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【CEDEC 2007現地レポート】

セガ小口氏が基調講演、「『あそびをつくる』……その本質とは」
「欲求」から考える面白いゲームの作り方

9月26~28日 開催

会場:東京大学

セガ代表取締役副社長の小口久雄氏
 社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)主催によるゲーム開発者カンファレンス「CEDEC 2007」が、9月26日から28日までの3日間、東京大学にて開催されている。

 このカンファレンスのトップバッターとして26日朝、セガ代表取締役副社長の小口久雄氏が基調講演を行なった。小口氏はセガから分社したヒットメーカーの社長を務め、その後ヒットメーカーがセガに統合されると同時にセガの代表取締役社長に就任。長く経営に携わっていただけに、今回はビジネスよりの話になるのかと思いきや、面白いゲームを作るコツを語るという、開発者に真正面から語りかける内容となった。



■ 衣食住に「遊」を足す

 小口氏はまず、「遊ぶ」という言葉の意味を考えるところから話を始めた。人間が生きていくために必要なものとして、まず思い浮かぶのは、衣食住であるが、小口氏はこれを「衣遊食住」にしたいと述べた。遊びというものの重要性については、刑務所を例に説明。「ここでは衣食住は与えられるが、楽しさを奪われる。楽しさを奪われるというのは、相当な刑罰だ」と語った。

フロイトの「快感原則」について。ゲームが快感・苦痛になるのもこの原則に当てはまる
 続いてはフロイトの「快感原則」を例に挙げた。これは「人間(動物)は常に快感を得るため、また不快感を避けるために行動する」というもの。人間がこれにしたがって行動するということは、すなわち欲求を満たすことで、その行動が「遊び」として現われるものだとした。

 ここで小口氏は、「遊ぶ」という言葉を辞書で調べた内容を見せた。この中で、「勉強せずに楽しむ」というものと、「離れた土地に行って勉学する」が並んで書かれていることを示した。また「play」という英語を調べた内容も見せ、こちらはあらゆる楽しいことが書いてあることを示した。この例から、「遊びの本質には快感があり、その意味が何であるかは定義できない。楽しければ何をやっても遊びであり、楽しいと思うことこそが遊びである」と述べた。

 ただ、この「楽しさ」というものは実に流動的なものだという。たとえば、空腹時の食べ物は幸せであり楽しさなのだが、満腹になってなお食べ物を出されるのは、逆に苦痛となる。またゲームを例にして、「パックマン」が面白いのは、だんだん動きが早くなるという変化があるためだとし、「変化がないことは苦痛になる。人間には1つの楽しさに慣れる、飽きるという本質がある」と説明した。なお「パックマン」については、「操作が追いつかなくなるほど動きが早くなると、これもまた苦痛になる」とも述べた。

 このほか、日本の自殺率が先進国では群を抜いて高いことを例に上げ、「日本ではなぜ『衣食住』に『遊』が入らないのか。自殺率が高いのは、快感に触れるチャンスがないと感じているから。楽しいことに触れれば絶望しない」と、遊びの重要性を説いた。続けて、「安倍前総理が『美しい国』を掲げていたが、私は日本を『楽しい国』にしたほうがいいと思う」と語った。



■ 「欲求」の整理・分析から面白いゲームを考える

 「遊ぶ」ことの重要性を一通り説明した後、今度は「楽しいビデオゲームはどう創るか」をテーマに話題が展開された。ここでのキーワードは「欲求」。「楽しいゲームは欲求が満たされるもの。作業になるゲームはクソゲーといわれる」と語った。

 「欲求」について小口氏は、「生理的・本能的な欲求」、「主に身体内部の情報に基づいた欲求」、「主に体の外部からの情報に基づいた欲求」、「心理・社会的な欲求」の4つに分類。このうち、生命維持や子孫を残すために必要な「生理的・本能的な欲求」と、呼吸や食欲といった「主に身体内部の情報に基づいた欲求」はゲームでは満たせないので省きつつ、残り2つをゲームに取り込むことが重要であると語った。

人間ならではの「心理・社会的な欲求」を分析し、ゲームに絡める重要性を説いた
 「主に体の外部からの情報に基づいた欲求」とは、「逃避」と「闘争」という欲求のこと。敵と戦ったり、逃げたりというのは、ビデオゲームの基本といってもいいほどおなじみのもので、イメージしやすい。これ以外の欲求となる「心理・社会的な欲求」は、4つの欲求の中で最も高次元なものとされており、「獲得」、「顕示」、「優越」、「求知」など多数ある。人間社会の中で生まれた、人間ならではの欲求である。

 実際のゲームの例としては「ポケットモンスター」を挙げ、モンスターを捕まえる「獲得」と戦いにある「逃避」と「闘争」を核に、モンスターの「保存」や「秩序」、「保持」、「構成」といったさまざまな欲求がバランスよく含まれ、さまざまな快感に結びついているとした。

 しかし小口氏は「逃避」と「闘争」について、「本能だから面白い、安全パイ。だがこれらがなくてもゲームはできる」とも述べた。例えば「どうぶつの森」は「親和」や「獲得」、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は「求知」や「解明」、「倉庫版」は「秩序」といった欲求を満たすことで、「逃避」や「闘争」なしで楽しさを生み出しているとした。

 これらのことから導き出されるゲームの企画を考えるときのコツとして、「『闘争』や『逃避』を外して考えれば、ユニークなゲームができる。どんな欲求を満たすか決め打ちしてもいい。あるいは企画を考えた後で、それがどんな欲求を満たすゲームなのかを整理するといいのではないか」と語った。



■ ゲーム創りは世の中の役に立つ仕事

遊びの重要性をエネルギッシュに語った小口氏。「楽しい国」という言葉に氏の方向性がはっきりと見える
 講演のまとめとして、改めて「人に遊びは必要」と強調した小口氏。それと同時に、「楽しさの中には、反社会的行為もある。ゲームは仮想現実体験だが、現実と区別されずに記憶されてしまうこともある。我々が遊びを作るうえでは、配慮したほうがいいのではないか」と注意も促した。ただこの点については、「全てダメ、ゲーム脳だなんていうのはいけない」と付け加えている。

 小口氏は最後に来場した開発者に向け、「我々がやっている仕事は、世の中の役に立って、平和な世界を作るもの。私自身、それを願って二十数年仕事を続けているし、皆さんも同じだと思っている。この業界がますます発展して、遊びを作る皆さん自身も楽しい人生を送れることを願っている」とメッセージを送り、講演を締めくくった。

□CESAのホームページ
http://www.cesa.or.jp/
□「CEDEC 2007」のページ
http://cedec.cesa.or.jp/
□セガのホームページ
http://sega.jp/

(2007年9月26日)

[Reported by 石田賀津男]



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