|
前編同様、明確な回答を目指して話しているわけではないので、ところどころ隔靴掻痒の感がぬぐえない箇所はあるものの、各オンラインゲーム運営会社の明文化されていない経営者のポリシーがわかって興味深い。 オンラインゲームは、コンテンツジャンル、ビジネスモデル共に多様化の時代を迎え、ゲーム選びは、ゲームの内容だけでなく、運営内容やポリシーも基準のひとつになる。ぜひ精読の上、各社の運営内容、ポリシーを把握し、自身のオンラインゲーム選びに役立ててみてほしい。
■ 運営とユーザーサポートに纏わる「オンラインゲームちょっといい話」 編集部 中村聖司: オンラインゲーム内のコミュニティサービスについてはどのような展望をお持ちですか。ゲーム外のコミュニティと違って、こればかりはオンラインゲームパブリッシャーしかできない部分ですよね。
GMO Games村岡総仁氏: 情報を発信させるということで、ユーザーさんの目をそちらに向け、コミュニティを形成するということですね。中村さんがお考えのゲーム内のコミュニティサービスはどういうものでしょうか。 編: ユーザーに対する取り組み方、向き合い方ということでしょうか。たとえば、「コルムオンライン」では、初期はトラブルがたくさんありましたが、旧ネットクルー時代からユーザーの意見を一杯吸い上げて、ユーザーさんからの要望をマニフェストとして取り上げ、ユーザーをGMに引き上げるなどの目に見える取り組みを継続的に行ないましたよね。あれが評価されたからこそ現在の支持があると見ています。 村岡氏: パブリッシャーの立場からすると板ばさみなのです。ユーザーからは「運営は何しているのだ」と言われ、我々としても1分でも早くバグを直したい、お客様の要望に応えたいのですが、お客様から運営に来た要望というのは、パブリッシャーだけでは直せないものもあるのです。開発会社に、お客様からの要望を依頼、という形でお願いしています。各社さん一緒だと思うのですが、なるべく早い対応を目指しています。 編: 片山さんは、コーエーさん、ヘッドロックさんと日本のメーカーとのお付き合いですから、2社に比べると比較的やりやすそうですよね。 ELEVEN-UP片山崇氏: ウチはバグを出さないようにQA(品質管理)スタッフだけで十何人いますね。バグをゼロにすることはできませんが、限りなくゼロでいきたいです。要はバグがあるうちはリリースしない。先に潰すことを年頭に置いてやっています。開発会社さんにもQAがいて開発の段階で修正してもらえるのですが、共にバグデータベースを共有しています。お互い仕様の段階で予見しておいて、こういうバグが出やすいですという話もできるわけです。それのほうがお互い効率がいいし。そのノウハウをためながらやっています。 編: オンラインゲームパブリッシャーにQAを常設している例はまだまだ少ないんじゃないですか? 澤氏: ウチもあるよ。数人だけど。最初はGMに兼任させたのです。だけど開発会社さんが日本だと「仕様の段階から」とか言えるけど、向こうの会社さんだと仕様そのものが無かったりしますからね(笑)。アップデート前日にテストサーバーにやっとパッチが当たるとか。もうGMが仕事にならなくて、それでQAを設置。 村岡氏: ウチもまったく一緒で、テストサーバーでテストしたのに本サーバーに載せたらまったく別のものが載っていたりね(笑)。日本国内でサービスしている以上、自社のサービスではないですか。僕たちのサービスですので、僕たちがQAをしないとダメなのですよ。 片山氏: 一番効率がいいのは、なるべく先に潰して、上流から押さえに行くことでしょう。10人規模のQAは通常あり得ないのですが、これは僕のポリシーです。外部に対して、社内にQAがいることを言い出したのは、自分たちだけでどうこうではなくて、皆さんもどうですかといおうと思ったからです。もちろんコーエーさんとか付き合いのある会社さんは知っていますが。 村岡氏: そろそろ会社の枠を超えてなんとかできないかな、という話は常にしてますよね。アップデートがあるたびにトライアンドエラーの繰り返しですからね。 片山氏: QAの取り組みに関しては、「ベルアイル」でも「真・三國無双BB」でも一緒です。国内の会社さんで距離が近いというところが幸いしていますので、サービスを提供する側としてQAをやりますという話ですね。 編: ひどい例では、いまだにユーザーにQAをさせるオンラインゲームもありますよね。 澤氏: それ日本では通用しないだろうというレベルで開発会社からモノが上がってくるとか。 片山氏: 以前のクローズドβテストならわかりますよ。今日日そんなことやっていたらね。無理ですよ。 澤氏: 現場からもすごく突き上げられますよ。こんなのではお客さんに出せないと。メンテナンス後の時に見つかるバグが多すぎる。 片山氏: 不具合報告0が目標です。明確な目標として、いずれやってやると。デイリーで数字が出ますからね。多いなとか言いながら一喜一憂して、毎回QAのボスが申し訳なさそうに何件でしたと報告してきます。 村岡氏: ウチもかなり減りましたよ。不具合報告0はサービスを提供する側としては最高だけど最低限の条件です。2005年の末から2006年の頭にかけて急ピッチでQAの見直しをしました。不具合の報告フォームからのお客様のご要望を経て開発会社さんと協力してやったのですが、オンラインゲーム特有の不具合報告がかなり減りました。それでも若干ご迷惑をおかけする部分はあるのですが。 澤氏: それと不具合が出たら出たで、情報開示が重要ですよね。 村岡氏: 適時開示ですよね。 片山氏: そうそう、この前それでウチのスタッフを怒りましたよ。「ベルアイル」なのですが、「不具合が出てなぜインフォメーションが出ていないんだ、お前ユーザーだったろう、ユーザーの時こんな運営されてどう思う?」と。私が丁度いなくて、後から気づいて。ものすごく腹が立って、全員集合ですよ。オンラインゲームの運営チームってスタッフの教育に尽きるのですよ。常に悩ましいです。 澤氏: ただ、その不具合を開示することでチートやバグ利用に結び付けられてしまうことがあるから、開示のタイミングは難しいですよね。 編: そういえば「コルムオンライン」で無限DUPEが発生したことがありましたが、あのときの対応は迅速、鮮やかでしたね。 村岡氏: ありがとうございます。「コルムオンライン」のGMはユーザー出身なのですよ。他社さんでも一緒かもしれないですが、GM自身が「コルムオンライン」を愛しているから、家でもやっているのですよ。涙が出るほど嬉しいこととかありますよね。「『コルムオンライン』好きですから」と胸張ってお客様にサービスを提供していることが本当にそうした対応の早さに結びついていると思うのです。そういったスタッフから、「社長このバグ何とかしてくださいよ、改善してくださいよ」と言われます。そのときに開発会社さんの協力が無ければできなくて、ちょっと待ってくれといわなければならない場面があるぐらいです。 編: いい話ですね。ユーザーやスタッフとの関わりで感動したエピソードはありますか? 片山氏: 「ベルアイル」って正式サービスまで1年の期間を空けたのですよ。スタッフや開発会社の人やみんなに謝りました。このままではサービスインしたくない。「延期させていただきます、すいません」と正直に告知するしかないと。1カ月後くらいに公式サイトにブログを立てたのです。ブログを立てるときに運営チームの栗原と「しょうがない火ダルマになろうと。俺らがやっていることが悪い」と。それがぜんぜん違いました。ブログへのほぼ大半の意見が頑張ってくださいというメッセージで、コメントが毎日100件前後くらいありました。それに励まされましたね。 澤氏: 感動というか、スタッフについてなんですが、今、実はゲームの部分に関しては個々にプロデューサーを立ててほとんど任せっきりなのです。というのはコンテンツも増えて全部面倒見切れないし、それまでは“ゴレンジャーのレッド”として、現場もやるし、スタッフも率いるし、地球も守ってやると。そういう姿勢だったんだけど、そろそろ長官の職をやってくれということになって。 その後、役員や部長を集めて、部長といっても一般の企業に比べれば若いですよ。20代後半くらいの連中を集めてミーティングをやったときに、副社長が「ウチの会社ってみんな無駄口とか無いよねと。おしゃべりもないし、音楽もないし、静か過ぎるよ。イレブンアップさんやGMOさんやゲームポッドさんに行くと、結構楽しそうにやっていて、ウチも活気が欲しいね」とポッと言ったのですよ。するとプロデューサーの1人が「真面目に仕事やっているのだから口数が減って当然です」と言ったときにね。「ああ、いつでも真剣勝負なんだな。これなら任せられるな」と思いました。 村岡氏: スタッフのお客様に対する姿勢に感動する瞬間ってありますよね。片山さんや澤さんも経営者として思われることも多いと思いますが、どうしても売り上げとかサービスの対価に心を奪われる瞬間があります。ウチであったのは、複数アカウントと運営ポリシー違反ですね。「コルムオンライン」では複数アカウントはマナー違反として処罰対象なんですが、会議をしているときに、違反者の何人かは優良ユーザーだし、本当にそうかどうか微妙なラインだから様子見にしないかと誰かが言ったときに、責任者が言ったんです。「ダメです」と。みんなが「なんでダメなの?」と聞くと彼は、「僕たちもユーザーで、僕たち運営を信じてくれているユーザーさんがいるのに、会社の事情で見逃すのはユーザーさんのために絶対ダメです」と。 最終的に、決定的な証拠がでるまで調査したんですが、何も言えないですよね。忘れかけていたものをね。お客様が大事ということを再認識させられました。クローズドβテストの頃からお客さんがいてくれたからこそ今が成り立っているわけです。そのときの彼はかっこよかったですね。生き方とか考え方という点でかっこいいなと思ったことはあります。思い返すと涙が出そうになります。本当に奴らはプロですよ。彼らの余計な負担を少しでも減らしてあげたいと感じます。
■ ゲームポータルの未来像。欲しいのは「共通フォーマット」 編: 3社ともゲームポータルはお持ちではないですが、ポータルとの付き合い方やポータルそのものの是非についてどのようにお考えでしょうか。
澤氏: この前ネットレーティングスでYahoo!ゲームさんが上がっていました。あとズラーっとあって、同じことをこれからはじめたら20番目からのスタートですからね。 片山氏: いまさら自社でやる気はないですよね。 村岡氏: ポータル作ってどんなタイトルやっているのというと、ちょっと入ったら数十秒、数分でゲームに慣れられるようなカジュアルなゲームばっかりだったりしますからね。 片山氏: ポータルの仕事とオンラインゲームパブリッシャーの仕事ではまったく意味が違う。別業界に近いくらいの認識です。この仕事が好きだからやっているだけであって、ゲームポータルにはまったく興味がありません。 澤氏: ただ、タイトルが増えてくるとそろそろまとめたいなと感じてくる時はありますよね。 片山氏: でもさ、それってユーザーには関係ない話じゃないですか。ウチでもそう言ってくるスタッフはいるのですが、「何で?」という感じなのです。 村岡氏: 中村さんがおっしゃるポータルとは、1ID化なのでしょうか、ポータル化なのでしょうか。 編: もう少し高いレイヤーの話です。業界の流れから行くと、このところ一種のプラットフォームとしてNHNさんやガンホーさんのような大樹に寄りかかるようなチャネル提携に集束していっているような感があります。オンラインゲーム市場もソニーコンピュータエンタテインメント、任天堂、マイクロソフトみたいに寡占状態になるのか。ならないのか。今回はたまたま独立系の3社が集まっただけに、今後どうされるのだろうというのは興味があるんですね。 村岡氏: 結構最近ありませんか? 繋ぎこみませんかといった話が。 澤氏: それで言えば、ウチもポータルサイトに露出してるし、出す分には間口が広がるのでいいや、という気持ちです。 村岡氏: 僕たちがポータルをするのではなく、ポータルに露出して機会損失を防ぐ観点ですね。集客目的の発信型ポータルというのは。 澤氏: メニューページのようなものはコンテンツがそれなりにあるから作ろうとは考えることはありますが、そこでどんな商売ができるかをゲームのパブリッシングとは別の観点で考えると決め手が無いですよね。他社と同じことをせざるを得なくなります。 片山氏: 確かにポータルを作ると便利になりますよね。ある種プラットフォーム化されますけれども。自社サービスとしてやる気は無いのですが、便利にさくっとゲームを遊べるようにポータルに繋ぐという点ではまったくネガティブではないです。 編: 将来像についてはどのように考えていますか。 片山氏: ユーザーさんが選択肢の中で負荷なく遊べるということを考えると、一社単独では限界を感じるのです。 村岡氏: 現在WiiやDSのタイトルの人気で任天堂さんにアクセスが殺到していますよね。認知度の高い会社さんがポータルをやられると、コアなユーザーさんばかりでなく、ライトユーザーの方も見てみようということになる。そこで欲しい情報以外に、さまざまな情報も見ることができて、新しい興味を持つきっかけになると。ユーザーさんたちがそういう可能性を求めて集まってくるのだと思います。 編: ゲームポータルの難しいところは、Yahoo!さん、エキサイトさんといった大手ポータルさんが、ゲームコンテンツの抱え込みをやろうとした時期がありましたが、実はあまりうまくいきませんでしたよね。 村岡氏: PCオンラインゲームを盛り上げるために、情報発信型のポータル+αにして、広告収入で運用というスタイルが頭をよぎるじゃないですか。でもそういうことではなくて、オンラインゲームの中は実社会と一緒でウソをついてはいけないですとか、マナーとルールを守りましょう、運営ポリシーは守りましょう、ゲームはやりすぎず、適度な休憩を挟みましょうといった部分を啓蒙できるようなポータルであれば逆に作りたいです。それこそ各社協力して作っていけたらなと。 片山氏: 僕が欲しいのは共通フォーマットですね。 澤氏: 三重苦ではありませんが、ウチではわざわざ「グラボ(ビデオカード)って何?」というところでわざわざ動画を作ったのですよ。スペックシートを見てわからない人はこちらの動画を見てくださいといった形で、「この部品がグラボでーす」みたいな(笑)。これって1社でやる理由はなくて、どの会社も苦労しているところで、これを共有したいのですよ。だって、フルスクリーンでゲームをやったらNorton Internet Securityが裏側で出ていて、ログインできねーというのが1万人規模でいるもの(笑)。そういうものをここにくれば一発解消というページを作りたいですね。ゲームポットの植田さんとそういう話をしたのを覚えています。 編: そうなると、オンラインゲームパブリッシャーだけの協会を作るのが一番早そうですよね。 澤氏: ええ。自分が儲けるため、勝つためのポータルサイトということではなくて、業界全体の裾野を広げたりするところを、知恵を出しあってやるのは問題ないと思いますよ。後は先ほどの啓蒙的なところとかね。 村岡氏: 澤さんと最初に会ったときもそういう話をしましたよね。やはり気づかされるのは、オンラインゲーム市場はインターネットと一緒になって現われてきた新産業で、不正やどうのこうのがあるけれども、それ以前の問題として正しい認知がされていない。業界全体で認知度をあげていきたいとよく話し合っています。 澤氏: リテラシーという点では、ケスピの頃に、プレゼントはハガキを使って応募してもらう方式だったのですが、切手を貼ってないハガキがすごく多くてびっくりしたんです(笑)。若い子が多いゲームだったので、今時の若い子はハガキに慣れていなくて、切手を貼って出すということを知らないのではないのかなと。でもそれを憂いているわけではなくて、先にパソコンでメールとチャットでコミュニケーションを覚えていて、それで済んでいるのですよ。 村岡氏: 今でもたまにPC98を動かしたりするんです。5インチフロッピーをカタカタ動かして、「プリンス・オブ・ペルシャ」とかバックアップするのにフロッピー換えたり、ああいうのをやってなんで楽しいと思ったのだろうと思いながら、ふと、今の子ってどう思っているのだろうと。 20代30代だと考え方が近いと思うのですが、オンラインゲームのユーザーさんは小学生もいる。ファミコンとか20年前ですよ。恐ろしいでしょう? 確実に今の感覚と違いますよね。小学校の時運動場ってめちゃくちゃ広かったイメージでしたが、今ではバスケットゴールにダンクできますよね。先ほど、澤さんがユーザーさんの中にははがきの書き方を知らない小学生もいるとおっしゃられていましたが、最近手書きでハガキ書いた記憶あります? ラブレターくらいですよね。あります? 澤氏: あるある。 村岡氏: 僕無いのですけど(笑)。 澤氏: なんでそうやって誘導尋問みたいなことするの!(笑)。 片山氏: ゲームとは離れてしまうけど、先ほどの手紙の話に近いと思うんですが、すごく感動したテレビ番組があったのですよ。新潟の小千谷の話なんですが、あそこは花火の街で有名なのだけど、中越地震で被害にあった地域で花火大会があって、花火は普通企業スポンサーで上がりますよね。それを個人が上げるのですよ。小千谷の市民がお金を出して、これは誰々さんの花火ですといって打ち上げるのです。 これを江口洋介さんがテレビ番組でやっていました。小千谷に縁があって、地震から1年たってどうなっているのだろうと見に行く話なのだけど、その部分は別として、花火を上げるところに感動したのです。打つ前にアナウンサーがお手紙を読んでくれるのです。ワンクッション置くのですよ。手紙もそうですけど、口で言えばいいのだけど、わざとワンクッション置くのですよ。メールとかチャットも一緒だと思っていてそれぞれ特徴もあるのだけど、その無駄を挟むことがいいこともありますよね。 村岡氏: 私も神戸出身で家が潰れたのですよ。幸い家族も無事だったのですが、近くの小学校に行くと張り紙とかたくさん貼ってあってすべてがアナログだったんですよ。公衆電話も丸ごと盗られてなくなっていて、公衆電話が仮にあったとしても、携帯電話があったとしてもまずかからない。あのときに人間ってコミュニティが大事なのだと思いました。僕らはオンラインゲームというサービスを通じて人と人との出会いを提供します。何でもいいというわけではなく、ある程度のルールを守っていただいて、サービスを楽しんでいただいて、そこの中に出会いを楽しんでいただければ。僕ら自身が人好きですものね(笑)。 片山氏: リアルもオフも関係なく色々な人と会うのが楽しいじゃないですか。その機会を増やす仕事というのはすごく胸張ってやれることだとずーっと社員にいっているのです。まさにそれに尽きるんですよね。隣の人はインターホン押せば話せるけど、どう考えても無理な人もいるわけではないですか。たまたまマイクロソフトのMSNメッセンジャーの担当者と飲み屋で人の紹介で知り合ったのですけど、メッセンジャーってすごいですよね、画期的ですよねという話になって。 澤氏: 僕も飲み屋でゲーム業界はどうなる、なんていう話をしていたら、同業者に話しかけられて仲良くなってしまったりなんてことあるよ。 村岡氏: ウチのGMなんて、ゲーセンでゲームをやる時のプレーヤーネームをGMの名前でやっていたら、「コルムオンライン」のGMさんですかと声をかけられたそうです。 澤氏: えー。「クイズマジックアカデミー」は「しおにく」でやっていたよ(笑)。
■ 多様化するビジネスモデル。人材育成をどうするか? 編: オンラインゲームビジネスは、ビジネスモデルの多様化の時代を迎えています。現在だと月額、アイテム、ハイブリット、アドバゲーミングなどがありますけど、ビジネスモデルは今後どうなると考えていますか?
村岡氏: そうですね。ユーザーが作ったものを提供した、投稿ゲームサイトくらいの感じで、僕らが場を提供できたらいいなと。ビジネスモデルはどこから収益を得るかは別として。片山さんのおっしゃるとおり、ゲームを素人であっても誰かが簡単に投稿できる仕組みを構築して、広告なりサーバーを貸し出したりとかね。 片山氏: 特に日本にクリエイターはいるのですよ。育てる場がないけど、いると思っています。元々「Master of Epic」のファンサイトで漫画描いていたという人がいて、僕も「MoE」に関わっていた時期があって、いつも見ていて楽しみにしていたの。「次回はいつ更新されるだろう?」と。そうしたら会いたくなってきたのです。ゲームショウでブースを出すときに、来てくださいとチケットを送ったのです。それがきっかけで意気投合して、今ではウチの社員です(笑)。 村岡氏: 結局マッチングなのですよね。才能を活かせるかどうかなんでしょうね。求めるものと求められるものをマッチングするそういう場というのが理想なのですが、優れたクリエーターさんが業界で活躍できる場の提供をね。 片山氏: ウチは社内では掲示板で情報をやりとりしているのですが、1個のスレッドを作って、とにかく有料無料関係なく、ユーザーさんが作っている「面白い! クリエイティビティを感じる!」というものを貼り付けていくと。これを社員全員が見える状況でやっているのですが、実際、「これすげえな」、「ナイスアイデアだな」というものの宝庫です。どうひっくり返っても自分の頭からは出てこないなという。そういう人たちが、どうやればそのクリエイティビティを個人の趣味のレベルから引き上げて発表できるかということなのです。その点で言えば「Second Life」はやっぱり中途半端だと思うのです。 澤氏: コミケってすごいですよね。玉石混交だけど、うまい下手関係なく莫大なエネルギーをとにかくつぎ込んでいるわけです。ネットはコストも下がって多くの人に見せられる機会はあるのに、なぜまとまっていないのかと思いますよね。 片山氏: そのときELEVEN-UPという会社の箱は邪魔になるのです。企業体になってしまうから。つい最近ゲームポットの植田さんと話したけどやっぱりそういう話になりましたよ。 澤氏: ゲームという観点に戻すと、オンラインゲームってすごくコストが掛かります。最初にビジネスモデルをどうしても考えてしまうという最初の話になってしまうのだけど、サーバー代、人件費、広告費がドーンとかかって。 片山氏: でもさ、ちょっとくらい余裕があるでしょう? 澤氏: サーバー? それはちょっとぐらいは。 片山氏: オンラインゲームのあまった余地を解放しようよ。ユーザーさんに。 澤氏: 確かに余地はあるかも。だからウチみたいに「もえちゃっと」をやったりするんだろうけど(笑)。 編: ユーザーにコンテンツを作ってもらうという発想はすごく面白いのですが、実際問題、ビジネス化するのが至難ですよね? 片山氏: ビジネスとして考えるとELEVEN-UPという顔が前面に出るのはまずいわけです。そうではなくてあくまでユーザーさんのものなのだと見せなければいけない。ビジネスモデルとか考えてしまうと1歩引かなければいけない。それからメーカーが儲けようとしてはいけないと思うのです。 澤氏: 「Yahoo! オークション」みたいなものかな? 村岡氏: 先ほど投稿できる仕組みと言いましたが、ユーザーさんにコンテンツを提供してもらってそのフィーを貰うというよりも、ユーザーさん同士が僕たちの1つのコンテンツを盛り上げてくれたらそれだけでもうれしいですしね。 片山氏: ユーザーに還元する仕組みを作らなければいけないのかなと。ブログのアフィリエイトもそうだけど、ネットで個人が稼いでしまう時代なのですから。それをELEVEN-UPが出て仕切ってしまうとユーザーさんのものにならないので、ユーザーさんのクリエイティビティを持って、ビジネスにするのか単なる発表の場にするのかそれはその人の選択肢だとは思うのですが、そういう場所が欲しいなと思うのです。 編: 狙いとしてはコンテンツなのか人材なのか。 澤氏: んー。人はいるけど人材はいないよねという話は良くしています。両方といいたいのですが、囲うと人材のよさがなくなってしまうことがあるから難しい。ただまあ、それもいつかはクリエイターの人も選択を迫られる時がくるんだろうけど。 片山氏: それは今の段階では我を捨てるしかないと思っています。 村岡氏: 会社としてタイトルを出している以上、利益追求はあるわけではないですか。でも、利益だけを追求すると、お客さんが一歩引いてしまう。僕たちが一歩引いて黒子の役になって、お客さん同士のコミュニティの活性化をね。 片山氏: だからメディアさんの方がいいのですよ(笑)。 編: ドキッとしたわけですが(笑)、最近複数の人にそれ言われました。メディアが人材育成やってくださいよと。 片山氏: そういうムーブメントが出来れば、それはそれでマーケットはすごいポテンシャルを発揮しますよね。 村岡氏: ゲーム業界の枠を超えたメディアを巻き込んだメディアミックスですね。 片山氏: そういう人がどんどん発掘されていく枠組みを作れば、絶対業界の底上げになるようなおこぼれはあるはずです。まずはマーケットのユーザーが広がるはずだし。 澤氏: 話を戻しますが、「アドクエ」を始めました。始めたんですが、ゲームを始める前に広告クリックしたり、アドレス登録したり、その仕組みが面倒くさいって意見をたくさんいただいて。かといって、100円、500円払うのも面倒くさい。こうなると最初と最後までタダというものを作って、誰でも入ってこいというふうにしないとダメだと思いましたね。 村岡氏: それはビジネスではなくて、会社としてのブランディングのためにってことですか? 澤氏: いえ、単純に広告モデルでオンラインゲームをやろうと思ったときに、ピンからキリまで無料ということで開放したのはいいんですが、広告として効果が出るまで何百万人も人を集めないとメディアとして成り立たないわけです。そういうものを出さない限り、純粋な広告モデルといいますか、看板をゲーム内に立ててオンラインゲームを運営するのは難しいのではないかと、先手を取って「アドクエ」を意気揚々と立ち上げた後に気づいてしまったのです(笑)。 一同: (爆笑)。
■ オンラインゲームビジネスのリスクをどう回避するか? 編: これは前から言っていることですが、オンラインゲームもパッケージゲームと同じ消費財でいつか消費し尽くされるわけです。だから、理屈で言えば、ユーザーは一定期間を経れば自然に抜けていくはずなんです。それなのにずっと滞留し続けることを前提にビジネスが行なわれているのは、とてもリスキーなことだと思うんです。これについてはどう考えていますか?
片山氏: リスク観点でいったら絶対リスキーで、なんでやっているのですかといわれても「好きだから」としか言いようが無いですよ。 編: ユーザーを滞留させ続けるためには、新しいコンテンツをアップデートし続けなければいけないんですが、メーカーの開発力よりユーザーの消費力の方が圧倒的に高い。だから、構造的にじり貧の自転車操業にならざるを得ないんですよね。ほとんどのオンラインゲームパブリッシャーはこのジレンマに陥っていると思いますね。 澤氏: それだけじゃなくて、アイテム課金でなんとかトントンというところで売り上げがでているところもあるけれど、我々3社だけだったらまだしも日本にオンラインゲーム会社は100社あるわけです。後発組からしたら、どうやって勝ち残り、残存者利益をもって耐え忍ぶのか。 村岡氏: 答えは無いですよね。今の答えはあっても来月や来年の答えは違うのです。まだまだオンラインゲームは生ものと一緒で、業界でノウハウを蓄積して成熟しなければなりませんよね。 澤氏: 本当に裾野が広がって広告モデルが通用するような人数になったら、他のビジネスモデルが色々な形で出来てくると思うんです。月額課金が来て、アイテム課金がきて、広告がきて、という流れがあるわけですが。どんどん誰かが壊して、その先へ、というのはありますね。ゲームポットさんがアイテム課金で成功していなければ、右へ倣えの月額課金ばかりの世界になっただろうし。でもまあ、まだちょっとは模索の段階が続くと思うのですが(笑)。 編: ELEVEN-UPさんは、「真・三國無双BB」を再スタートしますが、従量課金という新しいビジネスですよね。手ごたえは感じていますか? 片山氏: 手ごたえといいますか、やはりメリット、デメリットが我々にもユーザーさんにもあるのです。ただし1個だけ言えるのはボリュームコントロールを自分で出来ることなのです。 編: まだまだ話し足りませんが、お時間みたいなので、今回はこのぐらいで。ありがとうございました。
□ELEVEN-UPのホームページ (2007年5月31日) [Reported by 中村聖司]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|