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ソニー・エクスプローラサイエンス「アハ! 体験スクエア」開催
PSP「脳に快感 アハ体験!」について茂木博士にインタビュー

7月30日まで 開催

入場料:大人500円、小人(3~15歳)300円

 ソニー株式会社が運営する体験型サイエンスミュージアム「ソニー・エクスプローラサイエンス」にて、6月22日から7月30日まで「ソニーコンピュータサイエンス研究所茂木健一郎博士監修『アハ! 体験スクエア』」が開催されている。

 「アハ! 体験スクエア」は、「ソニー・エクスプローラサイエンス」の一角で開かれているもので、茂木健一郎氏の監修のもと、「アハ体験」(ひらめき、創造性といった脳の働き)を促す様々なコンテンツが展示されている。いずれも言葉では説明しにくいが、見れば一目瞭然かつインパクトのあるものばかりなので、写真を交えながら紹介していく。なおイベントの概要については、以前の記事をご覧いただきたい。

【アハ! 体験スクエア】
謎の白黒模様が描かれた「アハ! ピクチャー」。何が描かれているのか気づいた瞬間がアハ体験! 筋の見えない文章が並ぶ「アハ! センテンス」。あるキーワードを当てはめれば意味が通って見える カメラで撮影した顔写真が、無数の豆に紛れる「アハ! ビーンズ」。その場でプリントしてくれる
自分が「アハチェンジ」や「アハムービー」に入り込める「アハ! スタジオ」。メモリースティック デュオを持っていれば、作ったデータを保存してもらえる 6月22日に発売されたセガのPSP用ソフト「脳に快感 アハ体験!」の試遊台も設置。夢中になって遊ぶ親子やカップルが目立った 茂木氏の紹介や、「アハ体験」について説明するパネル展示も。「アハ体験」について詳しく知りたい人は、忘れずに読んでいただきたい


 7月2日には、会場内の特設ステージにて、茂木健一郎氏のトークショーが開催された。「アハ体験を大人向けに解説する」としてトークが始まり、やや難解な用語も混ぜながらの内容になったが、ひとつずつ噛み砕いた説明で、来場していた小学生にも伝わるよう配慮した内容となった。

 この中で茂木氏は、脳の学習機能について解説。「何か行動をして嬉しいことがあって、ドーパミンが出ると、その回路が強化されるというのが、『強化学習』と呼ばれるメカニズム。だから頭をよくしたければ、何か嬉しいと感じなくてはいけない」という。

 これはセガのPSP用ソフト「ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 アハ体験!」につながるもので、「算数の計算問題のように、答えが決まっていることを早くやることも重要だけれど、新しいことに気づくことも大事。気づいたときにドーパミンが出て、それが強化される回路をいかにして作るかというのが、あのゲームの命題だったんです」と語った。

 さらに茂木氏はトークの中で、「これからはコミュニケーション力と発想法が必要な時代です。読み書きそろばんも大切だけれど、ひらめきの栄養素を取り込まないと、面白いことになりません。このゲームは、日本人のひらめき養成ギプスとして作られたものです」とゲームのアピールも加えた。

 この他にも茂木氏は、自身の体験をいくつも例に引き出しながら、発想力の必要性とそのトレーニングとなる「アハ体験」を繰り返し説いた。トークの終了後には、数十人の来場者を相手にした質疑応答の時間も取られ、ひとつひとつの質問に対して丁寧に答えを返していた。



■ 茂木氏にPSP「脳に快感 アハ体験!」について尋ねる

 トークショーの後で茂木氏に少し時間をいただき、ゲームについてさらに突っ込んだお話を伺った。ゲームではキャラクタ化され、テレビのトーク番組でパーソナリティを務めるなど、露出の機会が多いが、本業はソニーコンピュータサイエンス研究所で「クオリア」を研究する脳科学者である。

 また茂木氏はゲームに対して肯定的で、インタビュー中には、学問などに有効活用するシリアスゲームについても関心を示していた。



――最初にセガからゲーム化したいという話を聞いたときには、どう思われましたか?

茂木氏 : 元々、ゲームに合った素材だと思っていましたので、「さすが、いいところに目をつけるな」と思いました。セガ社内でその企画を聞いた人は、最初は何を言っているのかわからなかったらしいですが、一目見ると面白いとわかったそうです。言葉で説明しても面白さがわからないんだけれど、自分で体験するとショックを受けますよね。

――そうですね。私も店頭で初めて「アハ! ムービー」のデモを見たとき、「これは変わっているな」と思いました。実際に見るまではイメージがわかないですね。

茂木氏 : 問題も最初は全然わからないのに、答えがわかると、何で今までわからなかったのかと思いますよね。そのコントラストが嬉しいでしょう。年齢や性別、学力とは違う能力を試しているので、お勉強系の脳トレーニングゲームとは一線を画している、ということだけは言いたいですね。

――今回はゲームの監修をされていますが、開発に対して具体的に要望や指示は出されたんでしょうか?

茂木氏 : ヒントや答えの出し方は、かなり打ち合わせをしました。ほかには、どういった刺激がいいのか、どうすれば見つかりにくいのか、といったことを経験則からお話ししました。刺激そのものの作り方ははっきりしているので、それをどうエンターテイメントに仕上げるかはセガの専門家が一生懸命にやったところですね。

――刺激の作り方とは、具体的にどういったものでしょうか?

茂木氏 : 色々なやり方があるんですが、どこが変わるかを予想させて、予想が高いところは避けていくとか。でもこの分野は、私も研究している最中で、わからないことだらけなんです。経験則としても完全にわかっているわけではないので、手探りで作ったんじゃないかと思いますね。

――PSPという携帯ゲーム機でゲーム化されることについてはどうお考えですか?

茂木氏 : 私はPSP向きのゲームだと思っています。これは自分がやった後に、他人にやらせたくなるゲームなんですよ。今までの携帯ゲームは、ひとりでやるものがほとんどでしたが、これはコミュニケーションを促すツールになっていると思うんです。携帯ゲーム機なら、まわして遊べますし。あとゲーム内容も、高精細な画面に向いています。PSPという携帯ゲーム機の特性を生かしたキラーコンテンツだと思っています。

――ゲームは「アハ! チェンジ」、「アハ! ムービー」、「アハ! カット」の3つが収録されていますが、この3つに絞ったのは何か理由があるのでしょうか?

茂木氏 : とりあえずはこの3つから。当然、次も、ということも考えてはいますが、この3つでもまだまだ遊べるんですよ。例えばドラマ仕立ての「アハ! カット」なんて、いくらでも作れます。色々なエンターテイメントの可能性があそこから出てきますよ。

――では、この3つ以外にも、まだまだアイデアはあると。

茂木氏 : ありますね。隠しダネとしては……。

――どんな、と伺ってもいいでしょうか?

茂木氏 : いやいや、ちょっとそれは(笑)。

――私自身、3種類を遊んでみて、もうちょっと違うゲームのタイプもやりたいと思いました。ですので、もし次を期待させるようなアイデアがあればお伺いしたいなと。

茂木氏 : 今まであった、「ウォーリーを探せ」などは静止画だったわけです。そうではなくて、動画で気づく気づかないという変化が起こるというのは、色々と可能性が考えられますよ。

――では脳に与える効果についてお伺いします。本作はプレイ後にスコア化されたものが出てきませんが、プレイすることでどういった効果が得られるのでしょうか?

茂木氏 : ひらめきの回路を強化する、ということに尽きます。まずわからない状態を経験してもらって、わかった瞬間の嬉しさを経験してもらうという一連の回路で、「強化学習」が起こります。専門的には「一発学習(One shot learning)」と言いますが、これを経験して、ひらめき回路を鍛えらえることがご利益です。

 今までの脳のトレーニングソフトというのは、繰り返しできるものじゃないですか。でも「アハ体験」というのは、1回しかできません。そこに深いフィロソフィがあるんです。脳の学習の過程で、1回だけの体験というのは非常に大事なんです。人生というのは、1回だけの気づきの繰り返しだということに気づいて欲しいんです。私は著書の中では一貫してそういうことを書いてきたんですが、本だと小学生は読んでくれません。でも「アハ体験」とゲームっぽく言うことで、そこから何か掴んでくれないかなと期待しています。

 コミュニケーション力や創造力を鍛えるということは一朝一夕にはできないし、ゲーム1つで鍛えられるようなものなら苦労しないんですが、それに少しでも近い体験ができるゲームとして、この「アハ体験」があるんです。「これをやると、あなたのコミュニケーション力と創造力が鍛えられる!」と言ってしまえばいいんですが、それは科学的には正しくないので。それに近い体験が得られるということです。

――トレーニング効果については、今までのソフトとは一味違う、と。

茂木氏 : もう少し実際的な意味で、「コミュニケーションを促すゲーム」ということは強調してもいいと思います。自分は1回しか楽しめないけれど、そこに潔さがあるし。1回だけ楽しんで、他の人にやらせてあげる。

 これからのゲームのカギって、プレイ時間の短さだと思っていたんです。例えば映画だったら、3,000円のDVDを買って2時間楽しんでよかったというのがありえるでしょう。可処分時間も限られているから、短い時間の中で濃密な体験ができて、面白かったという満足感が高ければ、私はそれでいいと思っています。そういうフィロソフィに基づいて作られているんです。

 ネットを見ていると「ボリュームが少ない」という声もありましたが、今までにない体験なので、面白いと思ってくれる人はいると思っています。お勉強系じゃない、ということが重要なんです。「非お勉強系 脳を鍛えるソフト」ですね。

――「非お勉強系」ですか、新しいキーワードですね。

茂木氏 : お勉強系ソフトが悪いと言っているのではなくて、あれはひとつの脳を鍛える要素であることは間違いないです。でもそれだけで現代社会を生きていけないことはわかっていて、日本人にああいうものでOKだと思わせることがいかに危険かということもわかっているので、少し批判的なことも言っているんです。あれ自体は脳にいい作用をもたらしますが、それだけじゃないですから。それだけじゃない、ということが日本人にすごく欠けているんです。

 ずっと待ち時間があって、ひらめくと0.1秒で世界が変わっている、という感覚を大事にしたいんです。これが科学者が創造性として追い求めてきたことですし。そういう体験をしてほしいということです。

――では最後に、ソフトを買ったファンの方、これから買おうかと思っている方に向けて一言お願いします。

茂木氏 : 理屈は置いておいても、体験として楽しいんです。絶対買って間違いないと思いますし、買った人はお友達にもやらせてみて欲しいです。そのときの会話が楽しいと思います。ひとりでやるよりも、大勢でやったほうが圧倒的に楽しいはず。みんなでワイワイやってください。

――ありがとうございました。

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 アハ体験!」のページ
http://aha.sega.jp/
□「ソニー・エクスプローラサイエンス」のページ
http://www.sonyexplorascience.jp/
□茂木健一郎氏のホームページ
http://www.qualia-manifesto.com/kenmogi.html
□関連情報
【6月21日】セガ、ソニーのイベント「アハ! 体験スクエア」に
PSP「脳に快感 アハ体験!」試遊台を出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060621/aha.htm

(2006年7月7日)

[Reported by 石田賀津男]



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