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価格:各2,625円(税込)
ゲームの文化的価値を見直そうと、近年さまざまな活動が行なわれるようになったが、このままではその火種さえ“風前の灯”になりかねない。企業活動についてはいわずもがなで、商業ベースで成立するだけの“市場”と“ユーザーの認知度”があってこそ。慈善事業ではないのだから、採算の取れないシリーズを続けていくわけにもいかない。 そんななか、株式会社セガの新生「SEGA AGES」シリーズはなんとか継続できる目算が立ちつつあるようだが……。2月23日には「SEGA AGES 2500シリーズ」、「Vol.22 アドバンスド大戦略 -ドイツ電撃作戦-」と「Vol.25 ガンスターヒーローズ ~トレジャーボックス~」の2タイトルが発売された。
こんな世の中になってしまった以上、社内外のボランティアに支えられているに等しい「SEGA AGES 2500シリーズ」の存在意義は、ゲーム業界にとって計り知れないほど大きいのではないだろうか。単なるリバイバルやリメイクではない“本質を遺す”ことの大切さ、とでもいうべきか。そのことに、もっと大勢の人に気付いて欲しいと願い、本プロジェクトの中核にいる奥成洋輔氏に再びご登場願うことと相成った。「いや、そんなに気負われても困るんですけど」と担当編集者になだめられつつ、30代オヤジで構成されたインタビューチームはセガ本社を訪れるのであった。
■ 「SEGA AGES 2500」シリーズはまだまだこれから!
奥成 正直なところをいいますと、まだ最初に発表したすべてのソフトを発売していないので……4月に「ダイナマイト刑事」と「パンツァードラグーン」を出して、初めて感覚がつかめるかな……なんともいえないですね。今回でやっと5本目になるので、つかみきれていないところがあります。「スペースハリアーII」と「SDI&カルテット」に関しては、少なくとも購入者の満足度は確実に上がったという自負があるんですけど。 ただ、その一方で……これはボクのせいかもしれないんですけど「マニアックすぎて、このゲーム知りません」というお客さんも出てきてしまって(苦笑)。そのあとに出た「メモリアルセレクション」も、収録全タイトル……オリジナルとアレンジで5本ずつ計10本、古いゲームと新しいゲームの両方が楽しめますというイメージで出したんですが、「トランキライザーガン」や「ヘッドオン」などのオリジナルを知らないお客さんが多くて。もしかすると、知っているお客さんに届いていないのかもしれませんが。 ―― 「知らないものに初めて触れる」興味よりも、「知っているものを懐かしむ」感覚のほうが購買につながりやすいんでしょうか? 奥成 そういうことなんでしょうね。「SEGA AGES 2500シリーズ」というブランドに、お客さんが安心感を持って「どれでも買ってみよう」というところまで、まだ至っていないんだな、と。もしかすると、今後このブランドを知った方に引き続き買ってもらえるよう、そこは頑張らないといけないなと思ってますけど。 喜んでくれた方には「みんなに宣伝してください!」と言っているんですけど(笑)、やはりファン同士のコミュニケーションから“いいものであれば、もっと伝わって買ってもらえる”と。それで、どれくらい本数が伸びるかはわからないんですけど、少なくとも「SEGA AGES 2500シリーズ」が維持できるくらいのファンについていただければ、セガとしてもこのシリーズをいつまでも出すことができる、と。今は、結構「頑張ってます」というところですかね(笑)。
奥成 う~ん、そうですね……同じ面白いものであっても、やはり「有名な面白いものを先にやんなくちゃいけないんだな」という(一同笑)。あとは、ジャンルの問題もあるかもしれない。もっとも「SDI&カルテット」が5万本売れるとか、そういうふうに思っていたわけではないんですけど。 ―― 自分の世代は、まさにピンポイントなんですけどね……。 奥成 そういう方が、もっとお店に、ゲームショップに足を向けてくれれば、結構買ってくれるんじゃないかなと。PS2を持っていない人は、そうそういないと思いますので。ただ、今はもう先々のラインナップを発表済みなので、あとはタイトルを1つ1つ満足のいくものにできるよう頑張っていく。そのうえで、反響を見ながら次に活かしていけるよう皆様の意見をきいているところですね。それは、売上的なこと、ユーザーさんの反響と両方です。本当に(ユーザーの)声をたくさん聞きたい。 ―― イメージ的には、思い入れを持って買うものだから反響も大きいと考えがちなのですが……。 奥成 そうなんですけと、意外とそうでもないかな。現在、セガのソフトはWebでもアンケートを返せるようになってますので、なるべく買っていただいてからひと通り遊んで、そのうえで色々考えながらアンケートを書いていただければありがたいです。
■ やはり難産だった「ガンスターヒーローズ ~トレジャーボックス~」
奥成 本当は同時期に出したかったんですけどね(一同笑)。全然違うところで動いていて、途中で「GBAでリメイクが出るの!?」と聞いてビックリしたんです。で、せっかくだから“何か連動ができるといいね”って話もあったんですが、さすがにGBAとPS2の連動は難しかったりしますし。うちの開発が延びてしまっていたので……大変でしたね。素人目でいくと、これまでメガドライブ作品のPS2移植作はいくつも実現してるから「(これも)簡単にできるんじゃないか」って考える人もいると思いますし。 ―― 以前のインタビューにもあった「メガドライブのエミュレーターがあるんだから簡単じゃないの?」という? 奥成 それがそうではない、というのは以前お話したとおりなんですけど、それが今回、一番難易度の高いところで……。「エイリアンソルジャー」に至っては、セガサターン発売以降の'95年に発売されたメガドライブ作品なので、ハードの使い方が限界ぎりぎりで、普通やらないことをしている。そういうところを完全に再現するのが大変で……そこに関しては開発元のエムツーとかなり喧々諤々やりました。 ―― 今回「トレジャーボックス」は3タイトル同時収録になっていますが、これは、まずはじめに「ガンスターヒーローズ」ありきの企画だったんでしょうか? それとも「トレジャー作品」から3タイトルを選抜した結果ですか? 奥成 これはまず「ガンスターヒーローズ」を移植したいというのがあって。ボクは「ガンスターヒーローズ」1本でも十分魅力は伝えられると思ったんですけど、みなさんの意見を聞いた限りでは「ソフトはたくさん入ってて欲しい」という部分であったり。 ―― 全体的なボリューム感とか? 奥成 そうですね。「SEGA AGES 2500シリーズ」をセガ単独で続けていくことになったときに、このシリーズを立ち上げたシリーズ統括プロデューサーの下村と、セガに持ってくるうえで色々考えたなかで「バーチャファイター2」のときに行なった“完全移植路線”は、もう少し突き詰めていくべきだという話があった。そのとき、完全移植に何らかの新たな商品価値を求めるなかで、じゃ、ボクなりに何をすべきかを考えた結論として「それ以上のものを提供してあげるべきだろう」と。 その1つはパッケージングで、あとはそれ以外の価値。ギャラリーモードに凝ったのは特にそういう部分で、セガにしか出せないものをゲームやマニュアルに入れていく。マニュアル自体に価値を持たせたいなっていう。あとは、コレクションするときのパッケージとして、このソフトを持っていればすべてがわかるというもの。「スペースハリアーII」のときがそうだったんですけど“この1本ですべてが語れる”っていうのを、他のソフトに対してもやっていきたい。今回は「ガンスターヒーローズ」をパッケージングしていくなかで、より高いところを目指そうとしたときに「じゃ『エイリアンソルジャー』を加えよう」と。「エイリアンソルジャー」単体で2,500円といっても、知名度の点でさすがに商品として難しいところがある。それなら「ガンスターヒーローズ」と「エイリアンソルジャー」のカップリングであれば、みんな喜んでくれるんじゃないか、と。 ―― すいません、「ダイナマイトヘッディー」の名前が出てこないんですが……。 奥成 ……といったなかで(笑)! この機会がないと出せないってチャンスがあったときに……「SEGA AGES 2500シリーズ」という限られた本数のなかで、この先、何本のゲームを世に出せるんだろう、と。 やりたいゲームは、もう何本もあるんですね。最初にラインナップを組んだら毎月3本で計30本くらいになって「お前、いくらなんでもそりゃ無理だよ」っていうところから減らしていった部分が今のラインナップになっているんです。そうすると、1本に対する使命がどんどん増えていく。もちろん「ダイナマイトヘッディー」っていうのも別のところにいたりして(笑)。そこで、「ガンスターヒーローズ」と「エイリアンソルジャー」だったら「ダイナマイトヘッディー」も……。
奥成 “トレジャーボックス”な感じがするよね、というところですね。これで2,500円はかなり安いよね、って誰にでも言ってもらえるところになったのかなと。 ところが、それでいったん終わっていればいいものを、さらにやってしまったのがゲームギア版「ガンスターヒーローズ」と「ダイナマイトヘッディー」、その派生のマスターシステム版「ダイナマイトヘッディー」。この3本が入ったことと、あとは「ダイナマイトヘッディー」を入れるんなら「絶対に海外版も入れたい!」と思っていたので。「ダイナマイトヘッディー」だけ海外版が入っているってのもおかしな話ですから、それで“『ガンスターヒーローズ』と『エイリアンソルジャー』の海外版も入れましょう”と。 ところが、その「エイリアンソルジャー」は北米で出てないんですよ。ヨーロッパ版だけが発売されたんです。つまり、ソフトがPAL方式にしか対応していない。ソフトは手に入れたものの、今のエミュレーターに入れると動かないんですよ。それで、本当にソフトの完成ギリギリまで誤動作してて「『エイリアンソルジャー」だけ(海外版が)入らないんじゃないか」っていうところがあったんですけど、まあ、なんとか無事に動くところまでこぎつけました。本当にギリギリですね。 日本版と違って、ヨーロッパ版エリソルはPALマシンの微妙な差異のせいでプレイデモ中にプレイヤーが死んでしまったりします。PS2版では、エムツーのこだわりによってこの微妙な差異も再現しておりますので、「OVERSEA」のデモでプレイヤーが鮫に殺されるのは本物と同じです。 ―― ある意味、ヨーロッパ仕様のメガドライブエミュレーターを新たに作ったに等しい? 奥成 そうですね。今回の作業でエムツーさんがもっとも苦労したなかのひとつは、ヨーロッパ版「エイリアンソルジャー」の収録。もうひとつは「スペースハリアーII」と「SDI&カルテット」のときにお話した、入力遅延を無くすというところですね。 ―― 特に、こういう細かいアクションが多いものは大変? 奥成 メガドライブの性能を使っていればいるほどマシンに負荷がかかるので、そこの負荷を目立たせずに、通常のエミュレーターの2倍の速度を維持させる。そこを突き詰めたのが今の状態です。エムツーの人たちにしてみれば、あと半年くらい作ってもっと極めたいというところもあるんでしょうけど、商品としては、問題ない状態です。
奥成 プログラムには関わっていませんが、ROMのバージョンがあがるたびにゲームを見ていただいて。本当にありがたいなと思ったのは、ROMを送ると、翌日に前川社長からメールが届いて「とりあえず『ガンスターヒーローズ』クリアしてみました。『エイリアンソルジャー』はハングしちゃったんで途中までです。『ダイナマイトヘッディー』は攻略中です」っていう返事があって。正直ボリュームとしてはかなりのものがあるので、それをちゃんと見ていただけているので。ここがちょっと違うとか、当時チェックを死ぬほどやられてたトレジャーさんだけあって、かなり細かいところまで見ていただけましたね。 あとは、もう1本。今回ボクのなかで大きかったのは、海外版とは別に入っている「プロトタイプバージョン」ですね。これはセガになかったんですよ。トレジャーさんに「移植する」ってお話をさせていただいたときに「『ガンスターヒーローズ』の、ありとあらゆるものを入れたい」とこちらの考えをお話したんです。そのときに「実は『ガンスターヒーローズ』の他バージョンが1本だけあるんですよ」という話で、触ってみたら「ちょっと違うね」という部分があって、“コレ入れましょう”となりました。 ―― プロトタイプ版が収録されるのは珍しいですね。 奥成 そうですね。これはいわゆる開発中ROMなので、途中で進行不能になることがあるという“未完成”版。細かいところでまだ完成していない部分がある店頭用バージョンなんです。そのためいろいろ細かいところに違いがあって、例えばタイトル画面のクレジット表記にトレジャーさんの名前が並んでいたりしますが、これは製品版にはないんですよね。こういった細かいところの違いを探すのが、ファンであればあるほど面白いのではないかと。これが入れられたのは、ちょっと嬉しかったですね。それに、日本版で1周クリアすると企画書が読めるようになっています。これもトレジャーさんから提供を受けたものです。残っているものを、できるだけ多くということでやってみました。 ―― 「スペースハリアーII」、「SDI&カルテット」もそうだったんですが、「トレジャーボックス」のような作品ほど「スーパープレイ」が収録されている意義は大きいですね。今のプレーヤーだと気づきにくい動きも一目瞭然でわかる。 奥成 前川さんに「スペースハリアーII」、「SDI&カルテット」をお渡ししたとき、「SDI」のスーパープレイを見てかなり喜んでいただきまして。是非うちのソフトでもやりましょう、と。ボクらは「エイリアンソルジャー」しか考えていなかったんですが、「ガンスターヒーローズ」もやりましょうという話になって。リプレイをやるとなったら、それはソフトが完全再現されていなければならない……これは前回お話したとおりなんですけど……特に「エイリアンソルジャー」みたいなゲームは、本当に完璧じゃないと(まずい)。わかってはいましたが非常にプレッシャーになりました。 まず前川さんから「是非この人に連絡をとってくれ」と言われて、「エイリアンソルジャー」の攻略をやっていたプレーヤーさんのサイトを見せていただいた。そこに「エイリアンソルジャー」の動画があったんですね。確かに上手いんですよ。しかも、その映像が見ていて本当に美しい。ボクのなかでは「SDI」のリプレイを見たときと同じ感動が、そのリプレイ映像にあったんで「これを入れたい!」と。ただ、ビデオ映像ですから、これをPS2でもう1回やってもらわなければならないんですね。で、どうしようっていう話をエムツーの堀井さんとしていたら、堀井さんが「この人に連絡とっていいですか?」っていうので「任せた」と。実際、そこの管理人さんに何度か断られながら……。 ―― 快諾してはもらえなかったんですか? 奥成 非常に謙遜されていて。一般の方ですから。そこを説得して。ただ、ソフトが完成してから収録していてはスケジュールが間に合わない。だから、ほぼ完成している状態でROMをお渡ししながらやっていただいて、コツを取り戻してもらう、といった形になりました。サイトは「ガンスターヒーローズ」と「エイリアンソルジャー」両方の攻略をされていたんですが、まずもっとも難易度の高い「エイリアンソルジャー」をやっていただくことになったんです。 実際に遊んでみてもらったら、ボクらとしてはほぼ完成してるなと思っていたところが、彼がやると「ここをこうやるとハングアップします」とレポートが返ってきました(笑)。彼の操作にソフトがついていけてなかったんですよ。デバッグみたいになってきちゃって。でも「良かった~」と思いました。結果的に、ゲームソフトの完成度をさらに上げつつ、ベストリプレイを撮る、ことになりました。もちろんゲームの完成度が上がったら、それまでに撮ったリプレイは使えなくなってしまうんです。リプレイデータをいじるなんてことはできないですから、本物でなきゃいけない。タイム的に一番ベストなものを収録させていただいたんですけど、いくつかの攻略パターンを使えなかった時の収録版だったので、一応ご本人としては“満足していない”ようです。でも、見ていて楽しいというか、圧倒されますね。
奥成 あんまり面白いんで買う前にみんなに見てもらおうと思って公式サイトにムービーをアップしたんです。そうしたら、知らない人が「やたら簡単そうなゲームに見える」って(一同爆笑)。噂に聞いていたけれど、意外と簡単そうだねって話になりまして……。 ―― 本当に上手い人のリプレイって、簡単そうに見えて眠くなってくることさえありますから。でも、気持ちは凄くわかります。 奥成 「ガンスターヒーローズ」に関しては、「ドリマガ」の梅田編集長が元セガの開発者なので、仲良くさせていただいていまして、お会いしたときに「うちに『ガンスターヒーローズ』上手い奴がいるんだよ。どう?」っていう話をいただいたんです。プレーヤーの佐々木さんはメガドライブ時代からトレジャー作品を担当されていた方だったので、これはもう是非お願いしようと。リハビリもそこそこに、無理やりお願いして。おかげで無事に収録することができたかなと。たぶん「もう少し練習時間が欲しかった」と思ってらっしゃるかもしれませんね。 ―― ゲームビデオのプレーヤー経験者は、みんなそう思いますよね。収録後に「もう少し上手くできたはず」って。 奥成 本当に短い期間で、いきなりROMを渡されて「これで撮ってくれ」と。自分の日常生活と仕事をこなしながら収録しなきゃいけないっていうところで、かなり苦労しましたけど、今回はどちらも無事に入って良かった。 ―― どちらもゲームの特徴がわかるようなプレイを心がけておられますね。「エイリアンソルジャー」は、ちょっとハイエンドすぎるかなも? とは思いましたけど……。 奥成 そうですね。「ガンスターヒーローズ」は、わりとシンプル。今の反響を見ていると、こちらのほうが一般の人には攻略に役に立つみたいですね。「エイリアンソルジャー」のほうは「ボクにはできません」っていう(笑)。 ―― 「エイリアンソルジャー」はプレミア価格で取引されていましたから、実物に触れる機会がなかった人が多かった影響もありそうですね。 奥成 今回、オリジナル版の何倍もの数のPS2版が市場に出回って、皆さんが遊ぶことができるようになったことはソフトにとっても幸せなことだと思います。やはりプレミアのついてしまったソフトはなかなか遊ぶ機会がありませんからね。 ―― そういった意味で“ひとり歩き”しているソフトは多いですよね。遊んでもらえなくて、かわいそうだなって思うときがあります。 奥成 プレミアっていうのは、やっぱり好きじゃないんです。2,500円が適正かどうかはさておき、“ユーザーさんの手の届くところに持っていきたい”という考えなんです。
奥成 あとは、正当な評価を目指すなら、本物にできるだけ近いものを出したい、というところですね。 ―― 正当な評価という意味では、正直「エイリアンソルジャー」はムズイな……と改めて思いました(笑)。 奥成 「エイリアンソルジャー」単体ならゾッとするかもしれませんが、「ガンスターヒーローズ」、「エイリアンソルジャー」、「ダイナマイトヘッディー」のいずれも同じ横スクロールアクションでありながら全然趣向が違うゲームなので、そこは3本入れてよかったな、と思えるところがありますね。結果として「ガンスターヒーローズ」4本、「エイリアンソルジャー」2本、「ダイナマイトヘッディー」4本。3タイトルなんだけど10本入っちゃいました。デバッグ作業も10本分。バージョンが上がると10本全部クリアしなくちゃならない。おかげでデバッガーの人たちの腕が上がったりしてましたけど(笑)。 ―― デバッガーの人たち、現時点なら日本で一番「ダイナマイトヘッディー」が上手いと思いますよ。 奥成 一応、真のエンディングをチェックしておかないとね。最後まで行けることを証明しておかないといけませんから。「ダイナマイトヘッディー」は今回リプレイが入ってないので、ぜひ頑張って真のエンディングを見て欲しいです。 ―― 「ダイナマイトヘッディー」のリプレイが入っていないのは、何か特別な理由が? 奥成 いや、単純に“日本一「ダイナマイトヘッディー」が上手い人”が見つからなかったっていう(一同笑)。システム上はできるものなので、別に意地悪で入れませんでした、というわけではないんです。 ―― 単純にクリアしているリプレイだけでも十分だと思うのですが……。 奥成 元々は「エイリアンソルジャー」だけでも入れたいと思っていたところなので、結果として商品として出ると「『ダイナマイトヘッディー』も入れておけばよかったかな」という欲が出てきますけど、ちょっとそれも……。
奥成 このマニュアルを作ったのは、歴代トレジャータイトルを担当しているセガのマニュアル制作者なんですね。過去作品から、最新作「BLEACH DS 蒼天に駆ける運命(ニンテンドーDS用ソフト)」、もちろん今回の「ガンスターヒーローズ」も手がけている女性がいるんですけど、「エイリアンソルジャー」に対しての想いが凄く強い。「マニュアルを豪華にしたい」という話をしたときに「じゃ、『エイリアンソルジャー』を補完しましょう」という話になりまして。ゲーム内で開発資料が閲覧できますが、これは彼女が保管していたものなんですね。前川さんに見せたところ「よくこんなもの残ってましたね」と言われました(笑)。 ―― トレジャーの提供ではなかったのですか? 奥成 おおむね、彼女が保管していたものです。当時、彼女とトレジャーのプログラマーのNAMIさんが直接やりとりしてて……。イラスト発注とか、FAXなんですよね、コレ。ファイルしていたので、穴が開いています。色々生々しい書き込みがあるんですけど、面白いから入れちゃいました。オリジナルの「エイリアンソルジャー」取扱説明書には、わりと省略した部分があったらしいんですね。その部分を、今回はできるだけ補完しようと。 そういえば「エイリアンソルジャー」はよく“未完成”であるという話が出てきますけど、作りたいものがあったんだけれども未完成というよりは、たぶん“全体的に未完成”だったんじゃないでしょうか。ゲームを作りながら世界観も二転三転していった、という印象です。NAMIさんというクリエイター個人……プログラムもできて絵もかけて世界観も作れるというマルチな才能のすべてがそこに入っているので、そういったものが出ているぶん「エイリアンソルジャー」は未完成に感じられるんですよ。だから、今さら我々がこれに何を入れても蛇足になりますし、商品として出ているものを完成として見るのが正しいんだろうな、と。 安易に考えると、例えば「セブンフォースの残り2つを足して7つにしたらいいんじゃないか」と言っても、その2つが最終的に当時にもなかったのであれば、それは蛇足だろう、ということですよね。それをまたNAMIさんが作りたいっていうならまだしも、そうでなければ、そこは触れるべきじゃない。
キャラクタの動きとかもそうなんですけど、背景の描きこみひとつとっても、ここまで描ける人が、現役でどれくらいいるのかわからないですよ。そういう意味では古くないって部分だと思いますね。本当に“職人集団”とはよくぞいったものだ、というところですね。たぶん、1本でも好きだった人がいれば、このソフトは満足してもらえると思うんですね。 それに、GBA「ガンスタースーパーヒーローズ」や「BLEACH DS 蒼天に駆ける運命」を遊んでみたら、トレジャーのロゴが出て「トレジャーって他にどんなゲームがあるのかな」ときになった方がこの「トレジャーボックス」を遊んでみたら、どういう感想を持つのかに興味がありますね。たぶん「あ、これも面白いね」って言ってもらえるんじゃないかな……。そういう意味でいうと、過去の名作を現代に提供するという意味で凄く「SEGA AGES 2500シリーズ」らしいものになったなと。これは本当に「何もいじる必要がない」3本だと思います。
■ 「SEGA AGES 2500」シリーズのこれから
奥成 もちろん、このソフトが評価されれば「トレジャーボックス2」はやりたいと思いますけどね。そのときはスタジオぴえろさんに挨拶にいくとか(笑)、そういうことも考えられます。ただ、「BLEACH DS 蒼天に駆ける運命」が、あまりにも良くできているから、今「幽遊白書」を復活させてもどうかなってところは、ちょっとあったりするんですね。 ボク自身は「幽遊白書」がすごく好きなんです。全メガドライブソフトのなかで一番好きかもしれないってくらい遊んだんですが、「BLEACH DS 蒼天に駆ける運命」の完成度を見てしまうと……。自社のソフトをこんなに誉めるのもアレですけど(笑)、キャラクタの数が多くて、個性の違いも表現されてて、モードがたくさんあって、1人用でも死ぬほど遊べて、しかも通信対戦ができるわけで、「幽遊白書」はそんな中、どう映るんだろうと。ちょっと自信がなくて、一歩を踏み出せないでいるんですね。 ボクらとしては「スペースハリアーII」とか「SDI&カルテット」で、目標として高いところからスタートして、こだわって作った部分もあるのですが、「ガンスターヒーローズ」は、完全移植の方向性でいくと、なんとかその上を行けたかな、と思っています。高いところに行けた、もしくは維持できた。自分で首をしめつつ(笑)。今後も維持していきたいと思います。完全移植に関しては、本当にそういう流れでいくので……。ただ、完全移植だけでは満足できないものに関して、それ以外の部分をどうしていこうかという試行錯誤は、今だに続いている。ただやっぱり(アレンジ版は)商品として新しいお客さんが手に取ってくれやすい部分だと思います。現状、完全移植だけだとなかなか厳しい。 ―― 「SEGA AGES 2500シリーズ」先々の展開は、もう構想中? 奥成 今考えている、まだ発表していないタイトルは“現状のクオリティを超える”、そういうものを用意しています。このシリーズは、今後も続けていきます、と今は言えます! ―― おぉ、力強い言葉が! 奥成 今は言えますけど……途中でストップがかからない限りは、というところですかね(笑)。本当にギリギリですけど、続けていけると思います。何度も「これが最後かな」と思いながら作っていたこともあります。今後、4月以降「ダイナマイト刑事」、「パンツァードラグーン」、「ラストブロンクス」、「ギャラクシーフォース」の後のタイトルが発表できるといいな。今、色々作ってもらう方々にラブコールしつつ(笑)。会社に「どうですか」と話をしつつ。今回の反省点は活かしてつくっていきたいな、と思います。 ―― ベタで恐縮ですが、古参のファンはもちろん、このインタビューで「SEGA AGES 2500シリーズ」に興味を持った方々にコメントをお願いします。 奥成 「SEGA AGES 2500シリーズ」共通のコメントになってしまうと思うんですけど、まず、昔のゲームだけれども今やっても十分面白いゲームを、みなさんに知ってもらい遊んでいただきたいと思っています。かつて遊んだそのソフトを通じて、昔ゲームに一番熱中していた楽しい時間を思い出してほしい。その2つが、このなかに込められています。2,500円という超お買い得価格で出しておりますので、これを買っていただいて、もっとゲームのことを好きになってください。 ―― ありがとうございました。
順風満帆ではないようだが、着実に前進し続ける「SEGA AGES 2500シリーズ」。オールドファンはもちろんのこと、温故知新の大切さが理解できる人なら、触っておいて絶対に損はないと言い切れる。GAME Watchでも折に触れてご紹介していくつもりなので、興味がある方はぜひともチェックしていただきたい。
(C) SEGA Corporation,1993,2006
□セガのホームページ (2006年3月14日) [Reported by 豊臣和孝/福田柵太郎/佐伯憲司]
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