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しかし、そんな中にも変化の兆しが見えてきた。たとえば「サルゲッチュ3」(SCEJ)と「METAL GEAR SOLID」のキャラクタのコラボレーションが行なわれたり、Wiiで制作が進められている任天堂の「大乱闘スマッシュブラザーズX」に「METAL GEAR SOLID」のスネークが登場したり、「デビル メイ クライ3」のキャラクタの魔人化のイラストをアトラスの金子一馬氏が手がけるなど。 その先駆けの機運を築き上げたひとつの例が、カプコンの「ロックマン」チームとKONAMIの「ボクらの太陽」チームによるシリーズのコラボレーションだろう。この2チームによるコラボレーションの凄いところは、1回やって終わりではなく、それぞれのゲームの良さを保ちつつも、どんどんと意見を出し合い新しいコラボレーションに育て上げているところだろう。
今回は、カプコンでDS「流星のロックマン」を手がけた堀之内 健プロデューサーと、KONAMIで「ボクらの太陽 Django & Sabata」を手がけた吉冨賢介プロデューサーにコラボレーションの経緯や目的などを伺ってみた。 ■ コラボレーションのスタートは“上司命令”?
●堀之内 健氏: そうですね、初めに話題として挙がったのは、上の方というか……KONAMIさんの方で「ボクらの太陽」を始められるときに、弊社の稲船とKONAMIの小島秀夫さんが懇意にしている中で出てきた話だったんです。 ●吉冨賢介氏: 「ボクらの太陽」という子供をターゲットとしたタイトルを立ち上げる時に、小島の方が「ロックマン」シリーズですでに成功を収められている稲船さんに相談をしていたんですね。それでお互いに色々とやりとりしているなかで、せっかくそういう作品を作るんだったら、2つの作品で「ちょっと面白いことをしようよ」という話が出たのが、コラボレーションのそもそもの始まりですね。 --Q:その「一緒にやりましょう」という話が出た時は、まだ両方の作品の企画というのは初期段階だったのですか? ●吉冨氏: お互い作品として形になってきていた時期ですね。 ●堀之内氏: 弊社も「ロックマン」シリーズをずっとやってきていますが、ちょうどシリーズ4作目である「ロックマン エグゼ4 トーナメント レッドサン/トーナメント ブルームーン」の時に、システムなどを刷新した時で、そういう中で、稲船の方から「なんかやれ」という話だったと思います(笑)。まぁ、たぶんKONAMIさんも同じタイミングかなと思うんですが。 ●吉冨氏: そうですね、「ボクらの太陽」に関して開発当初は、“太陽センサー”を使って遊ぶということで、とにかく「ボクらの太陽」自体を作り上げるのが精一杯だった時期があったのですが、話が出た頃は、だいたい「先が見えてきたよね」といった時期で、小島も安心した頃だと思うんですけど……。 --Q:余裕が出てきたんですね。 ●吉冨氏: 余裕というか、欲というか。「もうひと盛り上げ入れなあかんのとちゃうか?」みたいなところで、「やろうか!」というところが最初ですね。 --Q:それでは、割とトップダウン的に話がおりてきて、制作現場的には、どんな感じだったんでしょうか? ●堀之内氏: 最初はさすがに (コラボレーションの) できる範囲がなかなか狭かったので、シナリオ……まぁ、サブシナリオなどにおけるコラボレーションと、アイテムのやりとりといった点が多かったのですが、それが次に繋がっていくんですよね。 --Q:次の作品にステップアップする時に、「では、今度は初めからガッチリと組みましょうという話になったのですね。 ●吉冨氏: 1回目のコラボレーションでも、今でこそ「シナリオだけかよ」という言い方になってしまいますが、当時としてはかなり画期的な話ですよね。 ●堀之内氏: そうですね。他社間でコラボレーションするなんて無かったですからね。 ●吉冨氏: ロックマンが「ボクらの太陽」に出てきて、「ロックマン」に他社のキャラクタが出てくるという!! それだけで当時はものすごいことだったんですけどね。それで「よしよし。すごいことしたぞ俺たち」という部分も持ってたんですけど……小島 & 稲船さんは「なにをいっているんだ!」と(笑)。 --Q:「もっとやれ!」と(笑)。 ●堀之内氏: 「次はもっと面白いことなんかやれよ」という(笑)。「何やんねん次は。同じとちゃうやろな?」みたいな話で(笑)。 ●吉冨氏: そうか、通過点だったのか! と(笑)。 --Q:一番初めの時のコラボレーションが完成して、世に出た時のユーザーさんの反響はどんな感じだったのでしょうか? ●吉冨氏: 小さなお子さんはまだよくわかってなかったと思いますが、ちょっと (ゲームのことを) わかっているユーザーさんたちは、「(KONAMIの)『ボクらの太陽』に (カプコンの)“ロックマン”が出てきたよ!」とか、そういった驚きは伝えられたかなという感じでしたね。 --Q:好意的に受け入れられたんですね
●堀之内氏: そうですね。やはり、「お互いの作品の世界観はきっちり守れたな」と思います。というか、まずキャラクタのイメージ等を守った上で、コラボレーションをやっていますしね。例えばカプコンが「ボクらの太陽」のジャンゴ君のイメージを壊していることとかもないので、「こっちだとこういうジャンゴ君もあるよ」とか「“ロックマン”が出てきてこんなことしてるよ」みたいに、かなり好意的に受け入れてもらえましたね。そうやって受け入れてもらったからこそ、次への自信に繋がったかなってところはありますよね。 ■ 「クロスオーバーバトル」。異なるゲーム間で対戦を実現 --Q:当初はサブシナリオやアイテムのやりとりといったコラボレーションが行なわれ、「次はそれだけじゃないよな」という話になり、次のコラボレーションでは両方のソフトでの対戦「クロスオーバーバトル」という話に発展していきます。こういったコラボレーション内容になった経過というのはどういった経緯ででしょうか? そこでのアイディア出しというのはどのように行なわれたのでしょうか? ●吉冨氏: 「ロックマン エグゼ5」の方が“対戦”というのがひとつの大きなファクターだったので、コラボレーションも対戦かなと。繋がって初めて面白いだろうということで、「通信で対戦をやらないと面白くないだろう」という話が発端ですね。でも、「対戦? ゲーム違うのに……対戦?」というところがあったのですが(笑)。 --Q:違うゲーム同士の対戦ってちょっと思いつかない発想ですよね。 ●堀之内氏: “対戦”という話ですが、「何か (ゲーム本編とは違う) ミニゲームなどで対戦といったアイディアも、やはり普通に出たのですが、お互いのゲームのシステムとか遊び方をきちんと考慮した上での対戦でなければ……別な遊びというか、ミニゲームをちょっとできるだけでは面白くないなと思ったんです。であれば、「ロックマン」は「『ロックマン エグゼ』ならではの遊び方」で対戦に挑む、「ボクらの太陽」なら「『ボクらの太陽』の遊び方」でのバトルシステムで、お互いどうやって戦えるのかな? と考えたんです。 --Q:そこで共通の敵 (シェードマン) を設定し、それぞれのゲームのルールで攻撃し、先に倒したほうが勝ちというシステムが確立されたんですね。さらにシェードマンに攻撃を加えると、相手には“おじゃまアイテム”として邪魔することもできるという。 ●堀之内氏: 「ボクは野球は得意だけど、サッカーは苦手」ということはあるじゃないですか。得意な野球で勝負してるけど、実は対戦相手側に行くと、向こうは向こうの得意としているサッカーで勝負しているという。そういう面白さがあると思うんですよ、このシステムには。 --Q:そのアイディア出しに至るまでは大変だったのでしょうか? ●吉冨氏: 野球選手とサッカー選手でまったく違う競技のバレーボールをやらせようというわけじゃなくて、お互いの築き上げたスキルをぶつけ合うことができるようにしたかったんです。そこでどうしたら勝敗をつけることができるのかということで、試行錯誤の上でクロスオーバーバトルの“おじゃまシステム”とか、相手プレーヤーの“おじゃま攻撃”を1回跳ね返せるといった細かなルール付けを、実験を繰り返しながら加えていったという感じですね。 ●堀之内氏: ソフト間で通信のラグがあるので、ターン制にして同期を合わせましょうと言った技術的な部分もありました。ただ、前述のような発想が固まってからは早かったですね、そういう意味では。 --Q:真ん中に共通の敵がいて、それを挟んでそれぞれのゲームのルールで戦うというアイディアを採用することが決定すれば後は色々と加えていく段階になると思うのですが、その一番重要なアイディアが出た瞬間というのは「これでいける!」といった感触がありましたか? ●堀之内氏: 毎回、コラボレーションを始めるにあたって1回目の顔合わせの時に、お互い企画を持ち寄るのですが、その中でどちらの意見か忘れたのですが、「それぞれでやっぱバトルやりたいよね。じゃ共通の敵を置いたらいいんじゃない。それで、こいつを先に倒したらおもしろいんじゃない」という話が出たんです。その時点で、アイディアが出てきていたので、ゴールは見えたので途中経過の確認と、そこら辺をどう詰めていくかということで進行していきましたね。 --Q:なるほど。では、今度はこの“クロスオーバーバトル”が世に出たときの反応はいかがでしたか? ●吉冨氏: これはさすがにみんなビックリですよね。実際に次世代ワールドホビーフェアとか、そういったイベントで子供達がプレイする姿を間近で見ることができて、これはやってよかったなと思いました。すごく楽しんでくれて、面白がってくれてたので、大成功だったなと。
●堀之内氏: 違うソフトと通信対戦というところの発想が、本当にやってもらって「あぁ、こういうことか」という……聞いてびっくり、やってさらにビックリという感じのところが、本当に子供の感触として伝わってきたので、僕らもすごく手応えがありましたね。
■ “戦い”から“協力”へ。クロスブラザーバンドで繋がる楽しさ --Q:そこで最新作「流星のロックマン」と「ボクらの太陽 Django & Sabata」におけるコラボレーションに繋がると。 ●堀之内氏: “クロスオーバーバトル”での手応えがあって、「次は何をしますか?」という話になるわけです。そこで、通信といえばやはり“競争”というか“対戦”というアイディアが多いので、じゃぁ、もっとガッチリ「仲がいい感覚」を大事にしてみようかなと。「競うんじゃなくて協力という目線で何かアイディアを考えたいですね」ということを打ち合わせで話したんです。「流星のロックマン」ではクロスブラザーバンドというシステムもあることですし。今回、ニンテンドーDSというハードに切り替わったので、通信というか、接続しての楽しみというところを強調したかった。アップデートしていく面白さというところで、どういった遊び方があるかなと。 そこで、ニンテンドーDSという新しいハードで、通信という切り口で、新しく何ができるのか。早い話、自分の持っているゲームタイトルの中だけじゃなく、違うソフトともお友達を作れるようにしようということですね。「ボクらの太陽」なら「流星のロックマン」のプレーヤーと、「流星のロックマン」なら「ボクらの太陽」のユーザーと友達になれて、こんな遊びがあるよというのが“クロスブラザーバンド”ですよね。 ●吉冨氏:対戦というシステムをずっとやってきたのですが、今回は戦うんじゃなくて、友達として仲間になっていこうってのが大きな特徴です。具体的にどんなことをやっているかというと、「ボクタイ」と「ロックマン」の間でメールのやりとりができるのですが、そのメールと一緒にゲームがどこまで進んだかっていうデータのやりとりもしてるんです。で、相手がどれだけ進んでたかによって、自分のパワーアップの度合いが変わってくるんです。だから「流星のロックマン」を持ってる子がすごく高いレベルまで進んでいて、その子と友達になってデータをもらうと、自分のアイテムとか星霊獣がパワーアップするんです。で、逆に「ボクらの太陽」の方が進んでいると、「流星のロックマン」の方で強いカードが出たりします。それでお互いゲームを進めることで、友達に協力できると……そういう流れになってます。 また、「ボクらの太陽」では「流星のロックマン」のシンボルマークの形をしたアイテムがあるのですが、「ボクらの太陽」のゲームの中では特段使い道のないアイテムなんです。だけど、メールにそのアイテムを添付して「流星のロックマン」の方に送ると凄く役に立つアイテムになるんです。ですからこれらのアイテムを添付して「流星のロックマン」のプレーヤーにメールを送るとすごく喜ばれる。逆に、「流星のロックマン」の方でも使えないアイテムがあるんですが、「ボクらの太陽」のユーザーに送ってもらうと、ものすごくパワーアップしたりする仕組みになっているんです。 ●堀之内氏: 考え方としては、お互いのゲームでそれぞれ進めながら、繋がるとさらに楽しく有利に進められるというところですね。「流星のロックマン」で“ブラザーバンド”というシステムがあって、友達を作って対戦ではなく何ができますか? というところで、じゃ、通信してドンドンドンドン情報をアップデートしたら……「ボクらの太陽」が進んだら、さらにウチの「流星のロックマン」がパワーアップで強くなっていくとか、ヒットポイントが上がっていたりとか、そういう風な形になってますね。 --Q:ゲームを進めるモチベーションにもなるし、友達を作って“繋がる”モチベーションも高めるということですね。 ●堀之内氏: そうですね。例えば、それぞれのタイトルでは役に立たないけどやりとりすると強力に使えるアイテムは、『えこひいきしすぎなんじゃないの?』って思うくらいパワーアップします。これは、他のユーザーとつなげてみたいなと思わせるような仕組みになってます。ワイヤレスでも繋げますし、友達コードを交換すれば、Wi-Fiコネクションでも繋げることができます。 ●吉冨氏:「流星のロックマン」では“ブラザーバンド”というシステムが一番のキモだと最初の企画書をいただいた時に伺いました。“ブラザーバンド”というシステムが「友達を作る」ことで、自分も強くなるし友達も強くなる。ゲームで友達を作って強くなるという思想というか、基本設計みたいなところがすごくいいなって思ったんです。そういうわけで「じゃあ、今回はこれだね。友達作りの輪に「ボクらの太陽」も仲間に入れてよっていうような形で、わりと最初の段階でトントン拍子に進んでいきましたね。 ●堀之内氏: これまで、シナリオの中で「ロックマン」の世界にジャンゴが助けに来てくれて、逆に「ボクらの太陽」の世界の中にロックマンが助けに来てくれてという、そこの協力感はあったので、「じゃ、実際のコラボレーションも協力して強くなれる、助け合う要素があったら面白いね」って企画マンの方と話していたら、結構ポンポンと大枠が決まったかなという感じですね。 ●吉冨氏:これまで対戦だったので、戦っているときは、ロックマンとジャンゴは仲間じゃねーのかよって(笑)。バイクでロックマンひいたりとかね(笑)。悲惨な光景があったりして「喧嘩するほど仲がいいんですよ」と苦しいことをいいながら、プロモーションしてたんですけど、今回はガッチリ仲良しですから。協力し合って、強くなってんだよと。 ●堀之内氏: バトルの時にジャンゴがブラザーになって、星霊獣を使うとものすごく強力なんですよ。「うわ! 『ボクらの太陽』強えぇ!!」っていう(笑)。友達になっておいてよかったって、バトルのとこで素直に感じてもらえるようにしたんです。そういったところで、すごく協力感が出てるかなと思いますね。 やはり、プレーヤーの大多数を占める子供達ってわかりやすく、何が得になるのかとか、何が面白いのかというのをシンプルに伝えてあげなきゃいけないと思うんです。今回は、子供がプレイした感触で「うわ、俺持ってないから (友達と) 繋がりたい」と思えるような要素になったと思ってます。実際にイベントとかでも大好評なんです。周りに「流星のロックマン」をプレイしている友達、逆に「ボクらの太陽」をプレイしている友達というのがいない子供もいると思うのですが、イベントにきて、じゃあここでロックマンとブラザーになろうという話が交わされているんです。「俺、ブラザーバンドで『ボクらの太陽』のやついなかったけど、やっとブラザーになった!!」とかって話で、実際にさわった子供達が本当に嬉しいと思ってもらえるものに仕上がったと思います。 ●吉冨氏:実際、イベントの会場で地べたに4人くらいで座り込んでやってる姿を見ると、「本当に友達になってるんだなこの子達」とすごく実感できましたね。リアルな友達作りの橋渡しができたという、ちょっと感動した光景でした。 --Q:ゲームの中で繋がることによって、実際のプレーヤー同士がコミュニケーションできてるんだってところですね。 ●堀之内氏: 開発しているときに“子供たちが、最終的にプレイしている姿”がリアルに頭に浮かんでいたので、じゃあ、それを現実化するためにはどういった要素を入れてあげなきゃいけないのかなって考え、自然に最終形に持って行けたような気がしますね。 ●吉冨氏:そこで強力なのがWi-Fiコネクションなんです。普通はその場限りじゃないじゃないですか。例えば、千葉と横浜の子がイベントで知り合ったとしても、対戦だけだったら「楽しかったね、じぁあね」だけで終わってしまいますが、Wi-Fiコネクションでまた繋いでコミュニケーションを取ることができるんです。「どこまで進んだ?」とか、「アイテム拾ったんだけどあげるよ」みたいなメールのやりとりを、たぶん今もやってくれてるんじゃないかな。 ●堀之内氏: お友達とのコミュニケーションツールなんですね、それぞれやっていることが。ロックマンはロックマンだけのコミュニケーションツールだったのが、ロックマンをプレイしていない「ボクらの太陽」のプレーヤーとも友達になれましたという。そういうツールになったかな。 子供は実は、僕らが思っているより自由な発想でゲームを遊んでいたりしますからね。じゃあ、我々もなるべく遊び方を制限しないような作りにしておきたいなと。ユーザーさんは、僕らが想像もしなかった使い方をしてくれますし。ニンテンドーDSの通信やWi-Fiコネクションでネットに接続すると言うことは、その遊び方をより広げてくれるかなと思っているので。 さらに携帯機は、常に持ってるよってところがまた、子供にとって遊びを広げるひとつのきっかけになってるのかなとも思いますね。前は誰かの家にいかないとできなかったのが、「今、持ってるからやろうぜ」っていうことが可能ですよね。これはすごい敷居の低さにもなってると思いますし、さらに通信に繋げて「離れててもできるよ」って。
世代なんかもね、ゲームは超えることができると思うんです。前はスポーツをやるにしても小学校5年生と小学校2年生だと体格差があったりしてちょっとできないなって感じだったのが、ゲームだったら上手くなりさえすればできるじゃないですか。それこそ、「流星のロックマン」と「ボクらの太陽 Django & Sabata」なら遊び方が違っても繋がればルールがちゃんとあるので、遊べるじゃないですか。結構僕の周りでも、「小学生ですが大学生の友達ができました」という話とかがあったりしますしね。この先の広がり方が色々あるかな、なんて考えてますね。
■ 子供達に向けてのゲーム作り
●吉冨氏: そうですね。やはり、人様のお子さんというか (笑)、大事な大事なキャラクタ達なので。その辺は、お互いにチェックしながら、わりと神経質に扱わせていただいていますね。 ●堀之内氏: 「ジャンゴのしゃべり方はこれでいいですか?」というような事にはじまり、やはりキャラクタ性とかゲームの世界観といった点については大事にしながら進めましたね。 ただ、ニンテンドーDSというハードで新しく「ロックマン エグゼ」から「流星のロックマン」になり、「ボクらの太陽」もまた「ボクらの太陽 Django & Sabata」になった中で、今回は宇宙をテーマにしてるという世界観の部分があったので、“宇宙”という大きい共通の世界観というところがある中で、異世界感というかパラレルワールドみたいなものを上手く使い、繋いでみてはという部分はありました。 しっかり相手の持っているものを自分の中で表現してあげると言うところが大切かなと。そこは今まで気を使っているとこでもあったので、“キャラクタを壊さない”、“世界観を大切にする”というところは自然にできましたよね。 --Q:ほかに苦労された点とかありますか? ●吉冨氏: 苦労したのは、やはり通信周りのところですね。かなり手探りで進めた部分もありまして。新しいハードで、初めてやる通信のやり方だったので、ここはかなり苦労しましたね。大事なアイテムがやりとりされるわけですから、エラーが出てはいけないわけですし。その辺の同期ですとか苦労しましたね。 ●堀之内氏: Wi-Fiコネクションの通信周りというところは、お互いテクニカルな問題点でしたね。自分たちだけの通信の要素に、さらにお互いのデータのやりとりなどの通信のモジュールを組み込んでいく形になったので。プログラマーの方には、後半の方には無理してもらったかなという感じですね。 あとは、お互い時期的に時間のないところでの作業だったので、仮データでやりとりしたりとかしてましたね。カプコン側では、開発の終盤の方で主人公のスバル君の顔のアイコンをちょっと修正しているんです。ただ、KONAMIさんの方の「ボクらの太陽 Django & Sabata」のアップが若干早かったものですから、今になって比べてみると顔がちょっと違うねと(笑)。「ボクらの太陽 Django & Sabata」では、ちょっと子供っぽいスバル君が見られるという……ちょっと裏話的なところがあったりとかします。 ●吉冨氏: (ソフトを見比べてみて) あっ、本当だ。今日、初めて聞いた (笑)。これは是非、両方買って見比べてほしいですね (笑)。 ●堀之内氏: 1本だけ見ているとわからないですが、並べて比べてみると「ちょっとなんかこっちの方が、幼いかな」っていう (笑)。 --Q:アイディアを出したが実現できなかった……なんてネタはありますか? ●吉冨氏: 今回、かなりボリューム満点なんですよ。結構がんばって、当初の企画のほとんどの要素を入れたんですが、ひとつだけ心残りがあるんです。 「流星のロックマン」の方で自分でアイコンをエディットできるんですよ。それって、ネットで言えばアバターとかID、つまり自分の顔じゃないですか。本当はそれをメールでやりとりして、「ボクらの太陽」で表示できるようにしたかったんですけどね。小さなことなんですが、個人的にはかなり心残りな部分なんですよ。 ●堀之内氏: その分、強制的にお互いの主人公の顔がアイコンにくるようになっているので、コラボレーション感はすごく出てるかなという気はしますけどね。ブラウザー表示画面で、「流星のロックマン」の方でしたら、すぐこれは「ボクらの太陽」のキャラクタだってすぐわかりますので。そういうところでは、ひとつの落としどころではあったかなと思いますね。 --Q:たとえば、自社内だけで開発しているのと、他社と開発を行なうのとでは違うところもあるかと思いますが、そういった部分ではいかがですか? ●吉冨氏: やはり文化が違うというか、仕事の進め方というか、ゲームの作り方にしても、企画書ひとつとっても違うんですよ。 ●堀之内氏: ゲームの作り方の部分でいえば、カプコンの社内でも各チームによって進め方が違ったりするんですよね。例えば「ロックマン」のように毎年毎年、制作しているところだと、ある程度の段階まできっちりやって、企画書の中では仕様まできっちり詰めて書くところとかもありますし、別では、やりながら試作ROMを作り、そこで方向性を定めて直していくチームもあったりします。 一番最初にお互いの企画書を見たら「おっ、KONAMIさんはこんな企画書なんだぁ」とか思いましたね。「ウチのはこんな感じで……もうちょっと付け加えた方がよかったかなぁ」みたいな部分もありましたし。それを何年かやってるところがあるので、最近では大きいところではやり取りはつつがなく行なわれていて、後はウチの中でできたものに、KONAMIさんから提出されたものを上手くフィードバックしながら進めていってますね。 ウチがこっちをやってKONAMIさんがこっちをやってもらってといった分業にするよりは、ウチのやるべきことをここまで作って、KONAMIさんはKONAMIさんがやるべきことを作ってもらって、お互いに情報交換をしながら進めましたね。 ●吉冨氏: あと一緒に作業していく上でひしひしと伝わってくるのは、ずっと「ロックマン」を作ってこられたっていう経緯もあるんでしょうけど、チームとしてまとまっているのがすごく感じられましたね。それは制作の人はもちろんですけど、デバッグしてる部隊ですとか、プロモーションスタッフですとか、ひとつのチームとして固まっているのを、一緒に制作しながらいつも感じているんです。「ボクらの太陽」のチームも「ロックマン」のチームのようにしていきたいなと思って、今も勉強させてもらっています。 ●堀之内氏: 変な話、開発ひとつとってもそうですし、プロモーションとかパブリシティのやり方も、同じようなことをやってるんだけどもアプローチが違ったりとか、仕掛け方が違ったりっていうところで、カプコンとしてもKONAMIさんのやり方はすごく参考になってるところとかがあります。「あ、イベントでこういう仕掛け方をしているんだ」とか、「この時期にゲームにこういうところを仕込んでおくんだ」といった点とか、お互いいい刺激になりながらプラスになってるのが、このコラボレーション企画かなって感じですかね。 ●吉冨氏: ひとつ殻がなくなったという気はします。ゲームの制作をしていて他の会社と一緒にやるなんて、普通やらないことじゃないですか。その既成概念みたいなものが、ひとつ取り外せたっていうか、こういうこともできるんだと。 ●堀之内氏: 意外にいけますねっていう。やっちゃいますかっていう (笑)。 ●吉冨氏: 短いスパンでここまで、他社同士でもやれたという経験は財産ですよね。
●堀之内氏: 逆に社内の別ラインってとかよりも、いい意味で情報交換というか、意見のやりとりとかもしながら前向きにできたかもしれませんね。
●堀之内氏: そうですね。お互い、イベントは一番、見ておかないといけないとこではあるので。僕らは特にずっと大会をやっているので、そちらの方でもチェックしていますが。あとはお互いのコラボレーションのステージがあったりしますので、それぞれステージ鑑賞をしながら、よりゲームの内容をユーザーに伝えていくというスタンスですね。子供にわかりやすいものを、投げっぱなしではなく、きちんと受け入れてもらうためには、やはり僕らも実際に彼らの様子をみてないと、伝わらないというところもあります。 ●吉冨氏: 僕はある意味イベントを見にいくために、ゲームを作ってますから(笑)。「おおっ、やってるやってる。ちゃーんと遊んでるぞ」というのを確認するためにイベントには必ず足を運ぶようにしています。 ●堀之内氏: こちらが思ったことをそのつもりで伝えても、実際に我々の意図したとおりに遊ばれているかどうかというのは、実際に見てみないとわからないところもありますから。細かく話を聞いてみると「えー、こんなことするんだ」みたいなのがね、さらにあったりするんですよね。そういう意味では、やっぱりイベントは毎回見なきゃいけないし、単純にイベント運営というだけでなく、より子供に近い感じで……僕はなるべく座り込んで、友達と話し込む感じで子供とは話したりするんです。そういうスタンスは今後も持っておかないと、子供向けのタイトルっていう、きっちり相手を見てだましの通用しないものを作っていくためには、心にとめてやっていかないといけないと思います。これはお子様向けのタイトルをやってる方はみんな同じことを言われますよね。 ●吉冨氏: 大人向けというか、ちょっと上の年齢層のユーザーの声だと、ネットで拾えたりするのですが、子供の声ってなかなか聞こえてこないですし、アンケート葉書とかきでも、ちゃんと拾えきれていない部分も多かったりするので。やはりちゃんとイベントに行って、遊んでる子を見て、どう遊んでいるかとか、どう思ってるのか聞いたりとかしなければ、なかなか難しいですね。 ●堀之内氏: 生の声を聞いて、それをちゃんと受けて止めて、次に反映するということをやってかないと、開発者の独りよがりになっちゃうので、注意しなければいけないかなと。 ●吉冨氏: 毎回、新しいことを入れているので、それが子供たちにどう受け取られてるのかは気になりますね。 ●堀之内氏: ユーザーさんは保守的なところがあるので、僕らが新しいものを提示したときに、「やっぱり前の方がいい」といわれたりするんです。その中で、新しいものを「こういう意図で込めたんだけど、ちゃんと理解して使ってもらえるかな」とか気になりますよね。それに、どこまで理解して使ってもらってるかといった理解度とかも気になる部分です。 あと、小学校5年生ぐらいは理解してるけど、小学校2年生ぐらいはちゃんと理解できてるのかな……みたいなところとかも。やはりそれは遊んでる顔で「?」の顔をしながらやってるのか、食い入るようにやってるのかなってところで、見たら一目瞭然でわかりますからね。そういうところはやっぱり、イベントというのは今後も大事にしていかなきゃいけないのかなと。 次に向けてがんばるきっかけとして、特にチームのメンバーとかにもなるべくイベントを見るように言ってるんですけど。子供達の意見を聞くと、「次もがんばるぞ!」という気になってもらえるので。うれしいですよね。チームのメンバーに対しても、がんばった甲斐あったねって言ってますし。 ●吉冨氏: 今回は特にその甲斐がありましたね。そこここで友達を作っているのを見かけました。一生懸命ステージやっているのに、客席でステージを無視して通信でブラザーになっていたり(笑)。 ●堀之内氏: おいしいところだけ顔上げる(笑)。 ●吉冨氏: それはそれでうれしい光景なんですけどね(笑)。 --Q:これまでコラボレーションで、どんどんステップを踏んできて、次のアイディアはどのようなことを考えておいででしょうか? ●堀之内氏: その前にカプコンとして「流星のロックマン」をどうするのかっていうこととかもあるのですが、単体のソフトをどうしていくかって方向性の中で、「次にどうするか」という話が出てくると思うんです。 僕らも子供相手というところで、実際に子供がどう思うとか、遊んでもらって面白いと思えるものを伝えなきゃいけない中で、今までも「ロックマン」の世界と「ボクらの太陽」の世界が繋がって、単純に驚きだったと思うんですよね。今まではシナリオのコラボがあって、対戦する驚きがあって、今度は新しく協力する驚きがあってっていう。そういう意味では繋がっているから協力ってわけではないと思うんですよね。つなげて、今度はどのような驚きを与えられるかっていうところは、ひとつの大きな目標ではありますね。遊んでもらった子供に「また新しく面白いことをやってるよ」ということが、わかってもらえるような形で取り組みたいなと思ってはいます。 --Q:つなげることを前提に次の驚きを提供すると。 ●吉冨氏: そうですね。驚いてもらって、楽しんでもらってなんぼなんで。今回のコラボは楽しめる内容に仕上がっている自信はあるのですが、たぶんもう次は同じ事はやらないなと(笑)。これじゃない形にしないと、言ってみて奮い立たせている感じですね(笑)。次の新しいことを入れていかないといけないなと。 ●堀之内氏: マンネリにならないように、惰性でやってるんだっていわれないように、お互いがやってきて。それぞれのゲームの中でどういうことができるかと新しい仕掛けを入れていき、その仕掛けがさらにかけ算みたいな形で新しく、もっと面白くなればいいなって思いますね。 --Q:最後にプレーヤーへのメッセージをお願いします。 ●吉冨氏: もし、まだクロスブラザーバンドを試していないプレーヤーがいるんだったら、是非ソフトを持っている友達を捜して体験してみて欲しいなと思いますね。「流星のロックマン」と「ボクらの太陽 Django & Sabata」という全然違うタイトルが繋がって協力し合う感じというのが、ものすごく新鮮に感じられると思います。「“クロスブラザーバンド”を体験しておかないと、このソフトの何分の一しか楽しめていないよ」ぐらいのね。「ちょっと大事なところ忘れてるよ」という感じですので、是非試してみて欲しいなってことろですね。 ●堀之内氏: 先ほどの話にもありましたが、コミュニケーションのツールになればいいなと思いますね。「ロックマン エグゼ」の時にも「北海道と沖縄でネットバトルツアーを通して友達になりました。webで色々バトルの情報交換してて、実際にあってバトルして友達になりました」といった話もあったんです。「流星のロックマン」になり、Wi-Fiコネクションに繋がって、その場にいなくても、友達になるきっかけになるようになってほしい。 昔だったら、野球の上手い子とかがいてキャッチボールしようぜってことで友達になったり、そんなノリでコミュニケーションのきっかけになってたと思うのですけが、それが「ロックマン」を知らないとできないってことじゃなくて、「あ、『ボクらの太陽』をもってるんだ? じゃあ、ちょっととりあえず繋がってみようよ」という。これは新しいコミュニケーションツールになると思うので、そういう友達作りのきっかけになればなと。ゲームがきっかけでリアルでお友達になって、実際に遊ぶことの楽しさなどを体感してもらえればいいかなぁと思ってます。もちろん、それを体感できるだけの内容はきちんと込めているかなとは思いますので、是非さわって遊んでください。
--Q:ありがとうございました。
□カプコンのホームページ (2007年2月16日) [Reported by 船津稔]
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