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特別インタビュー

見た目だけじゃない! すべてにおいてパワーアップした
孤高のアイドル育成シミュレーション

Xbox 360「アイドルマスター」

  • ジャンル:アイドル育成シミュレーション
  • 発売元:バンダイナムコゲームス
  • 価格:7,140円(通常版)/20,790円(限定版)
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • 発売日:発売中(1月25日)



 発表直後から話題となり、限定版が即時売り切れ、Xbox 360の年末年始の新作ソフトラッシュのラストを飾った「アイドルマスター」。アーケード(AC)版から根強いファンに支えられた“アイドル育成シミュレーション”は、Xbox 360版でどう進化を遂げたのか? それを直接伺うインタビューの機会をいただいた。Xbox 360版のプロデューサーである坂上陽三氏、ディレクターの小野田裕之氏に加え、AC版のディレクター、石原章弘氏にお話を伺った(上写真左から石原氏、小野田氏、坂上氏)。


■ プレーヤーに間口を広げたXbox 360版

――「アイドルマスター」は、旧ナムコ時代から引き続いてXbox 360版へと展開してきましたが、家庭用への展開はいつごろから?

52週育成になり、プロデュース開始時期も選択できるようになったXbox 360版
坂上 AC版「アイドルマスター」は、ロケテストからユーザーさんからの反応がよかったということが一番大きいですね。旧ナムコ時代から、アーケードから家庭用に持っていくという形態は鉄板パターンでしたが、その中で“このゲームの形態は家庭用に持っていけるんじゃないか”という空気は早いころからありました。AC版の稼動開始の2カ月前、2005年5月ぐらいから移植しようという話が出ましたね。

――AC版は、テーマやゲーム内容が本来家庭用でやるようなゲームプランになっていたというか、挑戦があったと思うのですが、家庭用に持っていくという話になって、どんな心境でしたか?

石原 作り手の最大の望みは、たくさんの人に遊んでもらいたいということなので、AC版で設置されることが決まってあとは遊んでもらうばかり、という段階で、もっと欲が出ると言うと変ですが、もっとたくさんの人に遊んでもらいたいということで、特に反対の意見は出ませんでしたね。ただ、AC版は特殊な作り方をしているので、これと同じ遊び方ができないな、という懸念事項はありました。タッチパネルの操作性とか、メールで呼び出されたりとか、オンライン対戦を前提とした作りは、当時まだ家庭用では実現できるかどうかわからなかったので……。環境が整えばできるだろう、ということで、実現できるならぜひ、という感じですね。

――今はまったくそんなことがないと思いますが、AC版を初めてプレイするときは“勇気がいるなあ”という気がしました。

石原 確かにそれは懸念事項の1つではありました。そのハードルをクリアできる人もいれば、そうでない人もいる。面白そうなのにプレイできない、という人はやはり家庭用で、ということになりますね。そういった遊べなかった人に遊んでもらえる、というXbox 360版の意義は大きいですね。

坂上 このあたりは当初に予想はしていたのですが、表面には現われてこない要素だったんですよ。というのは、AC版はかなりお金のかかるゲームなので、ユーザーさんからは稼動当初は「近所にない」とか、「お金がかかる」といった意見が出ていました。しばらくして家庭用に展開することが決まってから「ちょっと恥ずかしい」といった意見が出てきて。この3つからこのゲームは家庭用においても展開できるな、という確信がもてるようになりました。何度やっても追加料金はかからずに遊べるし、ゲームセンターにない、という問題もクリアできる。プライベートな空間で遊べますし。そういった意味でお客さんがもっている不満はすべて解消できるということが明確になったので……。操作方法が変わるという制約はありましたが、それを差し引いてもお客さんには喜んでもらえるだろうと思いました。

――Xbox 360版がリリースされた後、AC版の稼働率が気になったりしませんか?

石原 Xbox 360版は、AC版とは違ってオフラインだけでも楽しめるゲームになっていて、AC版ではオーディションが厳しい、ランクアップリミットが厳しくてついていけない、という人向けにややマイルドな方向への調整になっています。逆にAC版は、オンラインでのスコアアタックを楽しんだり、生きるか死ぬかというハードな世界という位置づけなので、Xbox 360版で腕を磨かれたプロデューサーの方は、ぜひAC版で腕試ししてもらいたいですね。それに、今もゲームセンターを中心としたコミュニティがあります。コミュニケーションノートなどを中心としたリアルなコミュニケーションの世界ですね。この2つの相互利用がどうなっていくのか、興味があります。うまく作用していくといいな、と。

 逆にアーケードでしかプレイできない人もいると思うんですよ。子供さんが家にいるとか、会社の帰りにしか遊べないとか。そういう点ではAC版とXbox 360版の共存状態がユーザーのMAX値だと思っているんですけどね。

――Xbox 360版は、AC版のタッチパネルと違ったボタン操作だとか、52週になったプロデュース期間だとか、どちらかというと間口を広げる方向での調整がされているな、と感じましたが……?

タッチパネルからボタンに変更になったことにより、レッスンなども変更されている
小野田 そこまで顕著に、というわけではないですが、長く遊んでもらってエンディングまで見てもらえるという意味では、全体的には遊びやすくする方向にチューニングしたということはいえます。新しく遊んでいただくプレーヤーさんの場合、最初はこのゲームが「どんなゲームなんだ?」と思う部分を入りやすくしようかな、とは思いました。

石原 コミュニケーションだけでも遊べるようにしてあったりとか、間口の広さがXbox 360版の特徴とはいえますね。もちろん、AC版と同じように「全国1位を目指そう」と自分に枷をはめて遊んでいけば、かなりにハードになっていくと思います。

――AC版は稼動当初からハードなイメージがありました。見た目とのギャップが面白いな、と思っていましたが(笑)

石原 そうですね。“ギャルゲー”ユーザーにはあれが不評だった気がしますね(笑)。

坂上 作っている側からすると、もともと“ギャルゲー”といった感覚はあまりなかったんですよね。

石原 見た目からノベル系ゲームのイメージで遊ばれた方が、「勝てねえよ! すぐ終わるよ!」といった感じで……。

坂上 僕の最初の印象は、 “育成ゲームだ”と思ったんですけどね。しかし、ゲーム的にキャラクタが前面に出てくるので……。そこは素直に受け止めて。育成と対戦のハードさを残しながらも、お客さんのもっとキャラクタと遊びたい、ゆっくり遊びたいという要望が家庭用でのメインになってくるのかな、と考えたんですよね。ただ、AC版でハードに遊んでくれてきたユーザーさんのことも忘れていませんから、そこはちゃんと残しておこうと。これをひとまとめにすると、“間口を広げた”ということになっちゃうんですけど(笑)。


■ シナリオ、楽曲、キャラクタ……すべてがパワーアップ

――Xbox 360版では、どこがどれぐらいパワーアップしてるんですか?

小野田 シナリオは公称ボリューム1.5倍ということになっています。家庭用に持ってきたときに、どこを伸ばそう、ということで、このゲームは女の子をプロデュースするゲームなので、コミュニケーションはもっとより深く、キャラクタと接するところは強化したほうがいいだろうということで、シナリオが増えました。システム上でも52週、1年間のプロデュースにもなったので、イベントも増やしていこうということになりました。それと、新キャラの分ですね。これもそこそこな量……このゲームは1つ要素が増えると、キャラクタの数だけ増える世界ですので、おのずと増えていくという感じですね。

 あとは映像そのもののグレードアップなどですね。そちらはまた別の脳みそを使うわけです。

オーディションが増加。ランク上位を狙うなら、限定オーディションにも勝ち抜かねば……
坂上 あとは、オーディションもかなり数が増えてますね。

石原 もともとこのゲームはオーディション1つの数字を変えるとバランスが大きく変わるゲームなんですよね。ちょっとした数字を変えるだけで全部変わってきちゃうんですよ。今までなら300万人獲得できたものが、1つのオーディションで獲得できる数を1,000人減らしただけで300万人に届かなくなってしまうとか。合格人数をちょっと変えるといきなり難しくなるとか。

 そういう意味では、Xbox 360版はオーディションの数や、レッスンとコミュニケーションがそれぞれ1日必要となるなど、ACでは1日の行動が2択だったものがオーディションか、レッスンか、営業かの3択になっていることが大きい。ゲームバランスがぜんぜん違います。またゼロからの攻略になりますので、AC版ユーザーも楽しめると思いますね。ボリュームだけじゃなく、そういった部分でも新しいゲームになっているといいきれます。

坂上 コミュニケーションだけで52週ということも可能ですし、レッスンとオーディションのみでハードに遊んでもらうこともできますし。まあ、この場合は「思い出」が増えないわけですが……そういった意味では、お客さんにこのゲームの目標を自由に選択できるようになったんじゃないですかね。

石原 多すぎるぐらいだと思います。

コミュニケーションの選択肢は毎回ランダム要素が含まれている
坂上 普通に考えたらコミュニケーションして、レッスンして、満遍なく育ててオーディションを受けてファン数を獲得していってください、ということなんですが、とりあえずの目標としては、女の子をグッドエンディングに導いてあげてほしいと。これがファン人数を100万人以上にしたいとか、アイドルマスターを目指すとなると、また攻略方法も違ってきます。遊ばせ方のバリエーションはいろいろあります。

 そこが先ほどもいったこのゲームの新しさでもあるんですよ。選択肢のランダム要素とか、最初は“ここはランダムなんだ……”と思うかもしれませんが、遊びこんでいくと、“ここがランダムじゃないと通り一辺倒な攻略になっちゃうな”とプレーヤーさんにもわかってもらえると思うんです。深みがでてくるというか。ランダムによって引き起こされた事象に育成プランをどう変更していくか?という臨機応変な対応を行なっていくことこそが、肝の1つですね。ホントはランダムって深みじゃないんですけど、このゲームは不思議なところがあって、普通ゲームはロジカルに組み立てていって深みを増すのに、このゲームは逆なんですよね。ランダム性を含めたところで深みを増していく特殊なゲームなので、そこがすごく面白いと思います。

――家庭用での企画で、たとえばもっと育成に特化するゲームにしたりだとか、家庭用ならでは、といった内容に変更するなんてアイデアはなかったんですか?

コミュニケーションだけを続けていっても52週プレイできる
坂上 出だしはいろいろ試行錯誤しました。たとえば、最初は“ミニゲームを増やして”とか、“キャラクタを入れ替えて”だとか、いろいろプランを考えていた時期はありました。このゲームにある要素を1つずつ取り上げてみると、特に目だった新しい要素ってないんですよ。“女の子とのコミュニケーション……あるよね”とか、“ミニゲーム……あるよね”とか。

 いろいろ検討していく段階でわかったのは、その要素が合わさって、1つのゲームになったときのバランス……これが新しかった。だから今、それを崩すのは違うだろう、ということです。そこで、あるときにいろんな意見をリセットして、もう一度結局このゲームのいいところを抽出していこう、そしてユーザーさんに評価をいただいているところを強化していこうということになりました。

 これが、家庭用が出た後のAC版の続編だとか、家庭用の続編だといったときには何かしら変えていく方向が正しいのかなとも思いますが、今はAC版のこのバランスが新しかったんだから、このいいところを抽出していこう、という考え方ですね。

――データのセーブが任意の形になっていますが、1日ごとにセーブを選べますよね? これは何度もやり直してうまくいく形にもっていってもあり? ということなんですか?

データセーブは1日ごとに任意になっている
坂上 そういうプレイをする方もいますよね。ただ、ACゲームはお客さんがルールを作っていく傾向が強いですから。遊んでいる間に自分にルールを課す、というか、自分たちがルールを作っていくという感じになりますよね。Xbox 360版も、ざっくり遊んでいただくお客さんを基本にして、こつこつと遊んでもらってもいいですし。ルールはお客さんが作ってくださいということですね。

石原 AC版のコミュニケーションパートも解析が進んで、ネットを見れば、どういうルートを取るのが正解、ということはわかってますよね。それを見ないで遊ぶ人もいるんですよ。このゲームのシステム上、わかっていたほうがいいに決まっているんですが、それを見ないところが楽しみ方ですよね。このゲームの楽しみは、勝つことだけじゃないですから。負けたときの“悔しい~っ”と思うことも含めて楽しいんですよ。それがわかってくると、無理して勝つことよりも、何連敗してから勝ったときの喜びがでかいはずなんですよ。

 TV出演シーンって、いつもと同じはずなんだけど、3連敗した後に見ると、4連勝したときとは違ってなにか輝いているように見える、みたいな……そういった強烈な思い入れみたいなものが出てくる。そこが面白いというか、大きい要素なんですよ。だから、オートセーブがあろうがなかろうが、負けて勝つ、といった楽しみ方がわかってくれれば……。確かにランキング1位だけを狙おうと思えば、そのほうが確実にいい数字が出せるのは事実だと思うんですよ。けど……。

小野田 それだけじゃないということです。

コミュニケーション、オーディション、レッスンそれぞれに運が絡む
石原 ランキングの1位だけを狙うゲームじゃないですから。女の子とどういう関係を築けるかを楽しむゲームだと思うので。今回は連戦連勝で上まで行ったけど、別のときは予定外でボコスカになったということがあっても、それはそれでリアルな思い出になっていくと思うので。AC版ユーザーのランカーと呼ばれるような人たちには、やはりランキング1位が目標になっていると思うので、オートセーブがないと“ぬるい”と思われるかもしれませんが。家庭用だからこそ、ランキングを意識しなくても遊べるようになったのだから、そういう風に遊んでくれたほうが……そこが今回、間口が広がったところですよね。

坂上 うまくいかないときの方が面白いシナリオがあったりするところが困りものですよね(笑)。もし、うまくいかない方向に進んでしまったら、選択肢がどんどんなくなって、シナリオも展開していかない方向で作られていたら、オートセーブにしたほうがいいんですが、うまくいかなくても楽しめるんですよ。

小野田 失敗したときでも、やり直そうかな、と思ったら最後にいいアイテムが来たりすることもありますから、一概に悪いとは言えないんですよね。何度もリセットして遊ぶやり方が正解かどうかはわからないですよ。

坂上 そういう意味でも、攻略の話題を振られると困るんですよ。Badな方向も面白いんだけどな……ってなっちゃうゲームなんですよね。

アイテムもそろえれば有利になる
石原 どうしても傾向でしか語れないので、“こうすればこうなる”という要素が少ないんですよ。究極の攻略は“すべてのオーディションに勝て”ということになっちゃいますから。で、“勝てないときは次にどうするの?”というときに、選択肢が多いんですよ。レッスンするのか、もう1回オーディションに挑戦するのか……その人の判断でしかないんですよね。たまたま流行がこうだったらいいとか、たまたまアイテムが出てセットがそろったら次いけるんじゃないのとか、記者がいたからこっちのほうがいいんじゃないの、とか。選択の積み重ねゲームなので……。

 こうなるとオートセーブがあろうがなかろうが関係ないんですよね。やり直したらうまくいくのか? というのが……やっぱりまた負けた、とか。やり直したら勝てる保証があるわけじゃないですからね。やり直して1つ下のオーディションには合格できたけど、負け続けたほうが結果的にうまくいく可能性もあるんですよね。負けてテンションが下がってレッスン受けたらボーナスレッスンが出て、いつもよりゲージが上げられた、なんてことが。一概に言えないことが多すぎるので。リセットなしでランキングでガチにやりたいなら、AC版でやろうよ、といいたいですね(笑)。

坂上 AC版のお金を1回1回つぎ込んで遊ぶあのシビアさは、また違ったものがありますからね。あれはあれでアツいですから。コミュニケーションパートもちゃんと聞いてますからね。

――AC版ならXbox 360版とは対極の遊び方ができますよね。そういえば、Xbox 360版では、レッスンも変わりましたよね? これはタッチパネルとコントローラの違いが大きいんでしょうか?

小野田 大幅に変わったのは「表現力」レッスンだけなんですけど。俗に言う“「パックマン」みたいなゲーム”です。あとはコントローラのボタンの色と形状に合わせたほうが直感的にボタンを押してもらえるように、ということでアレンジしてあります。

――思い出の使用シーンを考えると、AC版では人によってタッチパネルのどこで待って押すか、といった好みがあったと思うんですが、Xbox 360版では中央1つで統一ですね。

「思い出」の使用場面。Xbox 360版は中央で固定
小野田 いろいろ考えてはいたんですが、“シンプルにした方が一番いいかな”ということで今の形に落ち着きました。昔ながらのスティックを使って移動させて、ボタンを押すのは難しいかなと思いましたので。

石原 Xbox 360版は手を動かす必要が減っているはずなので。ボタンを4カ所押せばいいわけですし。慣れれば失敗する人が減るんじゃないかと思います。

――そういえば、「表現力」レッスンで取ろうと思っているマークが2つ重なった場合、どっちのものになるんでしょうか?

「表現力」レッスンは「パックマン」のような作り
小野田 重なった時は、取るべきマークが後ろ側でも触っても大丈夫な判定になっています。ただし、他に取るべきマークがなかった場合にかぎります。他にある場合は、それを先に取り、最後に重なったマークを取ると成功します。裏に重なったかは目をこらしていないといけないので注意が必要ですね。

――Xbox 360版で追加された新キャラ「星井美希」ですが、いい感じにはまったキャラだと思いますが、性格付けや容姿など、すんなり決まったんでしょうか?

新キャラクタである星井美希
小野田 ほかにいないキャラクタであることは大前提ですよね。従来のメンバーにも埋もれちゃいけない、ということでこんなボディにもなりました。

坂上 美希のイメージは、先輩アイドルたちの中に入ってくる1人の新人ということで、“あれだなっ”と。スタッフみんなわりとスムーズに共有できていたんですよ。それを小野田のほうでブラッシュアップしていって。すごく悩んで、ということはなかったです。性格付けなどもわりとスポーンとはまったという感じですね。

小野田 シナリオライターの方にもこの話を振ったら、すんなり出てきた感じではあるんですよ。そのアイデアを取り入れて、結果、“お楽しみキャラ”という感じになっているんですが、実は……“ただものじゃないぞ”とだけ言っておきます。

石原 そこを言ってしまうと面白くなくなる、という感じがしますね。

――Xbox 360版を遊ぶなら、“一度は美希を選んどけ”という感じでしょうか?

石原 “いっぱい選んどけ”という感じですね(笑)。

坂上 無視できないキャラですね。

石原 無視してはいけないキャラですねえ(笑)。

――「アイマス」といえば楽曲ですが、今回6曲も追加されていますが、これは最初から“6曲追加しよう”ということだったんでしょうか?

新たに6曲が追加された。1ユニット5曲まで選択できる
坂上 大体“1.5倍ぐらいか?”(笑)というもくろみがありまして。このゲームの楽曲は“衣装を着替えさせたい”、“育成したい”というお客さんのプレイのきっかけになる、中心になるものなんですよ。楽曲があって、それを“聞きたい”、“歌っているところを見たい”、だから“オーディションを受けたい”という動きができると。

 だからXbox 360版に取り掛かるときも、楽曲のボリュームを増やすことを第1に、追加要素を整理していった感じです。とはいえ、6曲までは当初は考えていませんでした。“3曲ぐらい増えればいいかな”と思っていたら、なんとなしに6曲できて……。

――なんとなしにって(笑)。それぞれのキャラクタにテーマ曲があると思うのですが、今回新キャラクタの星井美希に1曲として、残り5曲ですが、どんな感じに割り振られたんですか?

石原 美希のテーマ曲は「relations」ですね。残り5曲で2人づつで美しく揃う、という。残りが3曲でもうまく振り分けられるという(笑)。2曲でも5人×2チームですね。

小野田 とはいえ、実は、“曲を増やす”となったら、サウンドスタッフから「俺も作りたい」と言う声が次々と上がってきて。これでいけるならいきましょうか、という話になったんですよ。

――サウンドスタッフの皆さんが作りたがった、という感じですか?

石原 “歌もの”というのはあまりゲームサウンド製作の現場で作ることがないので、新鮮な気持ちで仕事ができるということではないでしょうか。ほかにも収録中に綺麗な女性達とずっと作業をしているのは、周りの目から見たら楽しそうに見えていたのかもしれません(笑)。AC版のスタッフは周りに“おまえいつも、楽しそうなことしやがって”と言われていたみたいですよ。追加の楽曲を作るという話になったら、“俺もやりたかった”とたくさん名乗りを上げてもらって。

小野田 こんなところにも“プロデューサー”がいたと(一同笑)。リアルサウンドプロデューサーが(笑)。

石原 もう1回楽曲を作るとなったら、また名乗りをあげる人が増える一方だと思いますよ。

坂上 曲は比較的“バーン”とできるんですよ。問題はその後。振り付けにあわせてモーション作るとか、舞台演出をつくるとか、その後の作業が大変なんですよ。

石原 3曲作ったら30曲収録になるんですよね。それがありえない、という感じになってくる。

坂上 たとえば、スカート1つとっても、捲れあがり方1つで、振り付けにも影響を受けるので、こまめに調整していかなければならないので、楽曲ができあがってからが結構大変なんですよね。長い作業になりました。本当に大変でした(笑)。

石原 楽曲の上がりは早かったんですけどね。

坂上 作業の流れは綺麗だったんだけどね。歌があって、それを元に作業ができるので。

石原 一緒に歌がないと作業ができないので……。ほかの作業が始まる、はるか前から作ってましたね。AC版が熱烈稼動中のころからスタートしてました。

坂上 Xbox 360版の作業は曲作りからでした。「relations」の作詞は小野田がやってたりします。女の子の失恋の曲の作詞をなぜか(笑)

小野田 なんでもやりたがりなので(笑)。実体験が入ってるという噂がラジオで流れたりしていましたが、それはウソです(笑)。

坂上 結局、Xbox 360版はゼロから洗いなおして作ることになりました。僕はプロデューサーなので、お金のことを考えて本音を言えば、“AC版(の内容を)をそのまま作ってくれ!”って思うんですけど。そうもいかない空気が……できあがったら作り直されていた、という感じですね。

――気がついたらどんどん作り直されていた、という感じですか?

坂上 今回、AC版からモーションも全部撮り直して作ってますから。最初は撮り直すかどうか検討しました。話を聞いていると、撮り直した方が手直しの作業も含めて効率も上がるし、クオリティも上がる。そういうことなら撮り直そう、ということになりました。


■ オリジナルのグラフィックスエンジンを用意

――サウンド、モーションに関する作業も相当多そうですね?

アクセサリを付け替えたり、曲によって違う振り付けがあったり、とにかく作りこまれている
坂上 多いですね。とはいえ、キャラクタ周りも、グラフィックス関連の作業は全般的に増えましたね。髪の毛の動かし方の設定や、表情の変化の設定、衣装によってのバリエーションなどなど、物量だけは相当……気持ち悪いぐらい(笑)。スタッフも人によってキャラクタごとにこだわりが強かったりして。睫の数がどうとか……みんなこだわってやってました。

小野田 ある程度HD(ハイデフ)の映像の素体ができ上がった時、“やるっきゃないな”という気になりましたね。そうしたらもう……ある程度作業が進んで「このぐらいでいいんじゃない?」って思っていたら、その先がありましたからね。

坂上 加速していくから……。

小野田 最後、衣装のスパンコールがすべて光っていたのを見て、目が飛び出ました。“そこまでやるのか!”と。

――グラフィックスエンジンは今回新規に作られたんですか?

Xbox 360版はグラフィックスエンジンも新たに作られた
石原 元がまったく違います。AC版はプレイステーション 2互換でしたからね。今回新規に作りました。

小野田 シェーダーも全部作りました。

坂上 今回は旧ナムコ内部で作ったライブラリを使用しています。それを叩いて作っていくという感じですね。

――Xbox 360での製作はどうでしたか?

坂上 Xbox 360はもともと性能も高いんですよね。ナムコレーベルではまだ3本目の製品なので、たぶん将来的にはもっとできますよ。多分今回でちょっと慣れたので、次はもっとクオリティが上がると思います。

――トゥーンシェードのゲームは一時期かなりありましたが……そういった意味で貴重なタイトルだと思いますが?

AC版から動きもキャラクタモデルも格段の進化を遂げている
坂上 ここまで作るのはお金もかかりますしね。AC版をはじめてみたときに、このゲームは“トゥーンシェーディングで作る意味があるものだ”と思いました。たいていは、トゥーンシェーディングで作る意味がなかったりするんですよね。コミュニケーションゲームなどでは、“あまり3Dで作る意味がないな”と思うことも多いんですが。このゲームの場合はやはりTV出演シーンで歌って踊るといったシーンがあるだけに、“これは3Dでやるしかない”と感じましたね。逆にこれを2Dアニメーションで作るほうが手間がかかりますし。そうった意味で“3Dで作る意義の高いゲーム”だと思いました。

石原 もともと技術ありき、ではないので。“こういうゲームを作って、TV出演シーンを作るにはなにがいいの?”というときに“アニメも検討はするけど、ありえない動画枚数になる”というのは見積もってみたのでわかるんですよ。6、7,000枚になっちゃう上に、カットは毎回同じになっちゃうんで……意味がない。

 アクシデントでこけたりしますし、カメラワークが毎回変えられて、何でもできるようにするにはポリゴンにするしかない。かといってリアル路線はちょっとちがうんだよな、ということがあったので、そういう意味ではトゥーンシェードしかなかったんじゃないかなと。結果的にゲームの方向性とトゥーンシェードの相性がぴったりだったんだろうと思います。

坂上 最初にデザイナーと、AC版からXbox 360版ではどこまで進化させられるか、という話をしたんですよ。まず、HDになって輪郭線は綺麗に出せるだろうと。なおかつアニメ独特の輪郭線のテカりなどもこだわってやってくれ、と伝えました。そうすることで今までのトゥーンシェーダーとはまた1段階違ったアニメ表現が見せられるだろうと。実はそのときはプロデューサーの立場的に“そのままでもいいけどね”といっている手前(笑)、半分冗談で言っていたんですが、結構素直にスタッフが再現してくれましたね。クオリティ的にはよくできているな、と思います。

――TV出演シーンでのステージに立ち込めるスモークの表現とか、トゥーンシェイドでもセルフシャドウが表現されていたりとか、被写界深度も再現されていたり、力の入り具合が伺えますね?

キャラクタだけでなくステージのエフェクトにも注目
石原 Xbox 360じゃないとできない表現ですね。AC版の時は、キャラクタ3体を動かすのでいっぱいいっぱいだったんですよ。アクセサリを作ってみたものの、付けるとハングアップしたりして、3人がアクセサリを付けた状態で動かすのが“無理だー!”という状態に陥っていたりしました。アクセサリの組み合わせの検証が地獄のパターンで。“このステージで、この衣装で、このアクセサリで”という組みあわせになりますから。AC版はギリギリでした。Xbox 360版はそのあたりは余裕がありましたから。

小野田 でも、作る時間はあまりなかったですね(一同笑)。もっと煮詰めようと思えばできたんですけれど。東京ゲームショウのときのプロモーションビデオではまだ被写界深度は入ってませんでしたから。表情などもまだ作りこんでいるときでしたから。スタッフも、表情なら表情だけを手がけるスタッフがいたり、ステージならステージだけを作りこむスタッフがいて……。

坂上 技術がすごい、プログラムがすごい、とはいえ、最終的にタイミングを合わせたりするのは手作業ですからね。シェーダーの機能はいくつも実装されていますが、それをあわせるのは手作業……。逆に言うとそうじゃないと作れないんですね。これをいちいちプログラムで作っていくなんて、そうするほうが時間がかかってしまいますし。最後はやっぱり、スタッフのセンスと根性に頼るしかないですね。ライトやエフェクトのタイミングとか、曲にあわせて、ステージにあわせて調整するといったことをスタッフはずーっとやってました。

――そうすると曲は本当に早い段階で制作が終わって、後はビジュアルスタッフが長期にわたって手を入れていった、って感じなんですね。

小野田 ツールはできた、後はよろしく、という感じですよね。曲を作って、ステージ案をまず出して。TVの歌番組を見ながら。僕は言うだけであとはやってもらったんですが(笑)。

坂上 ステージも大変でしたね。バックでこんなものを流そう、といったところは早めに決めましたが。

石原 AC版を作ったときに、曲がないとどうしようもない、ということはわかっていたんで。

――先ほどのお話にあった“3人出すとギリギリ”だったAC版からすると、マシンパワーに余裕のあるXbox 360版で、ユニットの参加人数を変更しよう、なんていう話はなかったんですか? 育成を考えると大変そうですが?

坂上 そういう話が出たことはありましたね。Xbox 360版のプロデューサーを引き受けたときは、私はまだAC版を触っていなかったんで。“10人ぐらいステージに出たらいいよね”なんてことを言ってた時期もあったんですが、ゲームを遊んでみたら“必要ないな”と思いました。1つは、ユニットを組むことは、結局1人の女の子に合わせてほかの子を育てるという感覚で、そうすると3人ぐらいでいっぱいいっぱいになっちゃうんですよね。レッスンの振り分けをやっていくと、やはり3人で割り振りするともう余裕がないなあと。というわけで、早くから3人で十分、という話になっていました。

 もし、ユニットの参加人数を増やすなら、育成パートを変えるとか、新しいシステムを入れていかないとユニットは組めないかな、と。もしくはTV出演シーンのみで、バックダンサーになるとか。そういったシステムなら可能かなと。ただ、そうなると大人数に見えても、かかわる女の子は実は3人ぐらいになっちゃうと思うんですよね。

小野田 AC版の時点で、このシステムの落としどころは3人という形で決まっていたんじゃないかと思うんですよ。

石原 AC版は最初はもともとで考えていました。あちらを立てればこちらが立たず、というところを楽しんでもらおうとしていたのですが、それだと3人くらいが限界なんですね。人数を増やすなら、根本的に別のシステムを持ってこないといけないと思います。要望があれば今後考えていってもいいのかもしれませんが。

小野田 人数が増えると、朝の事務所がうるさいでしょうね(笑)。

石原 システム的には複雑にできるんですけどね……突き詰めるとプレーヤーが社長のゲームになりそうですよね。事務所経営ゲーム。そうすると女の子との距離が遠ざかってしまうと思うんですよ。今のマネージャーとプロデューサーの間ぐらいの位置からすると、ちょっと遠くなってしまう。このゲームでは今ぐらいの距離が一番いいんじゃないかと思うんですよね。

――オンライン要素に関しては、今の形が最初からベスト、という感じだったんでしょうか?

オンライン対戦のほか、「マーケットプレース」でコスチュームやアクセサリ、メールを購入できる
坂上 このゲームのオンライン要素は、はじめてオンライン対戦される方が、単純な操作で長く遊んでいてもあきない駆け引きの要素があることが魅力だと思ってます。ですから、あまり細かく設定を作って複雑にするとオンラインゲームに慣れていないユーザーさんを置いていってしまうんじゃないかと。今の流れで言うと、TOP30のTV出演シーンがランキングモードで流れるのを見られたり、対戦をオンラインで遊べる現状のシステムぐらいがちょうどいいかな、と思います。

――たとえば、オフィシャルで集まれるような掲示板など、コミュニティに関するアプローチなどはお考えでしたか?

石原 このゲームはもうすでにユーザーさん同士でのコミュニティができているんですよね。AC版は名前だけが出て、あとはわからないからこそ気楽に対戦できて、全国統一模試を受けているような感覚だと思うんですよ。みんなで集まってさあ、戦えというゲームじゃないので、気の合った仲間同士、うまくコミュニティを育てていってほしいなと思います。対戦待ちの間にボイスチャットも使えますからね。これまで行なってきた色々なイベントや盛り上がりの経緯などを見ていると、このゲームはやっぱりユーザーさん同士のコミュニティで成り立っているな、という部分が多いですし。

小野田 このゲームのパラメータまわりは露出していないので、それを話のネタにしてコミュニティが成立するってこともあるんですよね。上のランクに行くためにも、コミュニケーションパートの分岐のルートを一緒に作ったり、試行錯誤していただいてますよね。それぞれの楽しみ方で広げていただいているので、非常にありがたいな、と。

坂上 これはAC版が先にあったから許されることですよね。地道につみあがっているんですよね。非常にわれわれとしてはありがたい話ですね。「アイマス」のお客さんはまじめに“対戦の駆け引きをこうしよう”といったゲームを語る方が多いですよね。

石原 AC版からの先輩プロデューサーには、Xbox 360版から入ってくる新人プロデューサーをうまく導いてほしいですよね。

坂上 発売されてからが興味深いですよね。コミュニティがどうなるかも。

――最後にユーザーの方々に一言ずつお願いします。

坂上 発売後もマーケットプレースなどでオンラインでみなさんに楽しめるようにしていきますし、4月1日のライブもあります。引き続きアイドル候補生たちをよろしくお願いします。

小野田 家庭用ならではのシステムにしたり、バランスも新しく調整した事で、AC版のファンの方も、新しく買っていただいたファンの方も楽しめるようになっていますので、よろしくお願いします。

石原 AC版からのプロデューサーには、765プロに入社してくる新人プロデューサーを導いていただければ、と思います。

――ありがとうございました。



(C) 窪岡俊之 (C) 2003 2007 NBGI
         PROJECT IM@S

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□バンダイナムコゲームスチャンネルのページ
http://www.bngi-channel.jp/
□「アイドルマスター」公式サイト「THE IDOL M@STER WEB」
http://www.idolmaster.jp/
□関連情報
【2006年12月26日】「Xbox 360」ソフトウェアカタログ バンダイナムコゲームス、「アイドルマスター」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061227/imas.htm
【2006年12月22日】THE IDOLM@STER MASTERWORK 第0弾「私はアイドル」発売記念 Xm@sイベント開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061222/imas.htm
【12月15日】バンダイナムコゲームス、オリジナルイベントも収録
Xbox 360「アイドルマスター」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061215/imas.htm
【11月10日】バンダイナムコゲームス、Xbox 360「アイドルマスター」
予約特典に「TGS 2006」ステージイベントを収録したDVD
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061110/imas.htm
【11月3日】バンダイナムコゲームス、Xbox 360「アイドルマスター」
Xbox Live関連情報をお届け
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061103/imas.htm
【9月24日】「東京ゲームショウ2006」バンダイナムコゲームスイベントレポート
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060924/bni.htm
【9月23日】「東京ゲームショウ2006」バンダイナムコゲームスブースレポート その1
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060923/bn1.htm
【9月15日】バンダイナムコゲームス、Xbox 360「THE IDOLM@STER」
新キャラも登場、アイドル候補生のプロフィールを一挙公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060915/imas.htm
【7月31日】「THE IDOLM@STER」1周年記念ライブ開催
Xbox 360版の新曲「GO MY WAY!」を初披露
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060731/imas.htm
【7月21日】バンダイナムコゲームス、「THE IDOLM@STER」
次の舞台はXbox360に!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060721/imas.htm

(2007年1月29日)

[Reported by 佐伯憲司]



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