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★DSゲームレビュー★

公園作りに“ちびロボ”が奔走する可愛いアクション
「咲かせて! ちびロボ!」

  • ジャンル:花咲かちびアクション
  • 発売元:任天堂株式会社
  • 価格:4,800円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(7月5日)
  • CEROレーティング:A (全年齢対象)



 2年前、ゲームキューブで発売されたアクションアドベンチャー「ちびロボ!」シリーズ最新作が、ニンテンドーDSに登場。主役は、自律行動する全長約10cmの小さなロボット「ちびロボ」。シリーズ作品ではあるが、大まかな世界観以外、前作との関連はないに等しい。よって、前作に関する知識がなくてもゲームの世界に入ることができる。「前作をやってないから、ちょっと手を出しにくいなぁ」などと考えていた人は、本レビューを参考に、ぜひ一度プレイしていただきたい。



■ 荒れ果てた公園にやってきたちびロボ ~花を咲かせて公園作りに精を出す~

 冒頭ストーリーは、極めてシンプル。オレンジ社が、たくさんの花を咲かせるために働くロボット「ちびロボ」を開発。ちびロボの役目は、たくさんのお花を咲かせて、みんなを“ハッピー”にすること。マーケティングの一環なのか、オレンジ社は「ちびロボ」を全世界の公園に向けて無料配布。送料まで自社負担と、某通販会社も真っ青の太っ腹。

 そんなちびロボの一体が、とある公園にやってきた。そこは、草木一本ろくに生えておらず、誰も訪れることのない、とても寂しい場所。プレーヤーは、ちびロボを操作して、この荒んだ公園を整備し、人々が訪れてくれるよう一生懸命働くといったストーリーになっている。

 本作は、いわゆる“箱庭”タイプのゲーム。さほど難しい操作は要求されず、ちびロボを動かして荒れ果てた公園を少しずつケアしていけば、それでストーリーが展開していく。無論、その過程でさまざまな出来事が起こるが、それはおいおい説明していく。セーブデータは3カ所まで用意されており、親子で進捗状況を確認しながら同時にゲームを進めていくのもいいだろう。

【オープニング】
世界中で花が全滅の危機。これを何とかするために開発されたのが「ちびロボ」。オープニング中に簡単なチュートリアルが挿入されるため、自然にゲーム本編へと入っていける




■ お花を咲かせて“ハッピー”を稼ぎ、動力源(ワッツ)を充電

 公園の入口にある、ちびロボの住みか「ちびロボハウス」。プレーヤーは、ここを活動拠点に、少しずつ公園内を整備していくことになる。

 ここで“少しずつ”と触れたのは、ちびロボには、とある行動制限がついてまわるからだ。それは、ちびロボが行動するためには、ゲーム画面右上に表示されている“ワッツ”を消費するため。ワッツは、ちびロボの体内にある残存電量をあらわすメーター。これがゼロになると、ちびロボは行動不能に陥ってしまい、ハッピーを減らされた状態でリスタートというペナルティを受ける。

 充電するときは、ハウス内にあるコンセントにおしりからはえている「ヒップラグ」を差し込む。ただし、その充電もタダではない。ちびロボハウスに入ると、画面左下に「ハウスワッツ」が表示される。これは、ハウス全体に蓄えられているワッツの総量。ちびロボは、蓄えられたワッツをここで補給し、再び公園に繰り出していく。

 それでは、どうやったらワッツを稼げるのか。ここに“お花を咲かせる”というちびロボのお仕事がおおいに関わってくる。大雑把ではあるが、ちびロボは「花を咲かせることでハッピーを稼ぎ、ハッピーをワッツに変換して備蓄し、消費活動を行なう」というサイクルで動いているわけだ。

 ちびロボが花を咲かせる道具は、お花に水をあげる「ちびシャワー」と、ラジカセ風の「ちびダンス」のふたつ。耕された土地に生えている“つぼみ”に、ちびシャワーで水を与える。やりかたは、タッチパネルに表示されたピストン部分を、タッチペンで少しずつ押し上げてやるだけ。筆者は最初これに気付かず、物凄い勢いで上下にピストン運動をしていたが、実際にはゆっくり操作してやればいい。出先で合間にプレイしていたとき、必死にピストンしている筆者の姿を見た子供にクスクス笑われてしまったが、今となっては恥ずかしくもいい思い出だ。

 水を与えられたつぼみは物凄い勢いでふくらんでいき、すぐに花が咲く。このとき、花の色が「白」であれば、その近くで「ちびダンス」を踊れば“新しいつぼみ”が出現し、周囲に飛散。チビダンスは、DJよろしくタッチペンでターンテーブルを回すというもの。常に一定のスピードで回し続けるのがコツで、完璧に回せば100点。途中でテンポが狂ったりすると減点される。成功すると、つぼみとともに、ハートマークの“ハッピーさん”が出現する。

 ハッピーさんは、ちびロボハウスでハウスワッツに変換できる。やりかたは、充電する際、サポートメカのトンペーが“ハウスワッツに変換しますか?”と確認してくるため、そこで“○”を選べばオーケーだ。

【ちびシャワーでつぼみに水を与える】
茶色い地面の上に生えている“つぼみ”は、ちびシャワーで水を与えることで花が咲く。花は同一エリア内に計30本まで咲き、それ以上は花が咲くと同時にハッピーさんに変化してしまう
【ちびダンスで新たなつぼみを生み出す】
つぼみが出るのは白い花のみ。一定のテンポと速さでターンテーブルを回すのが高得点を得るコツ ダンスはワットを消費しやすいので、1度のダンスで複数の花をまとめて処理するといい




■ 咲かせた花の数に比例して、やれることがグングン増えていく楽しさ

 ゲーム序盤は、つぼみを増やして花を咲かせ、ハッピーを稼ぐのが基本サイクル。最初のうちは上限ワッツが低いため、入口の近辺にあるつぼみをケアしているだけでアッという間にハウスまで戻らなければならず「見た目とは裏腹に、ずいぶんとまたチマチマ忙しいゲームだなぁ」などと感じるかもしれない。

 だが、それは長くても中盤までの話。花を咲かせた数が一定数を越えるごとに、開発元のオレンジ社から新アイテム(ドーグ)情報が送付されてくる。そうしたアイテムのなかに、ちびロボのワッツ上限を増やしてくれる「MAXワッツ」があり、これを購入すればちびロボの行動範囲が広がっていくといった寸法だ。

 最初は徒歩だった移動手段も、お花を咲かせながらゲームを進めていくうちに、拾ったママチャリから専用自転車「ちびチャリ」、「ちびバギー」、「ちびカヌー」など、バリエーションが増えていく。ただし、ゲームクリア前の段階では、消費ワッツや移動速度の兼ね合いから、常用するのはほぼ「ちびチャリ」一択。それ以外は、後述の緊急時、もしくは趣味やお楽しみアイテムといったニュアンスが強い。

 アイテムには、お花を摘み取れる「ちびっくハンド(摘んだ花は後述のタウンでハッピーに換金できる)」、乗り物をパワーアップする「チップ」系、公園の地形が変えられる「きえルンです」、「サキナハーレ」、「ゼロモッコリ」、「ミチヒケール」、「レンガレンガ」などのエディット系、「マンホール」、「ふうしゃ」、「ちびでんち」、「防水スプレー」、「とけい」など便利な機能を持ったアシスト系、「ちびトランポリン」、「ちびコーヒーカップ」などの遊具系、「がいとう」、「ベンチ」、「どうぞう」など入園者を増やす系など、さまざまなバリエーションが用意されている。

 これらのアイテム購入には、ハウスワッツを対価として支払う必要がある。支払うといっても、よほど非効率にゲームを進めていなければ、その時点で「うわっ、高すぎ!!」といったアイテムは出現しない。本作はこのあたりのバランスが実に秀逸で、新アイテムが出現しても「これを買うためにどれだけ頑張らなきゃいけないのよ!?」といった苛立ちを覚えることなく、サクサクとゲームが進められる。

 最初はえらく地味だが、そこを越えたところで“視界が晴れていく”というか、広がり、奥行きを見せていくかのような展開の妙。数十分触った程度であれば「なんだこれ」といわれかねないが、その先にある扇状の広がりを一度体感したら、最後までプレイせずにはいられなくなる。

行動範囲を広げる「MAXワッツ」など、実用系からお遊びまで多彩なアイテムが登場。地形をエディットするパーツツクール系を考えなしに使うなど、よほど無計画な浪費をしない限り経済(ワッツ)が破綻するようなことはない




■ 個性的でファンキーな“ともだち”がストーリーに彩りを与える

 最初のうちは、ハウス左側にある公園がちびロボの主な活動範囲だが、ゲームを進めていくと、右側の「タウン」にも足を運ぶことになる。サポート役のトンペーから「落としたカセットを探してきてくれませんか?」と依頼され、それを探しに行くといった流れだ。

 タウンは、ちびロボよりもはるかに大きい“人間”たちが闊歩するエリア。そこに落ちているダンボール箱、ゴミ袋などを漁ってアイテム類を探すことになるが、その過程で自分以外の「おもちゃ」と出会うことがある。

 おもちゃたちは、発見した時点では電池(ワット)切れで動けない状態。復活させるには、ヒップラグでワットをわけ与える必要がある。復活させたおもちゃは、ちびロボと「ともだち」になってくれる。同時にともだちになれるおもちゃは、最大3体まで。ともだち化したおもちゃは、ハウスにある端末経由で公園作りのお手伝いをしてもらえる。もちろんタダでは働いてくれないが、そのおもちゃが得意とする分野であれば、支払うワットが通常よりも格安で済むといったメリットがある。

 唯一特殊なおもちゃは、タウン「モンキーバーガー」マスコットの「シェイク」。シェイクは公園作りこそ手伝えないが、アイテム「モンキーバーガー」を与えると、新しい「ちびダンス」を教えてくれる。ちびダンスは最大8種類あり、全部を覚えたあとはダンス対決になり、勝つと大量のハッピーをプレゼントしてくれる。ちびダンスは後に覚えたものほど効果が高いようで、100点を出すと大量のつぼみが周囲に放たれる。

 おもちゃたちは、それぞれ仕事を2回ほどこなすと、力を使い果たし動けなくなってしまう。そんなときは、またタウンに出かけてダンボール箱やゴミ袋を漁ればオーケー。このとき“一定の条件”を満たしていれば、おもちゃが唐突に自身のバックグラウンドを語りだす。いずれも心にジンワリとくる内容で、ものによっては哲学的だったりと、これがなかなか侮れない。

 ネタバレになってしまうため詳細は避けるが、これを数回繰り返すと「ともだち」から「親友」になり、色々といいことがある。姿形から言動に至るまで、そのすべてが個性的かつユニークなおもちゃたち。ただ公園づくりをしているだけなら単調になってしまったかもしれないが、こうしたおもちゃたちとの交流が、実にいいアクセントになっている。

タウンでは「ノラおもちゃ」と出会うことがある。ともだちになるには、ヒップラグ経由でワッツをわけ与えてやればいい
ともだちになったおもちゃは、パークツクールで公園の造成が依頼できる。得意な分野の仕事は格安で請け負ってくれる




■ お邪魔だけど役に立つ!? 絶妙な存在感の敵キャラ「クロ」

 本作には、ちびロボの公園作りを邪魔する「クロ」という敵キャラクタが登場する。クロは、公園に咲く花を黒色に変えてしまう、困った生物。クロは、常に3体セットで出現。その頻度は、ハウス内にある端末から「クロ予報」で予測できるが、「出現しない」日でも、イベントによっては例外的に強制出現することがある。

 黒くなった花は、日付が変わると枯れて散ってしまう。クロの出現地点は、右側アイコンの全体マップで確認できる。出現地点が遠いときは、移動に使えるアイテムもしくはちびバギーが最適。基本的な倒し方は、ちびロボで体当たりし、丸くなったところにちびシャワーで大量の水を浴びせる。水を吸ってムクムクと大きくなったクロは、やがて破裂して“つぼみ”と水を周囲に撒き散らす。このとき、破裂した水が他のクロに当ると動きが止まり、連鎖的に倒しやすくなる。

 クロは、ちびロボを発見すると一目散に逃げ出す。このとき、あまり放置しているとクロが突如真っ赤になって怒り出し、反撃に転じてくる。真っ赤なクロの体当たりをくらうと、大量のワットとハッピーを失ってしまう。いちど真っ赤になったクロはどうやっても倒せないため、一時的にやり過ごして怒りが醒めるのを待つしかない。醒めるのにさほど時間はかからないため、闘牛よろしく真っ直ぐ突っ込んできたところを真横にやり過ごすのが有効だ。

 ストーリーが進むと、通常サイズだけではなく「デカクロ」と呼ばれるビッグサイズが出現する。このサイズになると、ちびロボが生身(?)で体当たりしても倒れてくれないため、足を止めるには「ちびチャリ」や「ちびバギー」でぶつかる必要がある。倒し方は通常のクロと一緒。一度のちびシャワーでは無理だが、何度か繰り返すと大量のつぼみ、水とともに破裂する。

 一見すると単なる邪魔者だが、実はクロたちは“つぼみ”と“水”の運搬者でもある。公園のエリアによっては、花を咲かせるためのつぼみがほとんどない場所がある。こんなとき、上手くクロを誘導してそこで破裂させれば、より花が増やしやすくなる。アイテムのなかには、クロが出現しやすくなる「クロホイホイ(遠ざけるアイテムは「クロバイバイ」)」があり、これを利用すれば公園作りがより効率的に行なえるわけだ。凡庸なゲームなら単なるお邪魔キャラで終わるだろうが、そこに“ひとひねり”加えられているあたり、実に心憎い。

公園の穴から突如出現し、お花を黒く染めて枯らせるべく奔走するクロたち 毎朝のクロ予報は必ずチェック。ただし確率ゼロでもイベントで強制出現するケースがある
倒し方は、体当たりやちびシャワーをかけて足止めしたら、そのまま水でふくらませ破裂させるだけ 放置すると突然キレて真っ赤になり襲い掛かってくることも。やりすごして黒く戻ったところを始末
ビックサイズのデカクロ。生身(?)では跳ね飛ばされてしまうため、ちびチャリなどの「ちび乗り物」で体当たり。あとはちびシャワーで水をかけ続ければ倒すことができる




■ 綺麗にまとめられた作品。贅沢をいえば、その先が……

 冒頭で述べたように、ちびロボのワット上限が少ないうちこそ「これ、もしや作業に忙殺されるだけのゲーム?」と勘違いされそうだが、使えるワットと1日あたりの時間が増えるに従い、本作は箱庭タイプのゲームらしい“甲斐甲斐しく世話をする喜び”、“少しずつ作り上げていく楽しさ”にどっぷり浸れるようになっていく。

 公園作りも、「ともだち」や敵キャラ「ダークシーゼン」との掛け合い、クロ対応などが適度なタイミングで挿入されるため、単調さを感じることはない。アクションが苦手な人には少々やっかいかもしれない「ちびダンス」も、曲調にまどわされず一定のタイミングでタッチペンを回せばいいことに気付けば、誰でもすぐに100点が出せるようになる。

 操作性や難易度を考えると、本作は低年齢層がメインターゲットになるのだろうが、ともだちになるオモチャたちとの交流は(筆者ごときが言うのもおこがましいが)、年輪を重ねた大人ほど、素直に心に響いてくるように感じられる。演出はシンプルだが、そのぶんすっと受け止められるのがいい。この点、(言葉遊びではなく)建設的なゲーム性と相まって、お世辞抜きに「誰にでもオススメできる」良作だと言い切れる。

 綺麗にまとまった作品だが、唯一惜しい点を上げるとすれば、それは本作が「スタンドアロン」仕様ということだ。メインストーリーをクリアした後は、文字どおり公園を自由にエディットできるようになる。遊具アイテムなどもふんだんに用意されているため、それをあちこちに配置して楽しめる作りになっているのだが、そうなると「この公園を友だちに見せたい」、「せっかく競技性のある遊具が用意されているんだから、他のプレーヤーと一緒に遊びたい」といった欲求が出てくるのは、ある意味“自然”といっていい。

 クリア後に趣味の公園作りに没頭しながら、ふと「ちびバギーやちびカヌーで他の人とレースをしたい」、「ちびキャノンでみんなで『せーの!』でぶっ飛びたい」などとあらぬ妄想に浸ったのは、恐らく筆者だけではないだろう。遊具アイテムをひととおり設置した公園は、もはや公園というよりは「遊園地」といったてい。眺めて散策して楽しむだけでなく、みんなで一緒にワイワイやりたくなるというわけだ。もし次回作があるなら、ぜひともマルチプレイ機能を検討していただきたい。贅沢な願いではあるのだが……もし実現したなら「ちびロボ」の世界はさらに広がり、プレーヤーの内面により深く浸透していくことだろう。



(C)2007 Nintendo

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□製品情報
http://www.nintendo.co.jp/ds/ajbj/index.html?link=jpg
□関連情報
【6月7日】今度のちびロボは花を育てて公園作り
任天堂、DS「咲かせて! ちびロボ!」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070607/chibi.htm

(2007年8月7日)

[Reported by 豊臣和孝]



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