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森氏は2000年にネクソンジャパンに入社し、「風の王国」、「エランシア」、「闇の伝説」、「クイズクイズ」、「タクティカルコマンダー」といったタイトルを、ネクソンジャパンの創業メンバーのひとりとして手がけ、その後は「ストラガーデン」、「XenepicOnline」のプロデューサーを務めると共に、いくつものオンラインゲームのコンサルティングにも関わった経験を持つ。君塚氏は「ストラガーデン」、「XenepicOnline」のディレクターを務め、森氏と共にキューエンタテインメントでもタッグを組んで、今回「メテオスオンライン」、「Angel Love Online」という2本のオンラインゲームを手がけることになった。 インタビューでは、開発側がユーザーにアピールしたかった部分と共に、日本運営の抱負を伺ってみた。また、日本のオンラインゲームを長年にわたって見守ってきた森氏と君塚氏の両氏に、本作を新しいMMORPGとして日本でパブリッシングすることになったか、その経緯と戦略についても伺った。
■ 自由度の高いキャラクタシステム。技法と服装でプレーヤーの個性を主張
Jacky氏: クローズドβテスト時にこちらの予想を上回るユーザーさんが参加し、パンク状態になって慌ててサーバーを増設しました。その後、順調にオープンβに移行できました。かなりの人気を得ているという実感があります。現在でも同時接続者数で4万人を越えていますので、台湾の水準で言えば、かなりいい成績を収めていると言えます。 編: この作品を通してユーザーに対して表現したかったものは何でしょうか。 Jacky氏: 多彩な技法によって、ユーザーが自分のイメージしたキャラクタを、自由に作り出すことができるところです。これが「Angel Love Online」の最大の特徴といえます。しかし、最初は技法の概念だけを紹介していたため、自由度が高すぎてユーザーがとまどってしまうこともありました。このため、14種類の職業のテンプレートを作って技法選択のモデルを提示しました。 ゲームに馴れた時点で技法の交換を行ない、よりこだわった形でキャラクタ像を追求できます。このシステムが、「Angel Love Online」を作る上での、最も最初にできたコンセプトです。他にも様々なシステムがこの作品には盛り込まれています。スタッフと話をして、積極的に色々なシステムを盛り込んで行くようにしました。 編: 開発にはかなりの時間がかかったように思えますが、開発期間はどのくらいでしょうか? Jacky氏: 2005年初頭からですね。2006年の7月にクローズドβテストを始めています。制作期間はほぼ20カ月です。 編: 「Angel Love Online」は最初から他の国へのパブリッシングを視野に入れて開発されていたのでしょうか。 Jacky氏: 最初から日本市場を意識した作品として制作していました。ゲームがある程度できあがった段階で、日本のパブリッシャーを探す活動を開始しました。キューエンタテインメントさんからのお話は、それにぴったり合ったという形です。 日本市場を意識する上で、具体的に参考にしたというタイトルはありませんが、開発スタッフは日本を始めとした、様々な国のゲームをプレイした経験があります。そこからいい要素を取り入れていったという感じです。 編: 日本市場に向けて今後強調していく要素や、追加する要素にはどのようなものがありますか? Jacky氏: キューエンタテインメントさんの要望によって「試着」の機能を追加しました。日本市場を意識している要素としては、なんといっても装備アイテムですね。現在でも着物やセーラー服など、日本のユーザーに興味を持ってもらえそうなものを用意しています。ゲームシステムに関しても、日本の市場に合わせたカスタマイズを行なっていく予定です。 森氏: 具体的な部分に関しては、まだこれからといったところですね。試着に関しては、要望を出してから1カ月かからずに実現した要素です。日本でのサービスはこれから始まりますが、その前からこれだけのスピードで対応していただいたことに大きな期待感を持っています。 君塚氏: 日本でサービスを始める場合は、最初は台湾とは少しバージョンが違うものになりますが、ユーザーの要望を見ながら追加していく予定です。 森氏: 来週実装されるRvRの要素などは台湾でもまだ調整が必要だと思うので、そういった部分でのスケジュールのズレはあるかもしれません。付加的な部分や不具合が生じた場合などを考えて、新要素の同時実装という方向性は現在まだ検討をしているところです。ただ、できる限り速いペースでの実装は考えています。 編: キューエンタテインメントさんは、「Angel Love Online」のどういったポイントを強くアピールしていきたいと考えていますか。 君塚氏: やはり、防御力など機能を重視しつつ、外見は全く違う格好ができる「ペーパードールシステム」ですね。実際の装備と、見た目装備の2つを用意することによって、お気に入りの格好で戦うことができる。この要素は他のゲームにはない特徴です。自分がどう見られたいかを主張できるシステムだと思っています。
他にもサーバーを越えた形でのチャットルームを作ることができたり、コミュニケーション部分が凄く充実しています。フレンドリストやメッセンジャー機能、ゲーム内でのメール機能、ギルドリストなど、今までのMMORPGの良い部分を積極的に取り入れています。低スペックで動作し、様々な点でコミュニケーションが快適に行なえる作品であることは、ユーザーを増やしてくれる大きな魅力だと思っています。
■ 年内には国内で展開、台湾は1月から新エピソード、インスタンスダンジョンを実装
森氏: 運営の方針にもよりますが、クローズドではなく、いきなりオープンでのβテストになる可能性もあります。年内にはβテストを開始する予定です。オープンβで行く場合は、対象人数を絞りません。人気によってサーバーはすぐ足せる状況を作っていきたいと思っています。 編: 日本で展開するにあたり、どのような課金アイテムを追加していきますか? 君塚氏: 追加予定はありますが、具体的なものに関してはまだこれからですね(笑)。季節に合わせたアイテムなどは台湾でもありますが、日本だけの行事に関連したアイテムなども用意する予定です。成人式に合わせて振り袖やバレンタインに合わせたものをお願いしようかなと思っています。 森氏: 元からある要素プラス日本の要望によって「Angel Love Online」をプッシュしていこうと思っています。オリジナルアイテムやクエストによって日本のユーザーさんには楽しんでいただこうかなと。私は実はこの前の作品から君塚とタッグを組んでゲームを手がけていたのですが、「ランドセルと黄色い帽子」や「鏡餅型のマスク」などの日本オリジナルアイテムを制作してもらったりしていました。今後も、ちょっとギャグ要素の入ったアイテムなども入れていきたいと思っています。 君塚氏: ペーパードールシステムはより一層“おバカ”アイテムを入れやすいシステムです。おバカ装備に身を固めているように見えても、実際には高い防御力があったりと、ゲームの進行に何の影響もないところが運営側としてすごくありがたいところだと思っています。 編: 現時点で「Angel Love Online」はかなり充実したシステムを持つ作品ではありますが、日本のメーカーという視点でまだ足りないな、と思っているポイントはありますか。 森氏: あります。たとえば、これから入るRvR要素は必要だと思っていました。それ以外にもこちら側から色々要望は出していますし、開発側も今後も大きなアップデートを考えています。要望に関しては現在も色々ディスカッションをしているところですね。 Jacky氏: 開発側としても日本と台湾のユーザーの意見を積極的に取り入れて、今後もシステムの拡充を図っていくつもりです。 編: RvRの次は、台湾ではどのような要素が実装されるのでしょうか。 Jacky氏: 来年の1月に大規模アップデートが予定されています。目玉となるのはメインストーリーのクエストです。現在は、4つの国にそれぞれ派遣されたプレーヤー達がこの世界を脅かす者達を調査し、強大なボスを倒すストーリーでした。次回のストーリーでは、更に新しい敵がプレーヤー達に挑戦してくるのです。 もうひとつ、「ダンジョンシステム」が大きなポイントとなります。このダンジョンは異次元の空間のような扱いで、インスタンスダンジョンシステムとなり、本作にMO的な楽しさをもたらすものになります。パーティーでダンジョンに挑むことができ、他の人達は入って来られません。そのダンジョンには特別のモンスター、そして特別なボスが待ちうけています。ダンジョンには多彩な種類が用意されています。 編: 現在のところレベルキャップは60とのことですが、新エピソード、新システム追加に伴い引き上げられますか? Jacky氏: はい、上げる予定です。 編: アップデートのタイミングは、1年で何回くらいを考えているのでしょうか。
Jacky氏: 4カ月に1度新しいエピソードを入れていく予定です。ただ、RvRなど新システムの導入はこの予定には含んでいません。エピソードを4カ月に1度入れ込みつつ、新システムも導入していくというスケジュールです。盛り込みたいアイディアはたくさん持っていますので、どういったタイミングで実装していくかは、これから考えていきたいと思っています。
■ ハードルの低い、MMORPGの入門用に位置づけたアピールを
森氏: 私は6年間オンラインゲームにずっと携わってきたのですが、その中には3DのMMORPGもありました。しかし、いざサービスをスタートすると、「遊べない」というユーザーさんが多かったんです。「DirectXって何? RAMって何?」とか特にスペックの部分でユーザーさんはわからない方が多いというのを実感していました。 そこで私は、次に手がける作品は、ユーザーにすぐプレイしてもらえるように2Dのゲームにしたい、というのが出発点でした。そう言った視点で、“E3”で出展されていた「Angel Love Online」を見つけたのです。実際に話を聞いてみると、システムの充実度や、見た目を変えられる「ペーパードールシステム」など、とても日本のユーザーにマッチするな、と思いました。そこですぐコンタクトを取らせていただいて、私が単身台湾に行って、そこから交渉が始まった、という形です。 E3で見た時点では、まだ2Dのゲームを手がけようかどうかは、もやもやとしている部分もありました。「Angel Love Online」を見て、日本に帰ってきて、少し時間がたつうちにそれが確信に変わっていきました。自分が何を手がけるか、という作品に「Angel Love Online」がぴったりマッチした、という感じです。 Jacky氏: 契約に関しては極めて早いペースで進んだと思います。7月から2カ月くらいで契約の話が決まって、9月の東京ゲームショウでは発表していましたから。補足をしておきますと、私たちがキューエンタテインメントをパートナーに選んだのは、提示してくれた企画書がとてもよかった、運営の方法などのノウハウを高く評価したからです。 編: ただ、キューエンタテインメントとしてはMMORPGを手がけたことはないですよね。 森氏: そうですね、実は私がキューエンタテインメントに入ったのも7月なんです。入社と同時にプロジェクトが立ち上げたという形です。私自身は6年間オンラインゲームに関わっているので、その経験をプレゼンテーションでアピールさせていただきました。ユーザーの規模に応じたサポートの実際の作業量、GMを含めたスタッフの数や、プロモーションの展開など、具体的なプランを提示させていただきました。 編: 森さんは、どのように「Angel Love Online」を日本市場で展開していこうと考えているのでしょうか。 森氏: 日本のオンラインゲーム市場は拡大していると言われていますが、たしかにアイテム課金などで顧客単価は上がっていますが、ユーザー数が増えているかどうかは疑問な部分があります。「Angel Love Online」はスペックの低さと、様々な楽しさを持っているMMORPGです。ユーザーにこの作品でキャラクタ育成や、コミュニケーションなどのMMORPGの楽しさを知っていただきたいと考えています。この作品が楽しさを知る“きっかけ”になって欲しいと思います。 この作品から、ユーザーがよりハードコアなゲームに向かってくれてもいいと思っているんです。ギルドや戦いといった要素を知っているコアなユーザーさんではなく、初心者さんに遊んでいただいて基本的なシステムを知って欲しい。もちろんバージョンアップしていく「Angel Love Online」を楽しみ続けていってもいいと思います。 そういった考えもあって、「Hangame」というパートナーを選ばさせていただいたという経緯もあります。サポートをやっているとわかるのですが、「Hangame」のユーザーの多くはオンラインゲーム初心者です。3DのMMORPGはやはりハードルが高いのではないかと感じることが多くありました。だからこそ、2Dで動き、たくさんの要素の詰まった「Angel Love Online」を展開しようと思ったんです。 編: 森さんと君塚さんは数年オンラインゲーム、MMORPGに関わってきたとのことですが、そこから「初心者向け」に戻るというか、こだわるのはどうしてでしょうか。 森氏: 私は数年に1度同窓会を開くのですが、集まる30人位のメンバーの中で、5年前は誰もオンラインゲームを知りませんでした。2年前は5~6人「遊んでるよ」という答えが返ってきました。私の同窓生だから、みんな何かしらPC系のビジネスに携わっている。それでもまだ5~6人程度なんです。まだまだ広げなくてはダメだな、まだまだ広がる余地があるな、と思ったんです。 編: 開発側は、「Angel Love Online」を初心者向けコンテンツとして位置づけているのでしょうか。 Jacky氏: この作品そのものも、初心者を意識して、遊びやすいように作ったつもりです。特に低年齢層のユーザーを視野に入れて作りました。意見を取り入れて、職業のテンプレートを作ったように、現在も日々改良を加えています。 編: 日本のMMORPGの中には、公式ページで必要最低限の情報も提示しきれていないところもあります。初心者向けを考えるならば、マニュアルの配布や公式ページでの情報の提示が必須と思われますが、どういったプランをお持ちですか。 森氏: 逆に公式ページを充実させすぎることには少し疑問を持っているところがあります。ファンサイトを育てるためには、ある程度公式ページをシンプルにする必要があるのではないか。ファンサイトは運営も知らない情報を集めてゲームを盛り上げてくれる。そこにユーザーが集まり、盛り上がる。公式ページで情報を出し過ぎると、ファンサイトの盛り上がりが少なくなるかもしれないと思っています。 パッチの内容はもちろん出していきますが、攻略や生産の細かい仕様などは、ユーザー間の情報交換で解明していただきたいです。ギルドマスターやファンサイトのユーザーを招いて活発な意見交換を行なうイベントなどもやっていきたいと思っています。 編: それでは、最後にユーザーへのメッセージをお願いします。 森氏: 私と君塚が手がけたコンテンツとしては、かつて無いボリュームで、ちょっとキツイかな、という感じなのですが(笑)、心待ちにしているユーザーのために、早くお届けできたらなと。本当に早く楽しんでもらいたいと思っています。
Jacky氏: キューエンタイメンとさんとしっかりと協力してやっていこうと思っています。「Angel Love Online」は遊んでくれたユーザーさんに、深い印象を残すゲームだと思います。一度プレイしてもらえれば、ずっとプレイし続けてもらえるような魅力を持った作品だと信じてます。お楽しみに。
□キューエンタテインメントのホームページ (2006年11月21日) [Reported by 勝田哲也]
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