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★PCゲームレビュー★

失われた古代王国イースの秘密が明らかに
700年の時を遡り描かれる新たな冒険者達の物語

「イース・オリジン」

  • ジャンル:アクションRPG
  • 発売元:日本ファルコム
  • 価格:7,980円
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:12月21日



 日本ファルコムを代表する「イース」シリーズ最新作「イース・オリジン」が12月21日に発売される。「イース」シリーズとは言っても、今回は“赤毛のアドル”が活躍した時代から700年ほどさかのぼった過去の世界が舞台となる。主人公もまた騎士見習いの少女「ユニカ=トバ」と天才魔道師「ユーゴ=ファクト」の2人と今までとはまったく違う設定だ。

 一見、今までのシリーズとは全く印象の異なる作品になってしまったような印象を受けるが、舞台となるのは700年後にアドルが上ることとなる“塔”であり、ゲームの感触、そして登場する敵モンスターなど、シリーズを知っていれば思わずニヤリとさせられてしまう要素がたくさん詰め込まれている。本稿ではゲーム序盤の感触を中心に紹介していきたい。


■ シリーズ最新作で描かれる、失われし古代王国イースの物語

魔道のエキスパートとして強い自負心を持っているユーゴ=ファクト。ある大きな使命を命じられて捜索隊に参加している彼は、その秘密のためか常に何かに苛立っているように見える
魔法の才能がないため、騎士団入団を決意したユニカ=トバ。「女神様が好き」というその想いだけで捜索隊に参加する。重そうな斧を軽々と振るう彼女には、戦士としての才能が感じられる
 双子の女神と六神官、そして“黒真珠”によって理想郷といわれるほどに繁栄を誇っていた「イース」。しかしその平和は突如侵攻してきた魔物達に脅かされてしまう。女神と神官達はイースの民をサルモン神殿とその周辺に集め、魔力を使って神殿を浮上させる。しかし魔物達は浮上したサルモン神殿をなおも襲おうと“塔”を建て、翼を持つ魔物達を送り込んでこようとしていた。

 そんな時、突然サルモン神殿から双子の女神が姿を消してしまう。六神官は騎士や魔道師から精鋭を選りすぐり、消えた双子の女神を捜し出すための“女神捜索隊”を結成させる。捜索隊の任務は今や魔物達が支配する地上へ赴き、女神を探すことだ。転位魔法の光に包まれ地上に降りようとする捜索隊。しかし、“塔”からの禍々しいエネルギーが放たれ、転位魔法の光の球を破壊する。メンバーは散り散りになってしまう。

 ユニカとユーゴはそれぞれ“ロダの樹”の根本で目覚める。女神から力を授けられたこの聖なる樹は魔物達の侵略からも生き延びていた。ロダの樹は二人に女神が地上に降りてきたのを目撃したこと、女神達が“塔”に向かったことを告げる。ユニカとユーゴは塔の中で女神捜索隊のメンバーと再会、二人から話を聞いた捜索隊のリーダー、シオンはメンバーを集結させるべく塔の入口を守ることになる。ユニカとユーゴは一足先に塔を調べるため、その一歩を踏み出すのだった……。

 ユニカとユーゴは序盤ではまったく顔を合わさず別々のストーリーを歩む。塔でのたどる道のりはほとんど同じだが、敵キャラクタの出現する順番や関わり方などが変わっており、どちらを先にプレイしてもその“違い”が楽しめるだろう。今回はレビューのためそれぞれの序盤を体験したのだが、2つのストーリーで更なる謎が提示され、ストーリーがふくらんでいく感触が面白かった。片方をクリアしてから次にもう片方を、ではなく、ユーゴで最初のボスを倒したら次はユニカで、といった具合に両方を少しずつ進めていくのも面白いかもしれない。

 ストーリーとしては、魔法が使えないコンプレックスをのぞかせながらも、「女神様が好き」という想いのままひたむきに突っ走るユニカと、何か大きな秘密を抱え、そのために仲間にすらきつく当たってしまうユーゴの2人が、冒険を経てどのような成長を遂げていくかがとても気になる。また、女神がどうして消えたのか? なぜイースに魔物が現われ、執拗にサルモン神殿を狙うのか? などストーリーの根幹となる謎も気になるところだ。そしてアドルが旅することになる「イースI・II」とどのように繋がっていくのかが、ファンには最も気になるところだろう。

 「イース・オリジン」はアクションRPGとして、シリーズの最新作として高いクオリティを持った作品となった。ストーリーは現在公開されているだけでもユニカとユーゴ、そしてもう1人を主人公にしたものの3通りが用意されており、ボリュームもたっぷりである。冬休み、正月休みにじっくりと取り組みたい作品だ。

オープニングムービーでは浮上するサルモン神殿、消えてしまった女神、何者かに阻まれる女神捜索隊と、ストーリーを映像で描く
女神捜索隊の前に立ちはだかる“闇”と名乗る一団の一人、エポナ 謎を秘めた鉤爪の男。イースの民に深い関わりを持つ人物のようだ 地上に残されたロダの樹はユニカとユーゴに女神が塔に向かったことを告げる
ユーゴの幼なじみの少女ミュシャ。ユーゴの冷たい対応に、その顔はいつもうつむきがちだ ユーゴの幼なじみであるリコ。悩みを抱えているユーゴを心配しているのだが…… ユニカの兄代わりのロイと、女騎士のラモナ。ユニカを支えてくれる頼もしい仲間である


■ 特殊攻撃、スキル攻撃、ボスとの駆け引き……2人の主人公の多彩なアクション

様々なアクションが可能となっている「イース・オリジン」。メニュー画面からマニュアルを参照することでいつでも操作を確認可能だ
最初のボスとなるベラガンダー。気絶した隙に腕を駆け上り、頭の部分に攻撃を加える
 ゲームのシステムは、前作「イース-フェルガナの誓い-」から更に進化したスキルアクションを主体としたアクション性の高いデザインになっている。たとえば、「風」のスキルを使ってジャンプの飛距離を稼いだり、ゲームを進めるためにスキルの使用は欠かせない存在だ。また、今までのシリーズのように様々な場所を回るのではなく、“塔”という閉鎖空間に冒険の舞台を絞っているのも新鮮だ。

 「イース・オリジン」はゲームパッド、キーボード+マウスのどちらにも対応している。設定画面で自由にキーカスタマイズすることもできる。魔法のエネルギーを撃ち出すユーゴの攻撃は今までの剣で戦っていたアドルとは全く違う感触を体験できる。ユニカは斧で戦うため、アドルと戦い方は似ているが、敵の攻撃のタイミングを計ったり、スキル攻撃、特殊攻撃など今まで以上に通常の戦闘でも駆け引きが楽しめるようになっている。ゲームは要素が増えると難易度が上がってしまう傾向があるが、本作の場合は難易度が選択できるため、アクションが苦手な人にも、そして更なる難しさを求めるユーザーにも対応している。

 ユーゴは杖と自身の後ろに浮遊する特殊な魔法具「ファクトの眼」から魔法弾を発射する。遠距離から連続して攻撃できるためユニカよりゲームの難易度は低くなっている。レベルが下の魔物はユーゴに近付く前に倒されてしまうが、攻撃を突破してくるような魔物に対しては距離を置いた戦いを心がける必要がある。

 特殊攻撃は方向キーを攻撃方向に押し込み、一度ニュートラルに戻した状態で攻撃キーを押すことで発動する。ユーゴは大きめの魔法球を放ち、ユニカは敵に突っ込み、回転しながら連続攻撃を繰り出す。この攻撃は敵の防御力を下げる効果もあり、連続で当たるので早めに出し方を体得しておきたい。また、ユニカはジャンプ上昇中に攻撃ボタンを押すことで上突きを、下降中に攻撃をすることで下突きを行なう。中でもユニカの下突きは敵を気絶させる効果があり、特に有効な技だ。

 スキル攻撃は、ゲームが進むことで使えるようになる攻撃方法だ。たとえば風のスキルは「蒼空の翼」というアイテムを入手することで使用可能になる。さらに各スキルに対応したアイテムを入手することでパワーアップし、溜め攻撃が可能になる。風のスキル攻撃は、ユーゴは自分を包むバリアを作り、ユニカは自分の周囲を回る円盤のような風の刃を出現させる。雷のスキルは更に異なり、ユニカは大きな火柱を吹き上げる攻撃となり、ユーゴのスキルはまるで爆弾のように一定時間で爆発する。

 ゲームがある程度進んでくると、雷のスキルでしか破壊できない敵が出現したり、風のスキルによってジャンプの飛距離が伸びたりと徐々に重要度が増してくる。中でも重要なのがボス戦だ。最初のボス「ベラガンダー」との戦いでは、こちらに向かって吐き出す緑の泡をスキル攻撃でかき消し、下の顔にダメージを与えると、一定時間気絶させることができる。「イース・オリジン」のボスは体の上に乗り攻撃できる、という要素が追加されており、このボスもこの気絶しているときに腕に飛び乗り、露出した弱点を攻撃すると初めてダメージが与えられるようになっている。

 ただ、最初のボスに関しては腕に乗る部分の判定がちょっと曖昧な気がした。ボスが気絶している時間は極めて短く、操作は焦りがちである。腕から落ちてしまってボスの体に隠れて自キャラが見えなくなってしまうこともあって、もう少しこの駆け引きを煮詰めてもらいたいと感じた。ただ、ボスの体に乗れるという要素は中々新鮮で、これ以降のボスも今までの作品以上の駆け引きが楽しめそうである。

 このほか、「イースI・II」の魔物が再登場するのも本作の特徴である。召喚された魔物としてプレーヤーの行く手を阻むのは「ヴァジュリオン」だ。シリーズのプレーヤーにはおなじみの、小さなコウモリの集団に姿を変える魔物で、集合して一体の魔物になったときのみ攻撃できる。この他にも多くの魔物が再登場するということで、彼らとの“再会”も楽しみである。また、女神捜索隊とは逆の、「女神を捕らえる」という目的で動いている者達との対決も避けられないようだ。

ユーゴは魔法弾による遠距離攻撃を行なう ユニカは大きな斧で敵に斬りつける ユーゴの特殊攻撃。敵に当たると稲妻が走り、連続でダメージを与える
ユニカの特殊攻撃は斧を回転させ、周りの敵に連続攻撃を行なう ユーゴの風のスキルは結界を張り巡らせる。空中での滑空も可能となる ユニカの風のスキルは円盤状のエネルギーを展開する。こちらも滑空が可能だ
ユーゴの雷のスキルは一定時間で爆発する爆弾を設置する ユニカの雷のスキルは上に吹き上がる爆発を起こす ファクトの眼に炎をまとわせるユーゴの火のスキル
ベラガンダーの緑の泡は、風のスキルによる防御が有効だ 小さなコウモリに分裂しプレーヤーを苦しめるヴァジュリオン。「イースI」で登場した敵だ エポナは三叉槍に炎をまとわせ、突っ込んでくる


■ 受け継がれるゲームの感触。過去のシリーズをもう一度プレイしたくなる作品

クリスタルを使うことで各フロアの女神像にテレポートできる。塔はかなり高いようだ
塔の外周からは荒れ果てたイースが見える。イースの民がこの地に戻ってこれる日は来るのだろうか
 「イース・オリジン」は塔の中、という限定された空間ではあるが、水で満たされた「水獄の領域」や、巨大な赤熱化した刃が回転する「咎火の領域」などインパクトたっぷりのステージが用意されていて、プレーヤーを飽きさせない。一定時間で戻ってしまう足場にダッシュで飛びつくなど、スリリングな仕掛けもあって、手応えのある「冒険」を満喫できるだろう。

 主人公のユーゴ、ユニカだけでなく、ユーゴを慕う健気な少女ミュシャの想いが彼に届くのか、第3の主人公である「鉤爪の男」の正体など、提示されるストーリーも気にかかるところだ。敵である女戦士エポナは、ユニカに対しては見下したような余裕のあるところを見せるのに、ユーゴに対しては逆にからかわれて怒ったりとストーリーによって全く違う反応を見せるのも面白い。

 加えて本作には、ファンの心をくすぐるこだわりが随所に隠されている。「トバ家のユニカ」という名前を聞いただけで、彼女の子孫が何をしているかを考えてみたり、今に繋がる物語を想像してみたりしてしまう。塔の仕掛け、登場するモンスターなど、思わず「イース」の過去作品を引っ張り出し、プレイしたくなってきてしまうに違いない。シリーズの原点をもう一度見つめ直せるような作品となっている。

 ゲームの感触、という部分では、「ファルコムらしさ」というのを改めて考えさせられた。最初のボスを倒し、逃げた敵の後を追い穴に飛び込んだとき、スタート地点に近いところに落ちる。手には敵が落とした「マスク オブ アイズ」、そして閉じた扉を開くための「青銅の鍵」がある。これを使えば今まで行けなかった場所に行けそうだ……。この時、筆者は最近、再びプレイした「ソーサリアン オリジナル」の感触を思い出した。アイテムを手にして新しい道が開ける、というのはRPGの基本的な展開であるが、その“心地よさ”に、ファルコム作品ならではの受け継がれている“リズム感”を感じたのだ。

 「イース・オリジン」は良質のアクションRPGであるが、やはり「ノスタルジー」が大きなキーワードとなっている。「イース」シリーズがシリーズを重ねるごとにその名とは異なり、「冒険者アドルの物語」になっていったのに対し、本作は伝説の王国イースに再び焦点を当てたところに注目したい。本作を通してもう一度、イースがどのような世界として描かれるか、そして今後この設定がシリーズにどのような影響をもたらしていくか、興味を持って見ていきたいと思う。

塔の入口周辺のフロア。ジャンプの感触や本作ならではのシステムを体で覚えよう
様々な場所に設置されている女神像では、セーブの他、装備やキャラクタを強化する「加護」を受けることができる 「イースII」に登場する聖獣ルー。彼らの話す言葉は現在の所わからない こちらもシリーズのプレーヤーにはおなじみの、隠されたものを見つけ出す「マスクオブアイズ」を使用した画面だ
水の溢れる「水獄の領域」。呼吸が切れないように気をつけなくてはいけない
溶岩が行く手を阻む「咎火の領域」。体力に気をつけてモンスターと戦っていく必要がある

(C) 2006 Nihon Falcom Corporation.


【イース・オリジン】
  • CPU:Pentium III 1GHz以上(Pentium 4 1.3GHz以上推奨)
  • メモリ:384MB以上(512MB以上推奨)
  • HDD:1.8GB以上
  • ビデオカード:ビデオメモリ32MB以上(64MB以上推奨)

□日本ファルコムのホームページ
http://www.falcom.co.jp/
□「イース・オリジン」のページ
http://www.falcom.com/yso/
□関連情報
【12月4日】日本ファルコム、シリーズ最新作「イース・オリジン」
キャラクタイラスト、イメージイラストを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061204/origin.htm
【10月11日】日本ファルコム、WIN「イース・オリジン」
公式サイトをオープン。限定特典はビジュアルブック
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061011/yso.htm
【9月27日】日本ファルコム、「イース」シリーズ最新作
WIN「イース・オリジン」12月21日発売決定!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060927/yso.htm
【9月1日】日本ファルコム、「イース」シリーズ最新作のスクリーンショットを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060901/ys.htm

(2006年12月20日)

[Reported by 勝田哲也]



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