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★PS2ゲームレビュー★

キャラクタの引き出しが多く、ユニットとじっくり付き合えるRPG
「シャイニング・ウィンド」

  • ジャンル:心にふれるRPG
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:7,329円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(5月17日発売)



 人の想いの結晶「心剣」を操る少年キリヤ・カイトを操作し、人、エルフ、獣人が争いを繰り広げる異世界で冒険を繰り広げるアクションRPG「シャイニング・ウィンド」がついに発売された。イラストレーターTony氏による美麗なイラストからもわかるように、今作の最大の魅力はやはりキャラクタだろう。「心にふれる」ことで仲間との絆を深めるイベントの数々や今をときめく人気声優による迫真の演技など、ユニットへの思い入れを最大限に深めていくことのできる仕掛けが用意されている。

最も「心にふれる」ことのできる心象世界イベント。相手の心情や記憶が膨大な量のテキストで表現される 主人公キリヤがパートナーの体内から心剣を取り出して戦う。このシーンは、アニメーションムービーが流れる


バトルシーンはSDキャラを操作して戦う。一緒に出撃できるパートナーは1名のみ
 キャラクタ性のウェイトの高い今作だが、間口の広いバトルシステムやユニットのカスタマイズ要素など良く作り込まれていて安心できる。キャラクタ、バトル、カスタマイズ要素にピントを絞って「シャイニング・ウィンド」のレビューをお届けしたいと思う。

【オープニングムービー】
オリジナルアニメーションをバックにシーナ役の声優水樹奈々さんが歌うOPテーマ「Heart-shaped chant」が流れる



■ じわじわとキャラクタに命が吹き込まれていく独特のシステム「心象世界」

 Tony氏のデザインする人間・エルフ族のキャラクタは美形の男女が登場。そして、「シャイニング・シリーズ」といえば獣人族だが、竜人の鱗や鳥人の羽毛の先まで亜人種らしくかっちりと描き込まれている。この種族の多さという受け皿の広さが、多くのプレーヤーの様々なストライクゾーンに対応できているといえるだろう。

シーナ、クララクラン、ホウメイ、クレハという4人のヒロイン。彼女たちとの固有イベントは多く親密度を高めるものが多い
男性の仲間はカリス、ヒョウウン、ロウエン、ジンクロウの4人。獣人と人が心を通わすというのも中々珍しいシチュエーションだ


 だが、出会いの時の設定や会話などのパートから感じ取れるキャラクタ像は、既存のパターンをなぞっているという印象。ゲーム序盤では、「グラフィックやボイスは素晴らしいけど、強烈に育てたいというキャラは少ないなあ」というのが各キャラに対する感想だった。だが、とあるイベントで、キャラクタの描写の甘さも意図的な演出かもしれないと思うようになった。そのイベントが、“心にふれる”ことができる「心象世界」のイベントだ。

心に触れたいパートナーを霊樹の下まで連れて行き、ソウルピースを消費することで心の扉が開く


 「心象世界」イベントとは、本陣の庭に生えている霊樹にソウルピース(心のカケラ)と呼ばれる宝玉を規定数捧げることで、対象キャラクタの心の扉を開いて心の中に踏み込むというもの。一枚絵に文章が流れるというテキストノベルゲームのようなパートだ。このイベントはいわば連載小説のような形で、一度ではイベントのラストまで到達できない。「心象世界」イベントの続きを見るためには新たな貢ぎ物(ソウルピース)が必要であり、バトルやシナリオクリアで新しいソウルピースを出現させないことには「心象世界」イベントをラストまで進めることは難しい。このイベントで絆値のアップに成功すると、パートナー固有の心剣のレベル(攻撃力やステータス付与)がアップ。パートナーを深く知ることができ、なおかつ戦力の強化も図れるというお得なイベントだ。

 心象世界イベントで登場する一枚絵は専用に描き起こされており、キャラクタの立ち絵も普段と違ったものが登場することがある。キャラクタの封印された過去や、外面には出ない思いを知ることができる。キャラクタによりシナリオの当たり外れはあるが、キャラクタを掘り下げる細かな心情描写は見事。キャラクタの内面の魅力を引き出したい、という制作者の意図が伝わってくるようだ。

 筆者は第一印象や使用感で気に入ったパートナーがいなかったのだが、「心象世界」イベントでキャラクタの意外な一面や過去を知り、最終的なキャラクタの評価はだいぶ変わった。8人も使用キャラクタがいると、技が使いづらい、成長率が低い、といった“要らない子”扱いされるキャラがいてもおかしくないのだが、「心象世界」イベントのおかげでキャラクタのユニットへの育成意欲が自然と高まってくれた。結果として効率の良い戦法が見つかるなどキャラクタの魅力を通じてゲームの隠れた面白さを引き出すことができたと思う。

1つ残念なのは、心象世界イベントの選択肢。ほとんどのキャラクタの心象世界は、二択の選択肢が1回だけ出現。「熱い湯と冷たい湯、どちらを持って行く?」など、質問には少し理不尽で選択に悩むものもある



■ プレーヤーのスキルに依存しないアクションバトル

 今作のバトルは「タッグバトルシステム」を採用し、パートナーとともにバトルマップで敵を直接攻撃して、様々なミッションをクリアしていくタイプ。キャラクタは頭が大きい可愛らしいSDサイズだが、多彩なエフェクトやアクションパターンの表現力によって迫力のあるバトルシーンを演出している。

本陣と呼ばれる場所から規定のバトルフィールド(ミッション)へと出撃するバトル
フィールドマップを散策し、次元の裂け目であるカオスゲートをバトルで封印するモードもある


 操作はアナログスティックの左でプレーヤーキャラクタの移動、アナログスティックの右でパートナーキャラクタを移動させることもできる。プレーヤーキャラクタの通常攻撃は□ボタン(左手:通常攻撃)と△ボタン(右手:心剣攻撃)で斬りつけるだけというシンプルなもの。2キャラの同時操作は難しそうに感じるが、入力が無いときはパートナーがオートAIで行動。AIの組み方が良いのか、攻守の立ち回りが良く安心して見ていられる。緊急時以外はパートナー放置で、プレーヤーキャラクタの操作に集中していてもいいだろう。

【シングル技】
本陣と呼ばれる場所から規定のバトルフィールド(ミッション)へと出撃するバトル
【リンク技】
パートナーをR1ボタンでその場に固定(ロック)、その状態で再度R1ボタンを押すことで発動する強力な技。キリヤとパートナーの距離によってリンク技が変化する


 パートナーから引き出せる「心剣」の形状がそれぞれ異なるため、プレーヤーキャラクタであるキリヤのシングル技、リンク技は同行させるパートナー(最大一人)によって違いを見せる。例えば、シーナを同行させた場合は射撃が可能な「砲剣ブレイドカノン」に、クララクランを同行させた場合は守備が得意な「魔剣カラドボルグ」となる。ゲームが進むごとにパートナーの数が増え、バトルスタイルに幅が増えてくる。それぞれの心剣の特徴がはっきりとしているので、出撃前の作戦会議をよく聞いていれば、どのパートナーを同行させればいいのかがわかるだろう。

 基本的に敵よりプレーヤーキャラクタとパートナーの攻撃速度と範囲が圧倒的に勝っているため攻撃が当てやすく、敵からの攻撃を回避しやすい。ミッションの達成条件にしても、敵全滅系が多く全体的に特に作戦を必要とせず突破できる内容が多い。これらのことから、総じてバトルの難易度は低めで誰もが遊びやすい。アクションゲームが得意な人ならレベル上げに時間を費やすことなく、敵の攻略方法を見つけながらギリギリのレベルで進んでいくというタイムアタック的なファイトが楽しめる。逆にアクションが苦手な人には、地道に経験値を貯め、レベルをアップさせてステータスを積み増していけば難なくバトルパートはクリアできるだろう。

 また、ミッションクリア形式のRPGとしては珍しく、バトルでのゲームオーバーがない。ミッション途中でHPが尽きてもタイトル画面に戻されず、獲得金のペナルティもない。モチベーションというか、「絶対に負けられない!」という危機感には欠けるものの、シナリオやキャラクタの心情を楽しむ向きが強い今作ではありがたい仕様といえるだろう。


■ ソウルピースで「文字遊び」パズル感覚が楽しめる

 今作では、バトルやイベント終了時で入手できる宝玉「ソウルピース」を使用して、キャラクタの成長や装備品を強化する。「勇」や「剣」というように、漢字一文字が描かれた「文字ソウルピース」とモンスターの絵が描かれた「エネミーソウルピース」が存在する。文字ソウルピースはキャラクタの強化や心象世界イベントに使用し、エネミーソウルピースは装備品強化の素材として使用することになる。

ソウルピースの色は6種。配色はキャラクタ強化に重要な意味を持つ
 キャラクタの強化方法として一風変わっているのが、文字ソウルピースを各キャラクタに用意された「ソウルマトリクス盤」と呼ばれる盤面の穴にセットしていくことでスキルを修得させる「ソウルマトリクス」システムだ。ソウルマトリクス盤の穴は色が指定されていて、対応した色のソウルピースをセットすることでキャラクタのスキルが上昇する。経験値を集めることなく手軽にキャラクタを強化できるので、必ずソウルマトリクスはセットしておきたい。

 また、ソウルマトリクス盤上にソウルピースを並べ、漢字の熟語を対応させると「コネクトスキル」という特殊スキルが発動する。例えば、「聖」と「女」という熟語になるようにソウルピースを並べると「バイタルガーダー」という特殊スキルが発動する。できるだけ多くの熟語ができるように、余った穴が無くなるような置き方を考えるプロセスはなかなか面白い。熟語を探すという「言葉遊び」のパズルゲームのような、知的な刺激のある作業といえるだろう。

ソウルマトリクス盤に置いては外し、外しては置くという作業が繰り返されることになる


 本陣や特定の街にある「鍛冶屋」では3つのエネミーソウルピースと代金を支払うことで、文字ソウルピースへの変換、装備品の強化が行える。特に装備品強化は選んだソウルピースのレベルと色の組み合わせにより、強化後のステータスの伸びや「炎耐性」などの効果付与に大きな違いが生じる。組み合わせは非常に多く、それらを探して究極の武器を作ってみるという目標も生まれる。素材をセットした時点では合成結果のガイドは表示されないので、レシピが無い場合の合成はギャンブルに近いところはある。特定の装備品や文字ソウルピースの作り方は村や町の人が教えてくれるので情報を仕入れておくか、合成前にきちんとセーブしてやり直すのがいいだろう。


■ キャラクタで引っ張る分、ストーリー重視派には厳しいか?

 ストーリー重視のRPGでは、主人公の人間的な成長や、起点となる事件と意外性のある結末、勢力や人間関係が交錯するエピソードなどを挿入して物語を面白くしようと仕掛けてくる。だが、「シャイニング・ウィンド」ではそのような仕掛けが上手く機能していないように思える。あくまで筆者の主観だが、主人公たちの行動の不明瞭さや演出力の不足によって、場面は盛り上がっているのに心に響いて来ないというシーンが何回かあった。ストーリーの面白さがRPGの面白さというわけではないが、物語はもう少々練り込むべきではなかったのだろうか。

 今作はキャラクタの魅力に突出した良さがあり、気に入ったキャラクタに育成という形で愛情を注ぎ込めるというフックがある。筆者も本編のシナリオを進めるよりも、キャラクタの「心象世界」イベントを追うことに注力して楽しんでしまった。RPGはキャラクタで引っ張ることもできる、そんな答えを出せたのが「シャイニング・ウィンド」なのではないだろうか。プレーヤーの心に魅力溢れるキャラクタが後年まで残存する、今作はそんな素敵な体験をさせてくれるRPGといえるだろう。

(C)SEGA

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「シャイニング・ウインド」のページ
http://shining-wind.jp/
□関連情報
【5月11日】セガ、PS2「シャイニング・ウィンド」Tony氏の直筆サインなどが当たる発売記念イベントを開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070511/sw.htm
【2月26日】セガ、PS2「シャイニング・ウィンド」
5月17日発売決定。予約特典のファンディスクも公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070226/sw.htm
【1月19日】セガ、PS2「シャイニング・ウィンド」
声優キャストを発表。主題歌は水樹奈々さん
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070119/swind.htm

(2007年5月24日)

[Reported by 福田柵太郎]



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