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会場:昭和女子大学
沖田氏は'90年にコナミに入社。学生時代は機械工学を専攻しており、セガの「アウトラン」のような体感ゲームを作りたくて入社したという。以降、KONAMIの様々なアーケードタイトルに関わり、現在はネットワークへの意欲も見せている。講演ではアーケードの歴史を語りながら自身のタイトルの開発秘話も披露。沖田氏のアーケードゲームに対する熱い想いの感じられる講演となった。
■ “制約のない楽しさ”を追求して生まれたKONAMIのアミューズメントゲーム
沖田氏は最初にインベーダーブームから始まるアーケードゲームの進化の歴史を紹介。その中で自身の「DDR」の開発秘話を公開した。音楽ゲームのブームの前には、「アルペンレーサー」などの、“体感スポーツゲーム”のブームがあった。沖田氏も体感スポーツゲームを作っていたのだが、「ある日突然」ユーザーが体感スポーツゲームをプレイしなくなったという。これにはさまざまな理由が考えられるが、沖田氏自身も本当の理由はわからないという。 その影響を受け、沖田氏自身のプロジェクトも中止となった。仕事が突然なくなり、自ら企画を作り出さなくてはならなくなった。チームの1人が「『ビートマニア』がヒットしているが、これを体全体でプレイできればどうか」と発言。そのアイデアを考えてみると、それはまさにダンスになる。「人前でダンスなんかするか?」という社内の声も上がったが、沖田氏のチームは廃材を使ってモックアップを作成し、ゲームは「ビートマニア」をカスタマイズし、プレゼンテーションを行なった。その結果、「DDR」が市場に出ることになり、音楽ゲームのブームが生まれることになる。 KONAMIのガンシューティング「リーサルエンフォーサーズ」はKONAMIのアメリカの開発者が、アメリカ市場を意識し作成した。市場を意識してゲームを制作する場合、その市場のことをきちんとわかっている開発者の感性が必要だということを沖田氏は学んだという。 「ダービーズオーナーズクラブ」からスタートしたオンラインのアーケードゲーム。その流れを受けて沖田氏はKONAMIが取り組むオンラインゲームとして、「麻雀」を提案する。沖田氏は麻雀の持つ「ゲーム性」を高く評価しており、このゲームをゲームセンターの中心に置きたいと常々考えていた。それまでは麻雀ゲームは脱衣モノなどとセットとなっていて、ゲームセンターの隅が定位置となっていた。 企画を出すと社内で多くの反対意見が出た。「麻雀は古い」、「今はPCでネットワークを通じて家庭でネットワーク麻雀ができる」、「1プレイにお金はいくら取っていいかわからない」……反対意見には説得力があったが、沖田氏は最終的に「ゲームの面白さは理論じゃない! まずやってみればわかる」と「麻雀格闘倶楽部」を制作する。筐体も8人プレイができる大きなものだ。沖田氏は「ゲームセンターの中央に置くためにわざと大きくした」という。 制作された「麻雀格闘倶楽部」はロケテストを繰り返してバランスを修正していった。プレイしている人の表情、声、仕草を見て、ゲームの持つ方向性を決めていった。ロケテストの後はゲームセンターが閉店してからスタッフで集まり議論をくり返した。そして完成した「麻雀格闘倶楽部」は大きな人気を博した。
リリースしてから沖田氏が得た実感は、「家庭でのネットワークの麻雀ゲームは敷居が意外に高い」ということだ。インターネットをしていなかった人にとって、PCを使って、ネットワークに接続して麻雀ゲームをするのはまだまだ難しい。また、家でゲームをしようとすると家族の目が気になることもある。「麻雀格闘倶楽部」はこうしたユーザーに支持されている。アーケードでのネットワーク麻雀ゲームは今までにないユーザー層を開拓したのだ。
■ ネットーワークがアーケードゲームにもたらす新しい可能性
アミューズメント施設もまた変化する。現在、店舗は総数は減っているものの大型化が進み、機器の収益は上がっている。アミューズメントスポットは今後ゲームが好きな人のコミュニケーションの場になっていく方向性と、家族で楽しめる場所になっていく。それぞれがそれぞれの“絆”を強くしていくような場所となっていく。 最後に沖田氏は、「ゲームセンターというビジネスは最初アメリカで生まれました。しかし、アメリカや欧米は衰退していく傾向にあり、日本や台湾、韓国などで定着しつつある。不良のたまり場というレッテルを貼られたり、規制が入ったりと日本のゲームセンターはいくつもの危機を、改革して行くことで乗り切ってきた。アーケードゲームは家庭用のゲームよりもはるかに“制約”というものがない。日本ならではのアーケードゲームを、家庭用ゲームと同じように世界に広めていきたいと思っています」と語った。
「理論と感性の両輪こそが新しい遊びを生み出す」というのは講演の中で沖田氏が繰り返し語っていた言葉である。廃材からモックアップを作り出すなど、プログラムだけでなく、筐体ごとゲームのシステムごと作り出していった沖田氏の言葉には、力強いものが感じられた。また、日頃からネットワークゲームに慣れ親しんでいる筆者にとって「ネットワークの敷居の高さ」という視点は、今回の講演で改めて考えさせられるものがあった。新ハードや新しいOSでPCやコンシューマは次世代へとシフトしつつあるが、アーケードゲームもまた大きな変化を迎えているということを強く感じさせられた。
□CESAのホームページ (2006年8月31日) [Reported by 勝田哲也]
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