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★PCゲームレビュー★

舞台は西暦2013年、近未来のメキシコ
次世代兵士の戦闘をゲームで体験!

Ghost Recon
Advanced Warfighter

  • ジャンル: タクティカルアクション
  • 開発元: GRIN
  • 発売元: Ubisoft
  • 価格: 49.99ドル(実売6,800円前後)
  • 対応OS: Windows 2000/XP
  • 発売日: 5月3日(英語版のみ、発売中)



 「Ghost Recon Advanced War Fighter」(以下GRAWと略す)は、米陸軍が推進している次世代歩兵戦闘システム「ランドウォーリアー計画」をゲーム中の設定として取り入れ、近未来の戦争を描いたミリタリーゲームだ。

 ランドウォリアー計画とは、歩兵の装備をIT化することで兵士個々のレベルでも各種戦術情報を共有させることにより、的確な行動で目標の機先を制し確実に攻撃目標を仕留め、かつ最小のダメージで作戦を遂行させるための計画である。

 現時点では一部実験部隊が既存の装備などと合わせて流用しつつ、数々の実験を行なっている。GRAWが描く米軍特殊部隊「ゴースト」の隊員達は私達がごく近い将来に、テレビなどで見る兵士に近い姿なのかもしれない。

 ストーリーラインはおなじみのトム・クランシー氏監修によるもので、前作「Ghost Recon 2」で舞台になった2011年の北朝鮮から2年後の南米へと戦場を移している。ちなみに前作はビデオゲーム(PS2、GameCube、Xbox)のみ。2作ぶりPC版の登場となる。

パラシュート降下にて作戦地域に降下するゴースト隊員達 最新のIT装備に身を固めた戦地に突入する 政府反乱軍が跋扈するメキシコシティが今回の舞台だ


■ PC版は北米で絶賛されたXbox 360版をチューニングしたカスタムバージョン

 GRAWは、北米ではPC版を筆頭に、Xbox 360/PS2/Xbox/Gamecubeの各コンソールへマルチプラットフォーム展開されている。そのうち先行して発売されたのはXbox 360版であり、高い評価を受けた。日本でも6月29日にUBIソフトより日本語版が発売されている。

 昨今ではマルチプラットフォーム展開はごく当たり前になっているが、GRAWの面白い所はXbox 360版と、後発のPC版でまったくと言っていい程内容が違うということだろう。つまり、同じ世界観やストーリーラインを共有しつつも、違うジャンルのゲームとして作り直されている点が他のマルチプラットフォームタイトルとは一線を隔している。

 PC版とXbox 360版の大きな違いは、まずFPS(PC版)かサードパーソンビュー(Xbox 360版)かという視点の違いが大きい。「どちらも同じ3Dゲームじゃないか」と思われるかもしれないが、プレイ感覚はまったく異なるため、同じゲームとして解釈するのは難しい。さらに細かい差異を挙げてみると、以下のような点がある。

1. ミッション構成が違う
大まかなストーリーラインは同じだが、ミッションの構成は全く異なる。特にPC版はXbox 360版には無い演出(輸送機からのパラシュート降下やヘリからのリベリング)などがあり、なかなかカッコイイ。

2. 戦略重視のゲームデザイン
PC版はXbox 360版と比べてより戦略重視のFPSゲームとなっている。今までPCで「Rainbow Six」や「Ghost Recon」など一連のトム・クランシータイトルをプレイしてきた人には馴染みやすいだろう。

3. ミッション遂行中、弾薬・武器・人員の補充機会がない
Xbox 360版はミッション中に弾薬・武器・人員を補充できる機会があるが、PC版にこの要素は存在しない。より戦場のリアルさを意識したつくりになっている。それだけにPC版の難易度はシビアになっている。

4. 仲間が死ぬ
これはビデオゲームにおける倫理の問題ゆえかもしれないが、Xbox 360版では倒れた仲間の隊員は「負傷」扱いになっており、手当てをすればその場で戦線に復帰できるようになっている。しかし、PC版は倒れた場合は「死亡」として扱われ、二度と復活しない。このためプレーヤーはミッション遂行中は、仲間の安全を真っ先に考えなければならない。

 Xbox 360版は基本的にその場その場で仲間の隊員に指示を出しつつ、プレーヤー自身が戦闘の中心として戦っていくというスタイルだが、PC版は戦略画面で仲間の隊員に的確な指示を与えて自分は戦闘を指揮するという形に近い。自分で頑張るよりもチームワークを重視した、FPSゲームでいて戦略性の高いデザインになっている。

 また、Xbox 360版は「チャプター2」と呼ばれるニカラグアを舞台にしたミッションを既にリリースしており、Xbox Live マーケットプレイスで有料配布されている。PC版はマルチプレイ用のマップを多数追加したパッチを無料配布している。こういう所もプラットフォームごとに戦略が分かれているのが面白い。

PC版はFPSゲームとして新たにデザインしなおされている リベリング降下を開始するゴースト隊員達 リベリング降下に無事成功!!

このゲームでは仲間こそすべてだ 仲間の無事生還こそが作戦の鍵となる 最新装備の前には暗闇も障害とはならない


■ メキシコで内乱発生、大統領救助にゴースト出動!

右上の小窓に注目。クロスコムを使えば通信も映像付で行なえる
 GRAWのストーリーは今から7年後の2013年、メキシコで発生したテロによりメキシコ大統領が襲撃された。米国政府は大統領救出とメキシコ軍とコロンビア革命軍の闇の関係を暴くために、特殊部隊「ゴースト」の派遣を決定した。

 プレーヤーはゴーストのリーダー、スコット・ミッチェルとしてIT化が施された最新の歩兵装備に身を包んだゴースト隊員と共に数々の困難なミッションに立ち向かうことになる。

 ゲームは基本的にプレーヤー(ミッチェル)に3人の隊員が同行する4人体制で作戦を進行する(シーンによってはミッチェル単独で行動することもある)。2013年のメキシコ軍は、兵士が携行している武器ももそれなりに強化されているし、なにより数がケタ違いに多いため、常に慎重な行動を採らないと即座に全滅の危機を招く。

 一方的に不利なように見えるが、ゴースト隊が敵に対して有利に行動するための兵器が「IT」だ。ゲーム中では「クロスコム」と呼ばれるスカウターのような物をゴーグルにひっかけて、兵士の目と耳から様々な情報を得ることができる。

 たとえば上空を旋回中の友軍ヘリコプターから敵軍の展開情報を入手したり、司令部より刻々と変わるミッションを受けたり、上空を飛ぶ「ドローン」と呼ばれる偵察ポッドの情報を受け取ったりすることもできる。

 また、これはさすがにゲームならではの設定だが、仲間の隊員の体力の確認や、命令の受け渡しなどもこのクロスコムから行なうことができる。クロスコムを使いこなすことが困難なミッションから無事生還するためのコツと言っても過言ではない。

 FPSゲームでもいわゆる「仲間」がついてくるゲームは多々あるが、通常はプレーヤー自らが真っ先に突っ込むタイプのゲームデザインになっている場合が多い。しかしGRAWの場合重要なのは役割分担であり、ひとりでできることには限りがある。そうした当たり前の思想がしっかりとゲーム中に反映されているところが同シリーズの大きな特徴のひとつである。

 通常、部隊の隊長が一番先に敵の戦闘に身を投じる必要は無い。ゲーム中でもそれを心がけないと部隊そのものが全滅してしまう。つまり、このゲームはプレーヤーの適切な指揮能力が非常に重要で、まず隊員にどんな装備をさせ、隊を前進させる時にはビルの角からその先にある広場の様子を伺うのか、敵の攻撃を受けた場合、隊員のうち2人を車を盾代わりにさせて応戦させ、もう1人を裏側から回りこませて行く手を阻む機関銃手を狙撃させる……などと言った状況に応じた指揮が何よりも大事になる。隊員にひとりずつ行なってから初めてプレーヤーは直接戦闘に参加するわけである。

仲間に適切な命令を下すには情報が必須だ タクティカルマップなら周囲の状況は一目瞭然だ 偵察ドローンはIT時代の兵士に欠かせない兵器だ


■ ゲームの決め手はタクティカルマップ!! ミリタリーファンは細かい演出にも注目!

「タクティカルマップ」。単なるFPSゲームではない高い戦略性を誇る
 FPSというと、一人称視点の画面がすべてだと思われがちだが、前述した通り、このゲームの本質は「指揮」にある。従ってクロスコムに展開されるタクティカルマップが非常に重要になっている。タクティカルマップはプレーヤーのいる周辺が見下ろしの3Dマップで表示される。また、他の隊員による目視や偵察ドローンが上空から発見した敵部隊もこのマップに居場所が表示され、隊員が交戦状態に入った場合の状況もわかる優れものだ。

 何よりも優れているのは、このタクティカルマップ上から通常よりも更に細かい指示を隊員に送ることが可能になる点で、安全が確保された位置からこのタクティカルマップを開き、周囲の状況を見て隊員達に的確な指示を出すことが、繰り返しになるがこのゲームの大切なポイントだ。ウェイポイントを設けて隊員ごとに進行する先を巡回させることも可能で、FPS=ひたすら撃つゲームという概念は一切捨てることがこのゲームの面白さであり、同時にGRAWが描きたかった近未来の「IT兵士」を如実にあらわしている。

 戦略性ばかりが前面に出てしまったが、GRAWはミリタリーファンが泣いて喜びそうなシチュエーションがたくさん詰まっている。パッケージにも描かれている兵士が持つ火器類は一部を除いて全て、現在米軍が採用を検討している自動小銃などだ。Scar LやM8カービンなどはオプションのアタッチメント類も豊富で、状況に応じて様々な装備を施す楽しさをプレーヤーに与えてくれる。特にM8カービンの形は、映画「スターシップ・トゥルーパーズ」に出てくるような未来的なデザインであり、いよいよSFと現実兵器がごちゃ混ぜになってきたかと思わせる特徴的な形になっているのが面白い。

 隊員達の細かい演出も素晴らしい。例えば物陰から敵を狙う時には全身を乗り出さず、上半身だけをクィッと曲げて射撃する体勢を取ったり、敵から咄嗟の攻撃を受けた際、その場に地面に伏せる動作など、リアルではないのかもしれないが、ゲームの臨場感を盛り上げるカッコイイ演出と言えるだろう。

敵の反政府軍兵士は気づかれないように片付けよう M8カービンは未来的なデザインが特徴だ 射撃スタイルもカッコイイ


■ セーブできないのがしんどいが、多くのPCユーザーに楽しんでもらいたい名作

難易度は高いがプレイしがいのある内容だ
 GRAWをプレイしていて残念だな、と思う点はセーブが自由にできないという点だろう。ミッション中の一定ポイントまで到達しないとセーブできない仕様になっていて、慎重に慎重を重ねて30分少しづつ前進をしてもポイントまで到達できずに全滅すればゲームは最初からやり直しとなってしまう。

 ゲームの性質上、敵の迎撃ラインを突破する方法を発見するまで何度もチャレンジする形になるため、どこでもセーブできた方がプレーヤーにとってはやさしいはず。適度な緊張感を持たせるためかもしれないが、結果的に緊張感よりも疲れの方が先にきてしまうため、この辺のシステムをXbox 360版と同じような形にしなくても良かったかな? と思う。

 敵の反応がやたら鋭いのも気になる。敵がかなり遠くからこちらを発見して攻撃してくるため、いわゆる隠密行動・奇襲攻撃の類がかなり成功しにくい。設定的にも似通っているが、映画「ブラックホークダウン」のように、どこから敵が襲ってくるかわからない緊迫感という決まったシチュエーションしか味わえないのが惜しい。たまには完全に敵の裏をかかせてくれてもいいじゃないかと思うのだ。

 GRAWというゲームそのもの自体には関係ないのだが、今作はパッケージ販売以外にも初めてオンラインデリバリーに対応している。米国のDirect2Driveなどのサービスで購入することができるのだが、日本は販売地域の対象外になっているので、購入を検討されている方は残念ながらパッケージ版を購入する以外に選択肢がない。

 せっかくリージョンの垣根を取っ払える環境にありながら、日本からの購入ができないのは何とも惜しい。サポートという大きな問題があるためと思われるが、ぜひ海外のオンラインデリバリー業者には日本市場への対応も視野に入れて欲しいと願ってやまない。

 ちなみに、今回、デベロッパー側が何故プラットフォームごとにゲームデザインを分けたのかは筆者にはよくわからない。同じクオリティ、同じゲーム内容を等しく供給するマルチプラットフォーム戦略の常識を打ち破る珍しい試みと言えるだろう。

 しかし、マルチプラットフォーム展開の重要な点はコスト削減にあるはずで、わざわざ同タイトルを2つのゲーム内容に分けて制作するのはよくわからない。据え置き型ビデオゲーム機と携帯機でゲームデザインを変えるのは性能差を考えると、今後増えてくる話なのかもしれない。

 GRAWのXbox 360版の発売がXbox 360のローンチから大幅に遅れた原因は、開発の遅延にあるといういうのは海外のニュースサイトでも取り上げられていた。おそらく本件が遅延に関係しているのは間違いないだろう。GRAWがすったもんだのあげくに生まれてきた産物だとしても、プレーヤー側から見ると、同じ題材で質の高いゲームが2度遊べるのだから喜ばしいことなのかもしれない。

 そんな中、PC版は比較的年齢層の高いプレーヤーが遊ぶ事を意識してつくられているようで、要求するPCスペックも高いが、ゲーム自体の歯ごたえもなかなかのもので、FPSだからと言って力技でガンガン進めるタイプのゲームとしてプレイすると永遠にクリアできないだろう。ぜひじっくりと腰をすえてプレイをして欲しいゲームだ。

 なお、本作は最大32人までのオンライン対戦および4人までの協力プレイにも対応している。この協力プレイこそが、GRAWの醍醐味になりそうだ。見知らぬプレーヤーとボイスチャットなどを駆使して困難なミッションに挑む、GRAWが究極に目指すべき方向性はここにありそうな気もする。ぜひこちらもあわせて楽しんでいただきたい。

プレーヤーの操作にもそこはかとないリアルさがある 各隊員の持つ武装のリアルさに注目 隊員への的確な指示こそがこのゲームの本分

(C) 2005 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Ghost Recon, Ghost Recon Advanced Warfighter, the Soldier Icon, Ubisoft, Ubi.com and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.PC version developed by Grin.


【Ghost Recon Advanced Warfighter】
  • CPU:Pentium 4 2GHz以上(Pentium 4 2.8GHz以上を推奨)
  • メモリ:1,024MB以上
  • HDD:4.5GB以上
  • ビデオメモリ:128MB以上(256MB以上を推奨)


□「Ghost Recon Advanced Warfighter」の公式ページ
http://www.ghostrecon.com/uk/ghostrecon3/index.php

(2006年7月12日)

[Reported by ryuo]



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