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★PS2ゲームレビュー★

マニアックなパロディはわからなくても良し!
衝撃映像満載のマニアックアクションゲーム

「デストロイ オール ヒューマンズ!」

  • ジャンル:マニアック・アクションアドベンチャー
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(2月22日)
  • CEROレーティング:C (15歳以上対応)



プレーヤーは関西弁を用いるデカい頭の宇宙人クリプト(CV.山口勝平)を操作する
 宇宙人を操作して人間を倒すというインモラルなゲーム内容、過剰なハッタリが炸裂するプロモーション展開など存在自体が'50~'70年代SF映画へのオマージュとも取れる3Dアクションアドベンチャー「デストロイ オール ヒューマンズ!(以下、DAH)」がついに発売されてしまった。

 この作品は元々アメリカのゲームメーカーTHQが販売したゲームで、海外では続編も発売中という人気作品。ベースとなる海外版をローカライズし、さらに残酷表現の緩和やオリジナルシナリオの追加などで大幅に生まれ変わった作品がこの「DAH」なのだ。

 100%キワモノに見える「DAH」だが、操作系統や戦闘といったゲームの軸の部分の完成度が高く、そのギャップに筆者も驚いてしまった。また「人殺しゲーム」にならない配慮だと思うが、シナリオ面での誘導も巧みだ。「人を倒せ」というドーパミン全快の撃ちまくりなミッションはそれほど多くはなく、むしろ「騒ぎを起こさず人間に変身して進む」、「人に見つからずにパーティー会場へ忍び込む」といったステルスアクションのような緊張感を持続させるミッションが多い。

「みなさんこんばんは。これはあなたの受像器の故障ではありません……」と「アウターリミッツ」風にストーリーテラーが登場。とにかくSFファン垂涎のネタの宝庫だ
 また古今東西より集められたパロディがゲームに上手くマッチしている。'50年台のアメリカが舞台なのに「ガンダム」ネタやお笑い芸人のネタを盛り込んでいる今作の芸風は、外人に日本のギャグをやらせるといった感じのシュールな笑いが漂うモノとなっている。ただ、あくまでパロディは演出の一部であり、ゲーム性を助長も阻害もしない。パロディがわかればわかるだけニヤリとできる、程度のマニアの嗜み程度として考えたほうがよいだろう。

【プロローグ】
 '47年。アメリカのニューメキシコ州に異星人の円盤が墜落したところからこの物語は始まる。
 それから10年後。
 銀河の彼方にある惑星「フュロン」では、遺伝子研究の第一人者「オルソポックス博士(通称ポックス)」が地球で行方不明になった「クリプト136」のことを心配して夜も眠れない日々を送っていた。ちなみにクリプト136とはポックス博士が作り上げたクローン「クリプトスポリジウム型」の136番目の生命体のことである。彼は量産したクローンを銀河中に派遣して「エンドルフィン」という化学物質を集めさせていたのだ。

 「エンドルフィン」とは未開惑星の原住生物が作り出す脳内麻薬の一種で、銀河系では高値で取引されていた。貧乏科学者であるポックスにしてみれば、クローンたちが集めてくるエンドルフィンは生計を立てるための命の綱。それだけにクリプト136の音信不通は重大な問題なのであった。

「よっしゃ! そんならワイが地球へ行って136兄ちゃん探し出したる!」

 幼いがゆえにフュロン星で留守番に甘んじていた「クリプト137」は、ここぞとばかりに地球行きを志願する。地球には野蛮で残酷な「ニンゲン」という恐ろしい原住生物がいるらしい。果たしてクリプト137は無事に兄を助け出すことができるであろうか?


■ 分解ビームで人類殲滅、でも水に溺れて一撃死

ミッション失敗画面はタブロイド紙のインチキ記事風
 このゲームはミッションクリア形式のアクションゲーム。母船からUFOに乗ってミッションをスタート、3Dフィールドでの地上戦、UFOに乗り込んでの空中戦をこなしつつ、全23ミッションをクリアしていくことがゲームの目的だ。

 地上戦は、クリプトが3Dフィールドを走り回り人間を倒していく(または戦闘を避けていく)という白兵戦。クリプトは人間の銃弾などの攻撃に耐えるバリアフィールドを展開しており、攻撃を受けるとバリアフィールドのゲージが減少。ダメージを受けたバリアフィールドは一定時間で回復するが、ゼロになった状態でダメージを受けるとあえなくゲームオーバーになり、ミッション終了となってしまう。シビアなアクションゲームのように、水に触れると一撃で死亡する(水場は少ないのが救い)。クリプトは見た目通りと言うか、打たれ弱い仕様になっている。クリプトが倒れると、次のクローン・クリプトが作成されて再出撃するという凝ったコンティニューになっている。

 海外のゲームの先入観で「撃ちまくりの大味な戦闘なのでは?」と懸念される人もいるかもしれない。だが、「DAH」の戦闘ではアクションゲームに必要な繊細な立ち回りが要求され、ダメージもこまめに回復しなければ先に進めない。中々手応えのある戦闘シーンとなっている。

 クリプトの初期装備は電撃系武器のザッパーのみだが、ゲームが進むに従ってイチジクビーム、分解レーザーなど古色蒼然とした兵器が追加されていくようになるのでTPOに合わせて武器を切り替える。死亡した人間から抽出した「エンドルフィン(ゲーム内通貨)」を集めれば、武器をアップグレードすることも可能だ。

【ザッパー】【分解レーザー】
電撃系のザッパーは前方の標的を自動補足して命中する。ザッパーに感電した人間が「あばばばば……!」と悶えている様子ににやりとできれば、フェロン星人への感情移入度は120%だ。アップグレードが完了すると、複数の人間を巻き込めるようになる 前方に高威力のエネルギー弾を撃ち出し、当たった人間は皮が溶け、骨格標本くらい立派な白い骨が画面に数秒間残った後に蒸発する。この骨になっていくプロセスで爆笑できるくらいの心の余裕が無いと「DAH」を楽しむのは難しい
【イチジクビーム】【イオンランチャー】
チャージ式のビーム。奇怪な音と共に緑色の液体らしき物体が前方に発射される。ビームが当たった人間は尻からエンドルフィンを放出して頓死する。人間から出たエンドルフィンを取った後「10mgか安いな…」とつぶやければ、君も立派なフュロン星人だ R1ボタンを押し続けることで射程を調整、射出後に任意のタイミングでR1ボタンを押すことで爆発スイッチが入り周囲を吹き飛ばす兵器。威力が高く、主に車両系や建造物の爆破などに使用する。車両などにくっつけて運ばせることもできる


現場に急行したパトカーが豪快に市民を跳ねとばす。人類こそ悪魔だ!
 ちなみに人を倒す時は出血や部位破壊、臓物がはみ出るということは一切無い。むしろコミカルなポージングでギャグチックに人々が大往生する様は、コメディの域に近いと個人的には思う。また、逃げまどう人々を「ウヒャヒャ!」とプチプチ消してばかりいると、警官や軍隊が駆けつけて手ひどいしっぺ返しをくらう。逆説的に命の尊さを説いている作品といえなくもないだろう。


■ 超能力で(たまには)人類と共存

 クリプトはサイコキネシスや脳波スキャンなど超能力を使うことができる。ミッション内には超能力を駆使しないとクリアできない場面が多く操作が忙しいが、慣れてくると人間を自由自在に操れるようになってくるだろう。

【変身】
 人間に「変身」することで、「警戒レベル」を上げずに行動することができる。「警戒レベル」は、クリプトが市民に発見されるなどして騒ぎが起きると画面上の「警戒レベル」ゲージが上昇、強力な組織(警官、マジェスティック)が集まってきてしまうというシステム。つまり、無抵抗な市民を「ウヒャヒャ」と虐殺してばかりいると、たちまち警官や黒服の秘密組織マジェスティックの大群に囲まれてホールドアップ&蜂の巣という憂き目にあってしまう。

警戒レベル1であれば平和な街中は問題なく探索できる。だが、バリバリ人を惨殺し続けると…… たちまち警戒レベルマックスとなり、戦車や巨大ロボまで出現する地獄絵図に 黒塗り車から沸いてくる秘密組織マジェスティック。超兵器で武装しているので囲まれると大ピンチ


マジェスティックは探知センサーを所持しているため、近くに寄ると変装が解除されてしまう
 逆に言うと、警戒レベルを上げなければ安全に進むことが可能。この警戒レベルを絡めたミッションは非常に多く、殺戮プレーをしないのであれば、警戒レベルの上昇をコントロールするという有利な立ち回りを考えるのが攻略のキモとなる。そこで「変身」の出番だ。人間をL1ボタンでターゲットして○ボタンを押すと、その人物に「変身」する。「変身」中は人間に近づいても警戒レベルが上昇しないので、安全に街中を探索できる。

【脳波スキャン】
 「変身」中は精神力メーターが減少していく。精神力メーターが尽きると変装が解除されてしまうので、人間を「脳波スキャン」して精神力メーターを補給しなければいけない。「脳波スキャン」はL1を押しながら×ボタンを押すことで思考を読み取る技で、相手の考えていることがメッセージとなって表示されると同時に精神力メーターが回復する。このメッセージは何とフルボイス。明らかに力の入れ所がおかしいとは思うが、個人的には美少女ゲームのフルボイスと同等の価値があると思う。

【サイコキネシス】
 L1を押した状態で△ボタンを押すと、サイコキネシスの発動。人や牛などのオブジェクトを持ち上げることができる。持ち上げた状態で右スティックを回すと振り回し、再度△ボタンを押すと任意の方向へ投げ飛ばす「プッシュ」が可能。

人や牛がゴムボールのようにバウンドして飛んでいく恐怖のサイコキネシス アップグレードすれば戦車や巨大ロボもサイコキネシスで持ち上げることができる


【催眠術】
 ターゲットをロックして□ボタンを押すと、ターゲットに催眠術をかけることができる。「注目を集めろ」、「眠れ」の行動を取らせることができる。特殊な場合に限り、ミッションのクリアのため「UFOに移動しろ」、「ロックを解除せよ」などの行動を取らせることもできる。

【エンドルフィン抽出】
 死亡した人間の近くでL1を押しながら○を押し続けると、「エンドルフィン」を抽出できる。「エンドルフィン」はゲーム内の通貨で、UFOやクリプトの武装のアップグレードなどに支払う。ちなみに、イチジクビームやサブミッションでエンドルフィンを回収していくほうが効率良い。


■ UFO少年もびっくりのUFO兵器で人類殲滅

 ミッションの中にはUFOに乗り込んで上空を飛び回り、熱戦砲で民家や軍施設を焼き払うというパートがある。「人がゴミのよう」くらいの気分で破壊のカタルシスが堪能できるだろう。と、言いたいところだが、UFO戦は地上戦より難易度が高く、フラストレーションがたまりやすい。

 UFOの移動は慣性があり、それはそれでUFOらしさの出る演出なのだが、操作の快適さを犠牲にしてしまっていると思う。さらに移動速度も遅く当たり判定も大きいため、攻撃が避けられずにもどかしさを感じた。UFOに乗るミッションは短期で、それほど多くないのが救いというところか。

【熱線砲】【ソニックブーム】
R1ボタンを押し続けることで、UFOから地上へ伸びる赤い熱線を発射。ターゲットをじゅうじゅうと溶かす。熱戦砲ゲージを撃ち続けているとUFOがオーバーヒートを起こしてしまうので、攻撃を控えて冷却させる必要がある ターゲットに向かって威力の高い衝撃波を発射する。装弾数に限りがあり、建造物を破壊すると予備の弾薬が出現。なぜか空中に浮いているので回収すればよい
【牽引ビーム】【量子分解砲】
R1ボタンを押し続けている間、UFOの下にいる人間や車両を空中に持ち上げることができる。牛を捕まえてキャトルミューティレーションプレーをするのもいいが、特定のミッション以外には使い道がない 周囲を爆風で巻き込む量子分解砲。施設だろうがロボだろうがほぼ一撃で破壊できるが、装弾数は少ない。ソニックブームと同様に建造物を破壊して弾薬を補充しよう



■ 多彩なミッション

基本的にはレーダーのピンクの円が次の目的地と思えば問題ない
 ミッションは尺の長さがちょうどよく、指令が次々に追加され、また指令の内容が変化に富んでいるためプレーヤーを飽きさせない。ミッションのヒントもクリプトの味方のポックスがフルボイスで説明してくれる。

【MISSION1 クリプト大地に立つ!】
牛の思考をスキャンした後、牛を6匹サイコキネシスで仕留める。村人からエンドルフィンを抽出した上で、ウェルズ農村の家屋を焼き払う
【MISSION2 人間標本5,6人】
パーティー会場に変身して潜入。市長を捜し出した後、ミス・ロックウェルを催眠術でUFOまで催眠誘導した後、パーティー会場を火の海にする
【MISSION3 無闇に光る牛】
遺伝子操作された光る牛を脳波スキャンした後、市長にすり替わって演説を成功させる

 反社会的なゲーム内容に反してプレー中は悲壮な気分にもならず、かといって「人間をバリバリ倒すぜ!」という積極的に残虐行為を助長する気持ちにも筆者は陥らなかった。それは豪華な声優陣のボイスや、人間以上に人間らしいクリプトたちの姿や、自分にわかる範囲のパロディがうまく凄惨さをスポイルしてくれたからだと思う。

 破天荒な内容が肉付けされている本作だが、筆者としては、「DAH」をアクションゲームの原点のように楽しむことができた。つまり、ミッションの攻略パターンを立て、パターンが成功したときに達成感が得られた。パッケージにターゲットユーザー不在と謳ってはいるが、アクションゲームファンとしては十分満足できた作品だ。

パロディの元ネタなどを解説した攻略書籍などが発売されてくれないかな……


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□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「デストロイ オール ヒューマンズ!」公式サイト
http://dah.sega.jp/

(2007年3月1日)

[Reported by 福田柵太郎]



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