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会場:Los Angeles Convention Center
NC SOFTブースでは本作の特徴を紹介したリアルタイムムービーと、ボス戦まで体験できるストーリー性の強い体験デモを出展し、来場者の注目を集めていた。出展されたバージョンではグラフィックスや世界観など「イメージ」は伝わってくるが、MMORPGとしての部分の作り込みはまだこれからとなる。そこで今回は、本作のディレクターを務めるJoohyung Jang氏に「AION」はどのようなMMORPGになるのかについて、抱負を語っていただいた。
■ ユーザーの発見により広がり変化し続けていく「AION」の世界 「AION」は、韓国のNC SOFTで「リネージュII」とはまったく違うMMORPGを目指して開発がスタートした。その時に考えられた方向性が、“プレーヤーの行動で変化する世界と、その世界がプレーヤーにフィードバックしていくという循環の関係”、“3つの種族が争う世界”、“SFともファンタジーとも違うオリジナルな世界”という3つのポイントだ。
具体的な世界の変化としては、たとえば村に2件の店があり、片方を使用するプレーヤーが多かった場合、使われない商店の方は規模が縮小し、やがて潰れてしまう。一方、繁盛している商店の方は店構えが扱う品目も多くなっていくという。 フィールドでは、更にダイナミックな変化が起こる要素がある。例えば鉱山で採掘をしていると、ダンジョンの入口を掘り当ててしまうこともあるという。「既存のMMORPGではフィールドの拡張はアップデートを通じてしか行なわれませんが、『AION』ではユーザーの行動がフィールドの拡張をもたらすのです。それにより更にプレーヤーの行動範囲は増えていきます」。 そうなると、各サーバーごとに状況がまったく違って来たり、せっかくのリソースが未発見のまま放置されるかもしれないということも状況としては発生するかもしれない。Jang氏は「サーバーごとの変化に関してはこちらも望んでいることです。世界にどのくらい変化の幅を持たせるかを決めていくのはこれからですが、サーバーごとに様々な特色が出てくるような状況を期待しています」と語る。 ただ、一般的に言って、ダンジョンの具体的な位置がいずれかのサーバーでわかれば、即座にインターネット上で情報が共有され、たちまちプレーヤー達は掘り当ててしまうだろう。そうなってしまえば、ユーザーの行動などではなく、単にタイミングの問題となってしまう。どのようにユーザーに発見させる仕組みを取り入れていくのか。広がっていく世界の具体像という部分は興味が惹かれるところである。 「AION」のコンセプトとしては、開発者が用意したフィールドをユーザーに開放するのではなく、ユーザー自身が未知の場所を明らかにしていくという気持ちをもてるようなものにしていくという。 また、世界設定の軸として、天族、竜族、魔族の3つどもえの戦いがあり、大規模な「種族vs種族」が行なわれる。プレーヤーは天族か魔族になり、竜族はモンスターとNPCで構成される。「AION」のユニークな点のは、この3種族は必ずしもあらゆる状況で敵対しているわけではないという点だ。 天族と魔族が手を組んで竜族を攻撃しても良いし、NPC達を仲間に引き込み、敵対プレーヤーの領土の縮小を狙っても良い。単純なPvPではなく、第3勢力をどうするかが「AION」の大規模PvPの鍵になるという。
「リネージュII」ではセブンサインという対立する陣営がポイントを競う大規模PvPが実装されているが、Jang氏はこのシステムを「AION」の方向性に少し近いもの、としながらも「もっと大きな変化が世界にもたらされる」と語った。現在はまだ具体的なシステムや競争要素は見えてきていないが、大いに期待したい部分である。 ■ “執念”を感じる世界観、アクション性と駆け引きを持たせた戦闘システム 今回E3に出展されたバージョンではプレーヤーは天族として次々と現れるモンスターを倒し、最後には巨大なモンスターに立ち向かうというものになっていた。イベントシーンでは突然プレーヤーの背中に翼が生え、飛翔するシーンなども見られた。また、開けた海岸に出るシーンでは巨大なエイのような生き物が空を舞っている姿などが見られ、演出、オブジェクト共に「異世界」を表現するためにスタッフがこだわりを持っているのが感じられた。
「AION」の世界観のテーマは「3つの種族がそれぞれ“執念”を持って抗争を繰り広げている」というものに集約されていくという。世界のあらゆる所から3つの種族の戦いへの想いを感じることができる。そしてこの世界の中心となるのが“永遠の塔”と呼ばれる塔「AION」である。現在、この塔はイメージイラストでその姿を確認できる。これが何であるかは、今後きちんと発表していくということだ。 「AION」の戦闘システムはアクション性を持たせたものになっている。PvPがテーマになる本作ではこの駆け引きが楽しめそうだ。プレーヤーを気絶させるような攻撃や、引き倒すことができるもの、さらにダウン攻撃なども用意されている。魔法使いなどは近づけさせないように、常に敵との距離を考えなくてはいけない。 また、スキルによってはキャラクタの周りに竜巻を巻き起こすような派手な「必殺技」も用意されていて、かなり激しい戦いが期待できそうだ。E3の会場で流れていたムービーではキャラクタが崖をジャンプで飛び越えるといったアクションゲームのようなシーンも見られた。 Jang氏は「オンラインのゲームは回線を使っている限り、様々な技術的制約があります。私たちは既存の技術から一段先に行くものを提示したいということで、ジャンプやキャラクタの位置関係などが関係していく、アクション性を持ったシステムを考えています。ただ、基本的に『AION』はMMORPGであってアクションゲームではありません。見ているだけの戦闘ではなく、楽しめる要素を盛り込もうという感じですね」と語る。 本作の美しいグラフィックスも特徴の1つだ。「AION」は、グラフィックスエンジンに「FarCry」で使用されたCrytekの「Cry engine」を採用しているが、これは様々なエンジンの選択から山や川などイメージの表現を一番美しく表現できるという結論に達したためだという。Jang氏をはじめとしたスタッフは「MMORPGにとって最も重要なのは“背景”の表現」と考えており、「Cry engine」のフィールド表現と、プレーヤーが広い範囲を見渡す事ができる点に強い魅力を感じているという。 「Cry engine」は本来MMORPGに特化した設計のエンジンではない。「リネージュII」の「Unreal engine」では、プレーヤーが多くいるととても重くなってしまうといった問題も起きた。Jang氏によれば「Cry engine」は「Unreal engine」に比べて多人数の表示はできるようになっているという。現在、「AION」では画面にどのくらいのプレーヤーが現われるかといったところはまだはっきりと決まっていないが、かなりの人数のプレーヤーが参加するレイドなどもうまく表現できるのではないかということだ。 また、E3で出展されたバージョンではクエストの合間に頻繁にリアルタイムのムービーシーンが入っていたのが印象的だったが、Jang氏は今回のバージョンはストーリー性を強調するためにあえて多めに入れたが、サービス時でも見所の1つとして随所に入れていきたいと語る。適切な量と、タイミングを考え、プレイをしているリズムと雰囲気を大事にしていきたいという。 最後にJang氏は「日本では、ゲーム市場は大きいのですが、MMORPGのプレイ人口はまだそれほど大きくないと思います。『AION』を通じてもっともっと多くの人がMMORPGをプレイしてくれるようになったらと思っています。是非、期待してください」とメッセージを送ってくれた。 今回、我々の前に初めて姿を現した「AION」はまだまだ明らかになっていない部分が多く、ゲームとしての正確な姿が見えてこないというのが正直なところだ。「Cry engine」を使用して、美しい風景を表現してはいるが、多くのプレーヤーが画面に登場した時、その表示はどうなるか、アクション性を持った戦闘システムだからこそ、操作性は最重要の課題となる。
韓国のトップMMORPGメーカーとして君臨するNC SOFTが「リネージュII」に続く大作MMORPGとして制作する「AION」は、韓国国内のみならず、日本やその他の国でも強い注目を集めていくだろう。世界観、システム、そして「循環の構造」と、想像力を刺激する要素は数多い。我々の度肝を抜くような、スケールの大きさを期待したいところである。
□NC Softのホームページ(英語) (2006年5月17日) [Reported by 勝田哲也]
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