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ガンホー社員、「ラグナロクオンライン」の不正アクセスで逮捕
6,910億ゼニーを無断複製してRMT業者に売却、1,400万円超を不正取得

7月20日発表

 ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社は、社員が在職中に「ラグナロクオンライン」のサーバーに不正アクセスを行なっていた事実により、所轄の丸の内警察署に逮捕されたと発表した。ガンホーでは今回の逮捕報告を受け、7月19日付けで当該職員を懲戒解雇し、責任を明確にするため代表取締役社長森下一喜氏以下、関係者の処分と、今後の対応方針を発表した。

 今回の事件は「社員の不正アクセス」というくくりで扱われているが、実際はリアルマネートレード(RMT)を禁止しているオンラインゲームパブリッシャーのゲームマスターが、リアルマネートレード業者と直結し、GMツールのコマンドを悪用して、無断でゲーム内通貨を増殖させ、不正に売却益を得るという、自社の社内規定や利用規約はもちろんこと、ゲーム世界で遊ぶユーザー、そしてRMT禁止の方向に動いているオンラインゲーム業界など、あらゆる存在をないがしろにした、極めて悪質な事件である。

 事件の概要を詳しく説明すると、当該職員は、2003年12月入社に入社し、以来「ラグナロクオンライン」のゲームマスター業務を担当。2005年10月から2006年3月24日までにかけて、ゼニーの複製権限を持つ直属上司のGMアカウントをハッキングし、GMコマンドを悪用してプライベートでプレイしているキャラクタにゼニーを不正送金。そのキャラクタをバイパスにして、RMT業者にゼニーを売却していた。現在判明している限りでも、6,910億ゼニーを不正複製し、6,000億ゼニーを売却していたことが、ログチェックにより把握されている。自己申告によればその売却益は少なくとも1,400万円という。RMT業者の名前については明らかにしていない。

 今回の事件に関しては、ガンホーのGM教育の不十分さ、GMアカウントの管理体制の不備、そもそもGMがゼニーの複製権限を所持していることの是非など、さまざまな問題をはらんでいるが、もっともクリティカルな要素は、これだけ大規模な不正送金が内部で行なわれていたにも関わらず、判明するまでに実に5カ月を要したというGM管理システムの致命的な不備だろう。

 MMORPGにおけるゲームマスターは、ゲーム内でさまざまなイベントを実施したり、各種トラブルを速やかに対処できるように、ゲーム内通貨の無限複製を含む強大な権限を保持している。それゆえに、GMの日々の業務内容は、GMマネージャーが専用のログチェックシステムなどを通じて完全に把握されることが通例となっている。ゲームによっては、GMが一般ユーザーに対して、何らかのアイテムや仮想通貨を受け渡しする場合は、上司の事前承認が必要なケースも多い。しかし、「ラグナロクオンライン」では、少なくとも現時点までそのような形でのチェックはまったく行なわれていなかったことになる。

 ガンホーでは今後の対応について、上記課題の抜本的な改革のほか、警察組織における監査部のような監査専門の部署をGMチームとは切り離した部署に設置したり、セキュリティー問題に精通した弁護士など外部有識者を交えた諮問委員会の設置などを挙げている。

 なお、今回の事件は、社員が仮想通貨を無断で複製し、RMT業者に売って現金を稼ぐという幾重にも禁止事項を破った上での重大な背信行為であり、ガンホーとしてもオンラインゲームパブリッシャーとしてのブランド低下の損失は計り知れないものがある。それでありながら、現行法では「不正アクセス禁止法違反」(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)という軽微な罪にしか問うことができず、仮想通貨の無断複製およびRMT業者に売り渡すことによるゲーム内経済の破壊行為について、まったく罪に問えないのはやはりおかしい。現実世界で言い換えれば、造幣局の職員が刷りたての1万円札の束を、マネーロンダリング業者に売り渡し、ドルを受け取っているのと変わらない。誰がどう見ても重罪であり、ここにも大きな課題が眠っている。これを機に、ガンホーのコンプライアンスがしっかり整備され、かつ機能することはもちろんだが、根幹の法整備が整うことにも期待したい。

(C) 2006 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ
http://www.gungho.co.jp/
□プレスリリース「元職員による弊社への不正アクセスについて」
http://www.gungho.co.jp/press/089.html

(2006年7月20日)

[Reported by 中村聖司]



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