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Game Developers Conference 2006現地レポート

「ワンダと巨像」がBest Game of The Yearを含む5部門で賞を獲得!
「6th Annual Game Developers Choice Awards」

3月20~25日開催

会場:San Jose McEnery Convention Center

 米サンノゼにて開催されている「Game Developers Conference(GDC)2006」にて、3月23日(現地時間)、「第6回Game Developers Choice Awards」の授賞式が開催された。

「ワンダと巨像」のディレクター・上田文人氏と、リードゲームデザイナーの細野淳一氏(左)
 「Game Developers Choice Awards」は、IGDA(国際ゲーム開発者協会)メンバーのゲーム開発者達の投票によって、ゲーム制作における創造性や技術、センスなどを評価し、表彰する賞である。会場のCivic Auditoriumがあふれるほどに来場者が詰めかける、極めて注目度が高いイベントだ。

 投票は事前に行なわれており、会場では表彰のみが行なわれる。ノミネートされた作品は下表を参照していただきたい。驚かされるのは、会場の反応の大きさである。ノミネートされた作品のタイトルがコールされるたび、来場者から歓声と拍手が沸き上がる。そのタイトルをきちんと理解し、「好きだ」という感情が伝わってくる反応なのだ。タイトルによっては反応があまりなかったり、ひときわ拍手が大きかったりと、とても素直なのが面白い。

 賞は最優秀作品「Best Game」の他に、「Audio」、「Character Design」、「Game Design」など様々な部門がある。今年度の注目作としては、このイベントの前、GDCにおいて大人気のセッションを終えたばかりの、「Innovation」、「Game Design」、「Character Design」、「Technology」、「Visual Arts」、そして「Best Game」と6部門にノミネートされている「Shadow of the Colossus(ワンダと巨像、SCEI)」、そして、同じく6部門にノミネートされている「God of War(SCEI)」、4部門にノミネートされている「Guiter Hero(Harmonix Music Systems/RedOctane)」、3部門にノミネートされている「Nintendogs(Nintendo)」といったあたり。

 他にも、「We Love Katamari(みんな大好き塊魂、Namco)」、「Resident Evil 4(バイオハザード4、Capcom)」「Psychonauts(Double Fine Ploductions/Mujesco Entertainment Company)」といったタイトルが発表されたときに会場が大きく盛り上がった。

 この他にも「Electroplankton(エレクトロプランクトン、Nintendo)」や「Animal Crossing: Wild World(おいでよ どうぶつの森、任天堂)」など、日本制作のタイトルが多く名前を連ねた。会場での日本タイトルの人気は意外なほど、とても大きいと感じられた。

 さて、受賞の結果は以下の通りである。

・Audio:「Guitar Hero」

・Character Design:「Shadow of the Colossus」

・Game Design:「Shadow of the Colossus」

・Technology:「Nintendogs」

・Visual Arts:「Shadow of the Colossus」

・Writing:「Psychonauts」

・New Studio:Double Fine Productions

・Best Game:「Shadow of the Colossus」

ゲーム開発に影響を与えた開発者のキャリアと業績を認定する「Lifetime Achievement」を受賞したリチャード・ギャリオット氏。「私は若い頃からゲームを作っていて、チームとなってウルティマシリーズ、ウルティマオンラインを生み出してきた、今は新しい友人を得てゲームを作っている」と語っていた
 ふたを開けてみれば、ノミネートを1つ逃しただけで、すべてをかっさらっていった「Shadow of the Colossus」の圧勝という感がある。「Shadow of the Colossus」のチームは表彰されるために何度もステージで挨拶した。その中でディレクターの上田文人氏は「Game Designの賞が欲しかった」と語っていたが、氏は壇上に上がる回数が増えるにつれ、「こんなに何度も話すとは思わなかったので、コメントを用意していなかった、ありがとうございました」、そしてBest Game受賞時には、「Game Designの時には一番欲しかったと言ったが、本当はこの賞が一番欲しかった」と本音とも取れるトークで会場を大きく沸かせてくれた。

 ノミネート作品から受賞作品を見ると、携帯ゲーム機などの“カジュアルゲーム”が受賞していない。ひょっとして、「大作志向」の向きもあるかのな、とも思うのだが、それならば「God of War」がもっと評価されるはずである。

 また、昨年は「塊魂」が“Game Design”を受賞している。ノミネート作品のラインナップから見ても、カジュアルゲームから、大作ゲーム、さらに「Guitar Hero」のような(制作者の受賞のコメントは「Rock'n Roll!」)COOLなゲームもあり、制作者たちが選ぶからこそ、生の感情が見える、独特のリアリティーを持った賞であると感じた。いずれも、製作者の苦労が見えるというか、ソフトウェアの作りこみは言うに及ばず、ハードウェアの選択から、そこで生み出される作品のパワーを評価しているようにも見える。

 さて、このAWARDの会場が常にハイテンションだった理由の1つとして、運営側の“粋”な計らいがある。賞が次々に発表される合間に、低予算バリバリのギャグムービーが挿入されるのだ。

 例えば、任天堂の「ルイージマンション」のパロディーでは、お化け屋敷として有名な観光地「ウインチェスター ミステリーハウス」にルイージの恰好をした役者が掃除機を振り回し、その騒音で係員からつまみ出され観光客から白い目を浴びる。

 SCEIの「ICO」のパロディーでは、ICO役の男性は、所かまわずヨルダを呼び寄せるため奇声を上げ、手をつないで様々な場所を移動し、ヨルダはちょっとした段差でもまごつき、ICOに向かって手を振り助けを求める。そして、“影”も登場。全身タイツで登場し、ICOに木の棒で殴られ、噴水に落とされる(ここで大爆笑)。周りの人たちは訳がわからず、彼らの奇妙な寸劇を、少し気味悪そうに眺めている。このギャップが最高に楽しい。

 この他にも、セガの「獣王記」やデータイーストの「バーガータイム」などのゲームを題材にパロディーが流れ、会場はそのつど爆笑の渦に包まれた。知らない人には彼らはただの奇妙なパフォーマンスをしているだけだが、会場のほとんどの人間は元ネタのゲームを知っていて、悲しいくらいにゲームに忠実に行動しているのが「わかる」のだ。会場全体が「ゲームが好き」であることを再認識させてくれるのである。

 正直、日本のゲームの授賞式が来場者間で盛り上がらないのは、こういったいい意味での遊びの領域を惜しげもなく披露するところにもあるのではないだろうか? 「ゲーム好きな人たちが、自分が好きなゲームを選び、制作者を褒め称える」というこのイベントは、アメリカならではのノリもあることは否めないが、日本のイベント運営者もぜひ、参考にしていただきたいものだ。

「ワンダと巨像」のプロデューサーを務めた海道賢仁氏も「Best Game」の祝辞を述べた 会場で反響の大きかった「Psychonauts」は「Writing」部門を受賞 「Audio」部門を受賞した「Guitar Hero」
ぱっと見ただけでもとネタのわかるパロディは会場で大ウケ

■ 「ワンダと巨像」チームの受賞コメント

――圧勝といった感じですが、予想はされていましたか? セッションも人気でしたし、どこが開発者の方々に受け入れられたと思いますか?

上田氏 まったく予想もしていませんでした。「ワンダと巨像」も評価していただいたんですが、「ICO」の評価も今回の肥しになっているんじゃないでしょうか?

海道氏 やっぱり、上田を筆頭に、チーム全体が「ほかのゲームとは違う、もっとすごいものをやろう」というコンセプトが評価された結果だと思います。がんばっている人たちが、世の中の人たちに評価されるのはすごくうれしいですね。

――「ICO」のパロディビデオはいかがでしたか? みなさん大ウケでしたが?

上田氏 とても面白かったです。ぜひあのビデオをください(笑)。

――こうなると、次の作品にも期待がかかると思うのですが?

海道氏 この受賞はチームのみんなにも自信につながると思いますし、プレッシャーにならない程度に、その自信に負けないように、「もっといいもの、もっと違うもの、もっと新しいもの」に挑戦していければいいなと思っています。これは僕自身のコンセプトですが、ゲームには新しい刺激が必要だと思っているんですよ。そのためには新しいゲームデザインが一番近道だと思っているんですけどね。やっぱりやるからにはすごいことをしてほしいし、新しいことをしてほしいと思っています。

――おめでとうございました。


【「6th Annual Game Developers Choice Awards」ノミネート作品】
※()内は制作スタジオ/パブリッシャー)

■Audio
・Call of Duty 2 (Infinity Ward / Activision)
・Electroplankton (Nintendo)
・God of War (Sony Computer Entertainment America)
・Guitar Hero (Harmonix Music Systems / RedOctane)
・Project Gotham Racing 3 (Bizarre Creations / Microsoft Game Studios)

■Character Design
・City of Villains (Cryptic Studios / NCsoft Corporation)
・God of War (Sony Computer Entertainment America)
・Oddworld:Stranger's Wrath (Oddworld Inhabitants / Electronic Arts
・Psychonauts (Double Fine Productions / Majesco Entertainment Company)
・Shadow of the Colossus (Sony Computer Entertainment Inc.)

■Game Design
・Animal Crossing: Wild World (Nintendo EAD / Nintendo)
・God of War (Sony Computer Entertainment America)
・Nintendogs (Nintendo EAD / Nintendo)
・Psychonauts (Double Fine Productions / Majesco Entertainment Company)
・Shadow of the Colossus (Sony Computer Entertainment Inc.)
 Junichi Hosono, Fumito Ueda

■Technology
・Battlefield 2: Modern Combat (Digital Illusions / Electronic Arts)
 Fred Gill, Mans Vestin
・Guitar Hero (Harmonix Music Systems / RedOctane)
 Eran Egozy, Eric Malafeew, Phil Winston
・Nintendogs (Nintendo EAD / Nintendo)
 Tsutomu Kaneshige
・Project Gotham Racing 3 (Bizarre Creations / Microsoft Game Studios)
 Edmund Clay, Roger Perkins, Phil Teschner, Ian Wilson
・Shadow of the Colossus (Sony Computer Entertainment Inc.)
 Jinji Horagai, Takuya Seki, Hajime Sugiyama, Masanobu Tanaka

■Visual Arts
・God of War (Sony Computer Entertainment America)
 Steve Caterson, Terry Smith, Charlie Wen
・Project Gotham Racing 3 (Bizarre Creations / Microsoft Game Studios)
 Gren Atherton, Julie McGurren, Peter Roe, Kiki Wolfkill
・Resident Evil 4 (Capcom Production Studio 4 / Capcom Entertainment)
 Yusuke Hashimoto, Yoshiaki Hirabayashi, Yusuke Kan, Masaki Yamanaka
・Shadow of the Colossus (Sony Computer Entertainment Inc.)
 Koji Hasegawa, Masanori Kajita, Hironobu Nakano, Fumito Ueda
・We Love Katamari (Namco Limited / Namco Hometek)
 Keita Takahashi, Takeshi Ugajin

■Writing
・Freedom Force vs. The 3rd Reich (Irrational Games / Vivendi Universal Games)
 Ken Levine
・God of War (Sony Computer Entertainment America)
 David Jaffe, Marianne Krawcyzk, Alex Stein
・Indigo Prophecy (Quantic Dream / Atari)
 David Cage
・Jade Empire (BioWare Corp. / Microsoft Game Studios)
 Drew Karpyshyn, Brian Kindregan, Luke Kristjanson, Mike Laidlaw, Peter Thomas, Mac Walters
・Psychonauts (Double Fine Productions / Majesco Entertainment Company)
 Tim Schafer, Erik Wolpaw

■Best Game
・Animal Crossing: Wild World (Nintendo EAD / Nintendo)
 Katsuya Eguchi, Hisashi Nogami, Takashi Tezuka, Kazumi Totaka
・God of War (Sony Computer Entertainment America)
 David Jaffe, Shannon Studstill
・Guitar Hero (Harmonix Music Systems / RedOctane)
 Rob Kay, Greg LoPiccolo, Alex Rigopulos
・Shadow of the Colossus (Sony Computer Entertainment Inc.)
 Kenji Kaido, Yasuhide Kobayashi, Fumito Ueda
・The Movies (Lionhead Studios / Activision)
 Gary Carr, Peter Molyneux, Mark Webley

■New Studio
・ArenaNet (Guild Wars)
 Mike O'Brien, Jeff Strain, Patrick Wyatt
・Double Fine Productions (Psychonauts)
 Caroline Esmurdoc, Tim Schafer
・New Crayon Games (Bonnie's Bookstore)
 Phil Steinmeyer ・TellTale Games (Bone: Out From Boneville)
 David Bogan, Kevin Bruner, Dan Connors, Troy Molander
・Wideload Games (Stubbs the Zombie in Rebel Without a Pulse)
 Alexander Seropian

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□Game Developers Choice Awards
http://www.gamechoiceawards.com/

(2006年3月23日)

[Reported by 勝田哲也+佐伯憲司]



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