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★PCゲームレビュー★

こんなゲームを待っていた! ロシア発本格WWIIシム
リアルスケールで展開される大野戦を堪能せよ!!

Theatre of War

  • ジャンル:リアルタイムタクティカルシミュレーション
  • 開発元:1C Company
  • 発売元:Battlefront.com
  • 対応OS:Windows XP
  • 価格:ダウンロード版45ドル / パッケージ版55ドル
  • レーティング:指定なし
  • 発売日:4月19日(発売中)



 「Close Combat」の昔から、PCゲームには第二次世界大戦をモチーフとする数々の戦術級シミュレーションゲームが登場してきた。ターンベースのもの、リアルタイムのもの、歩兵中心のもの、兵器中心のものと内容は様々だが、軍事的なゲームを好むRTSファンには定番のジャンルといっていいだろう。今回紹介する「Theatre of War」は、リアルタイムの戦術級シミュレーションゲームで、リアリズム志向の強い作品だ。緻密に再現された戦車や対戦車砲などの兵器、そして多数の歩兵を一体づつ操り、3Dで表現された戦場の地形を利用して戦闘を進めていく。バランスよく作りこまれたゲーム内容は、同系統の作品の中でも出色の出来映えだ。


■ 近代戦の戦場をフルスケールで再現。リアルな兵器が作り出す本格的戦術シミュレーション

本作は、広大な戦場を舞台にリアルスケールのユニットで展開する、至高のリアルタイム戦術シミュレーションゲームだ
 「Theatre of War」は、第二次世界大戦の陸戦をテーマにした戦術級のリアルタイムストラテジーだ。開発元は名作フライトシム「IL-2 Sturmovik」シリーズの生みの親として有名なロシアのデベロッパー1C Company。本作はフライトシム譲りの広大なフィールド表現が特徴的で、かつ表現力の高い3Dグラフィックスが持ち味だ。その技術を生かしてデフォルメ無しの戦場再現を目指した本作は、戦車や対戦車砲をはじめとするリアルスケールの兵器表現により、非常にユニークなゲームに仕上がっている。

 筆者は4月の発売当初から本作に注目してはいた。しかし当初は入手可能経路が直販によるダウンロード購入のみで、とても一般的にお勧めできる状態ではなく、仕方なく見送っていた事情がある。流通経路が限定されていたため、リリース後も非常にマイナーな扱いで推移した本作だが、期待通り、プレイしたユーザーからの評価は悪くなかった。

 そして8月に入ってからパッケージ版が流通するようになり、入手性が格段に向上した。去る6月には追加ミッションを含む大型パッチがリリースされたこともあり、今回のレビューでは一般店舗で購入したパッケージ版に、最新パッチバージョン1.3.0.56を適用した内容をベースにしている。

 ゲームの基本システムとしては、Creative Assemblyの「Total War」シリーズを近代戦をテーマに再構成してみた、というムードだ。一般的なRTSにある建築や生産の仕組みは全く存在せず、プレーヤーは与えられた戦車・対戦車砲・歩兵・砲撃支援などのコマを操り、リアルタイムに展開する戦場で勝利を目指していく。戦場やユニットは全て現実に即したスケールで表現されており、一般的なRTSにありがちなデフォルメ表現は一切排除されている。戦車の可動部の動きはもちろんのこと、兵士ひとりひとりのライフル銃をリロードする動きまで再現しているという懲りようだ。

兵士ひとりのふるまいから戦場全体がシミュレートされる。これは破壊された戦車から乗員が飛び出し、フィールド上に展開するシーン

・装甲と砲弾の関係を意識した戦車戦

被弾したIV号戦車の追加装甲板の一部が剥がれ落ちている。このようにビジュアル的な再現度も非常に高い
 リアリズムにこだわった本作は、兵器の装甲や大砲の貫徹能力など、スペック的な側面が非常によく作りこまれている。例えば戦車戦では、プレーヤーは各ユニットに砲撃を指示する際に弾の種類を指示することができる。弾種にはその兵器で実際に運用されていたものが登場するが、大別すると「HE(榴弾)」、「AP(徹甲)」、「HEAT(対戦車榴弾)」などになる。これらは、敵の種類や距離に応じて適切に選択することが重要だ。

 例えば、火薬を満載したHE弾は貫徹力が弱く、戦車の装甲を貫くことはできない。せいぜいキャタピラを破壊して足止めできる程度で、何発打ち込んでも敵を無力化できないのだ。したがって装甲を持つ敵に対しては貫徹力の高いAP弾系の弾種を用いることになる。そこで重要になるのが、対象との距離と角度だ。本作では各兵器に一般的なヒットポイント表現によるダメージ制を取っておらず、弾丸の貫通と内部破壊による各パートの損害評価によってダメージモデルが構成されているというリアル系だ。それに対応して砲弾に対しても、弾の初速から飛翔コース、距離による威力の減衰や、装甲の傾斜による避弾経始がシミュレートされている。

 例えばドイツのVI号戦車は前面装甲厚が100mmで地面に対して垂直の装甲板となっている。これを敵の砲撃コースに対し若干斜めに構えた角度で対峙すれば、装甲内を弾頭が進入するコースを最大140mm程度まで上げることができ、88mmクラスの砲弾に対しても防御効果を高めることができる。戦車系のゲームに親しむ方なら常識的に意識することが、本作ではゲーム中で細かい制御を行なうことで報われる内容になっているのだ。

VI号戦車の正面装甲は硬く、クロムウェル戦車では正面から打ち勝つことができない。味方がやられる間に1両を側面に回りこませ、90度の角度で近接射撃を加えた結果なんとか撃破することができた

・索敵から敵の掃討まで、戦場の決着をつけるのは歩兵だ

地の利を生かした敵の対戦車砲は大きな脅威だ。側面から歩兵を接近させて奪取したい
歩兵を先行させて敵への視野を確保するのも重要なプレイ。陣容を把握しなければ対策を立てることもできないからだ
 本作は、兵器のリアルさに加え、歩兵戦闘がしっかりと再現されていることも好印象だ。歩兵は10名程度の小隊が編成の基本単位となり、各兵士の構成は一般的にライフル兵を主として軽機関銃手、狙撃手、小隊指揮官が加わる形だ。プレーヤーは小隊の構成員をダブルクリックすることで小隊全員を選択することも、シングルクリックで各隊員を個別に選択することもできる。敵への攻撃を指示した隊員は、ある程度自分の判断で動き回り、射線を得れば対象に対して最も適切な方法で攻撃を加える。歩兵であればライフルで撃ち、非装甲車両であればグレネードを投げつける、といった按配だ。

 戦車・歩兵ともに共通して、攻撃に際しては射撃姿勢に入るまでの予備動作がスキになるため、自然と防御側有利のバランスになる。そこで重要になるのが、本作のプレイを通じて強く意識することになる「索敵」だ。

 本作では自軍兵士の視野に入っていない敵の姿は見ることができない。敵を見つけるには、距離に関係なく、各兵士が敵を視野に捉える必要があるのだ。このシステムのため、視野の狭い戦車ではなく、歩兵をうまく戦場に配置して敵の位置をいちはやく把握する索敵行動が非常に重要なゲームとなっている。

 歩兵はターゲットとしては非常に小さいため、遮蔽物のある場所で匍匐前進をさせるなどの方法で敵の攻撃をかわしながら敵の側面へ回りこませるような機動ができる。そうして敵の陣容をうまく捉えつつ、戦車部隊を展開して攻撃可能な位置へ配置していく。特に敵の対戦車砲には充分注意をしたい。これを見つけられないまま進んでいけば、大きくて動きの遅い戦車は格好の標的になってしまう。いち早く発見し、歩兵で接近してグレネードを投げ込んで無力化するか、マップによっては利用できる支援砲撃を要請して陣地を潰していくことが必要だ。

 攻撃戦で塹壕にこもる敵歩兵を掃討するのは骨が折れる作業だ。周囲の対戦車陣地を完全に無力化すれば、装甲の厚い戦車で一方的に蹂躙することもできる。しかし、遮蔽物を利用してこもり続ける歩兵はどうしても残ってしまう。これに対しては、こちらも歩兵を繰り出して掃討するほうが確実だ。このように歩兵の活用は戦闘開始から終了まで、非常に重要なファクターとなっているのだ。

突出してキャタピラを破壊されてしまった戦車。身動きが取れないまま一方的にやられてしまう 敵兵などのソフトターゲット集団には、支援砲撃を要請して撃ち減らすことが有効だ 鹵獲した敵の野砲で敵陣地を砲撃。操作しているのは戦車を破壊されたクルー達だ

チュートリアルミッションで戦闘の基本的な操作を試すことができる。基本となるのは歩兵など兵士単位の操作だ

攻撃を指示した戦車は自動的にターゲットを射線に捉えて攻撃を続ける。側面を取らせたり、地形を有効に使うような動きをさせるのはプレーヤーの仕事だ


■ 欧州戦線5陣営のキャンペーンに加え、パッチ適用により追加ミッションもプレイ可能

キャンペーンは大戦に参加した5つの陣営からプレイできるほか、各陣営の追加ミッションが選択できる
ミッション開始時には部隊編成画面となる。ここでは配備ポイントの範囲内で最適と思われるユニットを構成していく
 シングルプレイのメインディッシュはキャンペーンモードだ。ここではゲーム開始時にドイツ、ソ連、アメリカ・イギリス連合、フランス、ポーランドの5カ国からキャンペーンをプレイする陣営を選択することができる。キャンペーンはミッションクリア形式で、陣営によりステージ数は異なるが、5~10ほどのミッションが用意されている。

 筆者は初回のプレイで、ドイツのキャンペーンを選択。難易度は3段階で調整が可能だが、筆者がプレイした中難易度でもかなり難しく感じられた。攻撃ミッションが多いドイツ陣営にしてみれば、敵にスキを見せれば簡単に撃破されてしまうゲーム内容の本作は、索敵と機動という展開をしっかりと組み立てなければ勝利できないというバランスなのだ。さすがにリアル系のゲームだけあって、このあたりの手応えはガツンとしたものがある。

 ドイツ陣営最初のミッションはポーランドの野戦陣地を撃破するというもの。大戦初期の時代背景ということで、登場するドイツ軍の兵器は、II号戦車や38(t)戦車といった非力なものに限られている。とはいえ、対するポーランド軍はさらに非力な豆戦車しか配備されていないため、側面や後背から攻撃を受けさえしなければ、こちらの車両が撃破されることはない。

 ここで注意すべきは敵が各所に配置している対戦車砲だ。これは木々の裏などに配置されており発見が遅れがちで、うかつに近づくとII号戦車の薄い装甲を貫かれて簡単に撃破されてしまう。38(t)戦車ならば多少耐えることもできなくはないが、キャタピラを破壊され動けなくなったら、あとは一方的にやられてしまうしかない。幾人かの歩兵を先行させてしっかりと索敵し、このミッションでは4回の使用が許可されている支援砲撃を要請して、事前に無力化することを心がけよう。

 その間、戦車は安全な位置に待機させることになる。ここでは「Hold Position」の命令をきっちり出しておくことが必要だ。この命令を受けていないユニットは自己の判断で動き回り、ずるずると戦線を押し上げていくというAIのクセのようなものがあるためだ。前方に脅威の無い状況では「Assault」命令だけを出し、細かい動きはAIに任せておくことも有効。対戦車砲を一通り片付けたあとは、この形で塹壕にこもる敵歩兵を蹂躙してしまおう。

ミッション開始時、敵の配置はほとんど見えない 兵士を前進させるごとに、徐々に新たな敵が視野に入ってくる 敵の対戦車砲は先手を打って早めに撃破しておこう

安全が確保されたら戦車部隊を一気に前進させる 敵の装甲兵器はごく貧弱な豆戦車。簡単に排除できるはずだ 敵の装甲兵力が片付いたら、戦車で歩兵を蹂躙して勝利となる

・ミッション間には各兵士の成長も。戦死者を抑えながら賢く戦い抜きたい

ミッション終了後には各兵士の経験値を能力に振り分けることができる。多くの兵士を生き残らせて継続的に成長させよう
 1つのミッションが完了すると、人的資源の管理スクリーンとなる。ここでは、ミッションで各兵士が得た経験値を振り分け、能力の向上や勲章の授与、階級の昇進などを行なう。各兵士の能力は、運転能力を表す「Driver」、砲撃能力を表す「Gunnery」、索敵能力を表す「Scouting」があり、これらには直接、経験値を振り分けて成長させることが可能だ。また、小銃の射撃能力を表す「Marksmanship」は、実戦の中で成長する要素となっており、指揮能力を表す「Leadership」は、階級に応じて成長していく。

 各能力は戦闘中の兵士のふるまいに影響する。例えば「Driver」のスキルが高い兵士は、戦車などを操るときに的確な操縦ができる上、充分な水準にスキルが達すば鹵獲した敵戦車も操縦することができる。また「Gunnery」スキルが高い兵士は、より的確に最も脅威度の高いターゲットを狙うようになるほか、充分な水準に達すれば走行間射撃を行なうことが可能になる(逆に言えば、スキルの低い兵士は止まって射撃するしかない)。このように兵士のスキルは戦闘中のパフォーマンスに大きく影響するため、ミッションを通じていかに戦死させずに成長させていくか、ということがとても大事なのだ。そして、これが本作のキャンペーンを通じて最も楽しい一要素でもある。

 ドイツ陣営は、ポーランド撃破後のミッションでは対仏戦および対ソ戦に突入し、モスクワを目指すキャンペーン内容となる。ドイツは全体的に攻撃側となるシチュエーションが多いため、難易度としてはかなり高めだ。3つ目のミッションでは早速、ソ連の誇るT-34戦車がお目見えする。現実にドイツ軍を脅かした「T-34ショック」をゲーム内でも味わうことになるだろう。

 この時点でドイツ側の主力は、30mm程度の装甲しかもたないIII号戦車およびIV号戦車なので、正面からぶつかれば確実に一方的な損害を受けてしまう。ミッション目標の達成には敵戦力の完全な撃滅が必須なので、援軍として到着する50mm対戦車砲PaK 38 L/60を有効に活用して、敵戦車を撃破しなければ絶対に勝利できないのだ。兵士の成長のためにも余計な戦死者を避け、地形を活用してうまく戦いたいところだ。

ソ連の駅舎を占領するミッション。敵の反抗が手薄で安心していると突然、敵の援軍T-34が登場。こちらの戦車が次々に撃破されていく

こちらには援軍として50mm対戦車砲が到着するので、うまく配置してT-34を撃破しよう。反撃を食らうと厄介なので展開は素早くおこなうべきだ

・欧州戦線を各陣営の視点で楽しめる各キャンペーンに、手応えのあるシングルミッションもあり

米空挺部隊とドイツ陸軍の戦い。敵には装甲車両も登場するのでロケットランチャーの活用がカギだ
 筆者のプレイした範囲では、米英連合のキャンペーンもなかなか面白いものだった。キャンペーンがD-DAY(ノルマンディ上陸作戦)以降の時代設定ということもあって、登場兵器も英軍のクロムウェル戦車やドイツのVI号戦車やV号戦車など重量級のものばかり。キャンペーン最初のミッションでは米軍の空挺部隊を主役とした純粋な歩兵戦となるが、援軍の到着などダイナミックに展開するミッション内容が面白く、かなり楽しめる。

 このキャンペーンでは、全体的に戦車の戦闘能力においてドイツ軍が明らかに上だ。VI号戦車と正面から撃ちあっても全く歯が立たないので、素早く機動して側面や後背から攻撃を与える必要があるなど、戦術的に難しいプレイの連続となる。筆者は第2ミッションで最後の敵戦車を破壊する前にこちらの対戦車砲と戦車が全滅してしまい、対戦車ロケット装備の歩兵を匍匐前進で背後に回りこませてみたが発見され、ミッション失敗となってしまった。戦争末期の連合軍ミッションと言えども、なかなか手ごわい。

 その他のソ連やポーランドのキャンペーンは、攻め込んでくるドイツ軍を防ぐという防御側のプレイとなる。少ない対戦車兵器を大事に使いながら、機甲部隊を中心とするドイツ軍をいかに食い止めるか。こちらも面白いプレイが楽しめることだろう。

空挺部隊のミッションでは最後に敵の大増援がやってくる。防御隊形を敷いてうまく撃退したい

火力に勝るドイツ戦車に対しては、複数の部隊を連動させた戦術が必要だ。正面から戦えば簡単に粉砕されてしまうだろう

ドイツのスペシャルミッションでは大戦後期の戦車が多数登場する一大野戦を楽しめる

ソ連のミッションは、ドイツ軍の猛攻を防げという内容が多い。数少ない手駒を使い効率的に戦車を撃破する必要がある


■ 【要注意!!】パッケージ版はプレイ前にいくつかの準備が必要

パッケージ版は、インストールしてからプレイするまでに、DLLのリネームなど結構な手間がかかる。詳しくは公式サイトのトラブルシューティングページを参照してほしい
 このように戦術級のゲームが好きなプレーヤーならワクワクしてしまう内容の本作だが、一般店舗で入手できるパッケージ版をプレイするにはいくつかの準備が必要だ。この手順を踏まなければ“ゲームが起動すらしない”ため、購入した方々が混乱に陥らないよう、ここで解説しておきたい。

 まず、DVD-ROMから普通にインストールする。次に、公式サイトのダウンロードページから最新のアップデート「Battle for Moscow Add-on and Game Patch」を入手してインストールする。この状態でデスクトップにゲームやマップエディターのアイコンが追加されるが、ダブルクリックしても無反応で全く起動しないので注意したい。

 ここで、ゲームをインストールしたフォルダを開き、そこにある“tow2.dll”というファイルを“elicen40.dll”というファイル名にリネームする。この状態でゲームを起動することでようやくライセンス登録画面まで行けるようになる。ところが、これだけでは筆者の環境を含めて多くの条件でフリーズしてしまう。

 フリーズしてライセンス登録がうまくいかなかったら、ゲームをインストールしたフォルダにある“ToW_Helper.exe”を起動する。これがライセンス登録用の「フリーズしない」プログラムだ。これを使ってオンラインライセンスを登録したら、ようやくプレイ可能になる。また、パッチ適用後にゲーム動作が不安定になる場合は、標準の実行ファイルの代わりに同梱されている“ToW_1.4.exe”を使うと改善されることがあるようだ。

 デフォルトで起動不可能という上記のクリティカルな不具合は、どうやらパッケージバージョンとダウンロードバージョンとでシステム的な内容の差異があり、それがうまくパッチで吸収されていないというのが原因のようだ。このあたりいかにもロシアのデベロッパーだなあ、と言う気がするが、ともかく上記の処方でプレイが可能になるので、パッケージ版を購入した方は参考にしていただきたい。


■ プレイするまでの技術的トラブルと動作の重さは減点要素。しかしゲームとしての出来は光るものがある

ミッションエディタ、およびマップエディタが同梱。将来的にはユーザー作成のアドオンミッション等も期待できそうだ
 戦術級のシミュレーションゲームとして全体的に高い水準にある本作は、こういったジャンルのゲームを嗜好するファンにとっては欠かせない1本になることだろう。これまではオンラインでの直販でしか手に入らない状況が続いていたが、最近になって一般店舗でパッケージ版を購入できるようになったこともあり、じわじわとプレーヤーが広がっていくことが予想される。それだけのポテンシャルは持つタイトルである。ただ手放しで褒めるわけにもいかないクオリティを持ってしまったのも本作の現実だ。ここで、いくつかの点について苦言を呈しておきたい。

 まず、上記でも詳しく触れたように、パッケージ版をインストールしただけでは、ゲームの起動すら不可能なところ。公式サイトのトラブルシューティングページなどをくまなくチェックすることで一通り解決できるのだが、筆者の場合はその解決に至るまで3時間ほどハマってしまった。これではPCゲームに詳しくない一般ユーザーは、ほとんどあきらめてしまうだろう。非常に残念な点である。

 次に、ゲームの動作が比較的、非常に重い部類に入ること。筆者の環境はCPU Core2Duo E6420にGeforce 8800GTXという構成だが、本作のプレイ中に得られるフレームレートは軽いときに60fps程度で、重いときには20fps程度まで落ち込んでしまう。ユニットが多数登場する場面になると一気にパフォーマンスが低下するので、ミドルクラスのPCではかなり辛いプレイになってしまうだろう。この点については初期バージョンに比べて最新パッチバージョンで改善されてきたが、やはりいまだに重いというのが正直な感想だ。

 最後に、AIの挙動と命令系のインターフェイスがうまくかみ合っていないところが見られる点について指摘しておく。本作では各兵士や戦車などの兵器が、地形をうまく利用しつつ敵に攻撃を加えることが勝利のため重要なバランスとなっている。しかし、それを思い通りに実現するには、移動や待機、攻撃の命令を1ユニットづつに対して細かく出し続ける必要があるのだ。

 本作のAIは、「Hold Position」の命令を出さずにいると、各ユニットが敵に対してずるずると接近し、他の敵から発見されることもいとわず、独断専行で攻撃を行なうクセがある。これに任せておくとプレーヤーの意図する美しい作戦は全く実行できないので、プレーヤーが思い描くままの動きをさせたければ、ゲームをポーズしながら移動、方向転換、射撃、姿勢制御など、各ユニットに対してアクションゲームなみの煩雑ともいえる操作が必要になってくる。

 ゲームシステムとしては各兵士に成長要素があり、行動判断の良さ、悪さについてもAIのパラメータで決まることになっているため、これは仕方のないことかもしれない。しかし、もう少し洗練された形で指示を出せるようなインターフェイスが整備されていれば、プレイ感覚がさらに優れたゲームになっていたことだろう。せめて一般的なRTSには標準搭載されるウェインポイントの指定くらいはできて欲しかった。このあたり、傑作「Total War」シリーズを見習って欲しい、と筆者は感じた次第だ。

 以上、本作の問題点にも眼を向けて考えるに、やはり本作は「玄人向け」のゲームである、という印象はぬぐえない。内容としてはリアル系の重厚さを溢れんばかりに持つタイトルであるだけに、多少のとっつきにくさは物ともしないコアなゲームファンに限って、本作を強くオススメしたいところだ。

(C) 1C Company. All rights reserved.


    【Theatre of War】
  • CPU:Pentium 4 2.6GHz以上、またはAMD Athlon 2.0GHz以上
  • HDD:3GB以上
  • メモリ:1GB以上
  • ビデオカード:シェーダ2.0以上対応、ビデオメモリ128MB以上


□1C Companyのページ
http://int.games.1c.ru/
□Battle Front.comのページ
http://www.battlefront.com/
□「Theatre of War」のページ
http://www.battlefront.com/products/tow/index.html

(2007年8月27日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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