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会場:カフェソラーレ リナックスカフェ秋葉原店
今回のイベントでは「WARSOW」、「旋光の輪舞 Rev.X」、「Warcraft III」、「Halo 2」の4種目が選ばれ、オンライン予選を勝ち抜いた選りすぐりのプレーヤー達が一同に集い、決勝トーナメントを戦った。本稿では盛況のうちに進行した本イベントの模様をお届けしよう。
■ 真夏日の秋葉原で繰り広げられた精鋭達の戦い。大入りの会場で熱気溢れるイベントに
初日の8月4日は「WARSOW」と「旋光の輪舞 Rev.X」の決勝大会が開催された。「WARSOW」はEスポーツコミュニティから生まれたオープンソースのFPSタイトル。まさに今回のようなEスポーツ競技のために生まれたフリーソフトウェアで、海外のプロ競技会の定番種目となっている「Quake III: Arena」と極めて互換性の高い挙動・ゲームバランスを持ったタイトルだ。そのためプレーヤーは長く鍛えてきたスキルを生かしやすく、実際にプレイしているところを見ると極めて競技レベルが高いことがはっきりとわかる内容だった。
「旋光の輪舞 Rev.X」はアーケードとXbox 360用タイトルとして有名な対戦型弾幕アクションシューティングゲーム。アーケード版を中心に高い人気を誇るタイトルで、格闘ゲームのようにハイテンポな1対1対戦を基調とするゲームプレイが特徴。もちろん出場選手たちの多くはアーケードとXbox 360の両方で腕を磨いてきた猛者ばかり。Xbox 360版を用いた本大会でもほとんどの選手たちがアーケードスティックを使い、ハイレベルな戦いを繰り広げて見せた。
決勝トーナメントに進んだ8名の選手のほとんどはアーケード時代からプレイを続けるベテラン達。互いによく知る者同士の対決も多いようで、試合前の意気込みとして選手から不敵な発言が飛び出すや、集まったギャラリーも大笑いして一気にヒートアップ。内容についてもレベルが高く、相手の弾幕を的確に避けては反対にコンボを決める、BOSSモードの巧妙な使い方でピンチの状況を覆すといった試合運びが見て取れた。試合が決まった瞬間に勝者はガッツポーズ、敗者はテーブルに顔をつけてうなだれるというテンションの高さも楽しい。 完全に同質な条件で試合をする他の種目とは異なり、選択キャラクタの相性が勝敗をわけることもあるのが本タイトル。トーナメント2戦を勝ち上がり決勝戦へ進出したrei nanase選手とZijii ver202選手の両者はいずれもペク・チャンポAの使い手だ。3ラウンド制2本先取で行なわれた試合は一進一退の展開。さすがに両者とも相当の練達ぶりで、BOSSモードの激しい弾幕をほぼノーダメージで切り抜けるといったスーパープレーに会場は沸きに沸いた。
そして最終ラウンドを制して優勝を決めたのはZijii ver202選手。同選手を含め表彰台に上った選手たちはお互いに長くライバルを続けているようで、互いにリラックスしたムードでインタビュートークを見せてくれた。見事優勝したZijii ver202選手に言わせれば、「皆さんも試合を見てこれがどんだけ運ゲー(運に左右されるゲーム)かがわかったと思います」ということだが、同選手はこうした大会で幾度も優勝している実力派だと運営スタッフがフォロー。ギャラリーからも大きな笑い声が上がり、「旋光の輪舞 Rev.X」決勝トーナメント大会は盛況のうちに決着した。
・「WARSOW」決勝ではタイプの異なる選手同士が対決。爆発力に勝るfumio氏が勝利を拾った
決勝戦に進出したのはbluespear選手とfumio選手。両者のプレイスタイルは対照的で、引き際を心得て安定感のあるプレイを見せるbluespear選手に対し、fumio選手はリスクを承知で一気にたたみかけ勝負を決めようとするスタイル。そんな両者で戦われたラウンドの中で多くリードしてみせたのはbluespear選手。無駄のない巡回ルートで武器やアーマーなどの強化アイテムを確保し、無難に相手を倒せば復活直後の弱い状態を狙ってさらにスコアを伸ばすという効率的な試合運びだ。 対するfumio選手は接近戦が得意。的確な位置予測で先手をとるや一気に詰め寄り、bluespear選手にロケットランチャーを連発で直撃させ劣勢を覆す。3本先取ルールの中で2本を先取されてからもfumio選手の集中力が途切れることはなく、ラウンド内のスコアでリードされた状況では特に馬力を発揮して何度も逆転。逆に自身がリードする状況になれば照準が雑になるなど不安定感も目立ち、試合は予測のつかないシーソーゲームに。犬飼氏の実況も語気を強め、観客も試合モニターに釘付けだ。
ところがbluespear選手の優勢で進んだ決勝ラウンド途中にマシントラブルが発生してゲームがストップ。終盤にfumio選手が急激な追い上げを見せ試合結果はわからなかった、という審判のGoodplayer.jp長崎氏による裁断でこれは再試合に。ここで敗北を免れたfumio選手、再試合ラウンドを制してラウンド取得数は2-2。続いて行なわれた最終ラウンドを制し、優勝に輝いた。トラブルに救われる格好で勝利したfumio選手、表彰台インタビューでは「これで決着がついたとは全く思わない」と述べ、次回大会でbluespear選手に対して完全勝利を目指すことを宣言した。
■ 「Warcraft III」決勝Tは若い力が席巻。次大会以降の展開も楽しみなEスポーツイベントとして成功を見た イベントは2日目に入り、続く種目として「Halo 2」および「Warcraft III」の決勝試合が催された。天候悪化の情報もあり、初日に比べてギャラリーの数は落ち着きを見せたものの店内は依然として満員御礼だった。FPSとRTSというEスポーツにおける2大種目の決勝戦ということで、今後のイベント展開も占う内容になったものと思う。 ・「Halo 2」は意外にもXbox 360ユーザーの勢い強し。勝利はhalomam選手に輝く
今回はオンライン予選とオフライン決勝ともにまだ普及初期にあたるWindows Vista版「Halo 2」にて行なわれた。このために選手層が厚いとはいえない状況になった今大会では、やはり上述のようにXbox版で鳴らしたプレーヤーたちがそのまま、Xbox 360コントローラーを用いてのプレイでスキルフルな戦いを見せてくれる展開になった。結果的には第1ラウンドを勝ち残って決勝戦へ進んだ8名のプレーヤーのうち6名までがXbox 360コントローラーで操作するXboxユーザーだった。 筆者のような生粋のPCゲーマーにとっては、FPSゲームをコントローラーで完璧に操作する彼らのスキルは、今まで見たことのない新鮮な驚きがある。HAYATO選手などのプレイを見ていると、マウス操作にも劣らないスピードと精度で動く敵を捕捉し、次々に攻撃を当て続けることができている。「Halo 2」ではコントローラーで操作する際に照準補正の機能が働くとのことだが、それにしても初動の速さや周囲の状況に対する視野のとりかた、状況に応じた武器の使い方など戦略性も高く、思わずうなってしまうほどのプレイ内容だ。 準決勝と同じく8人同時参加のデスマッチ3連戦方式で行なわれた決勝戦。ここで光る強さを見せたのはsabrina選手だ。グレネードの活用で相手の動きを封じる戦法が特に巧妙で、多数のスコアを一方的な形で獲得。また、的確な判断で死角から接近し、エナジーソードで背後から敵を切り裂く動きはまさに巧みの一言。犬飼氏の実況でもそのテクニックの凄さが強く解説され、会場からは歓声が上がる。しかし最終ラウンドでそれ以上の勝負強さを見せたのは当初ダークホースだったhalomam選手。マップ構造にうまくはまった戦い方で場を制してはスコアを伸ばし、決勝ラウンド1位をものにして見事優勝して見せた。
そのhaloman選手、表彰台で感想を求められると「2試合とはいえ長く感じました。途中で集中力が切れて投げ出しそうになりました」と語るほど消耗したようだ。やはり、勝負を決めるのはテクニックやスキルだけでなく、どれだけの精神的エネルギーを一点に注げるか、という部分にも大きな重みがあるのだろう。
・「Warcraft III」トーナメントは、若干15歳のTTaM.TaC選手が全勝優勝を飾る
1対1の2本先取制で行なわれた決勝トーナメント準決勝を制したのは、ACON日本予選にも出場したことのあるベテランプレーヤーtenti選手と、こういった大会には初めて出場するというTTaM.TAC(タムタック)選手。そのTTaM.TAC選手が準決勝にて2-0のストレート勝ちを決めた相手は、「BIGLAN Socket5: E-Sports Studium」での優勝経験をもつ実力者nemuke選手だ。この強力な新星の登場に、会場も興味深く試合を見守る格好となった。 決勝戦は互いの出方を強く意識したゲーム展開で進んだ。相手の傾向を読んでの対策として、ダークナイトを中心とした生産戦略を進めるのはtenti選手。対するTTaM.TAC選手も戦力比較の眼は確かで、積極性と同時に引き際をわきまえた戦法で正面戦闘をこなしてはじっくりとゲームを組み立てていく。マウスとキーボードによるショートカットボタンを駆使する両者の操作スピードは非常に速い。「Warcraft III」をはじめとするRTSの用語として、分あたりの操作数を意味する「APM(Actions per Minute)」という用語があるが、両者の操作は120APM、つまり1秒に2回の操作を行ない続けることに相当する、と実況解説。
様々な作戦の引き出しをぶつけあった両者だが、試合は2ラウンドで決着。TTaM.TaC選手が決勝トーナメント全ラウンドを勝利して優勝するという見事な結果を引き出した結果となった。まだ若干15歳の若いTTaM.TaC選手の地元は遠方ということで旅費の問題もあり、今回の決勝トーナメント出場にあたり家族ぐるみで検討したのだという。そうした苦労を乗り越えて見事な勝利を手にしたということになるが、試合では「緊張はありませんでした。普通にいつもどおりやれたと思います」という余裕ぶりが凄い。まだまだ「Warcraft III」を続けていくと述べていたので、これからも多方面に能力を伸ばしていってほしいと思う。
■ 「Eスポーツを、より洗練されたエンターテイメントコンテンツへ」という犬飼氏の試みは続く
・競技だけを見つめるフェーズは終わった。これからは一般の人たちにも楽しんでもらえるものへ 今回のイベントが盛況に終わった手応えについては、「Eスポーツのコンセプトが出来上がった今、コアなファンだけでなく、一般のお客さんたちにも楽しんでいただけるコンテンツにしていくフェーズに来ました。今日の「海の家」や、ラジオや、実況がそのための試みです。そういったことが少しづつ、第一歩の形として出来上がりつつある、という手応えを感じました」と犬飼氏。 その姿勢の表れとして、会場として通りに面したオープンな店舗が選ばれたわけだろう。そこでは外からも見えるような形で試合モニターが設置されていた。真夏日の非常に暑い日でもあったため、冷たいフリードリンクを求めてやってきた一般の来場者が試合を観戦しながらくつろぐという情景が見られたわけである。 犬飼氏は、そのように偶然やってきたお客さんに「面白く見せられる」ところまでEスポーツのベースができてきたと語る。選手たちへ競技環境を提供することについては、これまでと変わりなく真剣に取り組んでいく。しかし、それだけを見せる時代はもう終わったということだ。 ・Eスポーツソフトウェアとしての「旋光の輪舞」 今回の競技種目として一番の盛況を見せた「旋光の輪舞 Rev.X」。これまでのEスポーツイベントではPCゲームが中心になってきた経緯があるが、今回このような動きがあったことについて、元々は「鉄拳」の全国レベルのプレーヤーでもあり、プレーヤーコミュニティの存在を強く意識する犬飼氏はこのように言う。 「アーケードゲームをやれば盛り上がることはわかっていて、格闘ゲームの大会ならいつでもできたんですが、それは『闘劇(対戦格闘ゲーム最高峰の大会)』さんがやっています。僕らは違うアプローチでプレーヤーを盛り上げたい。そこで『旋光の輪舞』が見つかったわけです。これがめちゃめちゃシンプルなゲームでしたので、これはEスポーツになる、と感じました」。 既存の市場からのタイトルではなく、Eスポーツのためにデザインされたソフトウェアが必要な段階に来ていると語る犬飼氏。そんなEスポーツソフトウェアとして、きっかけになりうる内容を持っていたのが同タイトルというわけだ。また、犬飼氏は開発元である有限会社グレフの、プレーヤーコミュニティを重視してゲームを作っている姿勢を重視する。開発者自身がコミュニティに参加して、大会を一緒に楽しめるということが本イベントの大切な要素になっているようだ。 「今回の成功は、お客さんの面で言えば、開発者を含めたコミュニティに出会えたことだと思います」と犬飼氏は言う。まさにこれが、本イベントを通じて得られた手応えのなかで一番強いエネルギーを持っているのかもしれない。
その犬飼氏は次回以降の展望を発表してくれた。本年10月に今回のイベントに続く「Eスポーツスタジアム ステージ2」を開催し、さらに12月には「BIGLAN Socket 6」内にてEスポーツスタジアムのイベントを組む予定であるとのこと。「ゲーム心(ごころ)」を提唱する犬飼氏は、その熱いハートで今後もEスポーツ文化の成熟と普及に向けた活動を続けていくようだ。 今回は会場が狭い店内ということもあり、あまり沢山の人を収容できる環境に恵まれる状況ではなかったし、ハイパワーなPCを多数設置したことで電圧不足によるハードウェアトラブルなど全てがうまくいったわけではない。そういった面でも改善の余地がまだまだ残されている。今後さらに洗練された形で、こういった楽しい「Eスポーツイベント」が開かれていくことを期待したい。
□Goodplayer.jpのホームページ (2007年8月6日) [Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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