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デジタルハリウッド、「Second Life」の特別セミナーを開催
仮想世界で生まれる新たなライフスタイルとビジネス

1月17日開催

会場:デジタルハリウッド大学大学院

 デジタルハリウッド大学大学院は1月17日、同学院内において、米Linden Labが開発・運営している「Second Life」に関するセミナーを開催した。今回は、本作のコミュニティーの形成促進を担当しているRobin Harper氏から、「急増するユーザーを支える、現場責任者が語る~セカンドライフ・コミュニティの特徴とビジネスへの影響~」と題し、「Second Life」の概要と将来像が語られると共に、デモプレイにより実際の架空世界の様子が紹介された。


■ 新しいコミュニケーション空間に、ビジネスチャンスを見出す個人や企業

Linden Lab VP Community Development and SupportのRobin Harper氏。「Second Life」の概要や将来像を紹介しただけでなく、デモプレイにより実際の世界を案内してくれた
Linden Labの日本を担当する事業戦略マネージャー 土井純氏。今回のセミナーでは通訳を担当した
 「Second Life」は、米Linden Labが開発し、2003年6月より正式サービスをスタートした3Dデジタルワールドだ。ユーザーは3Dグラフィックスで表現された仮想世界の住人として文字通り「第2の人生」を楽しむことができる。Linden Labは基本的には土地を提供するのみで、建物を建て、街を形成するのはユーザー達の手にゆだねられている。

 現在の登録ユーザー数は250万人を突破している。対応OSはWindows 2000/XP、Mac OS X: 1.13.1.6、Linux(現在β版)となっている。現在クライアントは英語版のみだが、日本語版クライアントも開発中であり、2月~3月にも公開される予定だという。

 本作は18歳以上のユーザーを対象にしていて、最初のアカウントは無料でプレイできる。月額9.95$の料金を払うことで、プレミアム会員となり、ゲーム内の土地を1カ月所有することができる。多くの土地を所有したい場合はそれに応じて料金がかかるようになっている。もちろん、土地を所有せずに世界を気ままに散歩する、というプレイも可能だ。

 「Second Life」は厳密にはゲームではなく、明確な目的が提示されていない。ユーザー達は、無料で入手できる3Dオブジェクト作成ツールを駆使してキャラクタのアクセサリや、建物、さらには公園や遊園地などの広大な空間まで、自由に作成し、自分で使用するだけでなく、他プレーヤーに対しても自由に取引することができる。Linden Labの表現を借りれば、作成できるコンテンツは、へそピアスから500メートルの超高層ビルまで。「Second Life」では圧倒的な自由がプレーヤーに与えられている。

 ユーザーが製作したコンテンツの著作権はユーザーに帰属し、商品の取り扱いもユーザーの手にゆだねられている。この世界の通貨はL$(リンデンドル)というもので、これを消費することで他プレーヤー達が販売しているアイテムを購入できたり、アトラクションを楽しむことができる。公式ページ内の「LindeX」では、L$と現実の米$との換金が可能になっている。「Second Life」内で積極的に商品を製作して販売し、稼いだL$を米$に交換することで生活の副収入としているユーザーも多いという。

 他にも企業向けに依頼を受けて、「Second Life」内の施設をデザインする会社なども立ち上げられている。単純なアイテムの売買だけでなく、様々な形のビジネスが「Second Life」の世界ですでに行なわれている。ユーザーも、無料の商品を置いたり、凝った看板を設置したり、コミュニティースペースに商品を陳列したりと、様々な方法でユーザーの関心を惹く工夫をしている。コンテンツを作るだけでなく、販売することに魅力を感じているユーザーも多い。

 「Second Life」は2006年に入ってから爆発的にユーザーが増加し、活発になった。これは無料でアカウント作成が可能になったことに加え、IBMやDell、ロイター通信など多くの企業が本作に参入し、“施設”を建設したことで、メディアの注目を集めたことが大きいという。映像配信メーカーの施設では、施設のモニターから現実世界のCF等の映像をストリーミングを通じて見ることも可能だ。施設によっては現実の商品を販売するWebサイトへアクセスできるインターフェイスもある。「Second Life」内では、現実の品物の宣伝もごく当たり前のように行なわれているのだ。

 ユーザーは、服やアクセサリー、髪型や建物といったオブジェクトを作るだけでなく、プログラムの知識があれば「Second Life」内でプレイできるミニゲームをサービスすることも可能だ。中には、ユーザーが作成したプログラムの中には自分の言葉を他言語に翻訳してくれるツールもあるという。施設の中を巡回する乗り物を作り、ツアーを“サービス”し、サービス料を受け取るユーザーもいる。

 デジタルハリウッド大学大学院では2006年より「セカンドライフ研究室」を設立し、関連書籍の出版や、「セカンドライフ・トレーニング講座」などを開催している。スタッフはLinden Labでトレーニングを受け、今後、「Second Life」を様々な形で紹介していくという。トレーニング講座では基本概念だけでなく、「Second Life」内での起業の方法やビジネスモデルの紹介、オブジェクトの作成の仕方などを指導していく。

 デジタルハリウッド大学大学院は講座や出版を通じて、「Second Life」を利用したビジネスを提示すると共に、卒業生によるスタッフの提供を行なっていくという。ゲーム内で起業し、ビジネスが展開できる「Second Life」はそのコンテンツの独自性と共に、それを使って更にビジネスを展開しようという企業の動きも面白い。「Second Life」を題材とした日本でのビジネスの展開にも注目したいところだ。

【スクリーンショット】
「Second Life」のスクリーンショット。様々なセンスを持ったユーザー達が思い思いの世界を作っている。その混沌とした雰囲気も本作の世界の大きな魅力だ


■ 無数のユーザーによって構築される「Second Life」の世界

Robin氏自慢の庭園。多くのユーザーの協力によって作ることができたという
「Second Life」は巨大な大陸のメインランドと、オーナーが管理するアイランドによって構成されている。アイランドはオーナーやコミュニティによる独自のルールが設定されている
 Robin氏はセミナーの最初に、スライドを使ってユーザーの傾向を説明した。現在、「Second Life」のアクティブユーザー数は55万人。男女比は男性が57%、女性が43%。国別では北米のユーザーが50%を占め、残りの50%はアジアとヨーロッパのユーザーがしめる。日本人も1万人以上が参加しているという。

 本作ではアイテムの取引の他、ユーザーイベントも盛んで、結婚式やコミュニティーのディスカッション、プロのアーティストによるコンサートなども行なわれている。デュラン・デュランのライブも行なわれる予定だ。イベントの中にはLinden Labの運営方針に対する抗議デモも行なわれたこともあった。また、大学など教育機関も「Second Life」に取り組んでいて、東京大学でも施設を作る予定があるという。

 Robin氏はコミュニティと運営の連動に関して、「コミュニティを形成しているユーザー達はオーナーシップを持とうとする。大切なのはそのコミュニティをいかに取り込んでいけるかと言うこと。ユーザーの輪に入り、彼らが何をしているかを直接聞いてみることも大事だ。ユーザーからのフィードバックをきちんと受け止め、信頼関係を作っていくことが大切だ」と語る。

 Linden Labはユーザーのコミュニティを活発にするために、Blogと連動させることのできるインターフェースなどを整備すると共に、新しいプレーヤーの動きにも常に注目している。ユーザーの予測もつかない行動は常にエキサイティングだとRobin氏は語る。「Second Life」のサービススタート直後に、いきなりユーザーが天にまで昇る豆の樹を一夜にして作り上げ、その横に小さな、内部まで作り込まれた家を建てているのを見て、Robin氏はとても驚かされたという。

 「Second Life」はユニークな想像力を持ったプレーヤー達に溢れている。宇宙船やオブジェクトを配置し「スター・ウォーズ」を模した世界観を構築しているユーザーもいれば、様々な国の文化様式を活かした世界も作っている。本作の世界は広大なため、初心者はどこへいったらいいかわからなくなってしまう場合もある。彼らの手助けをしたり、新しいことをしようとするユーザーの技術的なサポートもLinden Labは行なっているが、ユーザー間でも積極的にサポートが行なわれている。

 Robin氏は今後の「Second Life」に実装する機能として、キャラクタ登録時にスタート地点を文化圏に即した形で自動的に振り分ける機能や、両替機能の強化、さらにはボイスチャットの導入、そしてコミュニティーやオブジェクトなどをより細かく検索できる機能、といった要素を提示した。また、1月より行なわれた「Second Life」のオープンソースによるユーザーの協力によるバグフィックスや、クライアントソフトそのものの機能の充実、改良にも期待しているとのこと。

 Robin氏のデモプレイを見ながら、筆者はやはり本作はMMORPGとはまったく違うという感想を持った。「Second Life」の世界は、統一されたクリエイターの意志により提供されるエンターテイメント空間ではない。多くの人の思惑が自由に、無秩序に、そしてダイレクトな形で主張されている。とりあえずキャラクタを作り、思うままに歩いてみたい、と強く思った。

 形成されるコミュニティや、ユーザー同士の関わり方もMMORPGとは全く異なるものになりそうだ。目的がゲーム以上に多様な本作に物足りないものを感じる人もいれば、“「Second Life」こそ望んだ世界だ”という人もいるだろう。本作はMMORPGとは似て非なる世界だ。特にMMORPGプレーヤーに触れてもらい、その感想を聞いてみたいコンテンツである。自分がオンライン世界に何を求めているか、改めて気付かされるかもしれない。

ユーザーの分布。日本のユーザーも急激に増加しているという。女性が多いのも大きな特徴だ この世界ではほぼ毎日どこかでユーザーがイベントを開催している。企業がスポンサーとなって、プロのアーティストのイベントなども行なわれている 今後、検索機能やボイスチャットの実装が予定されている。また、ゲームクライアントに相当するビューアーにオープンソースになったことで、ユーザーの手によるカスタマイズ・改良も期待されている

【デモプレイ】
米SONY BMGの施設。広大な施設ではストリーミングにより様々なコンテンツを試聴可能な他、販売サイトにリンクすることで現実の商品も購入できる
スタートの島。多くのプレーヤーがチュートリアルを体験中だ こちらは初心者との出会いの場。様々なプレーヤーのパフォーマンスの場でもある 動物型のアバターはプレーヤーの間で人気が高い
Robin氏お気に入りのバー。ここで友人と話したり、踊ったりしているという こちらはLinden Labの島にあるRobin氏の茶室 スウェーデンの人のコミュニティ。案内もその国の言葉で書かれている

Copyright 2007, Linden Research, Inc. All Rights Reserved.

□Linden Labのホームページ
http://lindenlab.com/
□デジタルハリウッドのホームページ
http://gs.dhw.ac.jp/
□「Second Life」のページ
http://secondlife.com/world/jp/

(2007年1月19日)

[Reported by 勝田哲也]



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