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会場:幕張メッセ ビジネスデイに行なわれた記者発表会では、Cykan Entertainmentの日本子会社であるコムシードのゲーム子会社Cykan Gamesのそのまた子会社Cykan Games Koreaの設立が発表されるのみに留まり、新作タイトルの発表はおろか、既存タイトルのサービススケジュールの発表も見送られていた。 ゲームタイトルが出る前からどんどん複雑化するビジネススキームの行方も気がかりだが、設立から1年以上が経過して、いまだ日本での展開戦略が見えないというのも珍しいケースだ。Cykanグループは何を考え、日本で何をしようとしているのか。今回はグループオーナーであり、Cykan Entertainmentの会長を務める金正津氏に話を伺ってみた。
■ 日本と韓国で同時展開を狙うCykanグループの日韓展開戦略
金氏: 昨年に引き続き今年もゲームショーに参加できました。昔から日本でのビジネスを目指してきました。弊社のブースにたくさんのユーザーの方がお越しいただいて感謝しています。これからは日本のユーザーに合ったゲームを作りたいです。 編: 昨年の出展以来1年間の活動内容を教えてください。 金氏: 昨年出展したゲームを今年も出展しているものもあるのですが、今年は大作の「ペーパーマン」をブラッシュアップさせるために期間でした。 編: 昨年と比較して新作の出展がありませんでしたが。 金氏: 新作もあったのですが、残念ながらぎりぎり間に合いませんでしたね。 編: この1年間の対外的な動きではCykan GamesとCykan Games Koreaの設立ですが、これは何を意味しているのでしょうか? 金氏: Cykan Gamesの役割は、韓国の良いゲームを探し出し、日本でサービスをすることです。日本を始め全世界でサービスをするためにCykan GamesとCykan Games Koreaが協力して展開を行なっていきます。そのために500億ウォン(約65億円)のファンドを設立しました。この資金で良いゲーム会社のM&Aやコンテンツの買収に充てていきたいと思います。これを韓国と日本の共同で行なっていきます。また、今後Cykan Gamesに関して現在まではパブリッシャだけですが、デベロッパーとしての役割を持たせていきたいです。 編: ファンドの対象エリアを教えてください。開発はCykan本体が開発能力を持つのか、M&Aした子会社が持つのかがわからなかったです。 金氏: 日韓企業に限定して行なう予定です。ただしM&Aに関してはグローバルに行なっていきます。開発について申し上げますと、日本のCykan Gamesでさまざまなプラットフォームについていけるような開発を行なっていきたいです。オンラインでもコンソール、モバイルなどのプラットフォームへ向けた開発を行なっていきます。場合によっては日韓共同で開発プロジェクトを立ち上げたり、M&Aで協力体制を作っていくことも考えています。特に日韓共同開発については、来年度上半期はじめを目標に準備を整えています。 編: 日韓共同で開発されるゲームは、どういった内容のものを想定していますか? 金氏: ここ数年、韓国のオンラインゲームが日本に盛んに輸出されるようになって、日本のユーザーさんも韓国のコンテンツに対して高い理解度を持っています。韓国の強みであるコミュニティに軸足を置いて、日本と韓国のユーザーで活発にコミュニケーションが行なえるようなMMORPGを企画しています。ファンタジーで明るいコミュニティを目指しています。 編: それは日韓のユーザーが同一のサーバーに繋いで遊ぶオンラインゲームということですか? 金氏: そうです。 編: それはたとえば、言葉の問題はどのように克服するのでしょうか。 金氏: 基本的な方向性としてはそういうことを考えています。詳細が決まったらまたお話いたします。 編: ビジネスのスキームについてですが、サイカングループは韓国に本社としてCykan Entertainmentあって、日本にコムシード、その子会社としてCykan Games、そして今回韓国にCykan Gamesの子会社としてCykan Games Koreaがの設立が発表されました。なぜこうした複雑な事業形態になっているのか、その理由を教えてください。 金氏: Cykan Entertainmentは開発会社として1年半ほど活動していました。そこで日本のコムシードを買収して日本でのビジネスを展開していきました。最初の意図としてはコムシードは元々パチンコを作っている会社として、我々の作っているオンラインゲームと融合させてうまくシナジーを出したいと考えていました。しかし、それだけでなく、オンラインゲームに詳しい若いスタッフを集めて、スピーディーに開発ができるように会社を設立しました。それがCykan Gamesです オンラインゲーム会社はスピーディーな判断力と、遂行能力と決定力が必要です。コムシードという会社は上場企業として何かを決めるにも役員会を開かなければならないなど進行に手間がかかっていました。そのためCykan Gamesを立ち上げてそこで若いスタッフが集まって開発を進行させると。韓国ではCykan Games Koreaを作って両社で効率よく開発を行なっていくという判断のもと設立しました。日本での展開はCykan Gamesが行なっていくことになります。
■ 日本の展開戦略は“コミュニティ”。「ラグナロクオンライン」の成功戦略を踏襲
金氏: Cykan Gamesは後発として既存のマーケットに切り込むために難しい取り組みになると思います。しかし内部的に戦略を立てている最中です。現在のラインナップをごらんいただくとわかりますが、カジュアル重視になっています。しかし、今後Cykan Gamesでは強力なコミュニティ要素を持ったタイトルでアピールしていきます。 編: コミュニティを作る仕組みを教えていただけますか。 金氏: 日本ではジャンルやタイトル別にコミュニティが存在しています。それぞれサークルや同好会のような形で存在していますが、それらの連携をサポートします。そこにいるユーザーをゲームを楽しむ一員としてサポートして、パートナーとしてビジネスをしていきます。もちろんコアユーザーからの意見も受け止めて進めていきます。開発メーカーとユーザーとともに何かを作っていきます。 編: 「ラグナロクオンライン(以下、RO)」のときのような同人コミュニティを意識し、基本的なアプローチとしては同人コミュニティに協賛したりサポートしたりという活動を繰り返していくわけですね。 金氏: そうです。 編: コミュニティサービスというと、日本ではゲームポータルを立ち上げたり、コミュニティポータルサイトやブログサイト等と連携するというアプローチが一般的ですが、Cykanでは同人のコミュニティから広げていくわけですね。 金氏: ゲームポータルサイトよりは小さくても大きくても同人コミュニティを下から支えていきながら、その中心となるメインチャンネルは私なりに考えています。大きなコミュニティを大々的に展開していくわけではなくて、ゲームを好きな小さなコミュニティを支えていきます。 編: 一口に同人コミュニティといっても色々な形がありますが、どういったコミュニティにフォーカスを当てるつもりなのですか? 「RO」では「RO」のファンコミュニティという明確なターゲットが存在していましたが、Cykanにはサービスインしているゲームがないですから、Cykanタイトルの同人コミュニティは存在していないわけです。 金氏: Cykan Gamesではゲームを展開していないので、当然その同好会も存在していません。先ほどの「RO」の事業を展開していたこと関しましては「RO」のユーザーには感謝しています。私として何か意図があるわけではなく、日本のユーザーに純粋に恩返しがしたいと思っています。どういうものになるかはわかりませんが、今後ともそうしたコミュニティユーザーをサポートしていきたいです。日本には有名なシューティングゲームのコミュニティがあり、1,000個以上の同人コミュニティがあると聞いています。1つ1つの規模は大きくないと思うのですが、そうしたコミュニティを縦断的にサポートしていきたいです。 今年度末か来年にかけて開発をスタートされる新作タイトルに関して、コミュニティを枠にするタイトルにしていきたいと考えています。先ほど申し上げた小さな同人コミュニティを吸収できるようなイメージをつくっていきたいです。今後「ペーパーマン」以外にもコミュニティを軸にすえたタイトルを作っていきます。 編: 「RO」での成功戦略をCykanでも踏襲していこうという理解でいいですか? 金氏: そのとおりです。
■ 最初の大型タイトル「ペーパーマン」の展開構想。βテストは年末スタート
金氏: 11月から12月までにクローズドβを実施したいという目標は持っています。来年度上半期から中盤にかけてオープンベータの実施につなげていきたいです。商用化は来年度中盤を予定しています。 編: スピーディーな展開と仰った割には、かなりゆっくりとしたサービススケジュールですね。 金氏: 「ペーパーマン」は、韓国ですでに正式サービスを開始していますので、日本のクローズドβテストもやろうと思えば今すぐにできるくらいのバージョンに仕上がっています。日本マーケットにサービスするにあたり、クオリティ面、ローカライズ面の向上に時間を割いています。日本のユーザーに合うキャラクタや企画、ゲームシステムにもある程度手を加えるつもりです。そうした作業に2、3カ月間の時間を見込んでいます。 コムシードが100%出資した子会社で行なっていることもあり、クオリティを高めることにはかなり気を使っています。メインビジネスの皮切りとして捉えていますので慎重に行なっています。日本で必ず成功できる完璧なクオリティを持ったコンテンツを提供するためにある程度時間をかけたいです。 編: Cykanグループは、昨年の東京ゲームショウでは、日本のメーカーであると発表されましたが、実際には韓国で先行して「ペーパーマン」のβテストが実施され、先ほど金さんからも仰られたように正式サービスが始まりました。この理由を教えてください。 金氏: 韓国で先にサービスをした理由は、ゲームのバグなどの諸問題を日本市場の投入前に改善したかったことが挙げられます。まず韓国でサービスして、安定してから日本に投入する考えです。 編: 今後の日本での展開予定を教えてください。 金氏: 主力はオンラインゲームになります。まず、「ペーパーマン」をリリースし、カジュアルゲームを今年度末か来年度初めに2本投入します。それと同時に、コミュニティを意識したMMORPGの開発もスタートさせます。日本でビジネスを成功させたいという思いがあります。課金の形態に関してはゲームジャンルやマーケットの様態によって取るべき方法には種類があるかと思います。一概に申し上げることは難しいです。 編: そうすると、日本展開に際し、「ペーパーマン」が月額課金になることもありえるのでしょうか。 金氏: 場合によってはありえます。しかし個人的な考えでは「ペーパーマン」を月額課金にするのは難しいと思います。来年度開発予定のMMORPGの場合は月額課金を予定しています。 編: 月額とアイテム課金とどちらが望ましい課金形態だと思いますか。または別の課金手段を考えていますか。オンラインゲームの収益モデルについて、新しいポリシーなどあれば教えてください。 金氏: ベストなのは定額制です。メーカーの立場としてはそのように申し上げたいと思います。現在は、アイテム課金が多いですが、メーカーとしては月額の定額制が望ましいと思います。現実的な対応ができるという意味でそう思いますね。 編: 私の個人的な見解ですが、日本オンラインゲーム市場では、国産タイトルの増加に足並みを合わせるように、月額課金への回帰的な動きが見られています。タイトル数としては依然としてアイテム課金のほうが多いですが、売り上げのシェアという点ではすでに月額性のほうが高くなっているように思います。こうした動きをどう見ていますか? 金氏: コミュニティが活性化されるゲームだと定額制が成功しやすいと思いますね。 編: 今後、自社グループだけではなく日本の大手メーカーとの提携を考えているとのことですが、詳しく教えてください。 金氏: 現時点でどこのメーカーさんということを具体的に申し上げることは難しいですが、色々なプラットフォームを確保するためにはいろいろな会社と組んでいきたいです。あくまでも戦略的なビジネスになるので、そうした意味では大手さんと組んでいきたいと思います。 編: Cykan Gamesのビジネスで見えないのが、ポータルと運営をどうするのかの2点ですが、どのように考えていますか。 金氏: 運営に関しては、ゲームのジャンル、運営コストにもよると思います。外部に委託することもありますし、自社で行なうこともありえます。韓国では運営に関しては運営専門の会社があってそこに運営を委託しているところもあります。そうすることで我々が運営のために多く人員を確保しなくても済みます。コアになる部分以外は委託していく方が経営全体から見ても効率的だと思います。 編: ポータルについてはいかがですか。自社でポータルを持つのか、もしくは他社のポータルに提供するのでしょうか。 金氏: 今すぐポータルを作ることは考えていません。他社にチャネリングのサービスをするか戦略的な提携を結ぶかで展開していきたいです。 編: 韓国では今年夏にNHNの「Hangame」に、Gravityが提携し、「ラグナロクオンライン II」等のコンテンツの提供を開始しました。これをどのように見ていますか? 金氏: 良いことだと思いますよ。 編: 金さんがGravityの会長をされていたときには考えられなかったですよね。 金氏: 時代は変わりましたよ。オンラインゲームの時代の流れは早いです。去年のことはもう昔のことなのです。だから2003年や2004年のことは大昔のことなのです。それを考えれば不思議ではありません。インターネットの世界は毎月発展があります。昔はポータルは少なかったのですが、今はポータルがたくさんあります。先月やろうとしたことが今月にはもう古いことだったりします。執着心を捨て次々にスピーディーに時代にフィットしていかなければなりません。韓国では「ペーパーマン」も「Hangame」にチャネルサービスをしているのです。 編: 日本でもNHNと提携を結ぶことはありえると。 金氏: はい。逆に我々はそうした提携をアグレッシブにやっていきたいです。
■ 隠し球は「PRIDE」のオンラインゲーム
金氏: 一言で言いますと難問が山積みです。全般的に難しいといえますが、方法が無いわけではありません。日本市場自体は非常に大きいので、日本市場の方向性をどのように見定めながら、Cykan Gamesのポリシーで考えていきたいと思います。 編: 日本のメーカーと提携して、新規タイトルの開発やコンシューマへの参入といったロードマップが気になるところですが、現在、どの程度計画が練られているのでしょうか? 金氏: 現時点で具体的にどの会社と手を組むといったことは決まっていませんが、たとえば、ラインナップのひとつに横スクロールのシューティングゲームも考えています。これは非常にコンシューマに向いているのではないかと内部で検討されています。また、「ペーパーマン」の方もある程度バージョンをいじればいくらでもコンシューマに対応できるのではないかと考えています。それから、まだ発表されていませんが格闘技の「PRIDE」を素材にしたゲームの開発も考えています。 編: 「PRIDE」のゲーム化ですか。初耳ですが、やはり対戦型の格闘技ゲームになるのでしょうか? 金氏: まだ、リング場にCykanのイメージキャラクタのヒョードル選手が出てきて、戦って相手選手を倒すというデモが完成した程度で、開発を始めたばかりなので具体的なイメージはまだまだお話できません。ゲームタイトルも決まっていません。これから詰めていきます。 編: 「PRIDE」の公式ライセンスを得た作品として開発されるのでしょうか。 金氏: 「PRIDE」主催者と親しいので、現在、肖像権の問題など詰めているところです。 編: 選手は何人くらい出てくるのでしょうか。 金氏: 格闘技は選手の出入りが激しいので、どこの所属の選手が何人出るといった話はできないです。今できているのは2人の選手がリング上で戦うという基本的なところまでです。 編: 日本は格闘技ファンが多いですから、本格的な格闘ゲームがPC向けにリリースできれば、日本市場で大きな起爆剤になりそうですよね。 金氏: K-1の場合はゲームとして作るのは簡単かもしれません。離れて戦って、倒れたらおしまいです。しかし、「PRIDE」の場合は相手を苦しめてダメージを与える部分をどのようにゲームで表現するかなど難しいところがあります。 編: 発売時期はいつ頃を見込んでいますか。 金氏: オフィシャルに申し上げるのは難しいですね。登場する選手やゲームとしての作りこみが難しいのでそれなりに時間はかかると思います。いつ発売できるのか見込みが立っていないので、まだ「PRIDE」のことは言わないようにしているのですが、ついつい言ってしまうのです(笑)。 「PRIDE」の試合が無かったり、他の団体と合併するかもしれない。そうした不安もあります。また、収益モデルをどうするかという問題もあります。月額課金がありえないとすると、アイテム課金しかありませんが、格闘技のアイテムはタトゥーやグローブやパンツとぐらいしかありません。ゲームとしては面白いのだけどメーカーの立場としてどのように収益を得るかという検討も必要なので非常に難しいです。 編: なんとか形にしていただけることを期待しています。 金氏: ありがとうございます。期待に応えられるようにがんばります。 編: 最後に日本のユーザーに向けて一言お願いします。 金氏: 「RO」を皮切りに日本のユーザーとご縁ができて、そのおかげでビジネスも非常に成功しました。これは本当に日本のユーザーのおかげです。その日本のユーザーのために恩返しができるように努力をしていきたいです。 また日本では、ビジネス的な部分に限るのではなく、私1人の人間として日本のユーザーの皆様とゲームを楽しみたいと思います。日本のユーザーと業界の皆様にはご指導をお願いいたします。私は非常に長い期間ゲーム業界にいますが、日本のユーザーとご縁ができ、今後Cykanを通じてお付き合いしていくことになりますが、日本のユーザーの皆様とともにゲームを楽しみ、皆さんの活動を盛り上げていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。 編: ありがとうございました。
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□サイカンゲームズホームページ (2007年9月24日) [Reported by 中村聖司]
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