【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

★PCゲームレビュー★

3作のシリーズにより深まるキャラクタの魅力
大技連発の派手で爽快感のある戦闘にも注目

「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd」

  • ジャンル:アクションRPG
  • 発売元:日本ファルコム
  • 価格:7,980円(限定特典版:直販価格)
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP/Vista
  • 発売日:6月28日発売



 日本ファルコムの「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd」が6月28日に発売される。本作は「英雄伝説 VI 空の軌跡」、「英雄伝説 空の軌跡 SC(セカンドチャプター)」に続く、「空の軌跡」シリーズ3作目に当たる。「SC」のクリアデータからのキャラクタデータの引き継ぎが可能になっており、シリーズのファンならば3つの作品を通じてキャラクタと向き合い、彼らのエピソードを楽しめる。もちろん本作は独立した作品として、シリーズ初挑戦のプレーヤーでもプレイ可能だ。今回のレビューでは、序盤の展開を中心に各要素を紹介していきたい。


■ 3作のシリーズで掘り下げられていくキャラクタの魅力

「SC」でも活躍したケビン。異世界や悪魔など、今作のストーリーはより神話色を強くしている
ぶっきらぼうながら的確に物事を言い表すリース。真顔で過激なことを言ったり、食べ物への執着が凄かったり、エキセントリックなキャラクタである
断片的に語られるケビンとリースの過去。リースの姉ルフィナは2人にとってとても重要な人物だ
 今作「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd」(以下、「3rd」)では、主人公は遊撃士エステル・ブライトとヨシュア・アストレイから、「SC」で重要な役割を果たした関西弁を使う巡回神父 ケビン・グラハムと新キャラクタのリース・アルシェントにバトンタッチする。ストーリーは「SC」のラストから半年後に始まる。前作の最終決戦場である浮遊都市リベル=アークが崩壊し、残骸が沈んだヴァレリア湖から発見された謎のアーティファクト(古代文明の遺産)レクルスの方石。ケビンとリースはこの方石が大きな鍵を握る謎の異世界で冒険をしていくこととなる。

 2人を助けるのは、「封印石」という宝石に囚われてしまった人々だ。ケビンとリースにより封印から解放され現われるのは、研究熱心な少女ティータや、次期王女を守る親衛隊隊士などシリーズを通してプレイしてきたファンにはおなじみのキャラクタ達である。ケビンとリースは彼らと協力しながら世界を探索していく。

 本作の最大の魅力は前2作を通じて冒険を共にしたキャラクタとさらに関係を深めていけるところにあるだろう。セーブデータを3作に渡って引き継げるというアイデア自体、あまり例のないものだ。前作で育て上げたキャラクタをさらに強く成長させられるという、ファンが夢見たシチュエーションが実現している。

 「空の軌跡」シリーズでは4人パーティーで冒険をするが、ケビンとリース以外の2人のメンバーは自由に設定できる。技や魔法の強さといった性能だけでなく、キャラクタそのものの魅力や、大技の派手さ、または出演声優といったプレーヤーの思い入れでパーティーメンバーを設定していける。お気に入りのキャラクタを集中的に育てたり、全部のメンバーを成長させたりと、プレーヤーのスタイルが強く出るだろう。

 加えて魔法を使うための「オーブメント」の設定など、自由度の高いパーティーのカスタマイズが可能だ。今作はシリーズ最多のパーティーキャラクタが登場するという。さらに各キャラクタのエピソードや、キャラクタの特性を活かしたミニゲームなども用意されており、本作にはキャラクタの魅力をさらに広げる仕掛けが随所にある。

 一方で、正直初心者には敷居が高い作品になったとも感じた。ゲーム自体は前作のセーブデータがなくても、まったく新規の状態から進めることができるが、いきなりレベル90からのスタートで、キャラクタのHPは1万を越えており、敵がいきなり数千のダメージを与えてくる。「ドラゴンボール」に代表される少年漫画のような“強さのハイパーインフレ”を感じた。

 ストーリー部分でもリースという魅力的な新キャラクタは登場するが、他の主要人物は全員知り合いで、「SC」までのストーリーを知っていることを前提に話が進む。筆者は「1」、「SC」ともプレイしているが、「SC」はエンディングまでプレイしていないこともあって、直近の話の流れがよくわからず、ちょっとした疎外感も感じた。追加されるエピソードも、「SC」の後日談ということもあって、少し感情移入がしづらい。

 また、本作独自のゲームルールに関するチュートリアル要素も少ないところも気になった。ゲーム自体はモンスターと強力なキャラクタとの大技合戦という雰囲気で駆け引きも面白く、独立したゲームとしての楽しさをきちんと備えているが、本作の魅力は前2作をきっちりプレイしておくことで数倍にも大きくなると感じられた。

 とはいえ、3作もの長い物語で続けて語られ、掘り起こされるキャラクタ、世界の魅力というのは他のRPGの追随を許さないスケールを実現したと思う。ゲームではあまり例がない“実験”ともいえるユニークな展開だ。本作がプレーヤーの間でどのような評価を受けるか興味のあるところだ。また、この作品は「英雄伝説VII」に続く物語であるということがアナウンスされており、その展開も気になる。“彼ら”との3度目の冒険である。他のゲームでは体験できないキャラクタとの“深い繋がり”を満喫して欲しい。

最初に仲間になるティータ。範囲攻撃を得意とする有用なキャラクタだ 前作までの主人公ヨシュア。エステルと共に一時的にリベールを離れていたはずだったのだが…… 小悪党ギルバート。前作までのファンにはおなじみの小物っぷりを発揮する
パーティーキャラクタ選択。今作では過去最大数のキャラクタが登場するという 異世界の様々な場所にある扉。対応するキャラクタを連れてくることでエピソードを体験できたり、ミニゲームをプレイできる 今までは背景としてのみ紹介されていたティータの両親が登場したり、今作ではより各キャラクタにフォーカスが当てられたストーリーが用意されている


■ 謎の異世界を舞台に展開する、これまでとはテイストの異なるストーリー展開

武器商人が悪用していたアーティファクトを奪取するケビン。スパイ映画のような展開だ
方石の光と共にケビンとリースは不思議な空間に浮かぶ図書館に運ばれてしまう。ここは一体どこなのだろうか
物語の冒頭からケビンを監視していた影の王。彼の正体と目的は?
 「3rd」では、「方石」と呼ばれる立方体のアーティファクトが物語の鍵を握る。このアーティファクトは半年前に崩壊した浮遊都市リベル=アークが沈む湖から発見された。ケビンはこの遺物の調査にエステル達と冒険をしたリベールを再び訪れる。リベールでは彼と兄妹のように育ったリースが待っていた。

 方石を七耀教会に持ち帰ろうとするケビンとリースの前に、突然仮面の男が現われる。仮面の男に呼応するかのように輝き出す方石、目覚めたケビンとリースは自分達が不思議な世界にいることに気がつく。星空に浮遊する石でできた図書館。その蔵書は何万冊、何億冊にもおよび、本棚そのものが島を作っているかのような場所だ。

 ケビンとリースは方石を通じて話しかける謎の声を聞く。ケビンやリースは自らの脱出方法を探すために、この声と協力することにする。ケビン達はこの謎の図書館「隠者の庭園」を拠点に異世界への探索を開始する。異世界には様々な場所に「封印石」と呼ばれる石が隠されている。これを隠者の庭園で解くことで中に囚われていた人を解放すると共に、異世界の新たな道が開ける。

 封印石に囚われている人々は、導力技術に強い少女ティータや、親衛隊隊士ユリアなどかつてケビンが共に冒険した人々だ。前作までの主人公の一人であるヨシュアも早い段階で登場する。彼らの話を聞くと白い光に目をくらまされて気がつくとここにいたという。ケビン達は仲間を増やしながら冒険をするが、仮面の男達は聖典に語られる強大な悪魔を彼らに差し向けてくるのだった……。

 人々が封印石に囚われる理由、謎の人物達の目的、異世界の探索と、本作は前作までの世界を旅し、小さな事件がやがて世界を……といったようなスタンダードともいえる冒険物語とははっきり違う、独特のストーリーが展開される。異次元空間での、悪夢の旅、といった展開で雰囲気も前作までとは違う。謎が繋がるストーリーと、伝説の悪魔と戦う歴戦の勇者達、というスケールの大きさも、なかなかユニークに感じた。

 新キャラクタであるリースはぶっきらぼうだが的確な言い回しをする独特な話し方や、いつもお腹をすかしているという「腹ぺこキャラ」なところが面白い。まだ断片的ではあるが、リースの姉であり、ケビンととってもかけがえのない存在であったルフィナとの過去のストーリーもとても気になるところだ。

 さらに異世界にある「扉」に触れることで、ティータの両親の話や、元空賊団の少女ジョゼットが兄弟と共に運送会社として更正する話、といった各キャラクタのエピソードに加え、キャラクタ性を活かしたミニゲームなど、本筋のストーリー以外にも楽しめる要素がつまっている。謎を解き明かしていくと共に、キャラクタへの思い入れも深くなっていく。今作で初めて「空の軌跡」に触れたプレーヤーは「SC」までのストーリー展開に強く興味を持つだろう。今作で断片的に語られるエピソードが、前作までをプレイすることでかっちりとはまっていく、という体験も楽しいだろう。

リベル=アークが崩壊した場所から見つかった立方体のアーティファクト「レクルスの方石」 隠者の庭園は街のような機能を持っている場所がある。この大木は様々な食材を販売してくれる 異世界にはいくつもの「封印石」がある。見つけ、封印を解くことで冒険の仲間を得ることができる
最初の異世界である「翡翠回廊」。隠者の庭園と同じ星空に浮かぶ世界だ。スケルトンなどの死霊系のモンスターが待ち受けている
人が1人もいない王都。幽霊などが闊歩している。街の人々はどこに行ってしまったのだろうか
仮面を付けた異形の男。彼はケビンを知っているような口ぶりなのだが ヨシュアのエピソードでは「SC」のラスト直後のストーリーも ジョゼットは攻撃してくるミサイルを打ち落とすミニゲームが楽しめる。飛空挺を守れ!


■ チェインクラフト連発による爽快感のある戦い。ボス戦では試行錯誤が楽しい

オーブメントにクオーツをはめ込むことで様々なアーツが使える。敵にあわせて調整することで有利に戦える
属性を考えて組み込むことでより強力なアーツを使うことができる。目的とするアーツをきちんと把握しておく必要がある
使い方によってはSクラフトよりも強力なチェインクラフト。CPの残量に気をつけて順番を調整しよう
 奇妙な世界を探索する「3rd」では、ゲームの展開もなかなかユニークだ。プレーヤーは方石を使うことでいつでも拠点である隠者の庭園に戻れる。隠者の庭園ではクオーツの合成や武器防具、食材の購入など「街」と同じことができる。さらに「クラフト」を使うためのCP(クラフトポイント)も満タンまで溜めることができるのが大きな特徴だ。

 「空の軌跡」ではキャラクタは魔法に相当する「アーツ」とキャラクタがそれぞれ持っているクラフトという2つの特殊能力を持っている。アーツは結晶回路(クオーツ)をキャラクタが持つ導力器(オーブメント)に装着することで様々な魔法を使用することができる。使用できる魔法はゲーム内で使用できる「星杯手帳」で調べることができる。また、クオーツそのものも命中精度を上げるものや体力を上げるものなど特性がある。拠点でキャラクタの相性、使用できるアーツを考慮してセットしていく。

 クラフトはキャラクタの熱い叫びと派手な演出が入る本作の大きなセールスポイントだ。「3rd」ではキャラクタが最初から大技を使うことができるので非常に派手な戦闘が楽しめる。クラフトには各キャラクタ固有の者に加えて、パーティーメンバーが協力して出すチェインクラフト、そして一定以上たまったCPを一気に消費して発動させるSブレイクといった技もある。

 今作では拠点でCPを満タンにできるこのためフィールド上のモンスターとの戦いの場合、チェインクラフトを連発できる。圧倒的な火力で敵を蹴散らすのはなかなか爽快で、フィールドを進んでいる時長引く戦闘というのはほとんどなかった。遭遇して最初のターンで一気に殲滅、そしてCPが無くなる前に拠点で満タンにし、さらに進むといったかなり派手な展開となった。

 一方で苦戦したのがボス戦である。最初のボス「ベヌウ」は最初のボスにもかかわらずいきなり三段階で変身する。王都で待ち受ける「ロストロム」はそのスピードでケビン達を圧倒する。圧倒的な火力でサクサク進んでいたプレーヤーもボス戦で壁にぶち当たるはずだ。

 ここで改めて、本作のシステムが問われる。ボスに打ち勝つためにはどのようなクオーツをセットしていくか、メンバーをどうするか。「3rd」ではパーティーメンバーと共に、「リモートアビリティ」が使用できるサポートメンバーも選択することができる。筆者の場合ベヌウは護衛のモンスターが水に弱いため水系のアーツを用意し、さらに回復も考えアイテムも揃え、長期戦に備えた。ロストロムの時にはまずクオーツを強くして蘇生アーツを持つメンバーを多めにして、クロックアップを持たせた。サポートに速度を上げるミュラーを配置したりとスピードにこだわって撃破した。

 この後のボスはさらに強くなるという予感もある。3つめの異世界では、ケビン、リースそれぞれがリーダーとなり、2つのパーティーで前に進まなくてはならない。ストーリーが進むことで、様々なルールによる戦いが待っているようで、楽しみだ。歯ごたえのある戦いはクリアした時、大きな達成感となって返ってくる。ネットではより効率の良いボスの倒し方や、自分ならではのユニークな作戦、といったものが話題になるのではないだろうか。一方で初心者に対してのサポートがもう少し欲しいかな、とも感じた。ファルコムの公式ページである程度アドバイスを載せる、といった対応も有用ではないだろうか。

 今作をプレイして感じたことは、「ファンディスク的性格が強いかな」という印象だ。やはり前2作で共に歩んできた経験があるのとないのでは、本作への感覚は大きく異なるだろう。3作すべてを体験することをオススメしたい。個人的にはこういう試みはとても面白いと思う。3作に渡ってキャラクタ達との時間を過ごすというのは、プレーヤーの夢の一側面を実現したといえる。くり返すが、ファンの反応がとても楽しみだ。

本作はシンボルエンカウント方式を採用している。モンスターの後ろからぶつかれば有利に戦える 方石の力を使うことでいつでも拠点に戻ることができる リモートアビリティを使うキャラクタを使うことで、パーティーの力をより特化させることができる
リースのSブレイク「ヘヴンストライク」。甲冑を着た天使の一撃 ユリアのSブレイク「トリニティクライス」。三角形の結界に敵を閉じこめ大ダメージを与える ティータのSブレイク「サテライトビーム」。導力で動く人工衛星からビーム攻撃をする
最初のボスがいきなり伝説に語られる悪魔である。このスケールの大きさも本作の魅力だ ベヌウは三段変身を行なう。長期戦に備えたセッティングが必要だ 2つめの悪魔は暴虐のロストロム。スピードの速さが脅威となる
シリーズで戦った敵が再登場することも ケビンのクラフト、セイクリッドブレスは広範囲の味方を回復する チェインクラフトは順番や参加メンバーで印象が異なる。色々な組み合わせを試したくなる

(C) 2007 Nihon Falcom Corporation.


【英雄伝説 空の軌跡 the 3rd】
  • CPU:PentiumIII 800MHz以上(Pentium 4 1.3GHz以上推奨)
  • HDD:3.7GB以上
  • メモリ:256MB以上(XP/2000:384MB以上、Vista:1GB以上)
  • ビデオカード:メモリ32MB以上(64MB以上推奨)


□日本ファルコムのホームページ
http://www.falcom.com/
□「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd」のページ
http://www.falcom.co.jp/sora_3rd/
□関連情報
【6月1日】日本ファルコム、WIN「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd」
コスプレイヤーによる店頭チラシ配布イベントを開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070601/sora.htm
【3月23日】日本ファルコム、「英雄伝説VI」シリーズ3作目を発表
WIN「英雄伝説 空の軌跡 the 3rd」6月28日発売決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070323/sora.htm
【2006年3月8日】PCゲームレビュー「英雄伝説 空の軌跡 SC」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060308/sora.htm

(2007年6月27日)

[Reported by 勝田哲也]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.