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東京ゲームショウ2006・基調講演、久夛良木健SCEI代表取締役社長兼CEO
「プレイステーション」が創り出す夢……いま始まる

9月22日 開催

【プレイステーション 3】
11月11日 発売

価格:49,980円 (HDD 20GB)、オープン価格 (HDD 60GB)

電撃的にプレイステーション 3 HDD20GBモデルが49,980円で発売されることが発表された
 東京ゲームショウ2006の初日が始まると同時に開催された「TGSフォーラム」の基調講演。話題のニューハード「プレイステーション 3」について株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの久夛良木健代表取締役社長兼CEOがなにを発表するかに注目が集まり、会場はアリの這い出る隙間もないほどぎっしりと埋め尽くされた。

 基調講演では冒頭にプレイステーション 3の映像を流し、「リッジレーサー7」、「バーチャファイター5」などの圧倒的な迫力の映像を披露。そこからコンピュータエンタテインメントの全体像について久夛良木健氏ならではの技術者としての見解を示した。

 ゲームユーザーとして直接気になる情報としては、基調講演後に行なわれたトークセッションで発表された。ひとつはHDMI端子。モデレータとして登場した日経BPの浅見氏の質問に「皆さんいります?」と会場に向かって問いかけた。久夛良木氏は自身の好きなオーディオを例に引き出し「先日オーディオ関係の方から『HDMIでなければ最高のデジタル音楽は再現できない』と言われました」と語り、「実は11月11日に購入してパッケージを開けたら『あれ、HDMI端子が付いてる!!』としたかった。ですが質問されたので、この場で発表します。HDD 20GBにもHDMI端子を付けます」と宣言。発売直前のこの時期の発表に会場はどよめいた。

 久夛良木氏は「E3で発表した当時は、ディスプレイも未対応で規格も動いていて、余計な機能を搭載してまた怒られそうだったが、E3以降に各テレビにもHDMI端子が搭載され、ディスプレイもフルHDに対応してきた。思ったより早く普及しそう。普及自体がもっと早まると思い、HDD 20GBにも搭載することを決めた」と経緯を説明した。

 さらに浅見氏は「(PS3は) 高いという意見もある」と切り出した。これについて久夛良木氏は「価格の決定は、最初、米国で決定し500ドルだろうと決めた。一部ではそんなに安くていいのかという人もいたが、日本では高いという声が治まらない。次にユーロで決定したのだが、490ユーロだろうと。他の通貨で決定して、そこから日本の価格を決定した。しかし価格が高ければ (結果的に売れなければ) 我々の夢も実現できない。なので、日本でも5万円を切る……49,980円とします」と発表。ここでは大きな拍手を持って迎えられた。

 価格が下がったことはゲーム機としての価格レンジに落ちてきたことを意味する。そう言った意味では、今回の価格改定はPS3をゲーム機として販売するという意味づけと受け取れる。

 先日SCEIは量産体制の確立が遅れていることを明らかにしたがその点については、「エンジニアは斬新なことがしたい。その中でこういったことになった。取り戻すべく皆で頑張っている」とコメントするに留まった。さらに「プレイステーション 4」についても話題が及んだが、「プレイステーション 3も発売されていないのに、PS4の話ではたまごをぶつけられそう。ネットの向こう側にCELLが集積されていてそう言ったコンピュータの姿がプレイステーション 4なのかもしれない」と結んだ。

基調講演ではプレイステーション 3だけに留まらず、コンピュータエンタテインメントの大きな展望について語った久夛良木健代表取締役社長兼CEO 後半のトークセッションでは日経BPの浅見直樹氏をモデレーターにプレイステーション 3 20GB版にHDMI端子を搭載することと価格を49,980円とすることを発表した


 トークセッションではこういったプレイステーション 3の発売に直接結びつく話題となったが、基調講演は「PS3が創る次世代のエンタテインメント」と題し、エンジニアとしての久夛良木氏が描くコンピュータエンタテインメントの今後の姿を提示した。

 久夛良木氏はプレイステーションの登場から「どれだけのイノベーションがあったのか」と振り返り、PCが桁を超えて進化を続けていることを数値を示しながら説明。「コンピュータサイエンスのみが享受してきたパワーが一気に解き放たれた」という、その進化の果てにあるプレイステーション 3を「まもなく2カ月後にお客様に届けられることはうれしい」と語った。

 ここで久夛良木氏は「ネットのこちら側からあちら側 (サーバー側) にいこうとしている」ネットのトレンドを説明。「ギガビットでも初代プレイステーションのバンド幅にも達していない」と未だ発展途上であるとしながらも今後の展開として、データをサーバー側で持ち、ユーザー側から自由にアクセスするという時代が来ているとした。

 こうしたときにゲームはどう変わるのだろうか? 久夛良木氏は「『グランツーリスモ4』などでは制作者がデータをコツコツと制作している。PS3ではハードディスクを搭載しブラウザも標準搭載しているので、ユーザーが近所の風景や周りのデータをみんなでアップしていくことが草の根的に広がれば、そう言ったデータを(ゲームの中で)使用して、リアルな世界を歩き回ったり車で走ることもできるかもしれない。いまは信じられないかもしれないけど実現できる。これはドラえもんの『どこでもドア』に近いのではないか」とそう言った時代がもうそこまで来ていることを示した。データの制作から解放されたゲーム制作者はその方向性をアートやゲーム性に向けるべきであると久夛良木氏は言う。久夛良木氏はコンピュータエンタテインメント業界のミッションとして「ユーザーを楽しませること」を掲げ、そう言った方向性にパワーは使われるべきとした。

 サーバー側にデータを置いてクライアント側でエミュレートするといった具体的な話題にも触れ「プレイステーション 3ではPSやPS2のエミュレート機能を持つ。サーバー側からデータを送り体験することができる。メガドライブなどもエミュレートしてたのしめる。このほかのプラットフォームについても許諾いただいて楽しんでいただきたい」とネットを使ったサービスの一端を明らかにしている。

 さらに店頭の試遊台についてもネットでつなげることで最新の体験版の配布が可能となり、「街角テレビのように宣伝に使用することもできる。さらに少額課金も可能であるためアーケードのような楽しみ方や新しい楽しみ方を創出することもできる」と販売店側に提案しているという。

 こうした時代におけるビジネスのチャンスについても触れ、前述のような各種データとユーザーをマッチングすることでいままで見逃されてきた販売機会を捉えることができると説明。エンターテイメント業界だけには留まらない大きな市場を創出するチャンスであるとした。

 久夛良木氏は最後に「パッケージメディアの時代には考えられないライブなエンターテインメントの時代がいま始まる」と宣言。「これからの10年に起こることのほうがこれまでの10年より楽しいと思う」と締めくくった。

【基調講演スライド】
プレイステーション発売から12年。これまでの10年に大きなイノベーションが多数あったと言いながらも久夛良木氏は「これからの10年が楽しみ」と今後10年が期待感あふれる10年であると語った 「グランツーリスモ」の制作について各地のコースにおいてロケハンを行ない、車のデータをCADからおこしていると説明 世界中で難病のDNA解析を早めるために、ネットワーク上のコンピュータをつかい解析を行なう「Folding@Home」という例を挙げ、「プレイステーション 3でもこういったことができれば」と語った(開発機材の一部ではすでに実現させているという)


□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□プレスリリース
http://www.jp.playstation.com/info/release/nr_20060922_ps3_hdmi.html

(2006年9月22日)

[Reported by 船津稔]



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