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「アジア オンライン ゲームカンファレンス 2007 東京」開幕
マイクロソフト、泉水敬氏「Liveサービスとコミュニティの未来像」

【アジア オンライン ゲームカンファレンス 2007 東京】
2月22日~23日 開催

会場:ベルサール神田

 有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会 (BBA) は2月22日から23日にかけてオンラインゲームの国際カンファレンス「アジア オンライン ゲームカンファレンス 2007 東京 (AOGC 2007)」をベルサール神田にて開催する。

 「AOGC 2007」では様々な講演が予定されており、バンダイナムコゲームスの中村勲プロデューサーによる「リッジレーサー7の開発を通して」といったコンシューマ系の話題から、コーエーの松原健二氏による「オンラインゲーム beyond:可能性はどこまでか?」 といった大きな話題を扱った内容の講演まで用意されている。

 大手メーカーの責任者がズラリと講演者として名前を連ねており、さくらインターネット株式会社の笹田 亮氏が「ロード・オブ・ザ・リング (仮称) における日米同時発売への試み」と題した講演を行なうほか、株式会社ゲームポットの植田修平代表取締役社長による「ゲームポットの事業戦略におけるコミュニティの活用法」といった講演も行なわれる。

 開催に先だって行なわれた開会式で挨拶のため壇上に立ったIGDA日本の代表を務める新清士氏は「数年前はオンラインゲームとはなんだといった時期があったが、今では大きな市場となった。さらに、ゲームとコミュニティサービスの垣根がなくなりつつあり、ゲームと呼び続けて良いのかといったソフトまで登場している。もっと新しいビジネスモデルがここ5年で生まれてくる」と挨拶。これまで以上の速さでこの業界が展開していくとの見込みを示している。

 弊誌では2日間に行なわれる講演を順次レポートしていく。本稿では初日に行なわれた基調講演の模様をお伝えする。


■ 「Liveサービスとコミュニティの未来像」

マイクロソフトの執行役でありホーム&エンターテイメント担当、Xbox事業部長を務める泉水敬氏。今回の基調講演では「Liveサービス」の優位性をアピールする機会となった
 「AOGC 2007」の開幕を飾った基調講演のスピーカーは、マイクロソフト株式会社の執行役でありホーム&エンターテイメント担当、Xbox事業部長を務める泉水敬氏。タイトルは「Liveサービスとコミュニティの未来像」で、これまでXboxで築き上げてきた「Xbox Live」におけるコミュニティサービスについて取り組みを解説すると共に、今後の方針を語った。

 泉水氏はまずは“2月22日”について触れ、「Xboxに関わる者として2月22日は重要な日で、5年前にXboxが日本で発売された日です」と語り始めた。泉水氏は続けて「Xboxの発売の1年後からXbox Liveのサービスを開始した。(ここまでやってきて) ついにXboxの時代がきたと思う」と自信たっぷりにアピールした。泉水氏によればXbox Liveは当初から「繋がることの楽しさ」を大切にし、その繋がりの中でコミュニティの形成が行なわれていったという。

 オンラインゲームの現状と今後について同氏は、対戦から共有に向かっているとした。オンラインゲーム登場当時は対戦ゲームが多く、そういった中から協力するゲームなどが登場していった。このなかで、ユーザーはなにを楽しんでいるのか考えてみたとき、泉水氏は「ユーザーは様々なものを共有している」としている。そこでは、ゲーム内でバーチャルな同じ空間を共有し、プレイ時間を共有、自分を表現するべくアバターといった情報の共有などが行なわれているとした。そういった「ゲームの楽しさや体験」を共有し、感動を共有する。

 共有が進むと共感するユーザーが集まりコミュニティが形成される。さらにコミュニティが情報を発信することで同じ考えの人が集まり、コミュニティは広がっていく。このスパイラルが出来上がることで、コミュニティはさらに成長していく。このコミュニティは非常に重要で、これがビジネスの土壌となり、ビジネスの拡大の可能性を引き出すとした。

 この後、泉水氏はXbox Liveについての解説を行なっていった。ことあるごとに弊誌でも解説を行なってきたが、Xbox Liveはシステムとして確立されているが、何よりコミュニティをサポートする機能が非常に行き届いている。便利にできていて、どこからでも繋がるようにできている。

 その大元となるのがXbox LiveのユーザーIDを設定することで、Liveに接続するゲームが全て対応可能なところだ。今でこそPCのオンラインゲームでも各社導入しているが、Xbox Liveが最も進んでいると言える。Xbox Liveのさらに凄いところはXbox Liveに接続していれば、ほかのゲームを遊んでいるユーザーにも繋がることができるという点だ。たとえば「DEAD OR ALIVE Ultimate」で遊んでいてXbox Liveに接続している場合、ユーザーがほかのゲームで遊んでいてもメッセージを送って「『DEAD OR ALIVE Ultimate』を遊ぼうぜ」と誘うことができる。さらにXbox 360でDVD-Videoを観ているユーザーにも、これらのメッセージを送りゲームに誘い込むことができる (現在のバージョンでは、再生中にメッセージが届いても表示しない設定も可能となっている) 。こういったように、これまでゲームタイトル内で完結していたコミュニティがより大きな広がりを持ってくる。これらのXbox Liveのコミュニティサービス機能は、ユーザーをゲームに引きずり込む力を持っていると言える。

 ここで泉水氏は「重要なのはセキュリティ。遊んでいる人はもちろん、一緒に遊ぶ人の素性も重要。開始当初に『Xbox Liveはクローズドだ』といったご意見もいただいたが、それはセキュリティにあると思っている。でもそれは安心して遊ぶためにはある程度必要なことで、今後もセキュリティは妥協なく取り組んでいく」と語った。さらにマーケットプレイスや「Xbox Live ARCADE」等についても解説。マーケットプレイスでの映像配信などについては今後日本でも予定していることを明らかにした。

 Liveの役割として同社が重要視しているのはこれまでの説明にもあったとおり、コミュニティの形成を促進させ、サポートするという点。ハードウェア上ではWebカメラやヘッドセットが販売されている。また、データ的な観点で言えば「ゲーマータグ」の公開があげられる。ユーザーのプロフィールや指向などに留まらず、どういったゲームでどういったところまで進んでいるかといった情報も管理されている。こういった情報を元にゲームシステムからは各ユーザーのマッチングを行ない、ユーザー側は多彩な検索機能を利用することで、より近い指向を持ったユーザーにコンタクトを取ることも可能だ。

 さらにLiveは「Live Anywhere」を提唱し、広がりを見せている。LiveはXboxだけではなく、Windowsとも連携。メッセンジャーにタブが用意されており、ここからも情報にアクセスすることができる。今回の基調講演ではXboxのホームページでゲーマー プロフィールにアクセスできるサービス「Xbox Live Web Service」のデモンストレーションを行なった。デモを行なった巽氏は「Xbox 360はゲームに特化している。でも、ゲーマープロフィールなどの情報にアクセスするだけならPCが手軽」と説明。これは1つのプラットフォームに留まらず、Xbox 360とWindowsというふたつのプラットフォームを持つメーカーならではの考え方ともいえるだろう。

 「Xbox Live Web Service」では情報へのアクセス、単純な編集に留まらない。他のユーザーに対してメッセージを送信できるだけでなく、ゲーマープロフィールのデータを元に細かなマッチングを行なう「ユーザーマップ」といった機能も持つ。これはゲーマープロフィールに収められたゲームの進行情報などを元に検索し、グラフィカルにマッピングするというシステム。検索条件によって自分に近いユーザーが表示されるわけだが、デモンストレーションで行なわれたのは、「最近『ブルードラゴン』を始めたので、ゲームのはじめの方をプレイ中の人と感動を共有したい」ということで、ゲームで検索条件を絞るというデモ。検索ユーザーのゲーマープロフィールの中に収められた「ブルードラゴン」の進行状況を見て、それに見合ったゲーマープロフィールの条件を検索し、表示する。こういった、コミュニティを形成しやすい機能が充実しているのがXbox Liveの特徴で、一見既存の技術の集合体のように見えるが、非常に強力に仕上がっている。

 泉水氏はここで「Live Anywhere」について「いつ、どこで、どんなデバイスを使ってもLiveで情報を共有できる」と説明。その一環としてXbox 360とWindowsの両プラットフォームで提供されるFPSタイトル「SHADOWRUN」のクロスプラットフォームでの対戦デモを行なった。このデモは国内では初めての公開となる。マッチングが終了しゲームにはいると、当然の話だが、Xbox 360版とWindows版の画面の見分けはほぼ付かない。ゲーム自体は快適に動作しており、特に問題はない。泉水氏は「クロスプラットフォームでゲームをプレイできることで、共有が広がる」と語った。

 基調講演ではこのほかXNAについても簡単に触れられた。XNAについて「商用のゲーム制作ツールとしてはまだ発展途上ですが、大学などの教育機関からも問い合わせをいただいている」とし、C#をベースにして開発が容易な点をアピール。担当者によるデモプログラムを公開すると共に、自身でもゲームを制作してみたことがあることを明らかにした。今後は、プログラムやライブラリの共有を計り、ゲームの制作に役立てていきたいとした。

 最後に今後のビジョンとして、なにを目指していくのかに触れた。前述のようにLiveのサービスはXbox 360に留まらない状況となっている。ここで提示されたキーワードが「Connected Experience」。これはWindowsのキーワードで、“体験の共有”となる。ここではゲームに留まらずWindowsやOfficeといったアプリケーション、さらにはデバイスを問わず繋がっていく。そして泉水氏は「Xbox 360で目指すのは“Connected Entertainment”で“感動の共有”」とし、ゲームの中で体験できるユーザーの感動を共有して欲しいと説明し、締めくくった。

 実は、このLiveの構図は、2005年に開催された「AOGC2005」で和田洋一スクウェア・エニックス社長が基調講演で語った内容と多くの点で方向性が似通っている。この講演会で和田氏は「コンシューマのゲームで大切なのはROMではなくセーブデータ」と語っていた。これは今回の泉水氏の“ゲームでなにを体験したのか?”に繋がっている。オンラインサービスを推進する企業がコミュニティサービスを重視している中で、一足早くそれに気付いていたのがこの2社なのかもしない。具体的な方針については明らかにされていないが、こういった潮流を見る中では面白い基調講演だった。

今回の基調講演のタイトルは「Liveサービスとコミュニティの未来像」。なぜ「Xbox Live」ではないのかと言えば、“未来像”の中でXboxはデバイスの一部にすぎないからだ。いつでも、どこでも、どんなデバイスからでもコミュニティに接続でき、体験を共有できるというのがマイクロソフトの思い描く世界といえる 講演の一番最初に映し出されたスライド。5年前の2002年2月22日にXboxが発売となった。泉水氏は「Xboxに関わる者として忘れられない日」とコメント。そしてその1年後にLiveがスタートすることとなる 当初のオンラインゲームは対戦するものが多かったが、そこから協力といった変遷を経て、今後は共有する内容になると解説。共有する内容は、空間 (バーチャルの) や共にプレイした時間などがあげられるとし、感動を共有することで他のユーザーを巻き込みコミュニティは拡大していくといったスパイラルができる
Xbox Liveの特徴を示したスライド。マーケットプレイスやゲームの流通形態として今後さらなる伸びが期待されているオンデマンドによる「Xbox Live ARCADE」などを説明。特にセキュリティについては「安心して楽しんでもらうためにはセキュリティは重要」と語った Xbox Liveはコミュニティをサポートするという意味では非常によくできたシステムで、様々なところからいつでもコミュニケーションに結びつくことができる仕組みとなっている。コミュニケーションツールとしてのヘッドセットや、サポート機能、そしてマイクロソフトの強みのひとつであるワールドワイドでの展開などの優位性を解説 さらにデモンストレーションで、Xbox Live Web Serviceについても担当者から解説が行なわれた。Xbox 360はゲームに特化したマシンで、その周りの情報 (ゲーマータグなど) についてはWindowsなどからアクセスして操作したほうが簡単と説明。こういった考え方は様々なデバイスからアクセスできるシステムを持つマイクロソフトならではといえるだろう
Xbox Liveの機能の一つで、ゲーマータグの情報をベースに様々な検索条件で、自分と近いユーザーを表示できる「ユーザーマップ」。右写真では、説明を担当した巽氏が「最近『ブルードラゴン』を始めたので、ゲームのはじめの方をプレイ中の人と感動を共有したい」ということで表示してみせた ついに動き始めた「XNA」。泉水氏が「担当者にちょっと作ってもらった」として簡単なプログラムを披露。泉水氏は自分でも作ってみたことがあるという。「C#」をベースとしているので非常に簡単であるとアピール
すでに発表されているLiveの次の展開となる「Live Anywhere」。Xboxだけでなく、Windowsはもとより、officeや、携帯電話など様々なところから、いつでもどこでもアクセスしコミュニケートできる仕組みを作りあげようとしている。そして泉水氏は、「『Live Anywhere』が目指すのは“Connected Experience”で、Xboxで目指すのは“Connected Entertainment”で、感動の共有」とした


【SHADOWRUN】
どこからでも……という意味では、Xbox 360とWindowsのクロスプラットフォームがすでに実現しようとしている。昨年のE3など海外ではすでにデモンストレーションも公開されているが、今回国内では始めて「SHADOWRUN」のXbox 360版とWindows Vista版のクロスプラットフォームでの対戦が披露された。写真では2画面写っているが、左側がWindows版で、右側がXbox 360版。何の問題もなく快適に対戦が実現していた。リリースは2007年が予定されている


□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bba.or.jp/bba/
□「アジア オンライン ゲームカンファレンス 2007 東京」のページ
http://www.bba.or.jp/AOGC2007/
□Xboxのページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□関連情報
【2006年2月16日】「アジアオンラインゲームカンファレンス2006」記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060216/aogclink.htm

(2007年2月22日)

[Reported by 船津稔]



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