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会場:グランドプリンスホテル赤坂
■ “XNA”をキーワードに開発対象者を一般ユーザーまで押し広げるマイクロソフト
今回のGamefest Japan 2007では、Xbox 360とGames for Windowsという2つのゲームプラットフォームと、そしてそれらを繋ぐ包括的なオンラインサービスGames for Windows - LIVE、2006年末にリリースされた統合型のゲーム開発環境XNA Game Studio Expressがメインテーマとなった。 中でもホットな話題としては、XNA Game Studio Expressの次期バージョンXNA Game Studio 2.0や、「Halo 2」、「Shadowrun」でようやくスタートしたGames for Windowsと、そのLIVEサービスGames for Windows - LIVEの次期構想などが挙げられるが、そのほかにもDirect3D 10グラフィックスの実装テクニックやプログラマ向けのパフォーマンスアップのノウハウ、サウンド、デバッグ、サブミッション時の注意事項に至るまで、マイクロソフトのゲームプラットフォームのありとあらゆる情報が提供されている。
プラットフォーマーが自社の技術情報を一般公開するというのはあまり例がないが、昼食等のホスピタリティも含めてすべて無料で公開するというところに同社の圧倒的な底力と、長い先を見据えた戦略を伺わせてくれる。現時点で言えば、Xbox 360とPCを含めても日本では劣勢の地位にある同社だが、10年先、20年先はどうなるかわからない。ゲームユーザーではなく、まず開発者から育てていくという戦略が、今後どのように実を結ぶのかじっくり見守っていきたいところだ。
■ XNA Game Studio Expressとユーザーが巻き起こすエコシステム
XNAとは、エンドユーザーには聞き慣れない言葉だが、マイクロソフトがOSの提供を軸に展開しているあらゆるプラットフォームにおけるゲームテクノロジーの総称を意味している。これまではWindows、Xbox、モバイル、携帯電話などプラットフォームごとに、DirectX、XDK、Visual Studio、.NET Frameworkなど、複数のプロダクトで同時多発的にゲーム開発者向けの情報を公開してきたが、今後はXNAとしてブランド的、ツール的に統合化し、XNAという統合ブランドを通して、マイクロソフトのあらゆるプラットフォームのゲーム関連情報を参照できるようにしていく。 その戦略の中核を握るコンテンツがXNA Game Studio Expressであり、今回初めてその次期バージョンであるXNA Game Studio 2.0が田代氏により正式アナウンスされた。XNA Game Studio 2.0では、アプリケーション本体のみならず、あらゆるドキュメントを日本語化したフルローカライズでの公開が予定されている。公開時期は2007年末頃の見込み。 その詳細については、翌9月7日に複数のXNA関連のセッションが予定されているため、田代氏の口から多くは語られなかったが、2.0の大きなポイントとしては、開発言語としてVisual C# 2005に加えて、Visual Studio 2005にフル対応することと、新しいネットワークAPIの実装によりXbox LIVE!サービスを利用したオンラインゲームの開発が可能になることが挙げられる。先に触れたドキュメントのフルローカライズも日本人開発者にとっては大きな魅力であり、2.0の公開により、ようやく現在Xbox LIVE Arcadeで配信されているレベルのオンライン対応タイトルの開発が可能になるわけである。
田代氏は、結びとして、XNA Game Studio Expressの普及により、エンドユーザー発の新たなムーブメントの発生がゲームビジネスに大きな変化をもたらすという一種のエコシステムの到来に期待を寄せた。XNA Game Studio Expressは、日本でXbox 360の普及台数が伸び悩んでいることもあって、十分な成果を上げ得たとは言い難いが、2.0ではどうなるのか。Xbox LIVEを巻き込んだ展開に期待したいところだ。
■ Games for Windows - LIVEがWindows XPに対応、2008年にはダッシュボードも実装
今回、Games for WindowsとGames for Windows - LIVE関連のセッションを中心に聴講したが、ひとつ気づかされたのは、日本では開発者レベルでまだまだ認知が足りず、認知促進のレベルからスタートしなければならないというところだ。 Games for Windowsは、世界最大シェアのPC向けOSであるWindowsを擁するマイクロソフトがWindows PCを一個のゲームプラットフォームとして推進しているゲームブランド。これが誕生した背景には、欧米独特の商習慣が深く関わっている。欧米では、ゲームショップでプレイステーション 2、3やXbox 360、Wiiといったゲームプラットフォームと並んでPCゲームが普通に販売されている。 ところがPCゲームは、統一したプラットフォームではないため、売り場で非常に弱い立場にあり、端の方に置かれ気味なのが現状となっている。この立ち位置を、一個のプラットフォームとしてマイクロソフトが責任を持ってプロモーションを実施することで、他のプラットフォームと同等まで引き上げようというのがGames for Windowsの最大の狙いである。実際、先行する欧米では10%相当の売り上げ増があったという。 ところが、日本ではもともとゲームショップにPCゲームが置かれていないため、Games for Windowsの基本戦略が根っこから意味をなさない。当然、認知も進まないという悪循環をどう脱却するのか、また元々小さな市場であるPCゲーム市場の復活はありえるのか。6日午後に実施されたセッション「Games for Windowsの日本における展開」は、そういう意味で注目されたセッションだった。 そこで明かされた日本展開戦略は、基本的に北米の展開と同一で、6,500万(2007年末の見込み)というWindows Vistaユーザー、1,000万(2007年末の見込み)のDirectX 10対応PCという見込みデータを引き合いに出し、Windows Vista+Games for Windowsという同社的に王道かつ力押しの戦略で展開していくという内容だった。 マーケティングプランとしては、「ロストプラネット」クラスのタイトルのショウケースとしての積極的な技術サポート、Games for Windows専用のパッケージデザインの採用、Games for Windowsの日本語公式サイトの公開、パートナーとの連携などが紹介され、北米ですでにスタートしているショップ向けのGames for Windowsコーナーの展開については「日本と欧米では売り場が違うので別の対応になる」と留保を付けた。 最後に今後、年末に向けて自社とサードパーティーから大物タイトルが続々リリースされることがアナウンスされた。タイトルおよびスケジュールについては、一般公開のカンファレンスのため明らかにされなかったが、やはり頼みの綱はビッグタイトルの投入ということになるようだ。 また、「プロデューサーのためのGames for Windows - LIVE」では、Games for Windows向けの包括的なオンラインサービスGames for Windows - LIVEの最新情報および、リリースロードマップが公開された。 このセッションでは、なんといってもGames for Windows - LIVEの対応OSにWindows XPが名を連ねたことが大きなトピックだ。Games for Windows - LIVEは、発表当初はWindows Vista向けのサービスとしていたが、未対応タイトルの存在やわずかなパフォーマンスの低下を嫌ってWindows XPに留まっているゲームユーザーがいることから、Windows XPもオプションのひとつとして加えたようだ。 ただし、Games for Windowsの要求項目に、ゲームエクスプローラやペアレンタルコントロール、CEROレーティングの取得など、Windows Vistaのみでサポートされる機能が複数含まれていることからWindows Vistaへの対応は必須となっている。 今後のリリースロードマップとしては、今月9月に、DirectX 10およびWindows XPのサポートが実施され、11月にはLIVE Arcadeタイトルのサポートが行なわれる。これはXbox LIVE Arcadeと同等のサービスとなるかは不明だが、MSN GamesやLIVE Messengerを通じて提供されているカジュアルゲームのGames for Windows - LIVEへの部分的な統合化が図られるものと見られる。
そして2008年には、ダッシュボードやマーケットプレイス、オフラインプレイでの実績獲得機能、現在Xboxダッシュボードで展開されているような広告配信といった機能の実装を予定。最終的には、Xbox 360で提供されているあらゆるXbox Liveサービスを実装し、オンラインサービスの面でXbox 360と完全統合を果たすことを目標としているようだ。実に気宇壮大な計画だが、Xbox Liveの優秀なオンラインサービスがWindows PCでも利用できるようになるのは朗報である。今後の実装に期待したいところだ。
□マイクロソフトのホームページ (2007年9月6日) [Reported by 中村聖司]
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