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会場:ヘッドロック本社会議室
しかし、「ECO」はゲームメディアの立場からすると、「ちょっと待って欲しい」という部分がいくつか残っている。同作はもともと純国産の大作MMORPGとして、企画開発がヘッドロック、運営がガンホー、物理店舗を擁し、マーチャンダイズに強いブロッコリーの3社が一体となってスタートしたビッグプロジェクトだ。「不公平感をなくすMMORPG」構想、パラレルワールド構想、シアター構想、Eコマース構想、ゲーム内広告事業などなど、聞きたいことは無数にある。 そこで今年最後のインタビューでは、開発元のヘッドロック本社に赴き、最新アップデートである「SAGA5」の今後の展開だけでなく、2005年4月から2005年12月9日までに発表された初期構想にまでさかのぼって、「ECO」のこれまでの1年を振り返ってもらいながら、「ECO」全体の2007年のアップデート構想について話を伺ってみた。予期せずして2008年の内容までうっかり踏み込んでしまっているが、いずれにしても開発、運営サイドともに長期プランで同作に取り組んでいることを伺わせる内容になっている。 インタビューに応じていただいたのは、ヘッドロックからはコンテンツ3課プランナー濱田忠司氏と、同じくコンテンツ3課プランナーの下郷藍子氏、そしてガンホーからは開発本部コンテンツ制作部第四制作課課長 岩田容賢氏の合計3名。 インタビュー前編では主にこれまでの1年と、初期構想の再確認、ヘッドロックの開発ロードマップの再確認といった話を伺っている。後編では、気になる「SAGA5」の今後の展開と、「SAGA6」、「SAGA7」で実装が予定されているマイマイ島、マイマイ遺跡、天まで続く塔に関して話を伺っている。「ECO」ユーザーのみならず、多くのオンラインゲームファンにとって示唆に富む話が満載なので、ぜひ一読いただきたい。
■ 開発側から見た運営1周年の感想について。2006年12月版「キャラクタ分布図」を大公開 編集部: まず、今回のインタビューの企画意図について説明すると、「エミル・クロニクル・オンライン」は、これまで制作担当の岩田さんを通じて、制作意図や企画意図を伺ってきましたが、開発側の意向がなかなかユーザーさんに伝わらないことを感じていました。ユーザーの声を開発側に伝えてゲーム内に反映させる運営の仕事は、オンラインゲームにおいて重要なことですが、やはり開発あってのゲームだと思いますので、開発側の生の声を一度ユーザーさんに届ける機会を設けたいと思ったんですね。
濱田忠司氏: 途中で折れずによく続けられたなと思います。今までやってきたタイトルの中では比較的楽だったと思います。楽といっても、デフォルトで辛いんですけどね(笑)。ちゃんと最初の構想が実現できましたし、スケジューリングに関しても大変やりやすくやってきていると思います。 編: これまでSAGA0から5までさまざまな新要素が実装されましたが、一番気に入っているコンテンツは何でしょうか。 濱田氏: SAGA3の飛空庭です。「ECO」は憑依と飛空庭が大きなコンセプトでした。飛空庭では、お庭も造れて、移動もできてと非常に気に入っています。 編: やはり、反省点もあるわけでしょうか。 濱田氏: 山ほどありますね。たとえば職業が多すぎるとか(笑)。あとは「アニバ!BOX」特典の冊子にも書きましたが、職業のバランスがいまだにとれていないのが1点と、北の寒冷地から解放していきましたが、なんで東から解放していかなかったのかとか。 下郷藍子氏: 私もだいたい同意見です。SAGA3は街の雰囲気も好きだったし、アンデット城など行ってわくわくするところが多かったですし、何より作っていて楽しかったです。反省点はメンテナンスの多さです。緊急メンテナンスを頻繁にやっていることが一番申し訳ないなと思います。 ユーザーさんがプレイしているときに突然「天の声」といいますかアナウンスがかかって、楽しく遊んでいたのが1時間2時間中断されてしまうことです。プレイしている側としては一番イライラしますよね。それを少なくしたいというのが今年後半の目標でした。 編: 私の個人的な印象だと、2006年は国産MMORPGは不作の年でした。特に大本命だったガンホーさんが新規タイトル0だったのは誤算でした。とにかく今年は期待していた内容ではなかったというのが私の1年の感想です。そんな中で「ECO」は今年着実に成長してきて、ユーザーさんの満足度も高い。開発と運営とユーザーの三位が高い次元で一体となっているという印象を持っています。 中でも特に今回聞きたかったのは、週1回のアップデートですね。これは一種の偉業だと思うのですが、方や中の人は大変だろうなと(笑)。これはどういうポリシーで継続しているわけでしょうか? 濱田氏: うーん、なんでこうなったんだろう(笑)。最初の計画では、運営が開始されて開発を続けて1年半か2年かけて1個の世界を完成させるのが初期コンセプトの1つでした。週に1度のアップデートもその一環というわけですが……。 岩田容賢氏: 我々がやっていることって、これまでのコンテンツと変わらないんですね。ユーザーさんから不具合の報告やご意見ご要望をまとめたものをデイリーのレポートでヘッドロックさんに毎日ガンガン送るわけですが、大抵そのレスポンスもほぼデイリーで返ってくるわけです。その中に緊急を要する不具合のものが入っていると次のメンテナンスで直す必要が出てきます。結果として毎週メンテナンスが発生しているわけです。で、そのタイミングで、新しいアップデートも入れようよということが延々と繰り返されている感じです(笑)。「ECO」は、不具合の修正や、ユーザーさんの要望などを取り入れていくスピードの早さがこれまでのコンテンツと大きく違うところかもしれませんね。 編: 確かにうかうかしていると気づかないうちにアップデートされていますよね。メディアとしてこれほどついて行くのが大変なMMORPGもないという印象です。ちなみに週1回のアップデートは、今後も運営が継続する限り、続けていくのでしょうか? 濱田氏: うーん(笑)、それはどうでしょうか。 岩田氏: 運営でできる点は無いかというところで、来年はメンテナンスも少し違う形にしようかなと思っています。 濱田氏: 現在は広げる方にばかりエネルギーを注いでしまって、定着させるとかそのものの質をあげるということがすごく弱かったので、今後はできればアップデートのペースは下げて質を上げる方向でやっていきたいと個人的には思っています。やはり、新しいものを作るときより直すときの方が気を使う部分が多いですので。 編: 岩田さんに対する質問かもしれませんが、正式サービスが開始される前はレベル分布や職業分布のようなものを円グラフにして紹介されていました。あれから1年が経過して、現在どうなっているのか知りたいユーザーさんも多いのではないかと思います。 岩田氏: 職業・種族・性別に関しては「ECO」は驚くほど変わっていません。もちろん職業に関しては新しいアップデートが入ったり、ジョブスイッチングシステムが入ったタイミングで、こっちには面白いスキルがあるぞといったことがあると、ユーザーさんが一時的に流れることはありますが。基本的には自分が気に入ったものをひたすら使い続けていく感じです。 まずレベル分布については、レベル1は名前取得のためなどがあるので除外してあります。このグラフではレベル20ずつで区切っていますが、仮にこれを10ずつにしても分布は平均的で、どこかで進行が詰まってしまっている、というような波はありません。低レベルのキャラクタ育成が比較的容易であると言えます。クエストで3キャラとも育てている、という方が多いようですね。現状、レベルキャップを85に設定していますが、12月8日にSAGA5で解放したばかりなので、キャップに到達している人の方が少ないということもわかります。 職業分布についてはウァテスやソードマンといった、βサービスの頃から多かった職業が若干減って、逆に少なかったファーマーやタタラベなどの割合が増えました。これは、セカンド、サードキャラクタを作る方が増え、その際にバックパッカー系を選んでいるのではないかと思います。とはいえ、全体的な比率に大きな変化はありません。 種族分布はタイタニアとドミニオンが若干減り、その分エミルの割合が増えています。エミルがもっともノーマルな種族に見えますので、最初はエミルでという方が多いのと、先の図で増えていたバックパッカー系の職業には、エミルがもっとも向いているからだと思います。 キャラクタ男女比は、βサービスでは男性キャラクタの方が多かったエミルの男女比が、現在では半々になっています。これを「職業分布図」や「ECO種族分布図」と合わせて考えると、「セカンド、サードキャラクタをエミルの女性キャラクタで作り、バックパッカー系の職業にした」方が増えた、ということがわかりますね。
■ パラレルワールド、シアター構想など、3社3様の初期構想はどうなったのか? 編: 2005年4月の制作発表会から振り返りますと、なんといってもガンホー森下社長、ブロッコリーの木谷会長、ヘッドロック岡田社長の3人のメッセージが強烈です。森下さんは純国産の超大作としてパラレルワールドでどーんと行きますよ、Eコマースもやるぞと。木谷さんはブロッコリーのコンテンツをゲーム内に登場させたり、シアターでブロッコリーの新作アニメ流すとかですね。岡田さんは不公平感を無くすMMORPGにするようなことをおっしゃっていました。 ユーザーさんもメディアもそれにちょっと振り回されたところもあったのかなと思います。冷静に見るとどういうMMORPGなのか茫漠としてつかめないところがありますので、この機会にひとつずつ再確認させてください。3人の構想はどう開発側に吸収されて、実装されるとすればいつなのか、もしくは既に形を変えて実装されているのであればその旨を教えてください。
編: クエスト数の受け入れられる上限が日数によって増えるというものがありますよね。 濱田氏: そうですね。しかし、あれはあまり溢れすぎてもかえってやる気をなくしてしまったユーザーもいたのではないかと。開発側としては時間が無くても、自分がプレイして何とかついていけるゲームにしたかったんですね。 編: 不公平感をなくすための施策は一応実装されたことになるわけですが、不公平感の是正という方向性は、今後も続けていくのでしょうか。 濱田氏: 続けていきたいです。「ECO」は他のタイトルに比べれば今でもプレーヤー格差がでにくいシステムになっています。またアバター要素自体も最初からコンセプトとしてはあったのですが、やっている最中にどんどん強くなっています。ちょっと入って眺め回しているだけでもある程度満足できるような世界を維持していきたいですね。 編: それでは現在認識されている不公平感はどのあたりでしょうか? 濱田氏: うーん(笑)、それは私の口からはちょっと言えないですね。 岩田氏: 私が代弁すると、一番最初に濱田さんが仰っていた職業が多すぎてバランスを取るのが大変だというところで、衣装もしかりスキルもしかり、武器防具もしかりということです。ただ、基本的に「ECO」は、職業しばりやレベルしばりになっているものが他のゲームに比べると圧倒的に少ないですし、絶望的に入手できないアイテムはほぼありません。時間でポップするモンスターから確率でドロップするものを何段階にもわけて集めていく、といったものは無いんですね。 ただ、職業のバリエーションが多すぎてキャラクタ間のバランスが取れているかというと問題があると思います。ネックになっていくのは職業というところで、これに大きく縛られています。テクニカルジョブという形をいれてジョブスイッチングシステムを入れて、1キャラクタで色々なことができるようになって調整しやすくもなっています。エキスパートジョブとテクニカルジョブとで分かれていたら、この系統の職業は好きだけどエキスパートジョブはありえないからテクニカルって決めてこっちでつかえばいいやということで終わりになったかもしれない問題も、両職業を一緒にしてしまったので、バランスを調整しようとして余計に脱出できなくなった部分も出てしまいました(笑)。そういうところで引っかかっているので今後の調整は必要だと考えています。 編: ジョブ間でのわかりやすい不公平感といえばなんといってもロボットがあると思います。ロボに関して開発側としてはどうするおつもりでしょう。 濱田氏: 一応、「貸しロボ」構想があります。実は今回入れようとしたんですが、作業量的な問題で見送られました。職業に関する初期コンセプトは、現在はそれから外れてしまい有名無実になっていますが、1アカウント3キャラクタで、3人のキャラクタを場所場所で使い分けるという構想でした。ですから、ロボが欲しければキャラクタにタタラベを作ってくださいというスタンスだったんです。しかし、やっていくうちに、1キャラクタ分の役割が思ったよりも強くなってしまって不公平感を生む原因になってしまいました。キャラクタ間の不公平感はならしていかなければいけないのですが、個性という点では弱める方向にはなるべくいきたくないのが個人的意見です。ロボはタタラベの象徴という考え方は崩したくは無いということです。 編: いま「貸しロボ」と仰いましたが、初耳です(笑)。貸しロボ構想はどういう企画なのでしょうか? 下郷氏: 現在、ロボットはタタラベしか装備できませんよね。私はプライベートでファーマーを育てているのですが、本音を言うとすごくロボに乗りたかったのですよ(笑)。だからタタラベ以外の人もロボに乗れてもいいでは、と思いました。 先ほど濱田が言ったように、他のキャラを育てれば良いではないかとも思うのですが、他のキャラを一から育てるのは大変なので、できれば他のキャラも乗せたいなと思いました。でもロボットはタタラベの特徴でもあるからロボットを育てるという要素を省いて、乗って雰囲気を楽しむということができるのであれば、ありかなと思ったんですね。 他のオンラインゲームでも騎乗動物を貸し出す仕組みがありますが、あれと同じようにお金はかかるけど、歩くより移動スピードが速くて、馬車みたいな役割をロボにさせたかったんです。今回は難しいということで入れられませんでした。 個人的な構想としては、貸しロボの後にうまくいけば貸しドラゴみたいなものを作ってアクロポリスの中央に貸しドラゴ屋さんを置いて、初心者の人がちょっとお金を出して遠くに行くときは貸しドラゴに乗って旅行できたらいいなと思ってますが、いつになるやら……(笑)。 編: 貸しロボというのは、SAGA5ないしSAGA6で実装されると期待していいのでしょうか? 下郷氏: やればできるんですが、時間がかかります。 濱田氏: マップ移動やサーバー間移動のときにちょっと時間がかかるなど、まだ技術的な問題が残っています。 岩田氏: ユーザーさんからの要望としては、「ECO」は思ったよりも違う乗り物がいっぱいあるので、ロボットを使っている人はもっとカスタマイズさせてくれという意見が多いですね。我々が思ったよりも、他の職業の方からの「俺もロボに乗せてくれ!!」という要望は件数的にはそれほど多くはありませんでした。ですから、運営側から積極的に貸しロボをやりましょうという後押しをするつもりはないですね。 編: 続いて森下さんと木谷さんの構想についてはいかがでしょうか。 岩田氏: 率直に申し上げると、森下も堀(取締役開発本部長)も自由にやらせてくれているので、トップダウンでのマーケティングプランというものを強制されたことはありません。ただ、定期的な社内プレゼンの中で、「色々新しいことができるわけ?」という振りはきていますので、今後もコラボレーションでもシアターなど運営していく中で我々が受け入れられるのであれば展開していくことになるのだろうと思います。 編: 最後にEコマースやアニメ放映というのは他社さんも絡んでくるものだと思いますが、まだ企画としては残っているのでしょうか? 岩田氏: たとえばシアターでムービーを流すというのは、過去に山本(「ECO」マーケティング担当)が新作映画の予告編をどこよりも早く中で流すという企画を立てたことがありまして、スーツ着て「代理店にいってきまーす!!」とかいって行っていた時期があったんですが、その後は話題があがらなくなったので、難しいのかなと思ったのですが(笑)。 制作サイドとしてもどうせやるなら、もっと枠を超えて、GAME Watchさんが「これはすごい企画だ」と取り上げてくれるようなものをやりたいと思っています。いまだに実になっていないところだと思いますが、ぜひ挑戦したいですね。 編: 木谷さんがシアター関連でおっしゃっていたのは、たとえばブロッコリーの「ギャラクシーエンジェル」の新作アニメをどこよりも早く放映して、アニメユーザーを「ECO」に導いていくと。企画としてはおもしろいし、やろうと思ってできないことではない。ですから、それがいつ始まるのかを期待していました。 岩田氏: それはもう森下、木谷ラインに直接聞いたほうがいいかもしれません。やるといわれればこちらとしてはスケジュール組んでやっていくだけなのでそれほど難しいことではないですから。 ただ、今はシアターに対して拘束力や見るメリットがありません。シアターを見ることで何らかのメリットが得られるものも用意したほうが良いかなというのは考えています。昔、マップ間移動がなかったときにちょっと話したのですが、強制的にユーザーさんに見せることを考えたとき、シアターで見終わった後しばらく放って置くと自動で遠くのマップに飛ばされるとか(笑)。そんな仕組みにすれば、確実にPV数は稼げそうだという話はありました。そういう形でユーザーさんに納得していただける範囲で協力してやっていくというのはありかもしれないです。 編: 最後のEコマースですが、つい先月アドバゲーミングのセミナーで、森下さんが「ECO」を用いたスライドを見せながらその可能性について熱心にクライアントに向けて語っていました。これについていかがでしょう? 岩田氏: 私はあのスライドを事前に見ていなかったのですが、当日「ECO」が使われていたというのはユーザーさんからもご意見が来ていました。スライドの中にゲーム内アナウンスでゲーム内広告を流すというのがありましたが、あれは無いですね(笑)。実際には別の形になると思います。 ゲーム内のテクスチャを看板にするというのはアメリカでもやっていることで、「ECO」でもすでにシアターの看板を季節イベントごとに入れ替えたりしています。ただ、どこら辺が境界線なのかというとまだ十分に議論されていません。インスタンスマップの中に飛ばして、中は広告で構築されているけどオリジナルのアドベンチャーマップなら納得してもらえますか、という話とか可能性としてはいくらでもあると思っています。 ただ、「ECO」でゲーム内広告ということに関しては、ユーザーさんの反応もありますし、「ECO」の世界とどれぐらいマッチするか、がポイントとなると思います。たとえば、今出しているプレイチケットって、マーケティング側から別に予算を組んでヘッドロックさんに別ラインを用意していただいて、別ラインで開発するということをやっています。同じことができるのであれば、オリジナルマップを作っていただいて広告メインでやっているけど、メインのゲームとはインスタンスマップだから一切関わりが無いということであれば、いきたい人はいけばいいし、世界観を崩すから嫌だという人はいかなくても損をしないのであれば成り立ちます。いずれにしてもこれからだと思いますね。
■ ヘッドロックの開発スケジュールを再確認する。濱田氏「若干後ろにズレこんでいる」
濱田氏: 若干後ろにズレこんでいます。当初の予定では、秋にはマイマイ遺跡まで実装して、冬には「天まで続く塔」まで来ていたはずでした。ただ、開発内容がぶれたことは無いです。今回、3年前の資料を引っ張り出してきましたが、ほとんどぶれてないんですね。さきほどのシアターみたいに、後から追加された要素はありますが(笑)、大きな世界の器を作ろうという考えで、なるべくアイデアや世界観を吸収していくような土台にしようというのが最初の開発コンセプトなのですが、これは変わっていません。 編: 初期構想の中では、なんといっても森下さんが2005年の9月に発表したパラレルワールド構想がまだ入ってませんよね。森下さんは、普通のMMORPGは海の先に島があってという横の広がりがあるけれども、「ECO」ではそれに加えてパラレルワールドを展開すると力説していました。この発表は正式サービス前の段階で、一種の「ECO」の公約として掲げていたことでもあります。この1年間その動きが無かったのはちょっと残念でした。 岩田氏: パラレルワールドを実現するためには交通手段を確保することが必要なのですが、それが遅れているのでどうやって行けばいいのかということで、一時期、世界観とストーリーを飛ばしてマップの実装だけ先に進めるという話もあがりました。ですが、ゲーム的に矛盾する部分が出てくるのでは、ということで、質を上げてストーリーに沿って作っていきましょうということになりました。 濱田氏: どこかのタイミングで話をして、上か下かに行く前に、今のエミルの世界を作り込みましょうという話をした覚えがあります。エミルの世界にもやっていないところが3箇所くらいありまして、そちらがあがったら初めて「天まで続く塔」へとなると思います。 編: パラレル化していないということは、エミル以外の種族を使っている人間からするとまだ存在意義がぼんやりしているわけでもあります。個人的にはパラレルワールドができてからが「ECO」だというふうに理解していました。今年は、視点解放やタイニーアイランド、そしてダンプティーアイランドなどの枝葉の部分がクローズアップされている印象があります。それ自体もいいコンテンツだとは思いますが、実は本筋と関係ないゲームとしての楽しみを与えるほうに開発体制が変わってしまったのかとも思ったんですが。 岩田氏: タイニーアイランドもダンプティーアイランドの企画も、開発はヘッドロックさんですが、企画は全部淺間(ガンホー「ECO」制作担当)にやらせているのです。ですから、開発がそちらの方にシフトしたわけではないです。運営にしかできない部分というのが試しにダンプティーアイランドだったりアニバーサリーだったりということでやらせていただきました。ただ、これらがスケジュールの遅れに影響を与えているわけではありません。 ただやっぱり運営サイドとしては不具合だったりバランス取りをはじめとしたユーザーさんの意見は見過ごせません。「これを直すとこの開発がちょっとだけ遅れるのですがいいですか」と言われたときに私はためらいなく「かまいません」と答えてきました。 それが積み重なって全部開発が遅れてしまい、そこを無視して遅れるなら新規要素は止めますかということも言ったかもしれませんが、もう1回次のコンテンツをやるときに、似たような状況に陥ったら、私はまた同じことを言うと思います。将来のことをある程度先送りにしてもユーザーさんの求めていることを今やりたいということです。 ただ、開発サイドとしてその方向性は本意だったのかどうかは私も気になっていたところです。私からもうひとつ気になっていることがあるのですが、視点解放を途中で加えました。あれでスケジュールがどれくらい変わったのかを単純に知りたいです。どうなのでしょうか? 濱田氏: それ用にマップを作り直さなければならなくなりましたので、視点開放によってかなりスケジュールは。最初の予算と期間で開発スケジュールを組んだときに、視点解放はしないことを前提で組んでしまったので、結果として時間と労力がかかってしまいました。 編: ヘッドロックさんの開発パイプラインというのは、メインの開発と、その他アップデート関連の開発は独立していなくて、完全に1本なのでしょうか? オンラインゲームの開発現場は、開発ラインが2本あったり3本あったり、中の人は一緒だったりもしますが、それぞれ独立しているケースが多いです。たとえば、「ECO」のSAGAは、内容的には拡張ディスクに相当しますが、現在のサービスに一部不具合があるから、拡張ディスクの発売を延期するということは無いと思うのです。 濱田氏: 「ECO」に関しては1本です。効率を求めると今の形だと思うのですが、今後のことはこれから考えるところです。
(以下、後編へ)
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2006年12月25日) [Reported by 中村聖司]
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