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★Xbox 360ゲームレビュー★

このゲームはこのハードありき?
“選手視点”を体感できるフットボールアクション

「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」

  • ジャンル:アクションサッカー
  • 発売元:バンダイナムコゲームス
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • 発売日:発売中(2006年5月18日)



 読者の方々は“サッカーゲーム”というと、どんな画面を想像するだろうか? 多くの人は、上空から見た中継視点を想像するはずだ。だが、本稿で紹介する「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」は、“選手視点サッカー”というピッチ上の選手の目線で展開される一風変わったタイトルだ。

 テレビ中継の試合を観戦していて、「逆サイドにフリーの選手がいるのに、なぜパスを出さないんだ?」、「あそこで走りこんでいる選手にボールを渡せれば大きなチャンスになったのに……」といった、選手たちへのジレンマを感じた事はないだろうか? それは紛れも無く、私たちと選手たちの見ている視点の違いによって生みだされたもの。

 これはゲームにおいても同じこと。中継視点で全体を見渡して操作する選手を次々に切り替え、チーム全体をコントロールしていくタイトルと、1人の選手として選手視点で展開される本作とでは、同じサッカーという題材を用いながら、表現しようとするものは大きく異なる。本作はこの違いにより、独自の「サッカーが持つ魅力」を表現しようと試みているタイトルだ。本稿ではそこを中心に紹介していく。

 元々、サッカーゲームには現在主流となっている中継視点タイプのものと、選手視点に近いピッチ上の視点のものがあった。だが、それは次第に淘汰され中継視点のものが残っていった。この流れの中にあって、本作をリリースしているバンダイナムコゲームスは、2000年にもプレイステーション用ソフト「リベログランデ2」という選手視点サッカータイトルもリリースしている。そしてこの2006年、その直系と言っても過言ではない「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」が登場したわけだ。

 筆者は、現在主流とは言えないこの選手視点スタイルに“次世代のスペックならでは”というものの気配を感じている。本作の魅力をレビュー中で紹介していき、最終的に、なぜ、日本では苦戦しているハードのXbox 360でリリースされたのか? なぜこのタイトルに次世代の気配を感じたのか? というポイントも伝えていこう。

■ 操作するのはあくまで1人。「選手視点サッカー」で伝わる本当のサッカーの魅力

本作最大の特徴である「主人公セレクト」。試合前に自分が操作する選手を決定する
 さて、本作の最大の個性といえば、もちろん“選手視点”で展開されるゲーム画面だ。従来のアクションサッカーゲームでは、プレーヤーはボールに近い位置の選手に操作対象を切り替え、チーム全体を操作していくことが基本だった。しかし、本作の標準設定では、あくまでプレーヤーは一選手となりきる。相手チームがボールをキープしているときはもちろん、味方選手がボールをキープしているときでも、プレーヤーは自分の選手を操作し続ける。他の選手はCPUがフォローする形になっている。

 自分の操作する選手がボールを持っているときは、従来のサッカータイトルに近い操作になる。ドリブルし、グラウンダーやフライのパスを使い分けるといったものだ。ドリブルはダッシュと低速を使い分けることで緩急がつけられる。右アナログスティックを左右上下に入力すると多彩なフェイントが可能。さらに上下といったようにスティック入力を組み合わせてコマンド入力すると、マルセイユルーレットやヒールリフトといった高度なフェイントもこなせるだろう。選手の視点に近い後方視点で展開されるため、相手チームの選手に取り囲まれるプレッシャーや、フィールドの距離感はとてもリアルに感じられ、1対1のシチュエーションで相手を抜き去ったときの爽快感も違ってくる。

 特徴的なのは、味方の選手がボールをキープしているときだ。この時にこそ本作の妙といえる時間だ。このときは、A・B・X・Yのボタンで味方に「指示」が出せる。最も特徴的なのは「パスくれ」という指示。グラウンダーのパスだしを指示するAボタン、フライのパスだし指示をするBボタン、Xボタンはシュート指示、Yボタンは自分を問わず味方にパスをまわす“ボールをまわせ”指示となる。指示をすることで、自分の操作する選手は腕を振り上げたり、指を指したりして味方にアピールする。プレーヤーはあくまで一選手として試合に参加している位置づけだ。味方を信頼してボールを預けていく。この感覚はゲーム的に1人でチームを操作するものと大きく異なっており、現実にサッカーをしているときの感触と非常に近い。

ゲーム冒頭に流れるトレーラーデモより。独自のシステム「パスくれ」をはじめ、本作の魅力がわかりやすく伝える映像が盛り込まれている


 ただ、実際のサッカーと異なり、出した指示が必ず反映される。プレーヤーがそこをうまく生かすせるかが、本作の醍醐味につながる。つまり、味方がボールをキープしている状況で自分が操作する選手は、「ボールを持っていない選手の成すべき仕事」をしなくてはならない。例えば、空いたスペースを見つけフリーの状態でパスを受ける、ということだ。

 プレーヤーが操作する選手がフォワードの選手であり、試合の流れが攻撃の展開の時には、敵チームのマークを振り切り「パスくれ」の指示を出し、空いたスペースでパスをもらえれば大きなチャンスが生まれる。ボールを持っている選手を中心に捉えて操作していくタイトルと、自分がその役割に徹するこのタイトルでは、おのずと違いが現われてくる部分だろう。

 だが、これこそサッカーの魅力のひとつ。パスコースは常に用意されているというものではなく、ボールを持っていないピッチ上の味方選手が動いて作り出すものだ。相手選手の裏をかき、空いたスペースに走りこんで、いい位置でパスをもらう快感がそこにある。

空いたスペースに走りこみ「パスくれ」でボールをもらう。いい位置でボールをもらう快感を求めて走り、チャンスを作るのも確かなサッカーの魅力だ


・ディフェンスを体感

指を指してプレスを指示する。ボールを持っている選手にはプレスをかけさせ、自分は他の選手のマンマークをするというプレイもできる
 操作する選手のポジションがディフェンスポジションの場合、もちろん最大の仕事は相手のチャンスを刈り取ること。味方にプレスを指示し、自分は相手選手のパスコースを探る。うまく事が運べばインターセプトが成功し、攻撃に転じられる。また、守備側としてのオフサイドラインへの意識やコントロールも重要だ。

 選手後方視点で描かれる本作では、前方より迫る相手チームを見つつ、自分の後方にあるオフサイドエリアを意識するのはちょっと難しい。だが、これが本来のピッチに立つ選手の視点であり苦労だ。パッド操作により、オフサイドラインの上げ下げも行なえるわけだが、これもまた俯瞰視点であればわかりやすいが、選手の視点では非常に高度なテクニックだとわかる。

 プレスをかけられボールを奪われる寸前の状態にある味方にパスくれを指示し、一度ボールを下げさせることも必要。試合の流れを仕切りなおしたこの時に、フリーになっている選手がいると、遠くで手を挙げていることがある。もちろんその選手に的確にかつ、迅速にパスが出せればチャンスが生まれる。また、そういった選手が見当たらない場合はショートパスを繋いでいくなり、自分でドリブルで運んでいくのもいい。

 その間にもチャンスを作ろうと、味方選手、敵選手がともにピッチ上を動き回る。低速ドリブルで相手選手のプレッシャーを誘い、引き付けたところで近くの味方にパス、迫ってくる相手を交わして走り出し、「パスくれ」の指示を出して1、2リターンを完成させる。あくまで操作しているのは自分の選手1人だけだが、「パスくれ」を生かせばこういったプレイも簡単にできる。

選手視点ならではの難しさのひとつ“オフサイドラインのコントロール”。相手選手の次の挙動を読んで、ラインを上げ下げすることがとても組織的で難度の高いプレイであることがわかる


・ミッドフィルダーを体感

 中盤の選手であれば、ボールキープを意識しつつ、常に前線のフォワードの位置を気にかけていく。プレスをかけてボールを奪い、時には自分で運び、時にはショートパスを繋ぎ、そして隙を見て絶妙のスルーパスを出してチャンスメイクするという、刻々と変化する試合において、攻守どちらにおいても重要な役割を担うポジションだ。本作をプレイしている中でも最も運動量が多い。

 オフサイドラインぎりぎりで相手ディフェンスを振りほどこうと動き回るフォワードの選手をピッチ上の視点で見ていくのはなかなかに難しい。だが、絶妙のパスが通ったときの嬉しさはもとより、その後を追いかけて前線に上がり、セカンドボールを得ていこうと走る高揚感は本作ならではの物だろう。攻守の切り替えを意識して時には大胆に攻撃に参加し、ときには堅実にポジションをキープしていく。プレイ中は本作ならではの心理的なリアルさが随所に感じられる。

左の画像では前方にスルーパスのチャンスが見えているが、この状況で多少は左サイドよりに蹴ってもFWの選手がしっかりとカバーしてくれる。自由な方向にキックできるのも本作の魅力のひとつ。右はその直後、ボールを預けて自らも前線に走りこんでいるところ


・フォワードを体感

オレンジ色のラインがオフサイドライン。右前方に走り出している選手がいるが、彼にパスを出せば間違いなくオフサイドだ
 フォワードの仕事と言えば、もちろんゴールを決めること、得点を挙げることだ。中盤からのパスを待つ間、フォワードの選手は相手ディフェンスのマーク、そしてオフサイドラインと戦い続ける。本作ではデフォルトの設定だと常にオフサイドラインがオレンジの線で表示される。このオフサイドラインは、攻守いかなる状況でも、常に上下している。

 オフサイドのルールについては割愛させて頂くが、フォワードの選手はオフサイドラインの内側、オンサイドでチャンスを待って動き続けるのが仕事である。目まぐるしく入れ替わる攻守の中、ラインの上下にあわせて走り続ける。中盤の味方がボールを奪い、自分へと続くまっすぐなパスコースが見えたその刹那、「パスくれ」の指示を出し、自陣側から反転して前方を向く。自分の前方に蹴り出されたボールをオフサイドラインを超えて追いかけ、フリーでボールをキープ、キーパーの位置を見てシュートを決めていく。

 後方やサイドの選手から出される大きなパスを待つ、ポストプレーに徹するのも面白い。味方から絶妙のハイボールが飛んでくるのを待ち、数少ないチャンスを確実に決めていく。これもまた、フライのボールを自分に上げてもらう「パスくれ」のシステムで簡単に楽しめる。絶妙なハイボールが飛んできて、空中戦を制し、1タッチでゴールを決めたときの爽快感といったらたまらない。思わずCPU相手とはいえアシストの選手と喜びを分かち合いたくなる。サッカーは11人で行なうスポーツであり、個人個人が限界までパフォーマンスを発揮し、味方を信じて役割を果たしていく。もどかしい時もあるのが現実ではあるが、それだけに喜びもリアルだ。

CPUが蹴るコーナーキックに「パスくれ」でアピール。いいボールが自分のところに飛んできた瞬間と、それをしっかり捉えて相手チームのゴールネットを揺らしたときの爽快感、一体感は高い


 一選手として試合に参加するという本作最大の魅力から伝えてきたが、選手視点で展開する本作ならではの感触は他にも多い。それゆえにテクニックとしてのスルーや、背面側へのパスをいい結果に結びつけるのは非常に難度が高い。俯瞰視点タイプのタイトルであれば、ボール周辺の選手の位置が見えているため、比較的簡単にできるが、本作ではそうはいかない。それらのプレイが現実には非常に高度で、不用意に使えばピンチを招きかねないリスキーなプレイであることを再認識させられる。本作には選手の位置を映し出すレーダーがあるので、多少の補助にはなるがやはり難しい。本作から視界外の選手の走りこみやフォローを想像するプレイの難しさを感じると、現実のトッププレーヤーが繰り出すそれらのテクニックに感嘆するはずだ。

 視線に関して、本作への苦言があるとすれば、現実にある「首ふり」に相当する操作がないことだろう。体の向きは変えぬまま、可能な範囲で首を振って周囲を瞬時に確認するという動作がしたいときは多々ある。そしてそれは現実のサッカーでも重要な動作のはずだ。本作の視点は完全な選手視点ではなく、選手後方からカメラが捉えた映像になっているがゆえに、首ふりに相当する機能がなくとも融通は効くのだが、一選手としてのリアルさの追求、そして魅力の増加のためにも、首が動く範囲でのカメラ移動が欲しいところだ。

 ちなみに、ここまではプレーヤーが1人の選手を固定して操作することを前提に書き進めているが、オプションを切り替えることで、操作選手の切り替えも可能になる。様々なポジションを一試合の中で楽しみたいときや、プレーヤーの手で華麗なプレイを作り上げて行きたいという思いも実現は可能。だが、やはり本作では、1人の選手として試合を作っていくことを存分に楽しんでいきたい。

ゴールキーパーを操作選手にすることももちろん可能。遠くで動く選手は次の行動が見えづらく、味方ディフェンスの体によるブラインドも失点につながってくる コーナーキックの場面。一見ブラジルの選手は中にまったくいないように見えるが、実は画面手前にいる。選手視点ならではの死角があるのだ。このため視界外に折り返されるような攻撃も非常に怖い
操作している選手はメッシだが、CPU操作の10番アイマールがパスくれをアピールしている フェイントを駆使して1対1の状況で相手を抜き去る爽快感も非常に高い
選手が常に大きく見える視点を採用しているだけに細かなモーションにもこだわりが見える 画像はマルセイユルーレット中。この直後は前方をクルリと向いてのシュートに移行できた
絶好の位置でシュート、直後に映し出されるリプレイの臨場感や迫力も非常に良好だ。見せ方の上手さを感じる


■ プレーヤー兼監督的な立場ではなく、1人の選手視点で描かれる日本代表ストーリーは斬新

「日本代表ストーリー」での主人公セレクト。十数の試合を選択した選手の視点で戦い抜く
 収録されているチームは89チーム。世界各国の最新ナショナルチームが58国、開発スタッフによるコンセプトベースなスペシャルチームが31チームという内訳だ。選手数を見ると、ナショナルチームに在籍している選手の他にも、サブの選手も収録されており、代表チームに組み込むこともできる。そのため、選手の総数は2,000人近い。

 プレイモードは、日本代表チームに参加していく「日本代表ストーリー」、マッチモードには手軽に試合を楽しめる「エキシビジョン」、地域や参加チーム数が異なる大会に参加していく「カップモード」がある。さらに自由に練習ができる「トレーニング」や、選手データ、チームデータの変更や、オリジナルの選手を作成する「エディット」といった、昨今のスポーツタイトルであれば欲しいところが一通り抑えられている。これらに加えて、Xbox Liveから選手データをダウンロードしたり、ゲーム内への反映を行なっていく「オンライン」、前述のスペシャルチームを取得するコレクターズショップなどが収められている「エキストラ」が並ぶ。

 一風変わっているのは、「日本代表ストーリー」だ。モード名の響きからして、日本代表のチームを自在に操作して世界に挑んでいくモードと捉えるモードだが、本作ならではの「1人の選手としてプレイする」というコンセプトが加わっている。このモードのプレイ開始時には、実在する代表チームの選手から、1人を選びストーリーを進めていく。プレイ中だけでなく、試合の合間に挿入される監督とのやりとり、チームメイトとのやりとりもそうだ。宮本選手を選べば、最後まで自分は宮本選手であるし、他の選手を選んだときでもそれは同様だ。

 面白いのは、プレーヤーは監督的な位置づけや権限を持たず、あくまで1人の選手であること。モードのプレイ開始当初に、操作選手の選択に続いて監督も選ぶのだが、スターティングメンバーの入れ替え、試合中のメンバー交代などは全てこの監督の判断になる。プレーヤーが操作している選手が試合中にうまく立ち回ることができず、監督の判断からスターティングメンバーから外されるとゲームオーバー。従来、絶対的な立場で自由にゲームとしての日本代表を楽しむタイトルが多いのだが、本作ではそこでも一選手の立場や心理を味わえる。

 毎試合後には、試合中の動きに対して評価が数値で示される。それによって代表ポイントが増減し、選手のパラメータをアップできるボーナスポイントも与えられ、試合を重ねることで選手を育成できる。さらに、新規にストーリーをプレイする際に、それまでのデータを引き継ぐことができる。繰り返していけば、どんな国が相手でも互角以上に戦う自分だけの日本代表ができあがっていくのだ。

宮本選手を選択しての日本代表ストーリープレイ。監督も最初に選ぶこととなり、試合の合間に出される指示や、スタメンへの起用などが変化する

 また、実在する選手だけでなく、自分が作成したオリジナル選手でもプレイできる。この場合、スタメン入りしている実在選手を選んだ場合とはストーリーの展開が異なり、日本代表内での紅白戦などでアピールし、スタメン登録を目指していく。もちろん、自分が加わった枠があれば、スタメンを外される選手もいる。目まぐるしくメンバーが入れ替えられ、本戦に望むまでに様々な選手が試されていく。試合の間には他の選手とのコミュニケーションの模様も見られるが、試合に出られるよう勤める様子が描かれている。

オリジナル選手を作成して日本代表に参加。紅白戦での実在選手とは異なり、紅白戦で監督にアピールしてスターティングメンバー入りを目指すところからストーリーが展開される

■ Xbox Liveでの選手データ配信やスペシャルチームの存在により、満足度は良好

 本作の拡張性に目を向けていくと、各種モードでプレイすることで得られる「ナムサカポイント」を消費して取得できる「スペシャルチーム」が面白い。チームそれぞれに開発チームがコンセプトを持って編成しているというだけあり、豪華なメンバーが登録されているチームから、個性的な編成のものまで様々だ。

 また、Xbox Liveを生かした選手データのダウンロード配信も面白い。配信されている選手は、実際の名称ではないものの、すぐに「あの選手だ」とわかるだろう。本稿の執筆時点でもスペシャルチームの登録選手もいるものの42選手が配信されており、これらの選手をマイチームに組み込んでいける。もちろん、現役の選手と伝説的な名手とのコラボレーションも可能。思い思いの夢や願望を形にしていける。そしてそのチームの中から、プレーヤーは1人の選手を選択し、同じピッチの上でプレイできる。こうして書いていくとなんとも贅沢な楽しみ方だ。

 ゲームに対しての拡張性ではないが、本作の公式サイトの充実度も沿革の魅力として加えたい。スタッフによる情熱やサッカーへの愛情を感じる充実した内容だ。サッカーは好きだけど、専門的な知識などはわからない……、といった人の入口としても充実したサイトになっている。本稿でもポジション別に静止画像とあわせて魅力を伝えているが、公式サイトではこれをムービーで紹介している。本作の魅力が静止画像では非常に伝えづらいものであるのは、十二分に承知している筆者。本稿をきっかけに興味が沸いたという方には、ぜひとも公式サイトのムービーにも手を伸ばして頂きたいと思う。

画像左は、コレクターズショップでスペシャルチーム「ACアカクロ」を獲得している模様。右は獲得したスペシャルチームの一部をエディット画面で表示しているところ。表示されている2.5倍ほどの数のスペシャルチームが用意されている
Xbox Liveのコンテンツダウンロードで配信されている選手データ。継続的に配信されるデータには好印象を受ける

■ 個性的な「選手視点サッカー」の体験はとても魅力的。さらなる進化にも期待

シュート直後のリプレイより。本作プレイ中の臨場感や爽快感、高揚感は非常に高い
 選手後方視点で展開される本作は、サッカータイトルのゲームを遊んだことがある方ならば、一度は妄想していそうなスタイルや見せ方を具現化しているものだ。ゴールキーパーだけを楽しめるサッカーゲーム、というものを冗談交じりに想像したことがある人は多々いるだろう。本作ではそれが現実にできる。ゲームとして楽しさが成立するだろうか? と不安になるコンセプトであり、まずそれに挑戦していることに大きな価値を感じる。

 本作プレイ以前においてまず不安だったのは、プレーヤー以外の選手のAIがあまり賢くなかったら、という場合だ。そのようなゲームであった場合、役に立たないAIに苛立ち、結局ひとりよがりのサッカーをするゲームになってしまう。だが、そんな心配は無用だった。想像を超えて本格的な立ち回りを見せてくれるAI操作の選手たちからは、時にスポーツライクな無言の意思の疎通を感じれるほど。ゲームに慣れてきたら、試合前にマイチームレベルとCOMチームレベルの設定を「つよい」や「とてもつよい」にして楽しむのがオススメ。レベルを上げるとスピーディかつ華麗なプレーが双方ともに格段に増える。

臨場感や爽快感といった点は満足度が高い。ゲーム的ではなく、1人の選手として味わうスポーツ的なサッカーの魅力が、確かに感じられる。挙動や収録データ、さらに配信データや公式サイトからは開発者のゲームとサッカーに対する愛情が感じられる。まさに“ラブフットボール”だ。

 ただし、厳しい面もある。まず、最もストレスを感じるのはローディングだ。試合前に多少長めのローディング時間が入るのは致し方ないことと思うが、メニュー選択後に画面が切り替わる合間にも、随所にローディング画面が出てくるのが厳しい印象を強めている。また、グラフィックに関しては好みがわかれるところ。筆者の印象として、動いている画面ではあまり気にならないのだが、静止画像の印象ではだいぶ損をしていると感じる。外観ではなく、選手の挙動や操作性に注力したことが伺えるだけにもったいないと感じた。

 本作がXbox Liveのコンテンツダウンロードにのみの対応で、オンライン対戦はできない点も非常に残念だ。Xbox Liveでのオンライン対戦は、現状ではXbox 360のタイトルならではといっていいほどの大きな魅力だけに、悔やまれる。

 サッカーファンであり、かつ、ゲームファンであれば一度は触ってみてもらいたいタイトル。Xbox Liveでは無料でプレイできる体験版も配信されているため、本体を所有しているユーザーならば気軽に体験できる。チャレンジングな試みも含めて、今後に期待を込めた評価をしたい。本作が進化した先には、中継視点では得られなかった新しいサッカーゲーム体験がまだ眠っている、と感じさせる一品だ。


 さて、冒頭にも書いた“本作に感じた次世代の気配”を記述していこう。これは、サッカージャンルの主流が中継視点になっていった理由の一端とリンクする。選手視点で試合を展開するには単純にハードスペックが必要なのだ。最大でピッチの端から端、さらに22人の動き続ける選手、果てはスタジアム外の建造物までを描画していくのには苦労するはずだ。だが、本来であれば、どんなに遠くにいる選手であろうとも眼には見えるはずで、それが、スペック上の都合で申し訳程度にしか映し出されない、もしくは一定距離より遠くは描画されない、というのでは魅力が損なわれる。ピッチ上の全てが高いクオリティで描画し続けられるかは、選手視点スタイルの最大の魅力である臨場感やリアルな体感に大きく関わるポイントだ。

 解像度の点においても、本作を実現できる現在で最も適したコンシューマーハードはXbox 360だったのだろう。遠く離れた選手がフリーの状態で手を上げアピールしているのを視認したり、遠く前方にスルーパスを出す前に相手ディフェンスのオフサイドラインを確認したり、といったことを実現できる形にするには、単純に解像度が必要だ。SD画質が標準のハードでは、あまり距離のある選手の姿は精細さを欠いて潰れてしまう。自分のポジション外のやりとりを認識して行動するという点においても、精細であればあるほど喜ばしい。

 画面比率も選手視点においてはもちろん16:9のワイド比率が望ましい。これは臨場感の向上もあるが、人の視界が横に広いからでもある。私たちが日常見えている景色も4:3では当然なく比率的にもっと横に広い。選手後方視点で展開される本作にとって、16:9の比率はできる限り採用したいものだったはずだ。選手の視点でリアルなフットボーラー体験をするというコンセプトを実現すること、選手の見えている視界や風景を再現すること、実際のサッカーのように選手視点の中で他の選手が作り出したチャンスを認識できるような形にするのは、想像以上に縛りの厳しいものであっただろう。

 いつの時代にも選手視点サッカーにトライしたタイトルは多々あったが、遊びやすさが考慮されていった結果、次第に少なくなっていった。選手視点スタイルのサッカータイトルは、HD時代に突入する今こそ満足な見せ方ができる時代になってきたと言える。HD時代のグラフィックレベルが果たしてゲームには本当に必要なのか? これは常に論議を呼んでいるものだが、本作はそれがないと体感面が物足りなくなってしまう代表例と言えるだろう。

(C) 2006 NBGI
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(C) 1996 JFA
(C) 2002 JFA.MAX
※これらの日本代表選手の画像はゲーム内CGによるものです。

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□バンダイナムコゲームスチャンネルのページ
http://www.bngi-channel.jp/
□「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」のページ
http://namco-ch.net/love_football/
□関連情報
【5月18日】バンダイナムコゲームス、丸ビルで開催中の
「宮本恒靖 FOOTBALL PARK in Marunouchi 2006」に
Xbox 360「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」を出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060518/lf.htm
【4月14日】バンダイナムコゲームス、多彩なモードが収録されている
Xbox 360「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060414/lf.htm
【1月30日】ナムコ、Xbox 360「Love FOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」
最新スクリーンショット多数掲載
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060130/lf.htm
【2005年12月26日】ナムコ、Xbox 360「Love FOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」
最新スクリーンショット多数掲載
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060130/lf.htm
【2005年12月26日】ナムコ、Xbox 360「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」続報
スクリーンショット多数掲載
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051226/lf.htm
【2005年12月19日】ナムコ、Xbox 360「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」
イメージキャラに宮本選手を起用
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051219/lf.htm
【2005年8月4日】ナムコ、「Love FOOTBALL(仮称)」をXbox 360に提供
ナムコサッカーゲーム伝統の「選手視点」を導入
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050804/lf.htm

(2006年7月21日)

[Reported by 山村智美]



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