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会場:Square Enix Inc
3階の総合受付に入ると、全面ガラスを通して、LAXの広大な駐機場が広がっている。防音がしっかりしているためか、ジェットエンジンの爆音はほとんど聞こえないが、すぐ手に届くような位置に旅客の搭乗を待つ大型旅客機がずらりと並び、その隣では慌ただしく旅客機の離着陸が繰り返されるという、非常にエキサイティングな光景が広がっている。航空ファンとしてはたまらない風景である。 今年3月までは、スクウェア・エニックスの北米展開を担当するSEI本体は同じロサンゼルス郊外のフリーウェイ沿いにあり、一方、主に「ファイナルファンタジー XI」の運営を担当するオペレーションセンターは、サンディエゴのSony Online Entertainment(SOE)に外部委託していた。今年3月のSOEとの外部委託契約終了に伴い、4月からはすべて自社で運営を行なっている。
今回アテンドしていただいたのは、「ファイナルファンタジー XI」のワールドワイドの運営を担当するグローバルオンラインプロデューサーのSage Sundi氏。日本のメディアが取材するのはこれが初めてということで、楽しみにしながら新社屋を訪れた。
■ 現地法人機能とオペレーションセンターがセットになった新社屋
現時点では、SEI内部には開発チームは持っておらず、2004年に子会社化したUIEvolutionが、北米方面唯一の開発部隊ということになる。QAチームは、日本のQAとはやや性格が異なり、日本で開発したゲームのローカライズ周りのチェックが主な業務になる。これとは別に、接続検証など技術的なQAを行なうTQAチームもあり、いずれも「ファイナルファンタジー XI」に関する業務が多いことから、オペレーションセンターと同じフロアで業務を行なっている。 SEIの中でもっとも大所帯なのがオペレーションセンターで、機能としては、コーディネーションチームとオペレーションチームに分かれる。コーディネーションチームは、メディア対応やファンサイトに対する働きかけ、各種イベントの仕切りなどが主な業務となる。3月にロサンゼルス サンタモニカで開催されたファンフェスティバルもここの仕切りとなる。今回はE3期間中ということもあり、コーディネーションチームは誰もおらず閑散としていた。 オペレーションチームは、コールセンターと、ゲームマスター(GM)チームに分かれ、特にGMチームは3交代制による24時間体制で業務が行なわれている。ここはさすがにE3にもかかわらず、それぞれ20名程度のスタッフが大部屋に詰めてサポート業務を行なっていた。 コールセンターは、PCと電話がワンセットで置かれ、PCで顧客状況を確認しながら、ヘッドセットを使ってユーザーに応答していた。日本との違いは、ボイスによる応答だけでなく、Webチャットにも対応しているところ。ヘッドセットをしていないスタッフがWebチャット担当のようだ。
このコールセンターは、「FF XI」だけでなく、スクウェア・エニックスが北米で発売する全タイトルが対象となる。フロアには30台ほどのデスクがあり、スタッフ数は、時間帯、新作のリリース時期などによって動的に変化するということだ。
■ 謎に包まれた“GM部屋”を訪問
PCにはGMキャラでログイン中のゲーム画面が映っており、もう片方のPCには、俗に「GMツール」と言われるGM業務を行なうためのアプリケーションが起動している。複数のウィンドウを使い分けながら、サーバー内のあらゆる状況をチェックしている。GM画面は一種のビューアーに過ぎず、ほとんどの業務はGMツールによって行なわれているようだ。 GMにはリードGM、シニアGM、アドバンスドGM、役無しのGMの4つのグレードがあり、それぞれ与えられた職分と、GMツールで使えるGMコマンドが異なる。中にはGMでは使えず、田中プロデューサーとSage Sundi氏のふたりしか使えないようなGMコマンドもあるという。 ちなみに、欧米方面のユーザーを担当するSEIオペレーションセンターに届けられるGMコール数は、日本の3倍にも上るという。現在、同作のユーザー数は約50万人で、日本と欧米で5対5の割合だと発表されている。Sundi氏によれば、これは単純にトラブルが3倍というわけではなく、文化の違いだと言う。 日本では、比較的我慢してから初めてGMコールするユーザーが多いのに対し、欧米のユーザーは、問題に直面した時点で即GMコールを行なう傾向が強いという。中には「拡張版はいつ出るの?」という論外のGMコールもあるとSundi氏は苦笑するが、問題の程度としては日本に比べて軽いわけで、GMツールの効率化により、日本とほぼ同数のスタッフでも十分回していけるという。 なお、気になるGM活動の内容やGMツールの機能については、一切未公表ということで残念ながら何もお伝えできない。公表されている部分だと、公式サイト上でライブ映像を流しているLive Vana'dielに、不可視、不検知の透明キャラが登場することがあるが、GMはあの状態が基本スタイルで、我々の想像以上にヴァナディール中を飛び回っている。 GMツールについては、私も日本やアジア地域でさまざまなGMツールを見てきたが、アプリケーションとして独立していることすら珍しい上に、これほど多機能かつシステマティックなものを見たのは初めてだ。実際、欧米のMMOメーカーも「FF XI」のGMツールを欲しがるケースが多いという。これこそが「FF XI」運営の強みの源泉といっていいだろう。
■ ヨーロッパは実質これからが本格展開 ドイツ語、フランス語対応が鍵か
スクウェア・エニックスのヨーロッパ子会社Square Enix LTD(SEL)は、前述したように英国ロンドンにあり、現地法人として最小限の機能とヨーロッパ方面を担当するコールセンターを置いている。GM機能については、今回紹介したSEIに丸ごと委託という形を取る。コールセンターの対応言語は、日本が日本語のみ、北米が英語のみに対して、ヨーロッパのみ英語、ドイツ語、フランス語の3カ国語に対応する。 対象となる地域は、いわゆるPAL地域で、リーガルでは100カ国以上となるが、メインとなるのは、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダの6カ国。PAL地域なので、オーストラリアやサウジアラビアやロシアなども“一応”対応地域となる。道理でアルファベット以外の言語を使うユーザーが増えてきているわけである。 「ファイナルファンタジー XI」に関しては、現在のところ英語版のみで、現在、自動翻訳機能のドイツ語、フランス語版の開発が進められている(開発そのものは日本)。パッケージについては、英語版のほか、ドイツ語、フランス語バージョンがあり、さらにイタリア、スペインについては、英語版のパッケージに、イタリア語、スペイン語のクイックスタートガイドを付けている。 我々が想像した以上に難航していたのが、課金決済の部分。クレジットカードとウェブマネーでほぼ完結している日米と異なり、ヨーロッパでは国によってメジャーな決済手段が異なっているため、1国ずつひとつひとつ対応させていかなければならない。たとえば、イギリスではSolo/Switch、フランスではCarte Bleue、ドイツではデビッドカードといった決済手段に対応している。 ただ、今後ヨーロッパ市場の主要ターゲットとなるドイツは銀行振り込みが主流となっており、これは銀行との契約が必要になることから、ドイツの主要銀行を一軒一軒回るような地道な営業活動を続けているという。対応はまだだが、対応へのメドは付いたという。 今後の抱負としては、ドイツで8月に開催されるヨーロッパ最大規模のゲームショウ「Game Convention」にフォーカスを当てて、このタイミングで一定の成果を挙げたいという。それが何なのかについては「内緒です(笑)」とのことだったが、わかりやすい成果の挙げ方としては、ドイツ語対応版の出展、米国で行なわれたファンフェスティバルのような大規模オフラインイベントなどがある。いずれにしても、ヨーロッパはこれから成長を見込む市場として今後も力を入れていくということだ。 なお、インタビューの最後に、Sage Sundi氏が“おみやげ”として、日本を含むワールドワイドを対象に、ゲームコミュニティに対して、新しいスタイルのサービスを提供していくという構想を明らかにしてくれた。詳細については教えてくれなかったが、Webブラウザベースであり、「プレイオンライン」開発初期から企画していた構想ということで、実に5年越しのプロジェクトとなる。Sage Sundi氏によれば「近々」とのことなので、大いに期待したい。
□スクウェア・エニックスのホームページ (2006年5月19日) [Reported by 中村聖司]
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