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【CEDEC 2007現地レポート】

DeNA畑村氏、「モバゲータウン」のビジネスモデルを説明
ゲームは入り口と話題作り、根幹は新世代広告メディアにあり

9月26〜28日 開催

会場:東京大学

 携帯電話コンテンツの業界では、キャリアの公式サイトからのリンクではない、いわゆる「勝手サイト」が注目されている。「大した違いはないんじゃないか」と思われるユーザーも多いと思うが、ユーザーをサイトへ誘導する方法や、キャリアを経由しない課金システムと課金形態など、ビジネス的にはかなり大きな違いがある。

 その勝手サイトの中で、現在飛びぬけて高い人気を集めているのが、株式会社ディー・エヌ・エーが運営している「モバゲータウン」だ。「無料ケータイゲームサイト」という触れ込みで、比較的後発のモバイル市場参入だったにも関わらず、凄まじい勢いで会員数を増やし、現在も伸び続けている。

 無料のゲームを配ることが、どうして商売に繋がり、成立するのか。そして「モバゲータウン」は何を目指しているのか。「CEDEC 2007」において、同社ポータルコマース事業部 モバイルポータル部部長の畑村匡章氏によるセッション「ケータイゲーム&SNSの可能性 〜600万人超の『モバゲータウン』を例に〜」が開かれ、その仕組みが明らかにされた。



■ 「ゲームで引き入れ、SNSで留める」巧妙な集客法

 まず「モバゲータウン」とは何かという説明をしておきたい。ディー・エヌ・エーはもともとEC事業を手がける企業で、オークションサイト「ビッターズ」の運営などで知られている。ただオークションサイトにおいては、「Yahoo! オークション」が大きなシェアを占め、「ビッターズ」は後発だったこともあり、伸び悩んでいた。

 そこで2004年にモバイルに参入。「モバオク」、「auオークション」といったオークションサービスや、アフィリエイトシステム「ポケットアフィリエイト」といったサービスで成功を収めた。それらに続く「モバゲータウン」の正式サービスは2006年2月のこと。それまでゲームに手をだしたことのない企業だけに、畑村氏は「ゲームに参入するのは、清水の舞台から飛び降りる気分だった」と当時を振り返った。

「モバゲータウン」のユーザー属性データ。日本の人口と会員数を比較できるというのが、勢いの凄まじさを物語っている
 結果として「モバゲータウン」は大成功を収めた。会員数は600万人を超え、中でも16〜20歳のユーザーが多く、この年代では日本の人口の約1/3が会員になっているという。サイトのページビューも、大手SNSの「mixi」のモバイルでのアクセスや、ポータルサイト「Yahoo! モバイル」の2〜3倍で推移しているという。

 「モバゲータウン」で配信されているゲームは約90種類で、iモード専用のものを含むと約100種類。1キー操作で、1ゲーム1分で遊べるものを基本としているが、最近ではアイテム課金型の3DオンラインRPG「マスターオブファンタジア」なども展開している。

 では、「モバゲータウン」にユーザーがハマるのはなぜなのか。畑村氏は、ここにあるロジックを明快に説明して見せた。まず、Flashによる無料ゲームでユーザーを捕まえる。Flashゲームは起動時間が短く、制作が楽。キャリアの審査を通さなくてもプレイできる(auのBREWでは、KDDIの審査が通っていないものは端末上で動作させられない、といった制約がある)。「まず手軽に、面白いものに触れていただく」というのが、ゲームの果たす役割だという。

 そしてゲームをプレイし終わると、ランキングが表示される。自分が全体の何位かがわかるだけでなく、他のプレーヤーのランキングがアバター付きで表示される。これによって、他の人が遊んでるのがわかり、にぎわっているのがわかるという。

 またこのランキングには、アバターに各ユーザーへのリンクが用意されている。リンク先にはユーザーページがあり、伝言板で簡単にメッセージを送れる。ハイスコアのユーザーに、「どうやったらそんな高得点が取れるんですか?」といったメッセージを簡単に送れる仕組みだ。畑村氏は「共通の話題を見ず知らずの人とできる。内気な人でもコミュニケーションしやすい」と説明。ゲームを入り口とし、他のユーザーとのコミュニケーションを取るきっかけ作りに使う。

 自分がメッセージを送信すれば、他のユーザーからのメッセージも当然飛び込んでくる。そこに用意されているのが、SNSだ。遊んだゲームの話題なり、日記なりを、SNSに書き込む。一般的なSNSにあるようなサークル機能も用意されており、同じ趣味の人を探すことで、コミュニケーションの輪が広がる。またSNSには、前述のアバター機能も含まれている。ゲームのランキングなどで他のユーザーのアバターを見る機会が多いため、そこに熱を上げるユーザーも自然と増える。こうして、SNSによってユーザーを定着させていく。

 畑村氏は、「立ち上げ当時から無料ゲームサイトあったが、定着しそうになかった。やはりコミュニティが必要。SNSに集約されるのではないか」という。表向きにはゲームをプッシュしているが、実体はSNSへの入り口として機能している、というわけだ。もちろん、ゲームが無料でなおかつ良質であれば、それ自体が評判となり、口コミでユーザーが増える。こうして「モバゲータウン」では、ユーザーを増やす循環モデルを作り上げている。

ゲームをサイトへの誘導材料とし、それを話題としてコミュニティへと引き込み、定住化させる。ゲームだけでも、SNSだけでもできない、見事な連携が果たされている



■ 「モバゲータウン」の実体は、若年層に強い広告メディア

 集めたユーザーを定着させても、これまでのところはユーザーから1円もお金を取る形になっていない。収益を上げる仕組みには、まず「モバゴールド」と呼ばれる仮想通貨の存在がある。

 「モバゴールド」は、アバターパーツの入手や、レアなアバターがもらえる「モバガチャ」の利用、また「マスターオブファンタジア」のアイテム購入などの際に使用するもの。ユーザーが「モバゴールド」を手に入れるには、「モバゲータウン」に友人を紹介した報酬として受け取るほかに、スポンサーサイトへの登録、バナー広告のクリック、「モバコレ」などのショッピングサイトでの商品購入(ショッピングポイントのようなもの)などでも入手できる。

 ユーザーは「モバゲータウン」の中で「モバゴールド」を受け取り、利用する。「モバゴールド」自体は「モバゲータウン」の中で閉じたもので、ただその中で流通するだけのもの。そこに発生するのは、新たな「モバゲータウン」の会員と、広告スポンサーからディー・エヌ・エーへの広告料、という仕組みだ。現在は広告のほかに、一部でアバターの販売も行なわれているので、その収入も加わる。結果、売り上げは四半期ごとに倍増しており、2006年第4四半期には15.6億円に達しているという。

 広告メディアとして「モバゲータウン」を見るには、実際のデータを参照するとわかりやすい。会員数は7月時点で644万人で、うち月間ユニークユーザー(1カ月に1度以上利用したユーザー)は約7割の463万人。現在も毎月30〜47万人のペースでユーザーが増加しているという。

 ユーザー属性を見ると、当初は学校での口コミを中心に広がりを見せたため、10代後半のユーザー比率が高かった。しかし現在は2月に始めたテレビコマーシャルなどの展開で大きくユーザー数を伸ばすとともに、20代以上のユーザーも約半数を占めているという。余談になるが、畑村氏はこのデータから、「テレビと携帯電話の相性は意外といい。テレビを見ながら携帯をやっているのでは」と話している。

 具体的な広告展開として、コカ・コーラとのタイアップ広告事例が示された。2007年5月から500万人のユーザーに告知、コカ・コーラと共同のキャンペーンサイトを立ち上げた。ここにはゲームやデコメ、アバターコンテンツなどを設置。中でも、コカ・コーラをイメージしたゲームでは、ハイスコアを取るとレアなアイテムがもらえるということで、多くのユーザーが熱中してプレイし、効果的なプロモーション効果が得られたという。

 ここでもう1つ面白い仕掛けとして、キャンペーンキャラクタ「コークスキー」の展開がある。「コークスキー」はもちろん仮想のキャラクタなのだが、1人のユーザーとしてふるまい、「モバゲータウン」に日記を書くなどのプロモーションを行なった。「コークスキー」には約30万人が友達登録しており、「コークスキー」が日記を書くと、30万人に告知されるという仕組みができあがった。SNSを活用した、画期的なプロモーションといえるだろう。

 また、大人向けの商品「コカ・コーラ ゼロ」でも、同様のキャンペーンを実施。こちらもゲームをプレイするとレアなアバターがプレゼントされたが、難易度を高めに設定したことでより盛り上がりを見せたという。しかもプレイするごとに、頭にコーラのボトルを乗せて刀を構えるという、CMイメージのムービーを再生。こちらは18日間で約50万人がプレイしたという。

 若年層のユーザーに強く、463万というアクティブユーザーに発信できるメディアというのは、確かに他に類を見ない規模のものといえる。広告収入モデルも複数持っており、ユーザーの見えないところでうまく収益を上げる仕組みが整えられている。

「モバゲータウン」のユーザー数の伸びと利用動向。この規模で若年層に情報発信できるメディアというのは極めて稀な存在といえる
コカ・コーラとのタイアップ広告事例。ここでもゲームとその他のコンテンツを絡めた展開で成功している。両方のサイトの会員になると利用できるコンテンツも用意して、新たな集客も狙っている



■ コンテンツビジネスも強化。ポータルサイトを目指す

 無料ゲームとSNSでユーザーを確保し、広告事業で一定の成功を収めた「モバゲータウン」は、さらにサービスの分野を広げていく。今後は検索サービスを始め、多数の分野に根を広げる、「Yahoo!」のようなポータルサイトを目指したいという。

 新規事業は既にいくつか着手されている。ユーザー作成のコンテンツを発表できる場「ユーザー投稿サービス」があり、その発展形として、出版社と共同で行なっている「モバゲー小説大賞」、エイベックスと共同展開している「モバゲーミュージックオーディション」を行なっている。

 ゲームにおいては、よりリッチな商品も展開したいという。ゲームやアバターなどの人気コンテンツを家庭用ゲームに移植するほか、カードゲームやキャラクタグッズなど、デジタルコンテンツ以外に展開することも考えているという。

 こういったコンテンツビジネスにおいては、まだ世に出ていない10代後半のクリエイター予備軍にリーチできることや、「モバゲータウン」で流行したコンテンツのみ商品化できるためリスクを軽減できることを挙げた。また600万超という会員がいることを考えれば、流行の発信源となることも可能だと考えているという。

 「モバゲータウン」はその名前からゲームが中心にあるように見えるが、実は柱はSNSによるコミュニティにあり、そこから収益や新たなコンテンツを生む新たな仕掛けを模索している。携帯ゲームのコンテンツプロバイダとしてだけでなく、インターネット時代、モバイル時代の新世代広告メディアとして、意外な方向から業界を大きく変化させていくことになるのかもしれない。

新規事業において、コンテンツ事業に強い自信を見せる「モバゲータウン」。流行を追うのではなく、発信するという発想も、600万超の会員という下地があってこそのものだ


□CESAのホームページ
http://www.cesa.or.jp/
□「CEDEC 2007」のページ
http://cedec.cesa.or.jp/
□ディー・エヌ・エーのホームページ
http://www.dena.jp/
□「モバゲータウン」のページ
http://www.mbga.jp/

(2007年9月29日)

[Reported by 石田賀津男]



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