目処が立ったということで来日へと繋がった。今回、「EVE ONLINE」の日本語への完全対応を控え、CCP Gamesを率いるトップスタッフらが来日し、弊誌インタビューに答えてくれた。

 「EVE ONLINE」の日本サービスは日本展開は、2007年12月頃を予定し、パッケージはソフトバンクBBからの発売を予定している。


■ 「EVE ONLINE」はプレイグラウンド型MMOPRGの理想を体現

CCP GamesのCEOであるヒルマル・ベルガー・ピエトルソン氏。「EVE」の3Dエンジン製作者としての経歴を持つ氏は、プレーヤー活動の魅力について語ってくれた
CCPのアジア担当ディレクターであるキャルタン・ピエール・エミルソン氏。「EVE」のリードエゲームデザイナー、プログラマーとしての経歴を持ち、数理物理学博士でもある
 今回のインタビューに答えてくれたのは、CCP GamesのCEOであるヒルマル・ベルガー・ピエトルソン氏と、アジア地域への展開を担当するCCP Asiaマネージングディレクターのキャルタン・ピエール・エミルソン氏。両名とも生粋のアイスランド人であり、日本で言うところの姓、すなわちファミリーネームをもたないが、便宜上本稿では両氏の父称に「氏」をつけて表記する。

 ここでまず、日本ではあまり知られていないタイトルといえる「EVE ONLINE」について簡単に紹介しておきたい。本タイトルはジャンル的にはSFMMORPGに属するオンラインゲームで、地球のある銀河系の外にあるという「EVE」と呼ばれる銀河宇宙を舞台としたハードコアSF作品である。SFのMMORPGとは言っても「Anarcy Online」や「STARWARS GALAXIES」などとは全く異なり、プレーヤーが操作する主体はヒト型のキャラクタではなく、なんと宇宙船なのだ。ワープ航法を駆使し宇宙ステーションから宇宙ステーションへ、はたまたジャンプゲートを使って太陽系から別の太陽系へと、まさに銀河全体を股にかけたスケールの大きなゲームなのである。

 本作のMMORPGとしてのゲーム世界は、系統としては初期の「ウルティマオンライン」に見られたような、プレーヤーに世界環境と幅広い自由が与えられ、目的やプレイ内容はプレーヤー自身で見つけていくという、「環境型」や「プレイグラウンド型」と呼ばれる系統に属す。数千にもおよぶ太陽系、数万にもおよぶアステロイドベルトや宇宙ステーションを舞台に、現在は20万人のプレーヤーたちが自身の宇宙船を駆り、資源の採掘や物資の生産、交易、戦闘ミッションの遂行などを通じて世界全体のダイナミックなシステムを形作っている。

 特筆すべきは、ゲーム世界では完全なプレーヤードリブンの経済が機能しており、ゲームシステムによるNPC経済はごく限られた存在であるということ。サービス開始から4年を経た現在ではプレーヤーの経済活動は大規模化し、結果として多くの共同体「Corp」(一般的なMMOPRGで言うギルド)が作られ、その一部は数千人の構成員を要すほどに大規模化している。そうしたプレーヤーたちは、地域によってはプレーヤーキルも無条件に許された自由な世界で独自の宇宙ステーションを構築し、複数の太陽系を支配し、宇宙船や兵器を建造して互いの勢力範囲を奪いあう形で常時臨戦態勢にある。

 このように、ゲーム世界がプレーヤー自身の手によりダイナミックに変化を続けているという、ある種MMORPGの理想とも言える状況を体現している「EVE ONLINE」だが、インタビュー冒頭では本作品のアジア地域展開を指揮するエミルソン氏自ら、ゲームの魅力を語ってくれた。

【EVE ONLINE】
宇宙規模のゲームである「EVE」では、ワープ航法による星間移動が基本というスケール 文字情報の多いインターフェイスはまさにHD世代の趣。情報量の多いゲームであるともいえる ゲーム内マーケットは、プレーヤーによる売り買い注文で流通価格が変動し続ける



■ ただひとつのサーバーに全世界のプレーヤーが参加。常時数万人のプレーヤーがゲーム世界を動かす

「EVE」のアクティブプレーヤー数(月額課金ユーザー)の変動グラフ。落ち込むことなく継続的に成長しているのが特徴的だ
現在の勢力図。小さな点のひとつひとつが太陽系である。中央部のNPC国家領域を除き、言語グループで結ばれた各「Corp(企業)」や「Alliance(連合)」が縄張りを維持しているようだ
英国にあるという「EVE」のサーバー施設。全世界のユーザーがここに接続する。「装備重量約2トン、20万人の中国人よりも多くの電力を消費する」とある
編集部: 最初にCCP Gamesさんと代表作である「EVE ONLINE」のご紹介をお願いします。

キャルタン・ピエール・エミルソン氏: CCP Gamesは今年で10周年を迎えました。当社はゲームの開発と運営を世界規模で展開しています。最初の「EVE ONLINE」をリリースしたのは2003年のことで、4年前ということになります。これは非常にユニークなゲームで、また我々は継続的に開発を行なっており、1年に2回のペースで拡張パックのリリースを行なっています。拡張パックは全てのユーザーに無料で提供されるものです。

 会員数の傾向についてもユニークなデータがあります。他の典型的なMMORPGタイプのゲームではスタート時に大きな会員数を獲得し、やがて多くの会員が離脱していくという傾向がありますが、我々のゲームは非常に小さな会員数からスタートし、継続的にその数を増やしてきました。現在ではおよそ20万人の登録ユーザーがいます。これは月額料金を支払っているアクティブなユーザーの数です。

編: 現在、サーバー数はいくつあるんでしょうか。

 他のMMORPGと違い、全てのユーザーがただひとつの世界、ただひとつのサーバーでプレイしており、シャードのような分割はありません。20万人のプレーヤーがただひとつの世界を共有しているのです。ですから非常に大きい、世界でもまれなゲームになっています。

 世界にはおよそ5,000の太陽系があり、この地図に見られるように、辺境の外宇宙ではプレーヤーが複数の太陽系にまたがる星域を支配しています。我々はプレーヤーに対して何をしろと指示することはありませんので、星域や組織をどのように管理していくかはプレーヤー自身の判断に委ねられています。

編: なるほど、プレーヤー自身が領土を持てると。

エミルソン氏: 我々が見つけたのは、世界中のプレーヤーがただひとつの世界でプレイすることで、言語や国などの繋がりに応じて組織を成長させていくことでした。これは世界の地図状況に現れています。

(政治的国境を示す地図を示しながら)

 こちらにはアメリカのプレーヤーが支配する星域、こちらはロシア、また南端にはスカンジナビア、またフランスやドイツはこのあたりに勢力をかまえています。これらのことは、我々が操作したのではなく、自然発生的に起こったことです。

 ゲームの中では、このような大組織同士の大きな争いもあります。特に大きな組織は5,000人程度のプレーヤーによって構成され、時にはそれ以上の規模になることもあります。それが世界にまたがって非常に大きな戦いを繰り広げているのです。

編: まさにプレーヤードリブンの世界ですね。

エミルソン氏: はい。このような世界が生まれたのは、我々が選択したゲームデザインの方向性にあります。整理されたゲームの道筋をプレーヤーに与えるのではなく、何かを作り上げるためのツールと環境を用意したわけです。

 ですから、この比較は良く用いるのですが、例えば「World of Warcraft」や「Ever Quest」のようなテーマパーク型のゲームは、沢山のコンテンツや目標の明確なクエスト、ゲームデザイナーの設計した明確なルールがあります。それに比べ、我々のゲームはプレイグランドのようなもので、プレーヤーに何かを指示することはありません。

 宇宙ステーションを作る、戦艦を作る、資源を集める、人々を組織する、他の組織に宣戦布告するといった、各種のゲーム内のふるまいを各プレーヤーがどのように何のために行なおうとも、我々が関知するところではないのです。

 ですから我々は、結果的に、プレーヤーに対して富、経済、政治、外交といった普通のゲームプレイよりも上位のレイヤーに属する行為もおこなえる環境を提供することができました。これらの要素は非常に奥が深く、上位のレイヤーではファンの皆さんにメタゲーム的な形でも楽しんでいただけています。

編: 世界でひとつのサーバーということですが、サーバーの規模としては最大何名がプレイ可能なのでしょうか。

エミルソン氏: 現在までの同時接続者数の最高記録は、35,716人です。現在の設備としては、おそらく45,000人程度が快適なプレイが可能な上限となっていると思います。

 そのサーバーの規模としては、機材の重さが2トンほどあるんですよ(笑)。我々はロンドンに非常に大きなサーバー設備を持っており、現状ではおよそ200個のCPUが稼動していますが、様々な面で大幅な拡張を予定しています。来年には世界のスーパーコンピューター・トップ500のリストに我々のシステムが登場することになるでしょう。

編: 平均の同時接続数はどのくらいでしょうか。

エミルソン氏: 特に厳密に調査しているわけではないのですが、大雑把に言うと平日で30,000人弱、週末には35,000人近くに達します。また、全世界のプレーヤーがひとつのサーバーでプレイしているために、特にこれといったコアタイムというものがありません。ですからほぼ終日、最大数に近いプレーヤーがゲームに参加している状況になっています。

ゲーム内で見ることのできるワールドマップ。各太陽系がジャンプゲートで立体的に接続され、非常に複雑な構造を成している 戦闘はロックオンして各種武器を打ち込むというスタイル。船の大きさや移動速度や距離が重要なファクターであり、独特のゲーム性だ



■ サーバーがひとつだからこそ実現するプレーヤー活動の規模と広がり

画像はここで触れられた「Titan」級の船の一種。デカすぎて全容が把握できないが、小惑星ほどの大きさがあり、建造には文字通り天文学的な資源が必要となる
エミルソン氏から紹介のあった「E-ON」マガジン。英国で発行されているプレーヤーメイドながら本格的な装丁の季刊誌である
編: ゲーム世界で、プレーヤーはどのような活動を行なっているのでしょうか。

エミルソン氏: プレーヤーが行なっているリアルな、メタゲーム的なプレイ要素のすべてをお伝えすることは難しいのですが、この世界では他の企業の活動を知る為にスパイを送るようなことも行なわれていて、普通のゲームとはかなり異なっています。

 たとえば、1年前の拡張パックでリリースした「Titan」クラスの船は、ゲーム内で所有できる最大の、非常に巨大なものです。ゲーム内でこの船を買うことはできないため、プレーヤー自身で建造するしかないのですが、我々がこの船をゲームに導入した後、最初の1隻が就航するまで8カ月の期間を要しました。これは当時最大の「Corp」が達成したもので、4,000人のプレーヤーが8カ月間もの期間をかけて、その建造のために取り組んだというわけです。しかし、就航の3カ月後には戦闘で失われてしまいました(笑)。

編: 今、「Titan」クラスの船を所有できる「Corp」は、いくつくらい存在しているのでしょうか。

エミルソン氏: この1隻を作るために数千人のプレーヤーが必要になるため、ひとつの「Corp」で建造することは簡単ではありません。ですので、我々が導入した「Alliance」という仕組みで複数の「Corp」がひとつの組織になって、という単位でのお話になりますけれども、現在では3、4個程度の「Alliance」がこの「Titan」クラスの船を所有しているようです。

 この例のように、我々は毎回の拡張パックでプレーヤー自身による建造が可能な新しいコンテンツを追加しています。そういったものを建造するのは大変な労力が必要になりますが、20万人のプレーヤーが共に作り上げていることで、ゲームの世界はたくさんのプレーヤーメイドの産物で溢れているわけです。この点が我々のゲームで非常にユニークな点だと思います。

編: なるほど。プレーヤー活動は相当大規模なものになっているわけですね。

エミルソン氏: こちらにも面白いものがありますのでご紹介しましょう。これは年に4回発行される「EVE ONLINE」のマガジンです。ですが公式なマガジンという形で我々が発行しているものではなく、英国のジャーナリストグループによって出版されているものです。変わっているのは、全てのライターが「EVE」のプレーヤーであり、雑誌を発行している人々はライターに対して本当のお金ではなく、「EVE」内の通貨(ISK)で原稿料を支払っているところです。

 またこの雑誌の広告料は同じく「EVE」内の通貨で支払われていて、広告主のほとんどはゲーム内の「Corp」が占めています。ですからこれは本当の意味でのバーチャル・マガジンと言えるものでしょう。広告もゲーム内「Corp」に関するものです。こちらはゲーム内でも最大規模の「Alliance」です。プレーヤーを募集する内容の広告のようですね。

編: これは本格的な作りですね。この雑誌は何部くらい出ているのでしょう。

エミルソン氏: およそ7,000部ほどが発行されていると聞いています。1部あたりの価格はリアルマネーで15ドル程度です。

 我々はゲーム内の状況やニュースを伝えるためにオンラインのラジオ局を運営していましたが、現在では同じくTV局も運営しています。これは毎週配信しており、ゲーム内で起こったことや、重要な情報を伝えるものです。特に新しいプレーヤーに対して世界の政治的地図を理解してもらうことは大事なことです。どこに向かえばよいのかの手引きになりますからね。公式フォーラムを覗いてみたり、このTV放送による情報を見ることで、世界の出来事を知り、ゲームプレイの方向性を決めることもできるわけです。

「EVE」ではこれまでに無料の拡張パックを多数リリース(左は「Red Moon Rising」、右は「Revelations I」)しており、そのたびに新しくユーザーが建造するべきコンテンツが追加されてきたという。そのことがプレーヤー経済の流動性を強く動機付けてきたのは確かなようだ


■ 年末の新パッケージリリースに向けた取り組みとして、DirectX 10世代のグラフィックス機能と日本語への完全対応を謳う

年末投入予定の新エンジンで描かれるという宇宙ステーションの映像。一見プリレンダーに見えるが、実際のインゲームの映像だということだ
編: 「EVE ONLINE」は今後どのようになっていくのでしょうか。展望についてお聞かせください。

エミルソン氏: では現在我々が取り組んでいる要素についてお話しましょう。まず、我々は2003年に「EVE」を発表して、グラフィックスに対して高い評価を得て、沢山の賞を獲得することができました。今でも非常に綺麗なグラフィックスだと思いますが、テクノロジーは2003年時点のものをそのまま使っていますから、世代交代の必要性を感じています。

 ですから、ゲームの魅力やソフトウェアとしての能力を増すため、現在我々はゲームのグラフィックス全体を見直して、2008年水準のものに仕上げる作業に入っています。基本的には、ゲーム内の船や宇宙ステーションなどの素材を再作成し、高解像度化に加えてDirectX 10のシェーダー技術を適用しています。これらの改良は今年末にリリースする予定です。ゲーム全体の見栄えが全く新しくなると思いますよ。

 また、2003年のリリース以来最大の変更となる、基礎的な部分での改良も予定しています。これは5カ年計画のような形で将来に向けての取り組みなのですが、近い将来のメジャーアップデートではアバターシステムの導入が始められると思います。このシステムが実現すると、プレーヤーは等身大のキャラクタとなり、宇宙ステーションの中を歩き回ることができるようになります。

編: 初めて人間キャラクタが操作可能になるわけですね。では、アバターの状態でチャットや戦闘ができるのでしょうか?

 最初の導入ではステーションの中でチャットなどができるようになりますが、戦闘に関してはまだ先のことだと思いますね。ステーションの中ではソーシャルなゲーム体験を導入したいと思っています。メンバーを集めたり、ちょっとしたカジュアルなゲームを楽しんだりといったことを考えています。

新旧エンジンのレンダリング要素。新エンジンではアンビエント・オクルージョンマップ、ノーマルマップ、スペキュラーマップ、グローマップを追加し、DirectX 10世代のレンダリングをおこなうという

左が現行エンジン、右が新エンジンによるレンダリング。現行エンジンでも充分に綺麗だが、新エンジンでは細部の質感がぐっと引き締まり、雰囲気が向上していることがわかる

こちらは宇宙ステーション内を歩けるというアバター機能のイメージ映像。実装時期は2008年内を予定しているとのことで、年末のアップデートには含まれない。「キャラクタが歩く」という機能が、サービス開始から5年後に実装されるというMMORPGは珍しい

・日本語化後も「ただひとつのサーバー」は堅持。取引の利便を考え、アイテム名などは英語表記のままに

各国のユーザー数の状況。やはり北米と英国およびヨーロッパ各国でほとんどを占めているが、国の法律により専用サーバーで隔離されている中国を除くアジア圏では日本ユーザーが多く、その数は現在2,000人近くだという
現行バージョンのクライアントからのショット。画面右下の通り、チャット機能に関しては既に日本語対応が整っている。現在はインターフェイス全般やミッション内容などの日本語化を進めているとのことだ
編: 年末には日本語化を完了するという予定のようですが、現在、展開している国、地域というのは何カ国くらいなのでしょう?

エミルソン氏: サーバーは英国にありまして、そこに世界中から、日本も含めて各国のプレーヤーが参加しています。現在の言語サポート状況としては、英語、ドイツ語、中国語についてはGMスタッフがついています。日本向けのローカライズは現在進行中で、GMチームについては現在、上海にあるオフィスで人材を確保し始めているところです。計画として今年末には日本向けのGMチームのオペレーションを開始し、日本語でのユーザーサポートを可能にする予定です。

編: 日本も含め、現時点での各国のユーザー数についてはどのような状況でしょうか。

エミルソン氏: 国別のユーザー数で見ると、北米と英国で大半を占めています。それにヨーロッパのプレーヤーを加える全体のほとんどを占めることになりますが、アジア圏にもプレーヤーがたくさんいます。そのアジアでは日本人のプレーヤーに意外と多くプレイしていただいていまして、現在では1,722人の日本ユーザーの方が登録されています。

編: なるほど、英語のままでもプレイしている日本のユーザーが2千人近くいるわけですね。日本語化の進行状況についてはいかがでしょうか。

エミルソン氏: 日本語化については、ゲーム内の翻訳に関してはほぼすべて完了しており、これからQAに入るという状況です。現行のバージョンでもチュートリアルに関しては日本語で実装されていまして、チャットも日本語で行なうことが可能です。

 現在のバージョンで日本語化されてない部分、例えばユーザーインターフェイスやミッション説明など、またイントロムービーの字幕も日本語化します。ただし、アイテム名は英語のままで残します。これは、各国語ユーザーがゲーム内マーケットなどでの取引で不利にならないようにするための配慮です。日本語化が完了したバージョンの提供は、今年の終わり頃、12月ごろを目標にしています。


・パッケージ版はソフトバンクBBと提携。プリペイドコードの販売でクレジットカードを持たないユーザーにも配慮

日本国内の展開については、翻訳を担当されたCCP GamesのYuko Ishii氏からも詳しい説明がなされた
編: 日本展開に関して、ソフトバンクBBさんと提携されたと伺いましたが、その意図はどのあたりにあるのでしょうか。

エミルソン氏: 我々が見たところ、日本でのPCゲーム流通ではソフトバンクBBさんが最も高いシェアを持っていたということが理由のひとつです。この利点としては、例えばパッケージをお店に並べてもらうときに多少有利になると思います。

編: アジア地域で言いますと、既に中国でのサービスを開始されていますよね。その中国での「EVE」はどのような状況なのでしょうか。

エミルソン氏: 中国での「EVE ONLINE」は、およそ3万人の登録ユーザーがいます。すでに何カ月もサービスを提供していますが、ユーザーの開拓についてはまだまだ模索中です。おもにハードコアSFのファンの方から好まれているようですね。また中国は法律上の制限がありまして、特別に専用のサーバーを中国内においてサービスしています。

編: 日本の場合は英国のサーバーに繋ぐことになりますか?

エミルソン氏: そうです。

編: 日本国内での販売方法としては、どのようなものを考えていらっしゃいますか。

エミルソン氏: 「EVEタイムコード」という、クレジットカードで課金できない人のためのプリペイドコードをAmazonで販売する予定です。これはもしかすると、店頭には並ばないかもしれません。あとは実際にお店で買えるパッケージ販売ですね。これはソフトバンクBBさんと提携して行ないます。

 これまでのパッケージ販売に関しては、実は2003年のリリース時に一度行なっただけで、それ以降クライアントの配布はオンラインでのダウンロードのみでした。ですが今回、グラフィックスエンジンのメジャーアップデートがありますから、クライアントも非常に大きくなります。それもパッケージ版をリリースする理由のひとつです。

 パッケージに含まれるソフトウェア構成としては、2つのゲームクライアントバージョンが入ります。旧グラフィックスエンジンのものと、新グラフィックエンジンのものです。どちらでもゲームにログインしてプレイすることが可能ですので、プレーヤーの好みや環境に合わせて選ぶことができます。

編: パッケージの販売開始時期はいつごろを予定されていますか。

エミルソン氏: 日本語版のリリースと同時期を予定しています。

編: つまり、12月ごろということですね。そのときには、日本ユーザー向けの特別なフィーチャーが含まれるのでしょうか。

ヒルマル・ベルガー・ピエトルソン氏: 「EVE」の世界はプレーヤーが作り上げて今日に至るものですから、我々は世界の平等性に常に注意を払っています。特定の集団に何か特別な便宜があれば常にインバランスを生みますから、全ての言語圏に平等なサポートを提供することに全力を注いでいます。ですが、そこを越えた部分では何かできることはないかと考えています。

エミルソン氏: それで我々が議論している機能なのですが、言語を選択してゲームをスタートすると、新しいプレーヤーがその言語を話す人々に出会える地域に出現するようなことを考えています。例えば通常のスタートのほかに、日本人が属する「Newbie Corporation」からスタートすることを選べるような形です。強制ではなく、選択可能なオプションになると思います。

編: これから「EVE」を始める人にとっては、日本のコミュニティの状況が気になるところです。新しいプレーヤーの受け皿になれるようなコミュニティの存在は把握されていますか?

エミルソン氏: 日本のコミュニティはブログを書いている人がとても多くて、新しくゲームに参加するときはブログを参考にしてゲームを始めるという人が多いようです。日本にはWikiサイトもありますので、日本語での情報提供の状況は悪くないところだと思いますよ。


■ 決して簡単なゲームではない「EVE ONLINE」。しかし「プレイしなくても成長するシステム」は忙しい社会人向き?

「EVE」の特徴であるスキルシステム。300ほどのスキルがあり、上位の船や武装を使えるようになるには、沢山の必要スキルを満たす必要がある。対象スキルを選んでおけば成長はリアル時間の経過とともに自動的に行われるため、「経験値稼ぎ」は存在しない
編: 「EVE」のテーマが宇宙モノのSFということで、ファンタジー的なMMOPRGが主流の日本において、どのようなユーザー層の獲得を考えていますか?

ピエトルソン氏: 我々が北米やヨーロッパで見てきたところ、「EVE」のプレーヤー年齢層が他のゲームに比べて高いことがわかっています。だいたい27歳くらいが平均ですけれども、ゲームが非常に複雑で、プレーヤーに多くのチャレンジを要求するという特性のためか、大学などで高等教育を受けた層が多いようです。

 また、「EVE」というゲームは沢山のことをプレーヤーに教えます。例えばどのように自由市場を操作するのか、あるいはどのように企業を運営するのか、目標を達成するためにどのようにして大人数を巻き込む戦略を組み立てるのか、というようなことです。「EVE ONLINE」には大きなコンセプトがあり、それは「リアルライフを助ける」ということです。例として「EVE ONLINE」を始めたプレーヤーがゲーム内で「Corp」を創設し、人を集め、数年間経営して学んだあと、ゲームを離れ、リアルライフに応用して実際に起業したというた事例があります。ゲームでの体験に信頼性があったわけです。

編: やはり運営側としても、「EVE ONLINE」が難しいゲームであるという認識をお持ちなんですね。

ピエトルソン氏: そうですね。ですがプレーヤーは複雑な道、シンプルな道、どちらも選ぶことができます。もし100人単位で対決する大戦争に加わりたいのなら、もちろんそれは大変に複雑なゲームになるでしょう。ですがそれと同時に、平和な「Corp」に参加して経済活動を行なうような道もあるわけです。

 基本的には、プレーヤーはゲーム展開をどれくらい複雑なものにするかを選ぶことができるわけです。より深いゲーム性を求めるのなら、「EVE」はそれに応える深いレイヤーを提供します。シンプルな方法でプレイしたいのなら、多くのプレーヤーが実際にしているように鉱石を掘って経済活動に参加するなど、カジュアルな方法もあります。

編: ゲームシステムについて言うと、「EVE」は非常にユニークな成長システムを持っていますよね。狩りなどの経験値ではなく、時間に応じて自動的にスキルが向上していくという。このシステムを導入した意図はどのようなものでしょうか。

ピエトルソン氏: 面白い質問ですね。基本的な狙いとしては、ゲームに多くの時間を割けなくても長い期間プレイできるゲームにしたいということです。オフラインでもスキルが向上するというシステムにより、より多くのプレーヤーがカジュアルにゲームをプレイできるようになりますし、1日40時間もPCの前に張り付いてプレイしなくても、他のプレーヤーに遅れをとることなくキャラクタを成長させ、競争力を保つチャンスを得られるわけです。

編: 忙しいビジネスマンでも、ゲームについていけそうですね。

エミルソン氏: そうですね。しかしただ簡単というわけでもありません。おそらくご存知の通り、例えば「Battleship」級の船に乗るためのスキルを獲得すること事体は簡単ですが、それだけで外宇宙に出れば簡単に倒されてしまいます。実際には戦艦に装着するための装備を扱うスキルや、航法など効果的に運用するためのスキルも必要で、さらにそれらがどのように働くのかというゲームプレイ上の知識も持つ必要があるからです。

 本質的には、スキルは自動的にパワーを与えてくれるものではなく、非常に戦略性の高いものですから、沢山の知識を要求します。ですから、2、3カ月ほどゲームをプレイしてからいったん離れてしまっても、またゲームに戻ってきたときに沢山の新しい要素に挑戦できるはずです。

編: なるほど。例えば、さきほど話題に出ていた「Titan」級の船に乗るには、どれくらいのトレーニングが必要なのでしょうか。

エミルソン氏: 今正確には思い出せませんけれども、スキルのトレーニングを早める「Implant」を装着して、「Titan」級の船に乗るためだけのスキル獲得を一直線に目指したとすると、およそ10カ月程度はかかると思います。ですがそれはあくまでも「乗れるだけ」です。本格的に運用できるようになるには、2年くらいの期間が必要となるでしょう。


・日本のプレーヤーを今の10倍にしたいという意気込み。そしてアイスランド人として持つ日本への親しみを語る

「島国」日本とアイスランドは似ているとして親近感を見せつつ、ピエトルソン氏は「EVE」を日本とアイスランドを結ぶ架け橋にしたいとコメントしてくれた
編: 年末には日本での展開が本格化します。その日本市場に対して期待していることを教えてください。

ピエトルソン氏: 日本のプレーヤーからの「EVE」に対する関心については、いつも気がついていました。ゲームをリリースした初期の時期から、アジア地域において日本のプレーヤーの存在は常に大きいものだったのです。2004年のスタート直後の時期には、宣伝もしていないのに日本のプレーヤーが400人もいたのですが、正直どうやって我々のゲームにたどり着いたんだろうと不思議に思ったほどです。それが日本語の言語サポートを導入しようとするきっかけになりました。

 現在では2,000人近くの日本人の方にプレイしていただいていますが、ソフトバンクBBさんと提携しての日本市場へ展開し、今の10倍のプレーヤーに楽しんでもらいたいと思っています。そのためにグラフィックスのメジャーアップデートや全世界への言語サポートに取り組んでいます。

編: 最後に、日本のプレーヤーに向けてのメッセージをお願いします。

ピエトルソン氏: 今回は私にとって2回目の訪日ですけれども、いつも日本での滞在をとても楽しんでいます。アイスランドに来る日本人旅行者もけっこう多いのですが、日本とアイスランドはよく似ているのです。日本とアイスランドは共に島国で、海に囲まれていて、魚を良く食べますね。それに、どちらも火山の多い国柄で、温泉が多いことも同じです。

 それで日本に来るたびにアイスランドに似ている雰囲気を感じるのですが、日本からアイスランドにくる旅行者も同じような感想を抱くようですね。両国はこのような点でよく似てますから、私はコンピューターゲームを製作しているアイスランド人として、日本の方からアイスランドに興味を持ってもらえることは喜びです。ぜひこれからは「EVE ONLINE」を、アイスランドと日本を繋ぐ架け橋にしていきたいと思っています。


 今回のインタビューでは、「EVE ONLINE」の開発および国際展開を指揮する両氏から、タイトルの持つ魅力を数多く語っていただいた。CCP Gamesの姿勢として、「EVE ONLINE」は兼ねてより英国にあるひとつのサーバーで全世界にサービスを提供しているということであり、今年末に予定している日本展開についても、日本用の新たなサーバーを作ったり、日本の企業に運営を委託するようなことはないようだ。つまり日本語化というよりは多言語対応の一環としての日本語サポートということになる。

 このため、プレーヤーは日本語が表示されるクライアントを使いながらも、全世界のプレーヤーと同じ土俵でプレイすることになるわけである。そこには常時数万人が接続するという、すべてのMMORPGの中でも特筆すべきダイナミックな世界が待っている。それだけに複雑で、難しく、手応えのあるゲームが楽しめるという反面、ライトユーザーには勧めにくいという特性も持ち合わせていそうだ。いずれにしても、極めてユニークなゲーム性を誇る「EVE ONLINE」を、広く日本のユーザーが楽しめる日は、今年末に近づいている。その時期を楽しみに待ちたい。

Copyright (C) CCP 1997-2007

□CCP Gamesのホームページ
http://www.ccpgames.com/
□「EVE ONLINE」のホームページ
http://www.eve-online.com/

(2007年10月17日)

[Reported by 佐藤耕司]



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