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価格:5,040円
「ドラグナーズアリア」は、ファンタジーRPGの王道をいく作品。舞台は人間と精霊が共存する世界。火、水、雷、土、風、氷の“六竜”によって秩序が保たれている。プレーヤーは、その昔に聖竜と共に邪竜との戦いを制した誇り高い竜騎士の末裔として、復活した邪竜を食い止めるべく冒険の世界へと巻き込まれていく。 キャラクタデザインを担当した「ジョン・ジュノ」氏のグラフィックスを大きくフィーチャーし、デザインラフ、イラストが多数収録された画集「ジョン・ジュノ特別限定アートワーク集~JUNO'S DRAGON WORKS~」が予約特典として用意されるなど、力の入った作品となっている。ジュノ氏のグラフィックスはこの世界の構築に大きな役割を果たしていると言えるだろう。
日本ではMMORPG「リネージュII (NCソフト)」のグラフィックスを担当したことで注目を集め、その繊細なグラフィックスのファンも多い。今回は、ジュノ氏が韓国から来日されたことからインタビューをさせてもらえる機会を得たので、今回の経緯や苦労した点などを伺ってみた。 ■ ジュノ氏「コンシューマゲームの制作に携わりたかった」 ――まず、日本一ソフトウェアさんの方に伺いたいのですが、ジョン・ジュノ氏を起用した理由について伺いたいのですが? 新川宗平氏 (日本一ソフトウェア): 以前からジュノさんとはお付き合いがありまして、ジュノさんの絵にすごく興味があったものですから、3年ほど前でしょうか、こちらの方からご連絡して何度かやり取りさせていただいて、「いつか何かやりたいですね」といった話をさせていただいていたんです。今回、ちょうど良い機会だと思い「ドラグナーズアリア」の絵を描いてくださいとお願いいたしました。ちょうどピッタリはまったという感じですね。 すでにゲームの企画は進んでいたのですが、キャラクタデザインをどうしようかという話がずっとある中で、このタイトルであればジュノさんの絵が一番生きるんじゃないかなと言うことでお願いしたところ、引き受けていただいたと。 ――では、ジュノさんにお伺いしますが、はじめてゲームの企画を聞いたときどのように感じられましたか? ジョン・ジュノ氏 (以下、ジュノ氏): 最初はあまり詳しい企画は聞いていなかったんです。キャラクタの性格やスタイル程度でしょうか。制作がヒットメーカーということで、最初は余りよくわからなかったんです。私は新川さんと知り合いで、私の絵のタッチとは違いますが、昔からひとりのユーザーとして日本一ソフトウェアのゲームが好きでプレイしていました。 いつも問題は (仕事をする) 時間でした。私も韓国で会社に勤め仕事がありましたから。今回は「リネージュII」が終了した時で時間的にもゆとりがあり、ちょうどタイミングが良いときで、すぐに引き受けられる状況でした。 韓国ではゲームのプラットフォームと言えばPCですので、個人的に昔からぜひコンソールのゲームの仕事をやりたいと思っていましたから、気兼ねなく引き受けました。 ――コンシューマのゲームの開発に携わりたいと言うことですが、その理由はどういったものなのでしょうか? ジュノ氏: 私は'88年の頃、日本に住んでいたんです。母の仕事の都合で日本で数年住んでいたのですが、その当時の韓国にはなかったキャッチーでコマーシャルなキャラクタを日本で始めて見て衝撃でした。「ドラゴンボール」などですね。そう言ったことも含めて、私は、ファミコン時代からいつかこういう事をやりたいと思うようになっていました。 韓国はプラットフォームはPCですし、ネットワークゲームばかりです。それとは別に、 (コンシューマゲームの制作は) 昔からずっと願いでした。 ――なるほど、そういった背景や記憶もあり、そこにリスペクトして一度はコンシューマゲームの制作に携わってみたいと言うことなんですね。 ジュノ氏: はい、そうです。今ではXbox 360などもありますが、任天堂やソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーションなど、私にとってはトラウマというか (笑) 、ずっとプレイしていますから。セガ、任天堂、ソニーですね (笑)。ただ、私のイメージとしては、日本の企業というよりはワールドワイドのコンテンツメーカーというイメージが強いですが。 ――今回の「ドラグナーズアリア」のプラットフォームは「PSP」ですが、「PSP」というハードについてはどのような感想をお持ちですか? ジュノ氏: 日本は韓国と比べてどのような状況かわからないのですが、「PSPは厳しい」といった話があったときもあると思います。韓国で発売されたときは携帯ゲーム機というよりは、UMDなども着いていて、音楽も映像もゲームも楽しめるモバイル機器といったとらえ方でしたね。私の知る限り、日本では最初から新しい携帯ゲーム機と捉えられていたようですね。ニンテンドーDSと比較するのは意味がないと思います。PSPはまだまだ可能性が残っている機器だと思います。 また、今回のゲームの性格には、PSPがプラットフォームとして合っていると思います。ニンテンドーDSは新しインタラクティブ性やインターフェイスが重要じゃないですか。「ドラグナーズアリア」は昔からあるRPGのスタイルをよりもっと良い作品として作り上げたいと言うことなので、特にニンテンドーDSでリリースする意味合いはないと感じています。 「ドラグナーズアリア」では、PSPのスッキリとした大きなワイドスクリーンの画面が合っていると思います。 ――PSPの画面は大きく美しいということで、そこにジュノさんの美しいグラフィックスをドンと映し出すのは嬉しいことですね。 ジュノ氏: PSPも好きですし、コンソールで出る初めてのソフトですので、ドキドキしますね。完成が楽しみですね。
■ キャラクタを作り上げるまでの苦労の連続 ――キャラクタのデザインを手がけるにあたって、特に気を使ったキャラはいますか?。 ジュノ氏: 最初にデザインすることになったのが主人公のハルト・クラルヴァインというキャラクタなのです。最近、韓国でも美少年というか……女性的なキャラクタが人気があるのですが、今回は極端に女性的なキャラクタグラフィックスなんです。性格は女性的ではなく男性的なのに、形だけはものすごくゴージャスで女性的なんです。 いくつかスケッチしてやり取りする中で、最初は美少年っぽく描いていたのですが、「それよりも、もっともっと線の細い感じで……」と言われ、「これ以上だったら、完全に女じゃん!! 顔とか完全に女の子だったら逆に気持ち悪いのでは?」と思いましたね。性格が女性っぽいのであればギャップはないかもしれませんが、ハルトは男らしいのに、なんで見た目は女性的なんだと。これまでに (そういったデザインは) やったことが無かったですし、制作しているときはちょっと辛かったですね。でも、今になっては苦労しただけに、逆に愛着がありますね (笑)。 ――それでは、特に気に入っているキャラクタは??。 ジュノ氏: 僕のイラストレーターとして他の人より優れている点として、表現方法が広いのではないかと個人的に思っています。明るい感じから実写的な表現まで、幅広い表現が可能な点ですね。で、実は制作を始めた最初の頃はもっと明るい感じだったのですが、いつの間にかシックな感じになっていました。制作の方からも良いよ良いよと言われどんどんシックになっていきました。 一番気になったのは女性キャラクタですね。顔は幼いのに体はグラマラスなギャップが難しかったですね。コミックな表現だったら、らしいですし、もっとシックであれば実写的に描けるのですが、ちょうど中間の曖昧な表現ということで、ヒロインのユーフェや、ウルリカの2人が難しかったです。今も気になりますね、日本のユーザーさんの反応が。
――実際のゲーム画面はもうご覧になられたのですか? ジュノ氏: はい。スクリーンショットを何枚かみました。 ――CGとして起こされているのを見た感想はいかがでしたか? ジュノ氏: これは微妙な話かもしれないのですか、韓国ではプラットフォームがPCですからハイエンドグラフィックスが主流です。そういった意味では、「もうちょっと実写的な表現にならないかなぁ」と感じはしました。でも、プラットフォームがPSPですから、PSPでこれだけ表現できればすごいとも思いました。PS2は大体これぐらいのグラフィックスが再生できるというのを知っていましたから想像が付くのですが、PSPははじめてだったので想像が付かなかったので、他のタイトルと比べてこのくらい表現してもらえればという感じでした。 でも、クリエイターとしては、もっともっとという気持ちはあります。今回は制作現場から離れ、受け身的に言われたとおりのデザインを仕上げたのですが、機会があれば制作スタジオさんとモデリングからテクスチャレベルまで話し合ってつくれたらもっと良いかなと思います。 ――では、次の機会はプレイステーション 3やXbox 360でよりリッチな環境でグラフィックスの制作をやりたいところですね。 ジュノ氏: それは楽しいですが……時間もかかりますね (笑)。 ――でも、HD環境であれば、原画のグラフィックスに匹敵するグラフィックスを再現できますよね。 ジュノ氏: 話は少しずれますが、個人的には「ドット絵」に興味があるんです。先ほどは韓国での主流がハイエンドビジュアルにあるというお話しをしましたが、最近の韓国ではカジュアルゲームがかなり広がってきています。ですから個人の趣味ではなく、トータルディレクタとしては、ドット絵などにも興味がありますね。企画によってはわざわざ3Dグラフィックスでなくドット絵で制作した方が良いかもと思うような所はあります。韓国はドッターが不足していますから。 ――日本ではファミコン時代からの資産がありますからね。当時がんばっておいでだった方が、今では携帯電話のコンテンツ制作で力をふるっておいでだったりしますし。 ジュノ氏: 技術的にもすごいですし、芸術的にもすごいですよ! ――今回はドラゴンのデザインもされていますが、ドラゴンのデザインはいかがでしたか? ジュノ氏: 昔、「リネージュII」を3年くらい作っていたとき、MMORPGでしたから、制作期間も3年から5年とかかっていました。その当時はモンスターやドラゴンも管理していました。その時のレパートリーを引き出して再度チャレンジしてみました。 ――手応えはいかがでしたか? ジュノ氏: 最初のコンセプトとしては、「ドラゴンボール」に登場するような、細長いオリエンタルな龍ではなく、西洋のクラシックな龍でもなく、「ドラグナーズアリア」らしいドラゴンが欲しかったんです。そこで悩んで、ドラゴンもコンセプトをこちらから提案して、最終的には羽がXのようになっていて手のない“ワイバーン”スタイルで行くことにしました。 キャラクタは18世紀のコスチュームというガイドラインがあって、その範疇でデザインしていましたが、ドラゴンぐらいはもっと自由にデザインしたいと思いさせてもらいました。色に関しては悪魔と言うことで“黒”に決まっていたのですが。鼻が短かったり、口の中に口があったり、がんばってみました。 ――ジュノさん的には満足いくものに仕上がりましたか? ジュノ氏: 最後は時間的な制約がありましたから。コンセプトのやり取りをする期間は1カ月半から2カ月もらいましたが、スケッチと色がフィックスしてからは非常に厳しかったですね。1枚3日くらいですね。一番厳しいときは1週間で3人くらいデザインしました。ドラゴンはもう少しかかりましたが。もっとやりたいとは思いましたが、時間がないと。キャラクタデザインの仕事以外にも、会社の管理の仕事もありましたし、両方ということで厳しかったですね。キャラクタデザインの仕事自体は楽しかったのですが。
■ ジュノ氏「今後は総合的に物語世界を作り上げていきたい」
ジュノ氏: まず、私自身は歳も若いですし、「世界的に」と評価されることが恥ずかしいですね。韓国では、開発者としてイラストレーターとして「リネージュII」で10年くらい係わっていましたが、「リネージュII」がワールドパブリッシングしていたおかげで私の名前も広がっているのかもしれません。 その後に悩んでいた時期があって、「リネージュII」が終わったあと、オリジナルキャラクタではなく、インタラクティブなキャラクタのデザイン……アバターみたいにいつでもユーザーが変わるキャラクタをデザインするのが、服だけを変えるコスチュームデザインのような気がして、それが私がやりたかったと事とは違うと思い悩みました。 いまは、ゲーム系の仕事の中では、ディレクタのポジションが私自身の希望に合っていると思います。私がやれるグラフィックスではなく、誰のグラフィックスでも良いから、もっと良いゲームをビジュアルを作りたいと思いますね。 で、絵を描くのは、そういった (ゲームディレクターを目指す) 部分とは違う、趣味という感じです。私は絵描きとしてここまで来たので、やはり絵は私の人生の中で一番大切なことです。最初は絵描きと会社での開発者とが同じ所にありましたが、今では分かれてしまいました。そのふたつの自分が隣り合っていますが、詳しく細かく見ると方向性が違ってきています。 ですから、こういったPSPのゲームもそうですし、日本以外の米国からの仕事の話もそういった観点から引き受けるようにしています。 ――では、今後は総合的に物語世界を作り上げていきたいと言うことでしょうか? ジュノ氏: 開発者としてはもっと全般的に係わっていきたいと言う感じですね。 ――では、次回作ではディレクターとしてと言うことでしょうか? 新川氏: そうですね。次回は物語の部分からお話しさせていただきたいですね。 ジュノ氏: 勉強しながら、がんばっていきたいと思います。 ――最後に、ユーザーさんに一言お願いしたいと思います。 ジュノ氏: 日本で私の名前を知っている方も知らない方も、“ジョン・ジュノ”という名前はブランドとしてはまだ早すぎると思うので、日本一ソフトウェアの新作のひとつとして「ドラグナーズアリア」を遊んでいただき、私のグラフィックスを見てください。 ――控えめですね(笑)。 ジュノ氏: 正直、「リネージュII」が何年か前にリリースされ、日本からも反応がありましたが、これからがはじめの一歩だと考えていますから、今からもっともっとがんばりますから、続けてみて、期待してください。 ――ありがとうございました。
(C)2007 NIPPON ICHI SOFTWARE INC./HITMAKER CO., LTD.
□日本一ソフトウェアのホームページ (2007年8月17日) [Reported by 船津稔]
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