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★海外ゲームレビュー★

トニー・モンタナの活躍がゲームで味わえる
ギャング映画「スカーフェイス」がついにゲーム化

「Scarface: The World is Yours」

  • ジャンル:アクション
  • 開発元:Radical Entertainment
  • 発売元:Vivendi Games
  • 価格:49.99ドル(8,000円前後)
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:10月8日(発売中)



 「Scarface: The World is Yours」は、ブライアン・デ・パルマ監督、アル・パチーノ主演のギャング映画「スカーフェイス」を題材にしている。映画を原作としたいわゆる版権ゲームは非常に多いが、本作では映画のストーリーの"if"に挑戦した意欲的なゲームであり、2年前のE3で発表されて以来、ゲームファンや欧米メディアではかなりの注目を集めていたタイトルだ。

 開発はカナダの独立系スタジオRadical Entertainmentが担当している。このスタジオの代表作としてはアニメ「The Simpsons」を題材にしたゲームなどが有名で、「The Simpsons: Hit & Run」は発売以来600万コピーを販売するという実績を叩きだしており、今後の動向が見逃せないスタジオのひとつである。

 ゲーム内容は「Grand Theft Auto」(以下GTA)を筆頭とするオープンフィールド系のアクションゲームだ。ゲーム内の雰囲気も'80年代の同じマイアミ地域を題材にした「GTA Vice City」に良く似ているが、GTAがオープンワールド系ゲームの元祖とすると、GTAのような世界観の元祖は本作の原作となった映画「スカーフェイス」と言っても差し支えないだろう。

 ちなみに「The Simpsons: Hit & Run」はアニメ「ザ・シンプソンズ」の世界観を題材にしたオープンワールドゲームだ。自由度はGTAや本作などよりぐっと低いが、アニメ版の脚本家を投入するなどファンならずともシンプソンズの世界観に没頭できる優れたゲームデザインセンスがゲームファンから好評だった。

 歴代GTAシリーズの主人公は成り上がりのストリートギャングが多いが、本作の主人公トニー・モンタナの生き様はまさにその代表例と言っても過言ではない。ある意味GTAの本家本元作品とも解釈もできる映画「スカーフェイス」の持つ魅力を果たしてどこまでゲームに反映されているかを見て行きたい。


■ もしトニーが生きていたら……? 原作ストーリーのifにチャレンジした意欲作

 映画は、アル・パチーノ扮するトニー・モンタナがキューバを追放されて、米国マイアミに渡り、コカイン取引で一躍麻薬王としてのし上がるも、売り物のコカインに手を出し、徐々に破滅への道を歩み、仲間だったソーサに裏切られ殺されるまでが描かれている。

 ゲームは映画のストーリーをあえて忠実になぞらず、ifの要素に焦点をあてている。具体的には、映画最大の見せ場であるラストシーンで、トニーがソーサ一味の襲撃をかわし虎口を脱することができたら……? というifの部分と、そこから描かれるその後のストーリーをこのゲームは描いている。珍しいゲームアレンジとなっている。

 プレーヤーは一命を取りとめたトニー・モンタナとなり、自分の命を狙ったソーサに復讐を誓うが、金も地位も全て失ってしまったトニーは心機一転、ストリート時代のコカインビジネスから再び麻薬王としての地位と権力を目指して再挑戦する。この転落人生からの再起というのは非常にわかりやすく、ゲームへの感情移入も半端ではない。

 トニー・モンタナ役の声はアル・パチーノ本人ではなく、別の人物が当てている。そっくり度合はかなりの物なので映画で本作のファンになった方にもきっと満足してもらえる品質だろう。ゲーム中でもスラングが連続するような独特な会話が展開され、日本語字幕が欲しくなるところだ。

 なお、ゲームの紹介に入る前に、まず最初に断りを入れておくと、筆者は北米向けPC版のパッケージを購入してプレイしている。本作は11月20日に1.02のパッチが公開されており、プレイする際は、ゲームインストールした後にこのパッチを適用するようにしてほしい。Direct X系のバグが多く修正されているためだ。

 1.02パッチ適用前はフレームレートが落ち着かず、時にはプレイするのが困難になる位のパフォーマンス低下を及ぼすが、パッチ適用後はかなり改善され、安心してゲームがプレイできるようになる。ローディングも劇的に短くなるため、北米版パッケージを購入する場合はとにかくインストールしておいて間違いがない。

 マルチプラットフォーム展開でPS2/Xboxなどの家庭用ゲーム機向けのインターフェイスデザインが採用されているため、どちらかというとキーボード+マウスよりも、ゲームコントローラーで遊んだ方がしっくりくる場合が多い。ちなみに本作ではXbox 360用の有線コントローラもしくはロジクールのDual Actionというコントローラを推奨している。

 ただし、Xbox 360コントローラではバイブレーションが作動しなかったり、筆者の環境ではパッチ適用前までは使えていたコントローラがパッチ適用後にいきなり使えなくなったりと、不具合が色々残っているようだ。Readmeファイルに一応の注意事項が書かれているので、コントローラでプレイを考えている場合は一読しておくことをオススメする。

 筆者の環境ではコントローラをPCに接続した際、なぜかゲームのイベントが発動せず先に進まなくなるという不可解なバグにも遭遇している。この場合コントローラを抜いて再度ロードを行なえば元に戻るが、非常にトリッキーなバグがまだ多数残っている点は購入時に予め認識しておいて欲しい。

トニー・モンタナ再起の瞬間だ ビジネスパートナー・フィリックスはトニーの数少ない頼もしい仲間だ フィリックスから現状のマイアミの状況説明を受けるトニー
トニーを付けねらう特捜刑事。汚い仕事にも手をつけているようだ 警察に押収された屋敷を取り返した。銃弾の跡が生々しい 静寂に包まれた屋敷の自室で一人これからを考えるトニー


■ コカイン売買から、マネーロンダリングまで。ビジネスマン・トニーの出世術

 ゲームは何とかソーサの襲撃部隊から逃れ、再起を決意したトニーが再びマイアミの地に戻ってきたところから始まる。頼もしいビジネスパートナー、フィリックスと再会を果たし、様々な裏家業の仕事を斡旋してもらう。この仕事で作り上げたコネクションをもとにサプライヤーからコカインを仕入れ、これをストリートにたむろする売人に売りさばくことで資産をつくって行くのがゲームの基本的な流れになる。ギブアンドテイクがモットーなトニー流・出世物語の再始動だ。

 まずマイアミでビジネスをするには移動手段の確保が不可欠だ。落ちぶれたとは言え元麻薬王、移動手段は徒歩よりも車がメインとなる。必要な時は携帯電話で一喝すれば即座に手下が車を持ってきてくれる。他人の車を盗むチンピラみたいな行為はトニーの男気が許さないのだ。車以外にはパワーボートに乗ることができる。マイアミの海を疾走するのは何とも爽快だ。

 麻薬王に返り咲くためには名声(Reputation)を高めなければいけない。フェリックスが斡旋してくれる裏の仕事(ミッション)をこなすと名声が高まっていく。仕事内容は様々で、やばいブツを配達したり、生意気な男をシメたり、ギャングから狙われている男を護衛したり、カーチェイス(あるいはボートチェイス)ありと、飽きさせない。名声が高まればレベルが上がり、ゲームの中で出来る事がどんどん広がっていく。名声を積み上げることはトニー帝国復活に欠かせない重要項目だ。

 名声を高めるには金も必要不可欠だ。裏の仕事を成功させると報酬の代わりにフェリックスがコカインのサプライヤーを紹介してくれる。交渉によってコカインを仕入れ、これをストリートに点在する売人に売りつけることで差益を稼ぐのだ。コカインは仕入価格と末端の販売価格が天と地程も違うおいしい商売だ。それだけに常時命がけの覚悟で望む必要がある。

 金を稼ぐことで、警察に差し押さえられた自宅を取り返せるし、銃弾で穴だらけになった壁を修復し、マイアミの各地区に点在する拠点を買収し、豪華な調度品、素晴らしい車とボート、屈強な手下、表家業のビジネスへの進出など様々な物に投資をすることができる。金を使うこと自体が名声を高める事にもなるのだ。

 なお、コカインビジネスで得た“汚れた金”は銀行でマネーロンダリングをしないと資産としてカウントされない。交渉によって手数料を支払えばキレイな金として正式な資産にすることができる。ロンダリングをしていない金は例えば警察に逮捕されたり、敵に倒されたした場合、全部没収されてしまう。銀行はセーブポイントも兼ねているため、こまめに金を「キレイに」しておく必要がある。銀行は各地区に点在しているので最寄のところで構わない。

 コカインの取引量や取引額、銀行でマネーロンダリングを行なう際の手数料など、金のやり取りには交渉が欠かせない。交渉が失敗すれば命が危うくなったり、必要以上の高い手数料を取られたりするが、うまく行けばより大きな利益にありつける。交渉はキーを押すタイミングによるだけなので、簡単な物ではあるが気を抜くと交渉相手に襲われることもあるので細心の注意を払って交渉に臨まなければならない。

 ストリートギャングの存在もビジネスには重要だ。各地区にはストリートギャングが縄張りを持っており、売人達の後ろ盾になっている。取引交渉に失敗したりすると彼らが出張ってトニーの命を狙ってくる。ギャングとの友好度はGang Heatと言うパラメーターでわかる。この値が高いと常に命を狙われたり、売人に対して有利な価格交渉ができなくなる。

 Gang Heatを下げるには直接その地区のストリートギャングと交渉をするか、売人との取引交渉を成功させ続ければ良い。つまり取引がうまく回転していれば基本的にストリートギャングとも友好的に付き合っていける。もっとも力を蓄え、相手をすることが面倒くさくなったらトニー流にその地区にいるギャングを片っ端から「掃除」してしまっても構わない。

 以上の点を気をつけてうまくビジネスを軌道に乗せることができれば、ストリートの売人相手に直接商売をせずとも傘下の拠点を通じて上がりをせしめ、ソーサ復讐への道となるメインミッションに挑むことができるだろう。憎き敵ナチョ、ガスパー、ディアズ兄弟、そしてソーサをあの世に送るためのストーリーはトニーのビジネス次第だ。

車は買えばすぐに手下が持ってきてくれる マイアミの町並みを疾走するトニー 銀行のマネージャーとマネーロンダリングの密約を結ぶ
マネーロンダリングの料率は交渉で決まる 売人への価格交渉は慎重に 金を稼げばかつての栄光を再び手にすることも夢ではない


■ よーく狙って撃て! ちょっと変わった戦闘システム

 戦闘シーンは、射撃か殴打の2系統があり、武器もそれぞれ銃・金属パイプなど複数種類が用意されている。これらは倒した敵から拾うかストリートにいる武器の売人、ディーラーなどから購入することができる。武器は3種類まで持つことができ、交換や弾の補充は車の後部トランクで行なうことができる。

 本作の戦闘システムでユニークなのは射撃の部分だろう。敵の各ボディパーツにダメージが設定されており、戦闘中に弾が命中した個所が表示されていく。腕・足・頭の他に内臓なども細かく設定されているのがおもしろい。敵を倒すとBallsというパラメーターがアップし、一定数貯まると無敵モードとなるRageモードが発動可能だ。

 戦闘は護衛がついている場合もあるが、基本的にトニー一人vs多数という戦いになるので厳しい場面ではRageをうまく発動させて切り抜けていく必要ある。この弾を撃ち込む場所をプレイヤーが細かく狙えるシステムはなかなか面白く、シューティングの要素を強くすることで他のオープンフィールド系ゲームの戦闘と差別化が図られている。  その他の特徴として用心棒と暗殺者の存在がある。トニーの名声値が上がると雇えるようになり、トニーに代わってストリートギャングに威圧をかけたり、自慢の体力と装備でギャンググループを根絶やしにしたり、邪魔な敵を密かに暗殺することができるようになる。状況に応じて使い分けてうまくゲームを進めると、最小限の被害で最大の効果が狙えるだろう。

 トニーの大きな敵として立ちふさがるのが、警察の存在である。基本的にGTAはタイトルの通り車は盗んで手に入れる物として存在しているが、本作は車は盗む物ではなく、買う物として扱われている。盗む事もできるが、実行した途端に警察の注目フラグが立つ。車は買えば電話一本でトニーの手下が持ってきてくれるため、あえて盗む必要もないという点がデザインとして明確化されている。

 本作では一般の通行人を殺すこともできない。トニーが武器をかまえた瞬間に警察の注目フラグが立ち出し、一定量まで到達すると警官が駆けつける。従ってGTAのような無差別攻撃は基本的にできないようになっている。これはゲームに対する社会への配慮もあるだろうが、やはりデザイン的に必要ないからという意味合いが強いと思われる。

 その他に警察フラグが立つものとしては敵との銃撃戦などはもちろんのこと、事故などがある。例え警察が出動してきても現場からすぐに逃げてしまえば対応は比較的たやすい。また金で警察とのヘイト値を下げることもできる。逮捕されると所持金と武器、コカインなどは全て押収されるので避けたい。普段はまともな市民として振舞う事を心がけよう。

 他のギャングゲームと差別化されている点としては、ランダムではあるが、コカインサプライヤーとの取引時に囮捜査に出くわすことがある。サプライヤーのつもりで話しかけると実は警官で……というパターン。警官に取り囲まれるので一目散に逃げ出さないと即逮捕される。これは出くわすと厄介だが非常にエキサイティングな要素だ。

弾が命中した個所がわかる画期的(?)システム パワーボート同士の戦闘もミッションによっては発生する 車による体当たり戦も当然あり。運転席から銃撃もできる
1対多数によるデストラクションダービーのようなミッションも 落ちぶれたトニーを小ばかにする特捜刑事。いつか復讐を!! 警察の囮捜査に出くわしたトニー、ひたすら逃げるしかない


■ 良質なゲームを殺さないために品質の向上も求む

 GTAを筆頭に、もともとストーリーやキャラクター性の薄かったゲームジャンルだが、本作では映画版のバックグラウンドと知名度を活かした感情移入のしやすさ、主人公トニー・モンタナの強烈なキャラクターが他の同ジャンルゲームとは一線を画している。下手に映画のストーリーを忠実になぞらず、もしトニーが生きていたら?という、その後の”if”をゲーム化した点は原作ファンをひき付けるきっかけでもあるし、ゲームとして自由にアレンジができるので万事都合が良い。

 トニー・モンタナという強烈な個性を持つキャラクターの生き様を描いた本作は、GTAが自由度の高さを目指すあまりゲームクリアの目標が見えにくいのとは対照的に、麻薬王への復活とソーサへの復讐という最終目標がしっかりと定められているため、プレイにしっかりとした達成感と満足感が得られる。GTAよりもむしろ本作の方がプレイしやすいため、オープンワールドゲーム初心者の方には本作の方がオススメできる。

 いわゆるGTAの亜流と呼ばれるタイトルは数多くあるが、スカーフェイスは誰でも知っている映画を題材にしたことで、優れた認知度とプレイに対する敷居の低さを実現させている。映画原作のゲームと言うと、内容に不満のあるタイトルが多い中で、本作は年末発売の大型タイトルとして恥ずかしくないだけのスケールと面白さを持っている。

 ただマルチプラットフォーム展開にした影響かPC版の品質は明らかに問題がある。パッチで致命的な部分の修正対応はされたが、まだまだ不可解なバグが多い。継続的なパッチ対応で潰してもらいたい所だが、今の所手厚いサポートが期待できるかどうかわからない。良作なだけにこの点のみが非常に残念と言える。

 CEROのレーティングが厳格化された現在、麻薬の売買、それに伴う暴力行為などをゲームの重要な要素としているため、おそらく日本語ローカライズ版の登場は厳しいだろう。PC版に限って言えばCESAに加盟していないパブリッシャーから発売される可能性もあるかもしれないが、PCパッケージゲームの国内市場が悲しい程縮小している現在では、やはり発売される見込みは低いと見て良いだろう。英語版でも構わないという熱心なファンにオススメしたいゲームだ。

モンタナレコードを設立すればオリジナルサントラを編集できる ゲーム中に収録された曲はジャンルごとに分けてもかなりの数だ 名声を上げてソーサに復讐する力を蓄えよう
店を買収してトニーの帝国を支える拠点を増やして行く 店主の望みをかなえればトニーのもとに馳せ参じてくる。行動が重要だ トニー・モンタナらしいライフスタイルをゲームで楽しもう

"Scarface The World Is Yours" interactive game (C) 2006 Vivendi Games, Inc. Scarface is a trademark and copyright of Universal Studios. Licensed by Universal Studios Licensing LLLP. All Rights Reserved. Sierra and the Sierra logo are registered trademarks or trademarks of Sierra Entertainment, Inc., in the U.S. and/or other countries. Radical Entertainment is a trademark or registered trademark of Vivendi Games Canada Ltd. in Canada, the U.S. and/or other jurisdictions. "PlayStation" and the "PS" Family logo are registered trademarks of Sony Computer Entertainment Inc. Memory Stick Duo? may be required (sold separately). Microsoft, Windows, Xbox, and the Xbox logo are either registered trademarks or trademarks of Microsoft Corporation in the U.S. and/or other countries and are used under license from Microsoft. All other trademarks are property of their respective owners. A Note to Parents: Scarface is rated R. Consult www.filmratings.com for further information.


【Scarface: The World is Yours】
  • CPU:Pentium 4 2.8GHz以上
  • HDD:2.9GB以上
  • メモリ:256MB以上
  • ビデオカード:128MB以上のメモリを積んだATI RADEON 9200 or GeForce FX 5500以上のVGA

□「Scarface: The World is Yours」のホームページ
http://www.scarfacegame.com/

(2006年12月5日)

[Reported by GameDude]



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