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★DSゲームレビュー★

がめつい集金と貯蓄が掟の拝金RPG
「もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド」

  • ジャンル:RPG
  • 発売元:任天堂株式会社
  • 価格:4,800円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(9月2日)



 緑色の全身タイツ姿の35歳の中年キャラ「チンクル」となり、ゲーム内の通貨「ルピー」を集めまくるという異色の設定で作られたRPG「もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド(以下もぎたてチンクル)」。どことなく怪しさを放つゲームタイトルと、ニンテンドウ64用ソフト「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」に登場したマップ売りがなぜか主人公に昇格したということで気になっていたタイトルだ。

RPGで35歳の主人公。見た目は別の意味で勇者だが……


 今作はキャラクタを十字ボタン(A、B、X、Yボタンで代用可能)で移動、移動以外のほとんどの操作をタッチスクリーンで行なうというお手軽操作のアクションタイプRPG。最大の特色は、ゲームの目的が「ルピーを集めること」ということ。フィールドを歩き回りアイテムを集めては売却し、困った人がいれば助けて報酬を“ぶんどって”いく。RPGにおいて副次的な要素の「金策」をメインに据えた特殊なゲームとなっている。

 最初の印象は「そんな金策ばかりのRPGが楽しいの?」と疑問に思ったが、実際にプレイしてみると「もぎたてチンクル」は冒険が金儲けに、そして所持金がライフに直結しているところがポイント。アイテムを集めるためにはバトルもしなければいけないし、ダンジョンやボスといったチャレンジ要素もあってプレーヤーを飽きさせない。金儲けを念頭に置きつつも、アクションRPGの基本を抑えた作りのゲームなのだ。


■ 散財は死。ルピーがライフのRPG

 このゲームの目的は、ルピー(お金)を稼いでルッピーランドへ到達すること。そのためには稼いだルピーを泉(タワー)に投げ入れて、タワーを成長させなければならない。つまり、集めたルピーを貯蓄することがこのゲームの目的となる。

 ルピーを効率よく稼ぐには、まずはこのタワーを育てることを考えよう。一定額のルピーを貯蓄するとタワーのレベルが上がり、新しいエリアに行けるようになるからだ。新しいエリアにはマッピングやイベントや新しい素材など、前のエリアよりルピーが稼げるネタが転がっている。

タワーの先端にある泉にルピーを投げ込むことで、タワーがグングンと伸びていく


 所持しているルピーがチンクルのライフということも忘れてはいけない。タワーに貯蓄したルピーは引き出すことができないので、後先を考えずに所持金の多くを泉に投げ入れてしまうと、バトルであっと言う間にルピーが尽きてゲームオーバーになるだろう。後述する用心棒との契約費用など冒険への必要経費を考慮し、ルピーの計画的な貯蓄をすることが必須といえる。また、ルピーはただ敵とバトルをしても少額しか入手できない。

 より多くのルピーを入手するには、アイテムを合成して売却するという方法がある。アイテム作成は、フィールド上に自生している植物や敵を倒してアイテムを入手し、チンクル自宅のキッチンのオナベで作成する。素材となるアイテムをそのまま売るより、自作したアイテムの方が高値で売却できる。また、マップ上に発見したものを描き込んでいく「マッピング」もお手軽にルピーを稼げる。

【アイテム作成】
フィールド上の植物の実はタッチスクリーンを叩いて落とす。収穫したアイテムは一定時間で復活する。複数のアイテムをオナベに入れ、一定時間内にタッチスクリーンをスライドして煮込むことで完成する。アイテムはあきビンにつめて持ち運ぶことができる


【マッピング】
マップ入手後、マップに書かれていない岩や像のある場所を、タッチスクリーンでマルで囲んでいく。マップ屋に見せると高額で報酬が獲得できる


 フィールド上を歩き回るアイテム作成やマッピングは安全で地味な作業だが、堅実にルピーに貯まっていくので、長時間かけてコツコツ遊びたいという人には向いている。根気のない筆者のような性格の人には、後述のダンジョンやボス討伐など一攫千金の方法が用意されている。様々な金策スタイルをセレクトできるわけだ。


■ ぶつかるだけのバトルもルピー次第

 「もぎたてチンクル」のバトルシステムは、フィールド上で敵に接触するだけ。複雑な操作は必要のないオート戦闘となっている。敵とチンクルが接触するとギャグ漫画のケンカの時のような「ケムリ」が立ち上り、バトルスタート。その後はオートでバトルが進み、バトルに勝利すれば敵はルピーかアイテムに変わる。バトル中は一定時間でチンクルのルピーが減額され、所持ルピーが尽きた時点でゲームオーバーとなる。

バトル前に所持ルピーと折り合いをつけ、戦うか逃げるかどうかを決めよう。また、バトル中に「応援」ができる。タッチスクリーンでバトル中の「ケムリ」をトントンとタッチして応援することで、バトルを早く終わらせることが可能


 今作のバトルで面白いのが、一度のバトルで多くの敵を巻き込めることだろう。より多くの敵を巻き込むことで、バトル後に出現するルピーやアイテムの数が増える。バトルのダメージを相殺できるように敵が集まるまで待ってからバトルをスタートする、もしくはバトル中も十字ボタンで移動ができるので、近くの敵をうまく誘導して「ケムリ」に巻き込むのも重要だ。

 チンクル自体にはレベルやステータスといった成長要素や、武器や防具のようなパワーアップアイテムもない。そのため、戦闘に参加してくれる用心棒を雇用して強い敵と対抗することとなる。性能の高い用心棒と契約するためには、高額のルピーが必要。

 用心棒との契約が成立すると、チンクルの後を用心棒がついてくる。敵に直接ぶつけて戦闘させることや、チンクルの戦闘の煙に用心棒を巻き込みダメージの軽減を狙える。つまり、用心棒は一般的RPGの武器にも防具にもなってくれるというわけだ。

 用心棒のライフはルピーではなく、「ゼルダの伝説」と同じくハートで表示される。用心棒のライフが尽きた場合、再契約料としてルピーを支払うことでその場で復活する。他人の命もルピー次第というというわけだ。ルピーさえ積んで強い用心棒を雇うことで、バトルで苦労することはなくなる。

用心棒は用心棒サロンで雇用可能。雇えるかどうかはルピー次第だ。用心棒をタッチして、タッチスクリーンをスライドすることで移動先を指示することもできる
筋肉質の巨漢、女剣士などタイプはさまざま



■ ゲームにアクセントを加えるダンジョンとボスキャラバトル

 このゲームの冒険においてただ1つ、マネーパワーが及びにくい部分として挙げられるのが、ダンジョンやボスの攻略だろう。

 ダンジョンには一定量のルピーを納めないと開かない入口など、ルピーの絡んだ「しかけ」もあるが、「ブロックを押して移動させ、扉開閉スイッチの上に置く」といったパズル要素のものがほとんどだ。一部を除き、ヒントをルピーで買うこともできないので自分の頭で「しかけ」を解く必要がある。

 ボスとのバトルもルピーがあれば勝てるというわけではない。ダンジョンの奥に居る巨大ボスは通常の「ケムリ」に巻き込むバトルではなく、ボスごとに様々な対決方法が用意されている。ボスごとの攻略パターンを発見する楽しみがあり、ゲーム中の重要なアクセントといえるだろう。

 ボスを倒すと大量のルピーが降り注ぎ、それらを回収することで高額のルピーを入手できる。一攫千金を狙うのであれば、ダンジョンをクリアするのがベストだろう。

多層の迷宮であるダンジョン。後半に行けば行くほど「しかけ」の難度も当然上がる


昆虫王オオガネムシ。風船で宙に浮いたチンクルが、爆弾を投下して弱点を狙う キャプテン・スタルフォスとのバトルは名作ボクシングゲーム「パンチアウト」を模した背景デザイン



■ 情け無用の「交渉」がクリアへの近道

交渉に入ると数字ボタンが出現。プレーヤーの予想する金額を入力する
 今作で頻繁に直面するのがルピーをやりとりする「交渉」。「交渉」はアイテムを売るときや報酬をもらうとき、情報量を払うときなどに希望するルピーの金額を入力し、その折り合いをつける方法だ。話を聞くだけでもルピー次第というシビアな世界だ。

 「交渉」の時、交渉相手が納得するルピーの額は画面に表示されないので非常にスリリングだ。例えば、相手に要求する報酬の額が大きすぎる場合「それ、高いわ」と支払いを拒否されてしまう。相手から情報などを買う場合でも、額が少ないと話を聞かせてもらえないことがある。基本的に支払ったルピーは戻ってこない。そのため、最悪の場合はルピーを出し惜しみしたばかりに、ルピーだけを取られて何ももらえないという悔しい思いをすることもある。

入力が終了すると正否判定。結果が出るまでの間に緊張が走る。失敗した時は相手の台詞に注目。「ちっとも足りない」なのか「もう一声」なのかをおおまかに判断できる


 誰でも、人道的には弱者からルピーを巻き上げるようなことはしたくないだろう。だが、体裁を取り繕っていたのでは、何かと出費が多い今作では中々ルピーは貯まっていかない。支払い額は底値ギリギリまで値切り、例え相手がヨボヨボの老人だろうと報酬は上限いっぱいまでふんだくるというマネーの鬼に徹する必要がある。

 筆者が報酬を老人から受け取る際、「お年寄りからふんだくってもなあ……」と良心の呵責から要求額をかなり低く設定してみた。ところが交渉相手の態度は「アンタいい人じゃん」と好印象だったが、それだけで終わってしまった。その後、報酬で貰い損ねた分をアイテム作成でコツコツと稼がねば、タワーを次の段階に育てるまでに相当の時間がかかってしまった。拝金主義に徹底しているともいえるが、プレーヤーの良心が報われるようなシステムがあってもよかったかもしれない。


■ この世界観はチンクルでなければ成り立たない?

 35歳のいわゆる“おっさん”がプレーヤーキャラという状況は、ゲームスタート当初は「これ、何の罰だろう」と何度に思ったものだ。だが、ルピーを拾い集めては不気味な笑みを浮かべ、小憎たらしいほどキュートなポージングをするチンクルに次第に疑問を抱かなくなってくるから不思議である。キモカワというか、オヤジキャラの哀愁は不思議なパワーがある。

 そして、チンクルでないとこの拝金ゲームの主役は務まらないだろう。「ゼルダの伝説」のリンクもルピーを拾い集めるが、村人に報酬をせがんだりはしない。そんなことをすれば十数年かけて築いたリンクのキャラクタは一瞬で崩壊してしまうだろう。

 だが、チンクルが村人の足下を見てお金を巻き上げようと、目の色を変えてルピーを追いかけていても、「全身タイツ野郎だから当然」として自然に受け止められる。元から狡猾そうなキャラで見返りを求めるチンクルだからこそ、「お金がすべて」という今作の主人公として成立しているといえるだろう。キャライメージを逆手に取ったプランナーには敬意を表したい。

オヤジだからこそできることがある。勇者とか10代の若造には勤まらないだろう


 筆者はゲームクリアに40時間ほどかかってしまった。もっと「交渉」でギリギリまでルピーを巻き上げれば、こんなにクリアまでの時間はかからなかったとは思う。全編を通して感じたことは、終始一貫して「ギブアンドテイク、大人の世界は金で解決」という拝金主義で人道的なイベントが少ないという点だ。小さなお子様が今作をプレイした時、どのような心証を与えるかが心配に思うところではある。まあ、「こんな変な大人になりたくない」と思うだろうが(笑)。

 異色の設定のファンキーなゲームが大好物の筆者としては、非常に満足できる内容だった。元は「ゼルダ」に出ていたキャラクタのゲームだけあって、そこかしこに「ゼルダっぽい音」や「ゼルダっぽいグラフィック」が用意されている。そんなゲーム内の「ゼルダ」へのオマージュを発見するゲームオヤジは、チンクルと自分の姿を重ね合わせメロウな気持ちになれるはず……これは喜ぶべきことなのだろうか?

(C) 2006 Nintendo

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□vanpoolのホームページ
http://www.vanpool.co.jp/
□製品情報
http://www.nintendo.co.jp/ds/achj/

(2006年9月25日)

[Reported by 福田柵太郎]



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