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★PCゲームレビュー★

遅れて登場した「Quake」キラー
11年の歳月を経てようやく公開!!

「Prey」

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Human Head Studios / 3D Realms
  • 運営元:2K Games
  • 価格:39.99ドル(実売6,000円前後)
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:7月11日(発売中)



 「Prey」は、「Duke Nukem 3D」や「Shadow Warrior」などで一躍FPSゲーム界の名門として名を上げたデベロッパー3D Realmsが「Duke Nukem 3D」に続くタイトルとして開発を進めてきたタイトルだ。ちょうどDOSからWindowsへのプラットフォーム移行初期の'95年に初めて公開された際には「Quake」キラーともてはやされ、数多くのFPSゲームファンの期待を集めていた。

 しかし、ある日突然、開発進捗に関して音信が途絶えてしまい、事実上開発を中止したものと思われていた。しかし2005年のE3にて突如Human Head Studiosが開発し、3D Realmsがプロデュースという形で本作が2K GamesよりPCとXbox 360で発売されることが発表された。

 開発が途絶えた理由は3D Realmsのサイト中にある記事を見る限り、主要なスタッフが次々とプロジェクトから去っていったことが原因にあるようだ。まず、「Prey」のプロジェクトを引っ張ってきたTom Hall氏が去り、代わってリードデザイナーを務めたPaul Schuytema氏と、リードエンジンデザイナーを務めていた故William Scarboro氏が'98年に3D Realmsを去ったことが決定打になった。そして2000年に「Prey」の開発プロジェクトは一旦停止になったようだ。

 さて、新生「Prey」の開発を担当したのはHuman Head Studiosだ。2001年後半から地道に開発を続けていたこのスタジオは、PCゲームファンにはバイキングが活躍するアクションゲーム「Rune」や西部劇FPS「Dead Man's Hand」を生み出したデベロッパーとして記憶している方も多いだろう。筆者もお気に入りのゲームスタジオだ。

 3D Realmsとの関わりは独立系デベロッパーが集まって生まれたパブリッシャー「ギャザリングオブデベロッパー(以下GOD Games)」の関係からだろう。GOD Gamesは、Human Head Studios、Ritual Entertainment、Poptop Software、Terminal Realityなど数々の秀作を生み出せるキャパシティを持ったデベロッパーが結集したものの、やはり寄り合い所帯だったのが原因か、後にTake two Interactiveにまとめて買収され、2G Gamesなどと並ぶTake twoの1ブランドとして現在に至っている。

 「Duke Nukem Forever」と共に「なかなか出ない」ゲームの代名詞的存在でありつつ、潜水艦のごとく突如浮上してきた本タイトルの裏には色々なドラマがあったようだ。ゲームレビューにおいて本来はこのようなバックグラウンドは不要かもしれないが「出ないんじゃないかと思われた物が出た」と言う現在のゲーム業界では珍事であったこと、3D Realmsが、それこそ10年以上開発中と言っている「Duke Nukem Forever」もいつか出る日が来るかもしれないなという期待感を改めて込めるために前置きさせていただいた。


■ 約11年の歳月を経て登場した「Quake」キラー

敵性エイリアンとの初戦闘
 「Prey」の主人公はチェロキー族のネイティブ・アメリカンの青年である「トミー」だ。彼は自分の出自がネイティブ・アメリカンである事を忌み嫌っており、生まれた土地にしがみつかず、より大きな世界に出たいといつも考えていた。しかし、ガールフレンドの「ジェン」や祖父の「エニシ」はチェロキー一族の考えを第一にしており、一族が代々生活をしていた土地から離れようとは全く考えていない。

 ゲームはジェンが働く酒場で、トミーがいつものように不満をぶちまけているところから始まる。話の途中で、突然上空から眩い光が現われ、辺り一帯にある物を次々と吸い込んで行く。トミー・ジェン・エニシの3人もあっというまに地球の軌道上にあるエイリアンの住む小惑星に連れてかれてしまう。

 この小惑星は「スフィア」と呼ばれ、そのものがひとつの生命体となっている。スフィアは餌を求めて宇宙を移動し、運悪く新しい餌場として地球が選ばれた。スフィアの中にはかつて他の惑星で吸い込んだ無数のエイリアンたちが棲息しており、スフィアと共生している種族(つまり、プレーヤーの敵だ)もいれば、スフィアの共生を受け入れず、故郷に帰るべく内部施設の破壊などのレジスタンス活動を展開している種族もいる。この反抗している集団は「ハイダー」呼ばれているようだ。

 トミーは、スフィアで生き別れになったジェンとエニシを探して地球から遠く離れたこの場所で未知のエイリアンと壮絶な戦いを繰り広げる事になる。

主人公、トミー トミーの祖父、エニシ ガールフレンド、ジェン
上空から宇宙船が!? 宇宙船は次々と物を吸い込んでいく 気づくと宇宙船の中で拘束されていた!
エイリアンとの遭遇 この人物は……? 敵には見えないが 生体と機械が混在する世界だ
天地が逆転している!? 捕獲されたジェンを探せ!! 囚われの身となったエニシ


■ チェロキー族伝来の「スピリット」パワーを駆使しよう!

肉体は失っても魂は生き続けるエニシ
トミーの味方、鷹のタロン(霊体)
 プレーヤーが操るトミーは、ゲームを進めていくうちに祖父エニシがエイリアンの犠牲になる瞬間を目撃し、身体に眠っていたチェロキー族の血が蘇る。ゲーム中、トミーはチェロキー伝来の地に度々飛ばされ、そこで死してもなお魂としてこの世に存在し続けるエニシの導きにより、様々なスピリットパワーをトミーは手にする。これらのスピリットパワーはゲームを進めていく上で重要な役割を持っている。

 1、幽体離脱

    自らの身体から魂を解放し自在に動き回ることができる。また、チェロキー族伝来の弓を使い、スピリットパワーを使った攻撃も可能となる。魂のみの状態では攻撃をこちらから仕掛けるまでは敵に気づかれることはなく、バリアなど実体の状態では通れない場所も歩けるようになるため、状況に応じて幽体離脱をして解いていくパズルなどがゲーム中にいたる所に用意されている。

 2、タロン

    トミーの道先案内をしてくれる頼もしいタカの精霊。ゲームを進めるにあたって様々なヒントをくれたり、トミーの攻撃を支援してくれる。複数の敵に囲まれた際にはかなり助かる存在だ。

 3、死の世界
    このゲームのユニークな特徴として、トミーが死んでもゲームオーバーにならないという点が挙げられるだろう。トミーが体力尽きて倒れると魂が彷徨う、いわゆる「あの世」に連れて行かれる。一定時間でトミーの魂があの世から現世に戻り、死んだその場からゲームを再開できるのだが、生き返るまでの間、この世界を回遊しているクリーチャーをチェロキーの弓で倒すことで、体力とスピリットパワーを再チャージさせることができるのだ(赤いクリーチャーは体力を、青いクリーチャーはスピリットパワー)。このミニゲーム的復活ルールに伴い、ゲーム全体の難易度を引き下げ、間口を広げることに成功している。
 プレイ中、急に進めなくなったりした時は、スピリットパワーを活用して切り抜けることが多い。ゲームオーバーを無くし、その場で復活できるという試みはプレーヤーの「やる気」を損なわずにゲームを続行できる効果を持っている。Xbox 360のようなビデオゲーム機でプレイすることを想定した配慮かもしれないが、面白い試みだ。

魂になれば炎の壁も移動できる チェロキー族に伝わる武具を授かる チェロキー伝来の聖地
あの世はミニゲームで切り抜けていく 魂だけになればどこにだって行ける タロン(タカ)がいればエイリアン語も地球語に自動翻訳


■ カスタム版「DOOM 3」エンジン採用の古典的ランボータイプFPS

これは敵ではなく体力回復装置。かなりグロテスクだ
エイリアンの食料用に加工された人間の姿も
様々な場所に転移して戦うことになる。大型エイリアンとの戦いも
重力反転がこのゲームの最大の特徴だ
 「Prey」は、往年のFPSユーザーを歓喜させる正統派FPSゲームだ。襲い掛かるエイリアンを、武器とチェロキー族に伝わる特殊能力で打ち倒し、生き残ったジェンを救うという「DOOM」から連綿と続く古典的ランボータイプのゲームデザインとなっている。

 ただし、単なる「撃つだけ」の要素だけではなく、「Prey」の特徴たらしめている要素が、「重力」と「パズル」だ。戦いの舞台となるスフィアの中には「ウォールウォーク」と呼ばれる重力を発生させる壁が張り巡らされている。このウォールウォークを歩くことで天地が逆転することがある。基本的に迷うような要素はないが、プレイしているとしょっちゅう画面が逆転するので、3D酔いの激しい人は要注意だ。

 また、重力場を変更する装置もスフィア内には無数に存在する。この装置を使い地面となる部分を変えていくことで先に進むような要素もある。重力の反転を利用したステージ構成とパズルは各ステージの至るところに施されており、戦闘だけの単調な展開に変化をつけることに成功している。これにより、ゲーム性をより豊かにしてくれている。

 重力反転と共に面白いのがポータルだ。ゲームはこのポータルを次々に潜り抜けて行くことで進めていく。敵が作り出したポータルをくぐることもあるし、パズルを解いてポータルまでたどり着くケースもある。基本的に一本道なレベルデザインだが、このポータルによってレベル中のあちこちをさまようことになる。

 ゲームエンジンには「DOOM 3」テクノロジーを採用しているが、同じエンジンを使っている「DOOM 3」や「Quake 4」に比べると全体的なパフォーマンスや、画面の明るさ、ローディングの速さなどは改善されており、細かいチューニングが施されている。同時発売されたXbox 360版のフレームレートはどうやら30FPS固定のようで、プレイの快適さを取るなら今回ご紹介しているPC版の方が、各種設定も豊富でオススメできる。

 ちなみに筆者が使っているPentium 4 2.56GHz、メインメモリ1GB、GeForce 6800、ビデオメモリ256MBというかなり古い組み合わせのPCでも、1,024×768ドット表示で、グラフィックス設定をデフォルトの状態であれば、かなり快適にプレイすることができた。現世代のFPSゲームの中ではダントツに軽い部類に入るのではないかと思う。

 ゲーム展開としては他の「DOOM 3」テクノロジーを採用したゲームと似通っており、ステージを勧めて行くうちに中ボスとの戦闘があり、最後にトミーの宿敵となる「スフィア」本体と戦うことになる。ストーリーラインはランボー系FPSゲームにしてはありがちながらよく練られている方で、中でも主人公(トミー)がよく喋るのがおもしろい。

 トミーの口調も最初のうちは、スフィア内部の生命体と機械が一緒になった光景や、生態改造された人間の成れの果て、無残な死骸や凶悪なエイリアンを、気持ち悪がるような内容が多いが、だんだんと戦闘が激しくなってくると「DUKE NUKEM」ばりの過激発言が飛び出してくるのがなかなかユニークだ。

 トミーはジェンを探すうちにスフィアとは一体どういう存在なのか、スフィアの中には敵だけではなく味方となるエイリアンも存在するし、エイリアンから逃れた人間も潜んでいるということに気づく。会話は全てボイスオーバーによって行なわれ、字幕は表示されない。これは日本人プレーヤーには若干厳しい仕様だ。特に「ハイダー」と呼ばれるスフィアとの共生を拒否したエイリアンとの会話は、ゲームのストーリーを知るための肝となる部分だけにかなりの英語力がないとストーリーを掴みづらいだろう。

 武器は基本的に実体の時はエイリアンから奪取した武器を使う。生体兵器のようで武器自体もなかなかグロテスクだが、内容は一般的なFPSゲームに出てくる武器と同じような効果のものばかりなので安心していただきたい。ライフル銃は撃ちつくした後一定時間経過すると、最低限のエネルギーが自動充填されるようになる。

 スピリットモードになっている時は、チェロキー族の弓が唯一の武器となる。一発撃つごとにスピリットパワーを消費する。パワーは敵に攻撃を受けたりしても減るため、ふんだんに使う訳にはいかないが、ヘッドショットを狙うと敵を一撃で倒せるほどの威力を持っている。また、スピリットモードの攻撃しないうちは敵にバレないという特性を活かして、先の展開を偵察&先制攻撃を仕掛けたりすることも可能だ。

 また、「Prey」における残虐表現は最近のゲーム中では天下一品と言っていい。個人的には「Quake 4」を超えたと思う。「怖い」という表現ではなく「気持ち悪い」という表現の残虐度合を見ると、世界最高レベルのゲームだろう。ある意味「DOOM」シリーズが持っていた気味悪さに通じるデザインで、正統後継である「DOOM 3」よりも「Prey」の方が世界観、雰囲気共に「DOOM」らしさがにじみでていると言っても良いかもしれない。

 個人的に筆者はこういう気持ち悪い世界にただ一人立ち向かう戦士の図みたいなゲーム展開が大好きなのだが、生理的に嫌だという方も多いと思う。重力反転でコロコロ画面の上下左右が入れ替わるゲーム展開もひっくるめてプレイする人を割と限定しそうな感じのゲームではある。あまり趣味の良い画像ではないので、ここではこれ以上掘り下げて解説しないが、極めてグロテスクなタイトルと言える。

捕獲された人間は改造されて労働に従事している場合も 戦場には子供達の姿も見られる 重力反転を題材にするとこんなトリッキーな通路も登場
大掛かりな仕掛けのポータルもある エイリアンのポータルによってスフィアまで飛ばされた航空機 スフィアの中には難を逃れている人間も多数いる
重力反転は、慣れたつもりでも、時折方向感覚がわからなくなる バスなどの物質も多数スフィアに吸い込まれている 中ボスクラスの敵との一騎打ちもある
現代FPSではポピュラーである乗り物による戦闘シーンも用意されている ハイダーの族長。後に映し出されている生物はキーパーというらしい スフィア内で抵抗を続ける種族ハイダー


■ FPSファンなら押さえておきたい正統派アクションシューティング

いかにも「DOOM 3」テクノロジーらしい美しいビジュアル
ライフルのスナイパーモードは多用することになるだろう
 アクションゲームファンの中に、まさか11年間発売を待ち望んでいた方はいないと思われるが、紆余曲折の上で登場したゲームというのは、大体とんでもない爆弾を抱えているものだが、本作の場合はその点に関しては全く問題はなく、良くできたFPSゲームとして幅広いゲームファンにお勧めできる。丁寧につくられたレベルデザイン、ゲームオーバーの要素を撤廃し敷居を低くしたシステム設計、共にゲームファンを確実に満足させてくれるクオリティを備えている。

 最近のFPSのトレンドである、戦略性とリアルさを追求したFPSにちょっと飽きたという方やオールドPCゲーマーの方にはぜひ「Prey」をプレイしてみて欲しい。職人技的FPSゲームを体験することができるだろう。繰り返しになるが「Prey」はゲームオーバーがないので、どんなにFPSが下手な人でも継続してプレイしていけば、必ずエンディングまで進めていくことができるだろう。

 あえて欠点を挙げるとすると、重力反転は3D酔いに弱い人は、本当に向かない。あと、硬派なゲームファンからすると「ヌルい」と思ったり、後半若干中だるみすると思わせる点もあるかもしれないが、ヌルくつくっているのはデザイナーの意図であり、「DOOM 3」や「Sin Episode1」よりは、はるかに良くできていると思う。

 また、これはゲームのエンディングを見ればわかるのだが、「散々待たされたゲームの割にこの展開か?」と思わずズッこける箇所がある。読者の皆さんには大体想像がつくかとは思うが、筆者は「Quake 4」のラストシーンを思い出してしまった。

 ともあれFPSゲームファンはテキサス方面に向かって「『Prey』をありがとう、この調子で『Duke Nukem Forever』もよろしくね」と感謝と懇願の念を送りつつ、「Prey」をじっくりと楽しんでみることをオススメしたい。

この装置を撃つと重力がクルリと反転する 見ていると「DOOM 2」を思い出す……何故だろう? 人体とエイリアンが融合して生み出されたクリーチャー
ハイダーがキーパーに襲撃された? ストーリー展開も楽しみのひとつ 激しい戦闘でも必ず突破口は存在する 徐々にスフィアのコアへと近づいていく……
ステージ中には様々なパズルも登場する スフィアの中には隕石のような物も点在している 捕われたジェンを取り返さねば!!
チェロキー伝来の地にもエイリアンの手が迫る!! スフィアの管理をするキーパーとの一騎打ち この光景は……!? トミーは無事地球に帰還できるのだろうか

(C)2006 Take-Two Interactive Software and its subsidiaries. All rights reserved. 2K Games, the 2K Games logo and Take-Two Interactive Software are all trademarks and/or registered trademarks of Take-Two Interactive Software, Inc. Prey(C)2006 3D Realms Entertainment. All Rights Reserved.3D Realms Entertainment and the 3D Realms logo are trademarks of Apogee Software, LTD. Developed by Human Head Studios, Inc. Human Head Studios and the Human Head Studios Logo are trademarks of Human Head Studios, Inc.


【Prey】
  • CPU:Pentium 4 2GHz以上(Pentium 4 2.5GHz以上推奨)
  • HDD:2.2GB以上
  • メインメモリ:512MB以上(1GB以上推奨)
  • ビデオカード:ビデオメモリ64MB以上(Radeon X800以上を推奨)


□「Prey」のホームページ
http://www.prey.com

(2006年8月22日)

[Reported by ryuo]



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