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中でもプレスカンファレンスで、カプコン開発トップである常務執行役員の稲船敬二氏が発した「『MHF』は第1弾に過ぎない。コアとなるタイトルが今後、続々と生まれてくる」という発言に対する見解は、幾分謎かけと含みがあり、2006年の東京ゲームショウで発表された「ゲーセン・ドット・コム」以外にも、複数の新タイトルの存在を伺わせてくれた。その全貌は未知数だが、今後の活動が楽しみである。
■ 「MHF」は1年後にどのような「モンスターハンター」になるのか? 編: 今回アップデート計画が公開されましたが、今後、たとえば8人プレイ、16人プレイのような、「モンスターハンター」そのものの地殻変動といいますか、基本仕様の拡張はありえるのでしょうか?
ユーザーさんはあくまで欲望から要望を発してきているので、どういうものを今のシステムに入れてあげれば楽しくなるのかを返していきたいと思っています。ですから、今回「猟団」のようなギルドシステムを入れ、ランキングシステムを用意し、上位の人しか行けないクエストを入れるなど、ひとつひとつ階段を設定しているわけです。 編: それではPvPモードの実装なんてこともなさそうですね。 小野氏: 一切考えていないです。ユーザーの要望があった場合は、どういうやったらこのゲームで楽しんでもらえるのか我々がアレンジしたものを提供します。それが「モンスターハンター」の遊びなのです。これから「モンスターハンター」もそうした枠を逸脱することは無いと思います。 編: 新しい武器系統も期待できないでしょうか。 小野氏: 「ヒプノック」が出た時点でいくつか新しい武器も出ましたが、この範囲でどういう遊びができるかなという点では、模索していくことは可能なのかなと。ただ、新しい武器系統となると、バランスがくずれてしまうことがあるので、そこは慎重にいきたいです。 編: 1年後の「MHF」の姿はどうなると予測していますか? 小野氏: 一番良いのは“ハコ”が全部きちんと用意されて、我々がその“ハコ”をうまく利用する形でイベントができるようになっていればいいかなと思います。今はリファインがメインになっていますので、大型のアップデートは6カ月に1回かもしれません。そこまでに用意された“ハコ”をうまく利用して、うまく回るようになっているのが希望です。 編: いろいろな意味で「Dos」とも、「モンスターハンターポータブル2nd」とも違うコンテンツに育っていきそうですね。 小野氏: 本来ならば「Dos Online」とすればいいと思います。あえて「MHF」とした理由は、大分パラメータをいじり、素材も変えて「Dos」からもだいぶ離れることがわかっているからです。クローズドβテストをされた方なら変化をおわかりになるかもしれませんが、最初の1回目のテストのときは、「Dos」のような状態で、ランボス戦にいくとガーッとあっさりやられてしまうわけです。 しかし、2回目のテストのときにはだいぶ変わったと思います。Cβ2のアップデートでは、歯ごたえよりも狩る楽しさがわかるゲームになってきたと思います。この作業を継続していくことで、いずれ「MHF」の独自性が確立されていきます。いずれ新作の「モンスターハンター」がリリースされると思いますが、出たとしてもこれらとの差別化が計れていると思います。ナンバリングでやっていく面白さはこういう面白さですよ、「MHF」での面白さはこういうものですよという状態が出来上がるのが、この「モンスターハンター」シリーズとしては一番良い形ではないかと思います。 編: 小野さんの現状認識を教えてください。「MHF」を自己評価するとどれぐらいまで来ていますか。 小野氏: んー、難しい質問ですね。僕がユーザーならやります(笑)。仮にまったく異なる担当をしていてもやろうかなと思ったでしょうね。 編: 逆に足りない要素は何だと思いますか? 小野氏: 経験ですね。カプコンの経験の無さは隠す必要もなくて、我々はそこに向き合っています。自信はありますかといえば「あります」と答えられるのですが、自信満々ですかといえば「そうではありません」というのが正直なところです。それをマスクするために色々とやってきているのです。 ユーザーに意見を聞いたこともそうですし、テストの内容の公開もやってきています。弱気ではなくて、準備しているのですが、それを言えるくらいの段階なのです。準備がここまでできていることが我々の自信なのです。 編: 足りないのは経験ということですが、「MHF」の運営面に対する抱負を聞かせてください。 小野氏: 先ほど差別化と申しましたが、「モンスターハンター」だからできるものもあると思っているのです。韓国のゲームだと、やるべきクエストのリストはあるのだけど、そこに対してどれだけモチベーションを与えられるかということに関してはあまり関心がないように見受けられます。それはよく言えばユーザーさんにお任せするということですが、僕らから言わせて貰えればそれは投げっぱなしではないかと。それをなるべく投げっぱなしではないようにするのが、サービス業では必要ではないかと考えています。 ショップでゲームを売るだけならば良いのですが、僕らはエンドユーザーに直接売ることになります。我々としては、毎日売っているものが違いますよ、大根が良い時は「大根いかがですか」と最前列に並べる。“ハコ”を追加してもただ単に「追加」と書くだけではユーザーさんが気づかない。気づかれなければ、せっかく1,400円払った分だけ楽しめない。だったらどのようにしてユーザーさんに伝えていくか、どう工夫すべきか、考えることはいくらでもあると思うんです。 編: そのための運営スタッフを置くということでしょうか? 小野氏: イベントプランナーですね。ゲームのプランナーやディレクターではなくて、“ハコ”をどう使いこなすかという人たちを僕はすごく大事にしたいと思っているし、今の運営プロデューサーの杉浦にもしっかりと考えてやりなさいねといっています。 編: 賑やかし役のような存在ですか? 小野氏: 賑やかすためのステージを用意し、その使い方を考える役です。僕らがアバターとして入ってワーッとやるのではなく、それができるステージを提供してあげるというのがオンラインゲームの中で必要なのではないかなと思います。セガさんの「ファンタシースターオンライン」の運営を見ていると、それを意識してやっているのだなと思いますし、僕らも見習いたいなと思っています。日本のゲームだからこそ気がついてやっているのかなと思いますけれども、まだ必死でやっているところは少ないと思いますので、どんどん見習って活性化していきたいです。
■ 海外展開はまずはアジアから。まずは日本展開に注力 編: 質疑応答の中で海外展開は当面ペンディングで、まずは日本からとおっしゃっていましたが、仮に海外展開に乗り出すとしたら、まずはどこから手をつけていくのでしょうか。
編: 香港や台湾を含む中華圏はPCオンラインゲームの人気が高い地域ですが、その一方で「モンスターハンター」の人気も凄く高い。中華圏に「MHF」を持って行ったらやりたいと思うユーザーは多いだろうなと思いますし、また今回海外からの接続は原則弾くとのことですが、是が非でも入ってくるだろうと思いました(笑)。 小野氏: 是が非でも入ってくる人についてはしょうがないなと思っています(笑)。「MHF」はRMTもそんなにできないので、BOTも商売にならないからそれほど入ってこないだろうと考えています。排除したい理由としては、やはりダウンロードサーバーやそうしたものは国内のために開いているものであって、企業としてはなるべく良い環境でダウンロードさせてプレイの場を設けてあげるというのがマナーなのかなと感じています。 編: とはいえ、「モンスターハンター」がPCでプレイできるわけですから、様々な方法を使って入ってくると思います。たとえば、海外から接続してきたユーザーに対するアカウント停止措置をとるなど厳しい措置は考えていないのでしょうか。 小野氏: そうだと思います。マンションにプロキシサーバーを立てればそれだけで済みますからね。ただ、現状はそうした厳しい措置については考えていません。日本在住の方かもしれませんしね。我々としては他のお客さんに迷惑をかけることがわかった分に関してはしっかりと訴追していきたいなと感じています。 編: それではチャットが言語的に多少カオスな状態になってしまうのはある程度覚悟されているということでしょうか。 小野氏: 覚悟していますね。ただ、中国語や韓国語は入力が対応していないので、うまくいかないかなと思います。ただし英語は対応していますので同じですよね。オンラインの開かれたインターネットの海に出て行く以上は、完全に閉ざすことは無理なのです。 編: 改めて確認させていただきますが、同時多発的に韓国や中国での展開は行なわれないのでしょうか? 小野氏: 研究はしているのは事実です。実際、韓国のメディアではカプコンがどこどこと接触しましたといったニュースが色々出ています。それらの報道が本当かウソかといわれれば本当なのです(笑)。昨年のTGSで名刺交換したのは事実ですからね。無いわけでは無いですが、まずは日本でということですね。 編: 海外展開に関して、自社でやるかライセンスアウトするかについても白紙と? 小野氏: 白紙です。 編: 小野さんご自身はどういった展望をお持ちですか? 小野氏: 我々は日本の開発陣と運営チームを使って、日本のことはマーケティングできると思うのですが、いくら同じアジアであっても台湾、中国、香港というのはまったく違うと思うのです。果たして成功するのかどうかは疑問だと思うのです。「シャドウ オブ ローマ」がなぜ成功しなかったのかといえば、そこの部分の分析がまだ足りなかったのです。足りなかったところがわかったので、「デッドライジング」が売れたのです。同じ轍を踏むのであれば、「MHF」で自分たちで海外展開して痛い目にあって、次に出すものを成功させるというのも会社としての選択なのかもしれません。日本でここまでリスクを負って展開しているのだから、海外くらい儲けろよといわれるのであれば、向こう側のパートナーをみつけてきちんとやるというのも選択なのかもしれません。 編: 仮に海外展開をする際、パートナーとなるメーカーがビジネスモデルの変更、たとえば「アイテム課金にしたい」という要望が来た場合はどうされますか? 小野氏: 「MHF」に限っていえば考えていません。もしそれが絶対条件とされるならば、今はそこまでする必要はないのでお断りします。しかし、会社として「そこまでリスクを負ったのだからやりなさい」という方針になればさすがに僕もサラリーマンなので(笑)、やらなければいけないかなと思いますが、それをやってしまうと、すぐ終わってしまって、タイトルのためにもカプコンのためにもならないと思います。これについては経営陣も同じ判断ではないかと考えています。 編: 6月10日に「モンスターハンターフェスタ」が開催されますが、こうしたオフラインイベントは「MHF」ではどうなるのでしょうか? 小野氏: 今日開催したイベントがまさにその第1弾ですよね。できればオンラインでもやっていきたい。ワンセグであったり、インターネットTVであったり、DSのテレビであったり、やり方はわかりませんが、アナログで集まる楽しみはあると思うのです。PSPはフェイストゥフェイスでやりますよね。その点「MHF」は、基本的にはフェイストゥフェイスではなく、良くてSkypeを使ったボイスチャットです。ならば他の媒体をうまく使ってイベントを開くことができれば楽しいかなと。それが次のオンラインの道なのかなと考えています。何がしかのユーザー同士を楽しませるイベントを企画していきたいですね。 編: ゲーム大会プラスアルファで何かやりたいと。 小野氏: そうです。オフラインなのか、オンライン上で見せるのかというのは技術の革新によって変わってくると思います。革新に応じたものを提供していきたいなと思っています。
■ オンライン開発部と「ダレット」の協力関係と次の展開について 編: 稲船さんの「『MHF』は第1弾に過ぎない。コアとなるタイトルが今後、続々と生まれてくる」という発言は、何を意味しているのでしょうか?
編: それは「ダレット」の傘の下でやるビジネスですか? 小野氏: そうですね。「ダレット」は傘というよりも受け皿なのです。課金プラットフォームであり、コミュニティサイトです。ゲームをするためのポータルというより、コミュニティが生まれるように設計された受け皿です。僕自身「ダレット」の人間ではないので詳しいことはわかりませんが、「MHF」はダレット内のコンテンツではありますが、彼らは彼らで別のことをしようとしています。中村さんは傘とおっしゃいますが、僕らからすると皿です。皿がどういう形になるかによっていろいろなものを置いていけるわけです。 編: すると「ダレットのビジネス」イコール「オンライン開発部のビジネス」ではないのですね? 小野氏: 違いますね。僕らはあくまで皿の中にトマトを提供しますというビジネスです。なぜ今回カプコンがサーバーを立てて運営していくかと申しますと、このトマトはカプコンが責任を持ちますということです。そして、「ダレット」は、トマトから出てきた芽をちゃんと受け止めて大きく育ててくださいと。そしてその根をうまく使って、他のカプコンのゲームであったり、「ダレット」はカプコンの子会社の形ですので、カプコンに限らず他社から取ってきたコンテンツを提供していきましょうということです。 編: 小野さんが担当されているオンライン開発部はどこからどこまでが担当なのでしょう。 小野氏: カプコンから出るオンラインタイトルを面倒見ることです。 編: となると、ダレットで今後運営されるであろう他社のパブリッシングタイトルは、オンライン開発部ではなく、あくまでダレットが運営チームを抱えてやることになるわけですか? 小野氏: それはケースバイケースになると思います。他の会社さんが作ったものではなくて、カプコンが基本的に監修や協力したものについてはウチで面倒みましょうということです。 編: 日本ではオンラインゲームポータルがいくつかありますが、「ダレット」がカプコンのゲームポータルでないとすれば、「MHF」を外に出すことはありえるのでしょうか? 小野氏: それは無いですね。ポータルではないといえば語弊があります。僕らはこの受け皿の形を、新しいポータルだと思っています。ゲームポータルサイトさんみたいにゲームのリストがズラッと並ぶという提案の仕方ではありませんが、僕らは「ダレット」をバックアップし続けていきます。 編: 昨年、小野さんは、「MHF」と一緒に「ゲーセン・ドット・コム」も発表されましたが、こちらはどうなったのでしょう? 小野氏: 昨年のTGSで発表したのが「MHF」と「ゲーセン・ドット・コム」でした。この2つがオープンになっているものです。そこをどう運営するか、ローンチさせるのかという部分ではお話することができます。 編: 「ゲーセン・ドット・コム」は開発が遅れているのでしょうか。 小野氏: 遅れているのではなく、機能の追加をしています。一度完成したのですが、これでは他社さんの展開と変わらないということになりました。「ストリートファイター」とか「ヴァンパイア」とか決まったタイトルしかないのですが、それをどう提供するかというのはサービスでしょうと。「何だろう? 見てみようか」というところからがビジネスではないですか。その辺がきちんと固まった段階で提供しようとしています。 編: サービス開始はいつごろをお考えでしょうか。 小野氏: サービスをする時期は明言できませんが、涼しくなる前には発表したいです。 編: 東京ゲームショーで改めてということでしょうか。 小野氏: どうでしょうか(笑)。 編: そのほか、まだ見えていない新しい戦略については、どのようなことを考えていますか? 小野氏: いま新しいものをどんどん考えています。 編: オンライン開発部独自のタイトルでしょうか。 小野氏: それもありますし、そうではないものもあります。 編: つまり、「『鬼武者オンライン』のようなモノ」が今後続々登場してくるだろうという理解でいいですか? 小野氏: そういうやり方もありますね。しかし、単純にそれを作ったからといってオンラインにマッチしませんよね。そこで何かしら考えないといけないよねということです。 編: オンライン開発部オリジナルタイトルとカプコンタイトルのオンライン版の2本柱で展開していくというのが基本戦略になりそうですね。 小野氏: そうですね。 編: 来年には何タイトルくらいと考えているのでしょうか。 小野氏: 社内で食い合っても仕方がないと思っています。自社と同じものであれば変えていかなければならないし、他社さんできちんとコミュニティができあがっているものであれば、カプコンで同じものを出しても仕方がありません。現状日本で提供するのであれば、何か違ったものを提供することを考えていきたいと思います。 編: 最後にユーザーさんにメッセージをお願いします。 小野氏: まずなんといっても、「MHF」の先行ダウンロードよろしくお願いします(笑)。特にGAME Watchさんのユーザーさんはコアな方が多いと認識しています。これからどんどんアップデートをかけていきますので、ワンオブゼムの1つとして、オンリーワンとして「MHF」にお付き合いいただければと思います。「俺の人生の何時間を無駄にしたよ」と思わせないものを提供していきますので、応援の程よろしくお願いいたします。 編: ありがとうございました。 (C)CAPCOM CO., Ltd. 2007 ALL RIGHTS RESERVED.
□カプコンのホームページ (2007年6月15日) [Reported by 中村聖司]
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