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★PCゲームレビュー★

動乱の時代に自分だけの世界史を創造する
至高の歴史RTSに完全日本語版が登場!!

ヨーロッパユニバーサリスIII
【完全日本語版】



 西暦1453年から1789年のおよそ300年間、全世界に存在する大小の国々が織り成す興亡の歴史。本作はこのような壮大なモチーフをテーマにした本格的なヒストリカルRTSだ。開発元のParadox Interactiveは、欧州史、世界史をテーマにした骨太のゲームシリーズを世に送り続けていることでコアなファンから熱狂的な支持を集めるデベロッパーだ。そのParadoxが送る最新作である本作は、従来のタイトルに比べ遊びやすさを向上させるとともに、プレーヤー自身による「歴史の創造」という、ゲームならではのダイナミクスを前面に押し出した。近世以降の壮大かつ複雑な歴史の流れに参加するだけでなく、自分の手でその歴史を作り上げていくという醍醐味に溢れた作品となっているのだ。


■ 歴史の「創造」に重きが置かれ、プレイしやすく洗練されたゲームシステム

全世界が舞台となる近世の歴史創造RTS。弱小国家から大国まで、プレーヤーの選択肢に幅広い自由が与えられている
 このゲームを手にとって、まずはじめに驚くのはその規模の大きさだ。舞台となるのはヨーロッパだけでなくアジア・アフリカも含む全世界。ユーラシア、アフリカ、南北アメリカ、オーストラリアを含む世界の陸地は1,700以上の地域(州)に分割され、そこには250にも上る国や勢力がひしめき合っている。小国ひしめきあう中欧も、もちろん東アジアの大国 明や日本もカバー。小国から大帝国まで、このゲームではそのいずれでもプレイすることができる。

 扱われる時代は1453年から1789年。いわゆる近世と呼ばれる年代だが、開始年と終了年のどちらも世界史のターニングポイントとなる大イベントがあった年だ。開始年の1453年といえば、コンスタンティノープルが陥落し東ローマ帝国が滅亡するとともに、英仏の間で戦われていた百年戦争が終結した年にあたり、大航海時代のあけぼのにあたる年代でもある。終了年の1789年は、フランス革命が始まり、ジョージ・ワシントンがアメリカ合衆国初代大統領に就任、中世から続く国家のあり方が激変した。

 このおよそ300年間は、欧州勢力の対外進出により世界地図が大きく塗り替えられた期間でもある。本作のゲームシステムはそういった歴史の流れを再現するために、外交・交易・殖民・戦争といった国家レベルの戦略を扱うものだ。本作では、プレーヤーは一国の指導者となり、周辺国の動向に注意を払いながら300年間を超える波乱の時代を生き抜き、あるいは滅び、自分だけの歴史を創造していくことになる。

 ここで前作「ヨーロッパユニバーサリスII」との違いに軽く触れておこう。前作ではある年代が来ると、史実通りの事件が起こるといった感じで歴史イベントが設定されていた。たとえば、「イギリスは1642年になると必ず内戦が起こる」といった按配だ。本作ではうってかわり、この種の決め打ち的な歴史イベントは存在しなくなっている。

 その代わりに、歴史イベントはプレーヤーの国家運営の結果として発生するようになった。例えば上記のようなイベントは、イングランドにプロテスタントが普及していなければ発生しないだろう。本作においてプレーヤーは史実どおりの歴史に参加するのではなく、全く新しい歴史を創造する力が与えられているのだ。この点について、史実の追体験に重きをおくプレーヤーなどからは批判的な評価もあるだろう。しかし筆者としては、歴史の動きの仕組みを再現しようとする本作の試みを好意的に評価したい。


チュートリアルでは、ユーザーインターフェイスと国家運営の基礎を学ぶことができる
 壮大なテーマを持つゲームではあるが、実のところプレーヤーがやるべきことはそれほど複雑ではない。国家運営の機能が必要最低限の操作で果たされるように簡潔にまとめられており、プレイのしやすさで言えばParadoxの製品中では随一の完成度になるだろう。本作の基本的な操作とゲームシステムの理解に要する時間は、筆者の感覚だと3時間程度。1日プレイすれば、ゲーム中の全要素をおおむね操れるようになる。ゲームは1日単位でリアルタイムに進行し、速度調整により、最速で1年が5分程度で経過する。逆に戦争など忙しい操作が必要な局面では低速モードやポーズをするため、1日が数時間にもなる場合もある。

 その本作におけるプレーヤーの国家運営の大要素は、内政、交易、殖民、外交、軍事。いずれも独立したインターフェイスで操作するようになっているが、おもなユーザーインターフェイスは画面上部にまとめられており、アクセスは容易だ。財政や政治体制などの内政に関しては画面左上の国家メニューから、交易や外交はマップ上の対象地点を直接クリックして表示されるボタン類から操作する。

・領地経営と財政管理が本作の要

 まず内政から見ていこう。国家の基本的な構成要素は地図上に存在する各領地であるが、領地は金銭と人的資源という2大資源を生み出す存在。金銭収入の量は領地の人口と税率、交易品や建築物などの要素によって決まるが、重要なことに、そこから得られる収入には「年間収入」と「月収」の2種類がある。

 年間収入は毎年頭に徴収される人頭税で、直接国庫に入れられる。もうひとつの収入形態である月収は毎月頭に徴収される小額の収益で、これは直接国庫に入らず主に技術研究に当てられる。予算スライダーを調整することで技術研究に当てる資金を減らして国庫に貯金することも可能だが、その割合に応じてインフレが発生してしまうのがミソだ。インフレのパーセンテージに応じてすべての金銭コストが上昇していくので、月収をむやみに国庫に入れるのはとても危険。このため基本的には、軍隊の編成や施設の建設といった国家事業は年間収入の範囲でやりくりしていく必要が出てくる。

 特に本作では、内政・外交・軍事といったプレーヤーの選択肢の全てにおいて金銭が関係しており、健全な財政運営がほぼ国家の健全な運営とイコールになっている。一時的に金銭を得る方法としては戦争に勝って賠償金を得るといったやりかたもあるが、戦争が非常にハイリスクな本作では定収としてアテにならない。また、大規模な軍隊はそれを持っているだけで大きな維持費を必要とし、財政を圧迫するのだ。そこで、金銭収入を補強する存在として本作で最重要視されているのが交易だ。

領地経営の直接的操作は建物の建築。建物は技術力の向上により解禁されるので、選択の幅が次第に広がっていくような流れになる 月収の使い道はこのパネルで調整。国庫に入れる金額を増やすと、それに応じてインフレが発生してしまうので注意が必要だ

・小国が大国を出し抜く格好の手段「交易」

 交易は、国家の戦略資源のひとつである商人を、交易中心地に送り込むことで収益を上げる手段だ。世界中のいくつかの都市、例えばヴェネツィアやジェノア、フランデレン、マチュピチュ、ビハール、マラッカ、摂津のような都市は交易中心地としての機能を持っており、そこに1単位の商人を送り込むと、当地の他国の商人との競争が自動的に行なわれ、開業に成功すれば1単位の市場シェアを獲得することができる。続けて商人を送り込み続けて6単位以上のシェアを獲得すると市場独占となり、市場全体の大部分の利益を確保することが可能だ。そして複数の市場で独占を維持できれば、その収益のインパクトは超大国の税収をもしのぐことがある。

 この交易システムのポイントは、送り込む商人の人数とその競争力が、国家規模にほとんど関係がないという部分だ。商人の数は国の安定度と国策によってほぼ決まり、競争力は国策と交易の技術レベルにより決まる。つまり複数の大陸にまたがる大帝国も、ひとつの領地しかもたない小国も、市場の競争においては平等に扱われる。それに、戦争などで国の評判を落とした勢力は市場での競争力をも失うため、この点ではむしろ領土獲得に走らない小国のほうが有利だともいえる。このように交易は、財政面で小国が大国を上回る原動力にもなりうるし、プレイしてみると実際に小国が莫大な利益を独占していたりする。そういった国は兵士を徴兵する人口には欠けるが、傭兵部隊を雇い大規模な軍隊を維持できるため、大国にとっても侮れない存在となる。

市場は6段階の開業人数と国家の交易効率により、国の規模に関係なく利益を生み出す 地図の広がる後期では、世界中の市場に商人を送り出すために統計画面を使うと便利だ

・国家の大方針を決める「国策」と、全てに影響する「安定度」

統治技術の開発による新たな「国策スロット」への国策採用は安定度のペナルティなしに実行可能だが、数十年に一度のイベントになるため慎重に選択したい
 税収と交易による収入のほとんどは月収として毎月の技術開発に充てられるが、本作における技術は「統治」、「生産」、「交易」、「海軍」、「陸軍」、そして厳密には技術ではないが「安定度」にわけられる。生産と交易の技術は国家の収入率を向上させ、また領地に建設できる新たな建造物を増やしていく。海軍と陸軍の技術は、軍隊の士気と新たな兵種を追加するために必要だ。

 そして本作ならではの「統治」の技術は、新たな政治体制や「国策」制定のスロットを解禁する重要な存在。プレーヤーは適切な「国策」を制定することにより、国家の大方針を左右するボーナスを得ることができるのだ。例えば「新大陸の探索」の国策は、未知の領土への侵入と地図への書き込みを可能にする「征服者」、「探検家」を解禁するという、本作では絶対に欠かせない要素であったりする。

 そして月収の他の使い道である「安定度」は、本作ではゲーム全体を通じてその維持に神経を尖らせるべき重要な存在だ。これは国家がどれくらい安定し、支配が徹底されているかを示す指標で、安定度は-3から+3まで振り幅がある。これは税収、軍隊の士気、国家の成長力などあらゆる面に影響するほか、支配の不安定な地域における反乱発生率にもダイレクトに関係する。安定度が低い国家は反乱が起こりやすいほか、戦略資源である商人の輩出速度も低下してしまうため、財政的に厳しい状況に陥りやすい。しかし広大な領土を持つ大国であるほど、安定度を向上させるために必要なコストが増えていくのだ。この点は小国にとってかなり有利な点だ。

国策や政治体制の変更は大きな安定度ペナルティがあるので、安定度が向上するイベントの発生を待ち、これを利用して安定度が低下した状態が長期持続することを避けたい

・ローリスクだが時間のかかる植民地経営は、後期の大国化への鍵となる

遠方への植民は非常に長い期間がかかる。例えばイギリスが台湾を属州化するには最短でおよそ20年は必要だろう
 国家を成長させていくためには、最終的には広大な領土を領有することが王道であるし、またそれが大国の証明でもある。本作に勝利条件は無いため、プレーヤーは必ずしも大国化を目指さなければならないわけではないが、より確実な国家の生存を目指すならば、新領土の獲得は常に目指すべき目標になってくるだろう。そしてこの点こそが、ゲーム中に登場する全ての国家が共通してもつ価値観でもある。

 本作における新領土の獲得手段はおもに「殖民」と「戦争」だ。ゲーム開始時の1453年、世界地図は自国の文化圏に属するごく限られた範囲しか見えていない。そこで「新世界の探索」という国策を採用することで、未知の領域を明らかにできる「征服者」、「探検家」の登用が可能になる。彼らにアフリカ大陸やアメリカ大陸を探索させ、どの国家にも属さない無主の地を見つけることができれば、そこに戦略資源「植民者」を派遣して植民地化することができる。植民者は1単位100人として計算されるが、植民地化に成功した領地に続けて植民者を送り続け、人口1,000人を超えればその領地は属州に格上げとなり、内地と同じく施設の建設などが可能になる。さらに時間がたてば「中核州」となり、軍隊の募集も可能になり、完全に自国領土として機能し始める。

 植民者の派遣には、距離に応じて半年から1~2年という時間と、それに応じた金銭が必要になる。また、1箇所の土地に複数の植民者を同時に派遣することはできないため、例えば派遣に1年を要する土地を属州に格上げするには最短で10年の時間が必要となるわけだ。したがってコストを回収するまでには非常に長い長い時間がかかるため、計画的な勢力拡大の一手段として継続的におこなうようにするのがよい。また殖民の効率は交易と同じく国家の規模と全く関係がないので、小国が勇躍世界の舞台に踊り出る最高の手段でもある。だが、財政難など国家運営に余裕のない状況ではなかなか取り掛かりにくいのも確かだろう。

・戦争は最後の手段だが、本作においては極めてハイリスク。外交オプションを活用しよう

戦争もリアルタイムで進行する。布陣、射撃、白兵戦といったフェーズ毎にサイコロが振られ、そこに将軍能力による補正が考慮され1日毎の損害比率が決定される
占領しても、領土の主権を手に入れるためには講和条約で正式に割譲させる必要がある。それまでは戦果の競い合いだ
 手っ取り早く領土を拡大する最終手段として「戦争」が存在する。本作における戦争のありかたは非常にハイリスクで、ローリターンになりやすい。他国から戦争をふっかけられた場合は別だが、自国から宣戦布告する場合「安定度」に大きなペナルティが与えられる点がまずひとつのリスク。同一の宗教グループに属する国に対する宣戦布告で-1、大義名分無しの場合-2、友好条約を破る形になればさらに-3といった按配だ。一度失った安定度は容易に戻らないので、プレーヤーは戦争を仕掛けたくても安定度ペナルティを気にして考え直すことが多くなるだろう。

 戦争の遂行は各領地の占領によって進められていく。軍隊同士の衝突に勝利するか、防備されていない領地に軍隊を入れると攻城戦が始まる。ここで城塞に対する突撃を指令して一気にカタをつけることも可能だが、莫大な兵数が犠牲になるため相当な余裕が無ければ実行不可能だ。ほとんどの場合、包囲状態を維持して自然に陥落するのを待つことになるが、これには長くて半年程度の期間が必要になる。その間、該当の部隊は領地に張り付けになり機動できないため、敵の侵入を跳ね返すための別働隊が絶対的に必要だ。このため一気に勝負をつけるには相手の領土を埋め尽くすほどの大軍勢が求められる。これもまた戦争をおこなう大きなリスク要因となっている。

 そして占領した領土が即座に自分のものになるわけでもない。領土は最終的に講和条約の条件として「割譲」させる必要があり、占領した領土のごく一部しか手に入らないことがほとんどだ。もし敵国の100%の領土を完全占領したならば全領土を自国に組み込む「併合」という幕引きの方法もあるのだが、それをやってしまうと国家の評判が大幅に落ち、市場競争力は下がり、外交面で不利になるほか他の国からの宣戦布告を誘発しやすくなってしまう。そこで講和条約の一種としてより緩やかな「属国化」というオプションがある。これは該当国の税収の半分を手に入れるという利益と、最小限の評判の低下という選択であり、安定した国家運営を目指すならこのような選択も必要になってくるだろう。

軍隊の編成は各属州毎に徴募した1,000人単位の部隊を1箇所に集め、束ねた上で必要であれば将軍を任命することでおこなう

 ある程度国家が大型化してきたならば、近隣の国に金銭の贈り物をするなどして関係を改善し、軍事同盟を結んで長期の関係を維持した上で、両者の同意による属国化、そして併合という道も取りえる。これには最低でも数十年という長い期間を必要とするため無計画にはできないが、リスクの高い戦争を使わずに領土を拡大する手段として常に選択肢に入れておきたい。

 このように本作は、大国への成長とその健全な経営というものが、非常に難しいバランスで成立するようなゲームシステムとなっている。その反面、小国が絶対的な不利に陥ることもないバランスだ。それだけに世界地図を1個の勢力が染め上げてしまうような事態は起こりにくいが、プレーヤーがそれを目指すならばかなり手ごわいゲームになってくるだろう。

開始時点の選択では、1453年から1789年までを1日単位で調整できる。同じ場所でも時代によって各国の版図が異なるのが見て取れるだろう


■ 「大英帝国勃興史」─ひとまずはオーソドックスなプレイ内容を紹介

1453年の開始時点では、イングランドはヨーロッパの外れの中堅国にすぎない
フランスの大軍の前に、飛び地であるガスコーニュを守りきることは難しい
 本作はヨーロッパの大国からアジアの小国まで、どんな勢力でもプレイ可能である点が特徴ではあるが、まずはオーソドックスな内容としてイングランドによる大英帝国建設をめざすプレイをおこなってみた。このリプレイをつうじて、本作のゲーム展開の一部をご紹介しよう。

・まずはイングランドからスタート

 ゲーム開始は1453年、100年戦争最後の年だ。開始時点で戦争はまだ終結しておらず、イングランドとフランス・ブルゴーニュ連合とは交戦状態が続いている。まずはこの実入りの少ない戦争を終わらせることからゲームが始まった。ある程度戦果を挙げなければ、敵国もすぐには講和に応じてくれないため、ある程度の戦いが必要なところが悩みどころ。ひとまず遠方のガスコーニュに位置する軍団をドーバー海峡に向けて移動させ、戦線を1箇所に絞って戦う。序盤は軍隊の動員力も経済力もごく限られているので、局地戦に絞って勝利を重ねたほうが有利に展開できるためだ。

 しかし軍主力を撃破しても次から次へ新手を送り込んでくるフランスの国力に手を焼き、短期に終わらせるつもりの戦闘は1460年まで継続することになってしまった。まずはブルゴーニュとの有利な講和に成功。フランスに対しては十分な戦果を挙げるにいたっていないため、さらに戦闘継続を画策するが、大陸に上陸させたイングランド軍主力がほぼ半数にまで磨り減っていたため、ガスコーニュの割譲を提案して敗戦に等しい講和を結ぶハメに。

 しかしこれはそれほど大きな痛手ではない。イングランドの基本戦略として、ヨーロッパ大陸には最低限の橋頭堡を確保しさえすればあとは不干渉を貫くという立場だ。グレートブリテン島とアイルランドを版図に組み込むことができれば、海外に雄飛するための基礎国力として充分だろうし、欧州勢の争いは複雑な同盟関係のために広範囲に飛び火しやすく、ちょっとした戦争に意外と手を焼くためだ。イングランドが飛躍するためには、欧州というしがらみから手を切らなければならない。

本土に近いブルターニュに主力を集中し、敵同盟の一角を切り崩すことに成功 膨大な戦力を持つフランスが相手では戦闘が長引くにつれて不利に。1属州の割譲を犠牲にして停戦成功

・スコットランドとアイルランドを平定し、イギリス成立

属国化のためには優勢な国力と良好な関係、そして長期持続する軍事同盟関係が必要
 その後フランスからの度重なる挑発行為に悩まされながらも、領土的な増減は無く数十年が経過。精力的な外交が功を奏し、1480年ごろスコットランド王国との同盟締結に成功。ポルトガルとの同盟はゲーム開始時から維持しているので、それなりの規模を持つ国との同盟関係が二つになったということになる。また、本作における長期の同盟関係は「属国化」への道を開くため、友好関係の維持は非常に重要だ。

 この状況を堅持しつつ内政に精を出し、1490年にスコットランドの属国化に成功。軍事力をアイルランドに差し向けて軍事併合を進めつつ、1506年にはスコットランドを平和裏に完全併合することができた。領土的、文化的に近い位置にある国は、併合要求に従いやすいらしい。この後ポルトガルの併合にも挑戦してみたが、そちらは全く成功の気配が無かったのであきらめることになった。

 そして1520年に「イギリス統一」イベントが発生。グレートブリテン島およびアイルランド島の全ての属州が中核州となり、国号がイギリスとなった。これにより国力を増したためか、フランスの態度も王族の婚姻を提案してくるなど大幅に軟化。当面の脅威は去り、いよいよ欧州からは距離をることができそうなので、これより先は対外進出政策を推進していくことになる。

アイルランド諸国に対しては武力を用いたが、スコットランドは平和裏の併合に成功した

ついにイギリス統一イベントが発生。条件としてはグレートブリテン島の完全統一が必要だ。その効果はごらんのとおり、歴史的な重みを感じる

・北米への植民政策で一躍超大国に

海外進出の皮切りとして国策「新世界の探索」を採用。これで未知領域への進出が可能となる
1549年には北米東岸への植民に成功。それと平行して征服者部隊を使い未知領域の探索を続ける
植民開始から50年、原住勢力の併合に成功。植民地は拡大の一途をたどる
 1540年ごろ、統治技術が充分なレベルに達したため、国策に「新世界の探索」を採用。早速新大陸への探索を開始する。この国策で雇える「探検家」は海上ユニットの指揮官に任命することで、未知の海域を明らかにすることができる。また同様に「征服者」を陸上ユニットの指揮官にすると、未知の陸地を探索することが可能。まずはアフリカ大陸には目もくれず、イギリスに近い北米地域への探索を実行。

 この時点で他の欧州各国は北米地域に植民者を出しておらず、どうやら一番乗りを果たすことができたようだ。早速植民者を派遣し、綿花やサトウキビなど単価の高い産物を持つ領地の植民地化を開始。1549年に第一号の植民地が誕生しておよそ40年、欧州の戦争に巻き込まれることも無く植民地の拡充に精を出す。北米東岸に建設した植民州は1580年代に軒並み中核州への成長を果たし、軍隊の動員が可能に。

 あらかじめ国策として「神の御心のままに!」を採用した効果により、異教徒に対する宣戦布告は安定度ペナルティなしに実行できる。そこで植民地伸張の邪魔となる原住民国家チェロキーとクリークに対して宣戦布告。戦争は2年半程度で完結し、結果として両国家を完全併合。原住民国家の技術レベルは著しく低く、最新の装備を持つ欧州の軍隊と戦えばたちまち全滅してしまうので、植民地における戦争はこのように圧倒的な差がつきやすい。これが新大陸への進出の最大のうま味でもあるわけだ。

 北米の経営が安定した矢先、中央ヨーロッパの雄となっていたザクセンとの間に継承戦争が勃発。継承戦争は婚姻関係にある国で国王の崩御があったときに、継承権を持つ他国との間で王座を争う結果発生する。イギリスのような君主国では欧州各国と良好な関係を保つために婚姻関係を結ぶことは重要な外交オプションだが、ときにこのような形で火種になってしまうことがあるのだ。

 しかし、もはやイギリスは北米の広大な領地から莫大な収入を上げる国。欧州事情に深入りする気はまったくないが、ちょっとやそっとの国から攻められたところでビクともしない国力を誇っているのだ。ザクセンとの継承戦争は大国スウェーデンも巻き込んだ大規模なものとなったが、イングランド兵士の大量動員により早期に終結。もはや欧州に脅威となる勢力はおらず、ますます対外進出への熱が上がるばかり。1630年には中米近くまで植民地を広げ、北米の領土拡張は一段落。次に目を向けたのはもちろん、史実でも大英帝国の重要な一部であったインドだ。

・そして「太陽の沈まない国」へ

大規模な艦隊を建造し、一路インドをめざす。イギリスは海に面した属州が多いためこのような展開に有利だ
技術格差があるため、同数程度の相手であれば圧勝できるのがこの時代の植民地戦争だ
広大な版図を誇る国に対しては大軍を投入してもかなりてこずるハメに。講和のタイミングを間違えないことが大切だ
 インドは北米大陸とは違い、既に文明化された大国がひしめく危険な地。1630年時点ではインド亜大陸の南部を領有するヴィジャヤナガル、西部のオリッサ、東部から中東にかける広大な帝国ラージプートという勢力地図だ。まずは10年以上をかけてアフリカ東部に位置する島々へ植民を行い、橋頭堡を確保。続いてイギリス本国で大規模な軍団と艦隊を編成し、ヴィジャヤナガルの属国化へ向けた動きを起こした。

 インドは動員力が高く大軍で迎え撃ってくるものの、技術力では遥かに劣る。士気旺盛なイギリス軍は2回にわたる戦役でインド亜大陸南部のヴィジャヤナガルの属国化に成功。いくつかの直轄地を確保しつつ、立て続けにラージプートとの戦役に突入。ところがこれが思わぬ泥沼になってしまった。

 ラージプートはインド北西から中東にかけて広大な領地を保有しており、兵士の動員力が半端ではない。イギリス本国から送り込んだ軍団のいくつかがほぼ壊滅するという被害をうけ戦争は長期化。時間をかけて大戦力を整え、少しづつ領土を削り取るという戦役を数度にわけて行ない、周辺国も含めた完全な属国化が完了したのはじつに1707年のことである。足掛け70年をかけ、ようやくインド亜大陸と周辺国家の制圧を完了することができたわけだ。

 イギリスはこの間にもインカ帝国の完全併合を成し遂げ、直轄する領地だけでも100を越え、世界中に属国を抱える超大国へと成長した。領土はアメリカ、欧州、インド、極東の台湾までまたがり、今回のプレイの目標であった大英帝国の建設はひとまず達成。ポルトガル、スペインなど他の欧州勢力は南米を中心に植民地を抱えているが、イギリスの規模には遠く及ばない。

 この後1789年までゲームは続くことになるが、安定度の維持に最大限の注意を払ってきたため統治は安定、国内に抱える問題はなにもなく、外交的にもフランス、デンマークなど大国と長期の同盟関係にあり憂いはない。唯一の心配の種は「アメリカ独立戦争」のイベントが発生するのではないかということだが、それはイギリスの統治如何によって、歴史的に決まってくることなのだろう。

1704年にはインカの完全併合にも成功。軍隊同士の衝突はイギリス軍の圧倒的有利に終わり、戦争も短期で終結したため非常に効果的な作戦となった

外交マップモード。インド周辺は完全属国化に成功した。この時点で植民地は台湾まで広がる ヨーロッパでもポルトガルを属国としたほか、フランスやデンマークなど大国との友好関係が続く 外交がうまくいき、イングランド歴代王はほとんど神聖ローマ帝国の皇帝に就任。内政ボーナスがおいしい


■ ゲームとしての完成度とプログラムとしての完成度が一致しない点に難あり

アメリカ独立戦争時代のプレイ。大きな国力を誇るイギリスの前に弱小のアメリカ軍は非常に厳しい戦いを強いられる
ゲームを完了すると、それまでの国家の歩みが統治者毎の年代記風にまとめられる
 というわけでイングランドでのプレイ内容をご紹介したが、もちろん本作ではこのように大国を志向しない、小国の立場でのプレイも可能だ。オススメとしては、ヴェネツィアやジェノアといった商業的に発達した小国でのプレイ。小さい領土ながら大規模な交易収入を上げる国家運営は、大国とは違ったユニークな展開が楽しめるだろう。また規模的には中堅国ながら意外と恵まれた場所に位置する日本でのプレイも面白い。本作では日本は統一国家として扱われており戦国時代のような小国乱立はないが、そのあたりはMODでカバーされているのでチェックしてみると面白いだろう。

 しかし本作をプレイしていて気になるのは、ゲームとしての面白さに関するものではなく、コンピュータープログラムとしての完成度についてだ。序盤はともかく軍事ユニットが膨大な数にのぼる中盤以降になると、突然ゲームが無反応になったり、操作が異常に重くなるといった問題が頻発する。特に重さは致命的で、AI国家が編成した異常な数の部隊数を抱える海軍などにカーソルを載せるだけで、数秒間ゲームが停止するという有様だ。これでは普通にプレイすることすら苦痛になってしまう。

 このあたりの完成度の低さは、ゲームプレイの快適さをかなり損なってしまうため非常に残念。ひとまずオートセーブ機能がついているため、突然デスクトップに戻されるようなクラッシュの仕方は致命傷にはならないものの、繰り返し直面するとだんだんとやる気をそがれてしまう。完全日本語版となる本作では、オリジナル英語版のバージョン1.2をベースにしているようだが、その海外版では現在バージョン1.3が最新リリースとなっている。パッチのリリースによりこのあたりの不具合も改善されている点があるはずなので、ぜひ日本語版にも最新パッチのサポートがほしいところだ。

 とはいえ、本作が歴史RTSとして非常にユニークな内容を持つことには変わりない。大国から小国まで、欧州各国が全世界を巻き込んで世界地図を塗り替えた時代、プレーヤーはその中でどのような歴史をつむぎ出すのだろうか。重厚で興味深いゲームを求めるオトナのPCゲームファンならば一度は挑戦してみたい、そんな価値のある作品である。

(c)2007 Paradox Interactive. All rights reserved. Europa Universalis is a trademark of Paradox Interactive.


    【ヨーロッパユニバーサリスIII 完全日本語版】
  • CPU:Pentium 4 1.9GHz以上
  • HDD:1GB以上
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  • ビデオメモリ:128MB以上


□サイバーフロントのホームページ
http://www.cyberfront.co.jp/
□「ヨーロッパユニバーサリスIII 完全日本語版」のページ
http://www.cyberfront.co.jp/title/eu3/

(2007年7月26日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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