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「リッジレーサー7」インタビュー
アソシエイトプロデューサー・寺本秀雄氏に聞く

発売日 未定

価格:未定

 4月28日に公開されて話題を呼んでいる株式会社バンダイナムコゲームスのプレイステーション 3用レースゲーム「リッジレーサー7」。ハードのローンチには「リッジレーサー」あり、ということで、本作も非常に期待が高まるわけだが、コンセプトとして大きな発表はあったものの、「RR7」の全貌はまだ見えては来ない。

 そこで、E3前の忙しいさなかにも関わらず、バンダイナムコゲームスのリッジレーサープロジェクト・アソシエイトプロデューサーの寺本秀雄氏に、「RR7」のコンセプトを中心にお話を伺うことにした。

■ 「ありえるありえなさ」、「爽快感」を基本にしつつ、カスタマイズやネットワークでの新しい遊びに挑戦する=「リッジレーサー7」

4月28日に公開された「RR7」の画像
―― ナンバリングタイトルとして「リッジレーサー(以下RR)」が「RR7」へとバージョンアップするわけですが、現在明らかにされている情報を拝見させていただくと、「RR6」と「RR7」の基本的な仕様はカスタマイズ要素以外は同じに見えるのですが……?

まず、「リッジレーサー」というタイトルが、プレーヤーの皆さんにお約束するものというものがありますよね。「リッジレーサーズ(以下RRs)」、「RR6」と今のスタッフで制作してきて、特に「RRs」が大きかったと思うんですが、プレーヤーの皆さんからの反応からも、「ここが『リッジ』のキモなんだな」……手軽で、爽快感があって、スピード感があって、ドリフトがあって……というところがスッキリ理解できたんですよね。

 E3出展ムービーの中にも入れた「Real Unreality」……僕らはありえるありえなさ、と呼んでいますけれど、“ありえるっぽいのにありえないことが起こる”ところが「リッジ」の面白いところなんですよね。初代の業務用「リッジ」にはクラッチがついていたりして、それこそリアルなものとして生まれたゲームだと思うんですが、その後シミュレーション的な考え方が出てきて……うちでも隣のチームで制作している「MotoGP」でもしっかりやっていますが、そういったゲームがあるなかで「リッジ」はどこを目指すのか、といえば、“ありえるっぽいのにありえないことが起こる”なんじゃないか。気持ちいいとか、友達と手軽に遊べるとか、そういった大事な部分が明確になっていったと。

 そこに基本を置きながら、「RR6」ではどういうことをしていこうか、となったときに、「RR6」ではネット対戦に挑戦してみようということになって、去年それが実現できたことを背景に、PS3もネットに対応するということで、当然僕らもそれに対応していこうとなったときに、「もっと面白いことってどんなことかなあ?」というところから「RR7」の1つの考えがスタートしているんですよね。

 カスタマイズを入れたのは、過去に「レイジレーサー」でも挑戦していましたし、「リッジレーサーV」でもエンジンを載せかえるということをやっていたと思うんですが、それをもう少し推し進めていこうということです。でも、カスタマイズというと「設定する」というか、いろんな項目を細かく設定していくという流れが想像できると思うんですが、それとは違います。

 1つが、「オンラインやオフラインで『俺、こんなクルマ作っちゃったんだよね』と友達に自慢したい」……今までなら走りやニトロの使い方を自慢していたところに、さらにマシンコンストラクションの出来栄えを自慢できれば面白いよね、という考えからのスタートです。主だったところとしては、ボディなどの外形、エクステリアのデザインを変えられるようにして、まわりに見せびらかせるようにしようと。

 そしてもちろん、走行性能関係のカスタマイズ要素もあって……えーと、詳細はまだ言えないんですが……例えばそうですね、「このクルマはすごくかっこいいんだけど、ドリフトの感じが俺に合わないんだよね」といったときに、マシンの性能を自分らしく合わせるないし育てるためのもの、という位置づけなんですよ。「リッジ」にとって手軽さは大事な要素ですから、インターフェイスも手軽に設定できるようになっていたりとか。

 まとめると、「ネットワークありのカスタマイズってどういうことでしょう?」とか、「『リッジ』らしいカスタマイズってどんなもの?」ということに挑戦しようということですね。ほかのゲームにあったから、うちでもやります、ということではなくて、ネットワークを前提とした「リッジ」らしいものを作るということで、カスタマイズというくくりで面白いものができるよ、という位置づけなんです。

 ネットワークに対応した遊びの部分も、もちろん強化しています。「RR6」をプレイしていて僕ら自身もわかったことがあったんですよね。「リッジレーサー」って業務用からスタートして、当時からみんなで対戦が手軽にできたじゃないですか。あの感じをネットで実現したい。ありえないドリフトっていう遊びのスタイルが、国境や地域を越えて共通している「リッジ」ならではの手軽さで、世界のどこにいても対戦できるものを目指していきたいんです。

 今でも、「どこどこのゲームセンターにはハンドルの状態がいい『レイブレーサー』が置いてあるよ」とか、ネットで書き込みがあったら遊びにいったりする人もいる。「RR6」ではいまだにタイムアタックの記録が塗り替えられ続けています。

 「RR7」では、そんな「リッジ」好きな人たちに、協力プレイで面白いことができるようにとか、コミュニケーションをもっと手軽にできるようなものを提供したい。プレステーションが本格的にネットワークにつながって、世界共通ルールで楽しもう、ということができるんじゃないかなと。グラフィックスも、PS2がDVD並みとすれば、PS3では映画並みの映像が出せるとか、音響も映画のような迫力が出せる。これだけでもある意味“次世代感”は出せると思うんですけれども、ネットワークを使うことで「世界共通項としての『リッジ』」が提供できるんじゃないかな、と思っています。

■ 操作感を重視した“60フレームのキープ”

「リッジレーサー Version 2010」の映像。SCEAのプレスカンファレンスでも上映された
―― 昨今、フレームレートに対して緩慢になってきたタイトルが増えた気がします。モーションブラーなどでスピード感を演出するなどするタイトルが増えた反面、「RR6」ではきちんと60フレームをキープしていたわけですが……。

確かにフレームレートは「リッジ」にとっては大きな問題で、カメラも横に大きく動きますし、操作感にもすごく影響する部分だと考えています。操作感はフレームレートだけの問題ではなくて、コントローラの反応や画面描画のオブジェクトの問題だったりするんですが、そういったいろんな要素があるなかで、「RR6」の時は60フレームをキープすることが最適解だと結論を出しました。それくらい60フレームは「リッジ」にとって重要だ、という認識ですので、「RR7」においても、かなりこだわってやっていくところだと思います。

 とはいえ、それによって描画が著しくスポイルされて、総合点としてドライビングフィールや爽快感がすごく悪くなってしまうようなことがあれば、そのときは60フレームをキープすることに対して、1回考え直す、ということもあるかもしれません。これから実際にゲームを作っていく中でいろんな技術的難関が待っていると思いますが、現時点では、60フレームをキープすることを否定することは起こっていないんですが、正直いって最終的な答えはまだわからないですね。将来のチームに聞いてみないと(笑)。

 操作感が悪くなったら「リッジ」としてはダメだと思うんですよ。爽快感のためにグラフィックスを描くし、爽快感のために操作性も設定するし、爽快感のためにサウンドもつけるわけですから、そんな中で今の答えとしては、“普通に”60フレームをキープするつもりでいます。

―― ネットワークでの対戦などでもそのあたりがシビアに出てくると思うんですが?

今まで「リッジ」を作ってきて、60フレームでの操作感がいかに気持ちいいかを知っているだけに、そう簡単には捨てないだろうな、というのはありますよ。業務用を通して、ずっとレースゲームを作っているチームだからこそ、その大事さはわかっていますし、そう簡単には変えられないですね。哲学みたいなところがありますから。

 だからといって、フレームレートを優先してほかを捨てる、というわけではなくて、爽快感を大事にするからこそのフレームレートですし、フレームレートさえ優先すればほかはなんでもいい、というわけではないです。どこが爽快なんですか? どこが気持ちいいんですか? ということの総合点にターゲットをあわせて作っているわけです。操作感も含めて最も気持ちいい状態で提供しますよ、と。その気持ちよさは信頼してほしいですね。

―― 4月28日の段階で公開されたテクニカルテスト画像ですが、これは実際のゲームでは何割ぐらいが実現されそうなものなんでしょうか?

テクニカルテストで出力された映像。建物1つとっても圧倒的なクオリティ
あれならすべて実現できるんじゃないでしょうか(笑)。また、あれで精一杯ということでもないですね。1回取り合えず作ってみて、こうなるんだな、という例ですから。チームも日夜実際に開発しているわけだから、プレーヤーの皆さんに「僕らもがんばってるよ」というメッセージも込めて公開したものなんです。「実際のTV画面を想定してみたら?」というテーマでのテストでこうなった、というものなんですよ。これでもまだ、試していないシェーディング関係だとかいっぱいあるので、それを逆算しながら作ってみたものです。

 実際にやってみて僕らも「ここまでできるんだな」と驚いた部分もありますし、これから追加されるものも含めてこうなっていくんだろうなといった青写真がみえてきた感じです。映画でいえばとりあえず大道具ができてきた準備段階で、バシッとスナップ撮影したところというか。

―― グラフィックスにあまり詳しくない人が見たとき、あの画像の見所はどこなのか? ということを教えていただきたいんですが。

最初のメッセージは「ちゃんと作ってますよ」ということなんですが(笑)。ゲートの部分の細かさや、ビルの窓の作りこみだとか、ポリゴン数的意味合いやテクスチャの解像感もそうですが、デザインの部分にも注目してほしいですね。SFとか犯罪っぽいとかいろんなコースの作り方があるなかで、今回もちゃんと今までどおり、「リッジ」は「リッジ」ですよ、というところです(笑)。

 次に画像を公開できるときは、また進化したものをお見せできると思いますので、続報をお楽しみにしてほしいですね。

■ ネットワークへの取り組み方の違いが「RR7」の新しい遊びを提供する?

ネットワークを使った新たな遊びが「RR7」の重要な鍵を握りそうだ
―― 個人的な捉え方かもしれませんが、いつのまにか、「リッジ」というゲームは、ハードウェアのローンチタイトルとしての存在感のほうが、ゲームそのものよりも先行したイメージになってきている気がします。その中で、「RRs」というタイトルは、「リッジ」の存在感をリセットして、再びゲームとしての魅力をアピールできたタイトルだと思うんです。ただ、「RR6」を見ていると、据え置きハードのソフトとしての「リッジ」って、これからどうなっていくんだろう? という不安のようなものがあったんですよね。シミュレーターでもない、マシンがクラッシュするでもない、「リッジ」、そして「RR7」の立ち位置というか……。

単にゲームを複雑にしたり難しくするっていうのは「リッジ」には合わない気がするんですよ。初代リッジ以降いろんなゲームが出てきましたけれど、依然としてヘアピンを 200km/hで回ることができるゲームは「リッジ」しかないんですよね。すさまじい大ジャンプが楽しめるだとか……それを14人でわいわい楽しめる、と いうのは、ほかにない。そんな中で僕らが「リッジレーサー」という名前を冠するからには、そういったリッジならではの部分をきちんと提供していきたい。

 「気持ちいい」、「速い」といった「リッジ」らしさの部分はユーザーのみなさんの反応からも「いらない」ということはないですし、PS3になって僕たちがやることがなかったらもちろん作らないと思うんですけれど、新しいハードの仕様を聞いて、ソニー・コンピュータエンタテインメントの技術スタッフの皆さんと話をして、「もっと面白いことができそうだな」と思ったんですよね。

 だからといって、単純にそのままでいいといった思考停止ではなく、僕らの作り方として、次のゲームの中身を考えていくときに、ディレクターの小林を中心にして「ここはどうしたらいいかな」と全てのファクターについて再度考えるんですよ。考えた末に「このままでいこう」という部分はその ままになりますし、「ここは変えたほうがいいんじゃない?」というところをアップデートしていく、といった形になってますから……。

 一方で、SCEの方々と話をしていると、まずネットワークに対する彼らの取り組み方が違うんですよ。わかりやすい例でいうと、PS3のネットワークはオープンになるという話がありますよね。PCからもケータイからも見られるという。そういったフリーのネットワークに対して、僕らからも「こういったことをやったら面白いんで一緒にやりましょう」と提案していることもいっぱいあるんですよ。マッチングして、レースして……だけじゃないオンラインの形を見せられるんじゃないかなと。

―― その中で、「RR6」と「RR7」のはっきりした違い、というのはどこに生まれるんでしょうか? まだ言えない話も多いと思いますが……?

「RR7」では、遊び方の提案というか、楽しみ方の提案ができるんじゃないかという気がしているんですよ。「RR6」までは、ハードの枠組みのなかで楽しむ、という形ですが、PS3が発売された後、PS3が楽しい、ということはもちろんあると思うんですが、我々としては、「『リッジ』がこれだけ楽しいんだよ」というところをどうやっていくか、というところで、ネットワークやカスタマイズを押し出してきたわけです。そのために、これからやらなければならないことがいろいろあって、そこがポイントなのかな、と思います。

 PCも昔はネットワークにつながっていなかったじゃないですか。インターネットの時代になって、動的にいつでもつながっているという状況になった。常につながっている、ということで、そういう部分に挑戦していきたいな、と思っているんです。SCEさんの新しいPSネットワークの構想を聞いていると、そういった新しい楽しみ方ができるんじゃないかと。ただ、常時接続じゃないと遊べない、とか、面倒なことをしなければ遊べないということにはしたくない。そのあたりはSCEさんとも意見交換をしているところです。

 ハードが高度になればなるほど、それだけでは、ついていく人たちは減っていってしまう。高度になればなるほど、だから簡単にできるというところをがんばっていかないと……。「RR7」では、そこをどうやって伝えていくかがポイントで、そこを今考えている状態ですね。

 「リッジ」は、ある意味遊び方自体はもう、みなさんがある程度理解できていて、そこから変わった部分を見せていけるのがいいところだと思うんですよね。「PS3でこうやって遊ぶんだ」というところをわかりやすい形で楽しんでいただける。ハードの機能をプレーヤーが使えるようにする、というところがソフトの役割じゃないですか。ソフトがなければただの箱、という言葉がありますが、まさにそれで、僕らが「PS3以降の遊びってこうなるんだぜ」って見せていかないと。それが「リッジ」の役割だと思うんですよね。

 PSPの時も、開発機がまだなかった段階で発泡スチロールに鉛のウェイトを入れてモックアップを作って手に持ってみて、その手の中に125dpiの解像度で絵が出る、じゃ、どういうことができる? ということで作ったのが「RRs」であって、それまでの携帯機と違う、“PSPというハードでどんな遊びができるのか”をワールドワイドで150万の方々 に提案できたかな、と思っているんですよ。それと同じことをPS3というハードを理解し、かつ僕らも「こういうことができますから、システムを変えてくだ さいよ」という勢いで今制作してるんで。“PS3でどう遊びが変わるか”というところが「リッジ」を通して見えてくるんじゃないかな、と思っています。

―― PS3というハードの機能が、ソフトを介してどう出てくるんだろう? それを「RR7」ではどう使ってくるんだろう? というところも気になります。

今僕が感じているPS3の情報は、クルマで言えば、エンジンはV10で、タイヤはこんなものを 使っています、エンジンは縦置きでミッドシップレイアウトで……というスペック的なことぐらいじゃないかと思っています。でも、実際にプレーヤーが体験することって、そのクルマに実際に乗ったらどんなことを味わえるのかってことですよね。単純なエンジンのスペックだけでドライビングフィールがすべて伝わるわけではなくて、これに乗ったらどこまで旅行できるのか、どんな遊びができるのか、といったところがまだ出てきていない。ひょっとしたらE3でも出てこないかもしれないと いう気すらしています。

 他社さんがどんなデモをやってくるかわからないですが、今の僕たちが知っている開発状況を考えると、PS3というクルマのドライビングフィールは、この5月の段階では100%わかりきらないんじゃないかな、と思うんですよ。

 なので、E3の出展映像に僕らは「リッジレーサー VERSION 2010」とタイトルをつけて、PS3というハードウェアに対して理解が進んで、最終的にどうなるか、というイメージをみんなで描いてみたんですよ。

 PS2の時も、ナムコから「鉄拳タッグトーナメント」や「RRV」を出した頃と、「エースコンバットZERO」や、「Grand Theft Auto 3」や「塊魂」、または「God of War」といったいろんなタイトルが出てきた今の状況ってぜんぜん違うと思うんですよ。それぐらいハードは理解されることで変わっていくと思うので、PS3っていうハードのドラ イビングフィールはぜんぜん変わっていくものだと思うんですよね。そこまで1回想像してみようよ、ということで、あの映像に僕らがこめたいろんなメッセージや僕らの考えというものが、「『リッジレーサー』がどう変わっていくか」というところを表現したつもりです。

 「RR7」はある意味その鏑矢というか、ファーストステップが楽しめるものになるんじゃないかなと。ただの初期タイトルではなくて、その先を見据えてどう変わっていくかを見せてあげられる、そんなタイトルになるんじゃないかと考えています。

―― ありがとうございました。

(C) NBGI

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□製品情報
http://namco-ch.net/ridgeracer7/index.php
□関連情報
【4月28日】14人のオンラインバトルが楽しめ、マシンカスタマイズ機能も搭載
バンダイナムコゲームス、PS3「リッジレーサー7」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060428/rr7.htm

(2006年5月10日)

[Reported by 佐伯憲司]



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