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新日本速読研究会会長・川村明宏博士インタビュー
「右脳を鍛える」シリーズは現代人のワクチン!?

【耳で右脳を鍛える DS聴脳力】
7月26日 発売

価格:2,940円

 株式会社マイルストーンから7月26日発売のニンテンドーDS用「耳で右脳を鍛える DS聴脳力」をはじめ、DS用「目で右脳を鍛える DS速読術」、PSP用「目で右脳を鍛える 速読術ポータブル」など、新日本速読研究会会長の川村明宏博士の提唱する“速読”、“速聴”を題材にしたゲームソフトが携帯ゲーム機向けに発売されている。

 これらの作品は、タイトルからすると最近流行の“脳トレ”のジャンルに属するが、“速読”と“速聴”をテーマにしていることが大きな特徴となっている。ほとんどの人が名前くらいは聞いたことがあり、興味を持ったこともあるかもしれないが、“速読術”の理論を理解するために書籍を読むのがめんどくさい、同じ訓練を繰り返すという反復作業で飽きてしまうなどの理由で、あきらめたりしていた人も多いのではないだろうか。かくいう記者も、書籍の高さを理由にあきらめてた1人だ。

 今回は、これらの作品を自ら監修している川村博士と、ゲームの企画・開発を担当したマイルストーンの大高紘氏から、お話を伺う機会を得たので、これら一連のシリーズの魅力や利点、さらに開発の裏話などを存分に語っていただいた。インタビューの後半では「これらのゲームソフトは現代人にとって、目や耳から入れるワクチンだ」とまで言い切った川村博士の言葉には、30年以上も研究を続けているその成果がこのゲームソフトであることが感じられた。

【パッケージ】
DS「耳で右脳を鍛える DS聴脳力」
7月26日発売
PSP「目で右脳を鍛える 速読術ポータブル」
発売中
DS「目で右脳を鍛える DS速読術」
発売中


■ 速読・速聴は「速脳術」の1つ。鍛えることで脳も活性化される

――まずは、自己紹介をお願いします。

新日本速読研究会会長の川村博士とマイルストーンの大高氏
川村博士: 脳力開発系の仕事に携わってから、だいたい30年くらいになりますが、主に人間が持つ基本的な脳力をもっと倍加させようという研究をしています。当初はガチガチな教材を作っていたのですが、ここにきてゲームやインターネットの世界になったので、そちらの方に乗るようなものということで、このような企画を立ち上げました。特にゲームによる脳力向上に関心が高まっていることもあり、今回はいろいろと協力させていただいています。

大高氏: 川村先生は“新日本速読研究会”となっていますが、速読に限ったものではなくて、人間の脳力を限界まで活性化させる研究をなさっておられるんですよね。

川村博士: そうですね。もう1つ“速脳研究会”という、脳を加速したり質を高める研究を同時に行なっていまして、人間の基本的な能力で“見る”が“速読”にあたり、“聴く”が“速聴”にあたります。ほかに速く書く“速書(そくしょ)”や速く覚える“速憶(そくおく)”、速く話す“速話(そくわ)”といった研究を進めてきています。

大高氏: 私はマイルストーンの企画を担当しています。ゲームの最初の企画を立ち上げるところから、仕様書、雑用までやっています。

――“速読”や“速聴”をマスターすることのメリットを教えてください。

川村博士: 人間が生活していく上で脳を使いますが、脳にはキャパシティがあって、実際にはごくわずかしか使っていません。ごくわずかであっても、脳力を発揮されている人がかなりいますので、これを使われていない部分の脳を使うためには、脳に入力する情報を増やさなければいけない。そのための手段として、“速読”と“速聴”にたどり着きました。入力される情報の80%ぐらいが見ることや読むことからで、15%ぐらいは聴くことからですので、この2つを合わせると90%~95%を抑えたことになりますから、まずはそこから攻略していこうということで、速読と速聴に研究が集中していったわけです。

 「速脳術」というのは、コンピュータでいえば、プリンタやモニターなどの機器を操作・管理するオペレーティングシステム(OS)によって、コンピュータそのものが成長して性能の高いものになっています。それに比べて人間の脳はそういった取り組みがほとんどされていなくて、コンピュータと同じように脳のOSにあたる部分を考えていかなければいけないと。人間の基本的な動作である「見る」、「書く」、「聴く」、「話す」などを司る脳のOSを、動作ごとに特化して研究し、例えば「見る」という動作を深く研究することによって、今の能力の2倍も3倍もアップさせ、OSを整備することでこれを自由自在に使いこなすことができるようになります。

 その「速脳術」の入口として、みんなが情報を入れるために、また入れ込む容量を増やすために取り組んだのが、まず速読で、次が速聴でした。この速読と速聴は、実はゲームでも画面を見たり、音を聴くように、よく使われる能力だったわけです。そこで特化して応用できないかというところからスタートして、ゲームをするだけで、本が速く読めるようになったりとか、聴く能力もアップできるというのが、今回のゲームソフトに結びついていきました。

――ということは、ゲーム化を最初に考え付いたのは川村博士ということですね?

川村博士: はい。普通のゲームでもある方法でやると、読む能力や聴く能力が上がるというのをパテント(特許)に出しています。データ化するために、中学生や高校生に実際にゲームをしてもらって、読む速度や聴く能力が上がっているのを1年くらいかけて調べました。実験でプレイしてもらったのは2時間だったのですが、中学生や高校生たちは、いままでの教材ですと、単純な繰り返しなのでちょっと飽きてくるかなというのが一番の弱点だったのですが、これがゲームになると飽きずにずっとやっているんですよ。飽きずにのめりこんでやっていけるというのがゲームの力で、ゲームを楽しんでいるだけなのに、そこにいくつもの仕組みを入れているので、知らない間に読む速さが2倍、3倍、10倍になるという結果が残せました。

 そこで読書離れが進み、一方でゲームする人口が増えていますから、そこのジョイントして商品を進めていこうということで、マイルストーンさんと組んで開発しました。マイルストーンさんはゲームを開発しているだけあって、私たちで作った基礎的なものを上手にゲームの形にする力は大したものだなと思いました。こうして、とっつきにくい脳力開発というものが、楽しみながら身に付いていくという域にまでだいぶ来たかなと。これをさらに磨いていけば、もっと楽しいものになるんじゃないかなと思っています。ゲームの力に頼らざるを得ない時代ですから、今回のゲーム化プロジェクトは嬉しくて、ワクワクしています。

――大高さんは、速読・速聴をゲーム化することになったときはどう思いました?

大高氏: 速読や速聴はガチガチの教材をイメージしていて、実際にサンプルを見たときもそうだったので、それをどうゲームに落とし込めばいいのかなというところが一番困ったというか、戸惑いを感じました。

 速読・速聴を盛り込むにあたっては、われわれはゲーム会社なので「速読をいかにゲームとして売るか」を考えたときに、遊びながらトレーニングできるものを考えようというコンセプトは決めました。川村先生の特徴としては、画面を見ているだけでトレーニングができてしまうというのですが、ゲーム機でこれをやった場合、ユーザーが受け入れてくれるとは思いがたいので、DSにはせっかくタッチペンがあるのですから、直感的な操作を生かしたゲームを作っていこうと。ゲームは基本的には川村先生の、例えば目の筋肉を鍛えるものや視野を広げるトレーニングは交互に表示するようにすれば、実現できるよな、というように考えながら、現在のようにゲームとして仕上げていきました。

――その際、川村博士からは何かアドバイスなどはありましたか?

川村博士: 教室や実験のデータを取るときに使用していたゲームソフトなどをお貸しして参考にしていただきました。

大高氏: 実際に川村先生がレースゲームや落ちものパズルなどのゲームコンテンツを持っていましたので、お借りして勉強しました。

川村博士: ありとあらゆるゲームを使って、どこをどういじればゲームが終わったときに能力が上がるかというデータを持っていましたので、それをお見せして、ヒントにしてもらいました。基本的な理論の部分は持っていましたが、それをいかに飽きさせずに楽しませるかというのは、別の技術ですので、そこは全部、ゲーム開発のプロフェッショナルであるマイルストーンさんの方にお任せしました。

――ゲームを開発する上で苦労したところはありましたか?

大高氏: どれだけ速読の理論を残しつつ、遊べるゲームを考えるのが一番苦労しました。ゲームという枠に入れるために、トレーニング以外のインターフェイスやデザインなども考えなければいけなかったのですが、そのデザインの方向性はなかなか決まらなくて、社内でも揉めていました。製品ではだいぶストイックなトレーニング系のデザインにしてあるんですけど、僕は最初、もっとくだけた感じで作ろうと考えていました。ナビゲーションキャラクタは実際には先生を使っているのですが、最初はセクシーな女の人を出して、いい得点を出したらお色気シーンが出るとかまで考えていました(笑)。ですが、速読を実践されている人は自己啓発でまじめにやっている方が多いということでしたので、今の形に落ち着きました。それでデザインの遊び心は今度のDS「耳で右脳を鍛える DS聴脳力」でちょっと取り入れてあります。

――ゲームをプレイしてみて、効果はありましたか?

大高氏: 何度もプレイしましたけど、デバッグ作業でしたので効果はよくわかりません(笑)。ですが、速読の理論を知ることができたので、文章の読み方を1文字1文字追うのではなく、塊で捉えるというように変えようとしています。あと、目を動かせば動かすほど疲れて見えなくなると思っていたのですが、逆に鍛えれば鍛えるほどよく見えるということだったので、帰り道とか目の筋肉を動かしてみたりとか、普段から意識するようになりました。


■ 能力開発ゲームは現代人にとってのワクチン!?

――実際に完成したゲームを見ての感想は?

ゲームを入口に速読に興味を持って欲しいと語る川村博士
川村博士: 「速脳術」は米国でも「eyeQ」という名前で展開しているので、ゲームを持って行って紹介したら、向こうでも興味があるようで、ゲームメーカーがアイディアを暖めているようです。

 今回のゲームソフトはすべて2,940円と書籍に比べるとずっとお求め安い価格になっていて、またゲームということで理論などを理解しなくても手軽に速読・速聴を体験できるので、興味のある人たちにはピッタリはまるのかなと。そして実際に遊んでみて、文章を読む速度が2倍、3倍になっているのを実感して、本格的に速読術を学んでみようと思うキッカケになってくれると嬉しいですし、実際にすでにそうして教室に習いに来られている方もおられます。

 私はペンクラブにも所属していて、若者の読書離れを食い止める方法も研究しているのですが、ゲームで読む速度がアップして、それを試してみるために本を読んでみるというように、ゲームから読書へと逆の流れが生まれ、読書離れも少しは減らせるのではないかなと期待しています。

 また、社会人は上から仕事を強制されるわけですが、その仕事をこなせないとVDT症候群(ディスプレイなどを見続ける作業を長時間続けたことにより心身に支障をきたす病気、別名:テクノストレス眼症)にかかってしまったりするわけです。そこでこのゲームをやって、情報を読み取る速度を上げ、脳も活性化させることで作業時間が大幅に短縮でき、VDT症候群を未然に防ぐことができます。ですから、これらのゲームソフトは“ワクチン”と言ってしまってもいいと思います。会社の経営者から見ても、社員の処理能力が上がれば、それだけ会社のためになるので、社員研修の教材の1つにこういったゲームを取り入れてもいいのかなと思います。

――速読・速聴以外にもゲーム化を考えていますか?

川村博士: 私は考えていますけど、マイルストーンさんは考えていないかもしれません(笑)。能力開発ゲームの市場が盛り上がり、数十数百のゲームを出しても追いつかないくらいの勢いがこれから出てくると思います。手とか口とかの人間の基本的な能力に当てはまるものは持っているので、シリーズで毎月1本ずつ出して、さまざまなバリエーションを揃えることで、飽きることなく能力を開発していけるようになるといいですね。

――最後に読者の皆様に一言お願いします。

大高氏: 川村先生もアイディアがあるとのことですので、これからもタイアップを続けて、ちょっと手が届かない能力開発がゲームで楽しくできるようなゲームソフトを、今後も続々と作っていけたらいいなと思います。

川村博士: まずはこういったゲームに軽い気持ちで入ってもらって、能力開発の最先端の経験をしてもらえればなと。そして、それをベースにもっと能力を伸ばしたいという人のお手伝いをできればいいなと思います。ほかのゲームでもなんらかの能力は上がっていると思いますが、速読は日常でもよく使える能力ですので、基本的な能力を上げるという意味でもぜひ試してみていただきたいです。また、能力開発に興味はなくても、基本的にはゲームですので、単純に楽しく遊んでもらえれば嬉しいです。

(C)2007 新日本速読研究会/ MILESTONE INC.

□マイルストーンのホームページ
http://www.mile-stone.co.jp/
□「耳で右脳を鍛える DS聴脳力」のページ
http://www.mile-stone.co.jp/product/chonoryoku/chonoryoku_top.html
□「目で右脳を鍛える 速読術ポータブル」のページ
http://www.mile-stone.co.jp/product/sokudoku/sokudoku_top.html
□関連情報
【6月19日】マイルストーン、聞く力を鍛えることで右脳を活性化
DS「耳で右脳を鍛える DS聴脳力」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070619/sokucho.htm
【6月14日】マイルストーン、新日本速読研究会の川村博士監修
PSP「目で右脳を鍛える 速読術ポータブル」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070614/sokudoku.htm

(2007年7月26日)

[Reported by 滝沢修]



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