|
しかしながら、その息の長さゆえに、ユーザーからは前作との違いが見えにくくなっているかもしれない。そこで今回は、「戦国無双2」プロデューサーの杉山芳樹氏と、ディレクターの鯉沼久史氏のおふたりに、本作の魅力や見所について伺ってみた。
■ 舞台を「信長中心」から「関ヶ原」へ……消えた武将の行方は?
杉山氏 : 今回は長篠ぐらいから関ヶ原に渡るまでをテーマにしています。理由は、前作で信長中心の世界を描きたかったのがまずひとつ。今回は安土・桃山から江戸にかけてのきらびやかな時代。家康と三成を中心に描きたいということです。世界観も、前作は黒を基調にした群雄割拠の戦国時代を象徴するような感じで、暗いイメージでいったんですが、今回はきらびやかな金をイメージしています。「1」の時から、「1」では信長相手に、「2」は関ヶ原というのがイメージとしてあったんですよ。 ――前作の中心は信長だったんですか。パッケージでも目立っている真田幸村が主役なのかと思っていたので、ちょっと驚きました。 杉山氏 : 世界としてはそっちの方の時代を中心に描いています。でも、やっぱり、前作は幸村をフィーチャーしていったので、幸村のシナリオにも力を入れていたのは事実です。 鯉沼氏 : 「真・三國無双」で言うところの趙雲のようなポジションになるキャラクタが欲しいという話があって、アクションだったら幸村でやってみたいよねってのがまずあったんです。前回は幸村をフィーチャーしつつ、信長の時代をベースにって形で作ってます。今作も幸村は残していますけど、じゃあ幸村が中心かというと違っていて、関ヶ原あたりの新しい時代を描いています。ただし、旧キャラは旧キャラなりにちゃんと描かないといけませんから、信長から大坂夏の陣ぐらいまで、まんべなく入っています。 ――新キャラが増えたのはファンとしてはうれしいのですが、いなくなったキャラクタもいますよね。「真・三國無双」では必ず付け足しですが、「戦国無双」ではバッサリ切られているのはなぜでしょうか。
杉山氏 : 関ヶ原は熱く描きたいってのがあったので、その辺りのバランスとキャラクタの特性から外しました。例えば今川義元だと、桶狭間から始まって、後は架空のストーリーになりますから。実は阿国と蘭丸はプレイアブルになっているのですが、ストーリーはなくて、フリーモード専用のキャラクタなんです。この2人についてはユーザーさんのニーズもあるので、プレイアブルにしようと。新キャラクタが10人登場してますので、その10人を描きたかったゆえに外さざるをえなかったんですよね。くのいちなんかは特に、「1」を象徴するというと変ですが、「1」の中に生きたキャラクタと考えていただければ。
■ 10人の新キャラクタの魅力を聞く
杉山氏 : あまり主人公とかは意識はしていないですね。歴史的な背景を見て作りました。 鯉沼氏 : 道雪の娘ということで、当時でも珍しい、立花家の女城主にもなったとという史実も残っています。それからアクションゲームで、女性キャラクタで正統派の剣士はいないよねという話になって、ちょうどいい、立花誾千代ってあるじゃないですかと。今回のような男まさりな誾千代となりました。――特殊技を使うと、剣に雷がバーンと出てきて、振り回しているだけでかなり気持ちいいですね。動きも正統派ですし。 杉山氏 : でも誾千代は、主人公にしては歴史的にマイナーじゃないですか。誾という字もでにくいし(笑)。 ――確かに。私も記事を書くときに「これは誰だろう」と調べた記憶があります(笑)。 杉山氏 : 初めは羽が生えていたんですよ。何でもいいから1枚目を作ってみろ、という話をしたときだけですけどね。ワルキューレっぽいです。そこから剣を持って戦うというイメージは残っています。
鯉沼氏 : 本当に史実に基づくと、武器は剣と槍だけになっちゃうと思うんですよね。剣玉や傘も入れましたが、ちょっと無理矢理すぎないかと、自分に突っ込み入れながら作っていました。小次郎に関しては、歴史を知らない人でも気軽に入ってこれるようなキャラが欲しいということ。あと小太郎は、歴史に名前はあるけれど、実際にどういった人だったかという資料がないんですよ。イメージは五右衛門に近いですが、本当に架空なので、篭手が伸びるアクションを取り入れたりと、いろいろやっています。 ――忍者キャラクタだと、既に半蔵がいます。やはりキャラクタの差別化を考えているのでしょうか? 杉山氏 : 考えますよね。やっぱり。 鯉沼氏 : 忍者はデフォルトキャラクタに必ず1人持ってきたいというのがありました。忍者キャラなので、「無双」シリーズというか、元々の武器系から外れちゃってもいいよねという考えが開発チームにありました。 ――忍者というイメージにしては、すごく筋肉ムキムキな感じですよね。 鯉沼氏 : そうです。そんな感じ。そして半蔵は華奢。「2」の中では、半蔵対小太郎の忍者対決を描いていて、ストーリーに幅を持たせられたかなと思います。
鯉沼氏 : そうですね。モデルは作っていて、「1」でもムービーではでていましたが。 杉山氏 : 「1」ではやはり、信長の時代ということでカットしました。「猛将伝」の時にはユーザーさんのニーズはナンバーワンだったんですよ。だけど、やっぱり家康を語るなら関ヶ原まで含めたい。関ヶ原を中心として描くときに、もうちょっと熱く語りたいというのがあって、外れています。 鯉沼氏 : 「1」のとき、大坂夏の陣があったのは、幸村をフィーチャーする上でやはり大坂夏の陣で締めないとこいつは締まらないというのが理由です。「1」は信長、「猛将伝」は秀吉までで区切ろうという話になっていました。ずっと家康欲しい、家康が欲しいと言われていたんですが、家康をやるには関ヶ原の武将達を集めないと……ということで諦めた形ですね。 ――家康の武器の大砲ですが、あれはどういう発想からスタートしたんでしょうか。 鯉沼氏 : あれは、やっぱり家康ときたら、大砲、大筒という発想ですね。最初は大筒を持って、ドンドンと。 ――あ、そのまま。大筒を抱えて。 鯉沼氏 : でもさすがにそれはないだろうと(笑)。タヌキみたいな体型と史実に残っていまして、槍を持ってがっしりしたカッコイイ親父がいいなという話になりました。ただ、大筒がどうしても捨て切れなくて、いろいろ武器を調べていたら、駆動式の大筒があったんですよ。それで先に槍を付けちゃえということに。基本は槍なんですが、そこが駆動式になってドーンとでるわけです。史実では大筒といっても小さいのが1発出るだけだったんですけど、ちょっと大袈裟にして、ああいう形になりました。
鯉沼氏 : 三成は「五奉行」のうちのひとりだったという話もありますし、武力というよりは知的で、冷徹なイメージなのかな、というのがあります。家康はどちらかと言うと日に焼けて「がっはっはっは」とやっていて欲しいなというのがあって、それと対極のイメージです。三国志で言うと、諸葛亮と司馬懿が知力で対決しますが、それならこちらは、家康の武力系と三成の知力系で対決させたらどうかなと思いました。 ――東軍、西軍のイメージをそういう風に作っているんですね。ゲーム中でも、「これぐらいはやって当たり前だ」というセリフが出ますし、史実でも冷たい印象だったと聞きます。 鯉沼氏 : そうですね。対決の上では豪快な家康と対比できるので、うまくいくかなと思いました。それで、西軍の三成は知将的なイメージと決まりましたね。 ――武器は扇子ですが、扇子を選んだ理由は何でしょう。 鯉沼氏 : 「戦国無双」に扇子はなかったという単純な理由と、あとは、軍師系のお決まりでしょうか。 杉山氏 : 「真・三國無双」の諸葛亮と司馬懿といったところ。 鯉沼氏 : 日本なら羽扇じゃなくて扇子だろうということに。そんな簡単な話になっちゃうんですが(笑)。
杉山氏 : そうですね。「1」からモデルは作っていましたから、そのイメージです。 ――長政は初期キャラとしては使えないですが、どういった個性のキャラクタなんでしょうか。 鯉沼氏 : 朝倉と織田に挟まれて、裏切るにしても、何をやるにしても苦悩しつつ、でもこれしかないだという実直な青年という感じです。 杉山氏 : 「1」の時と変わっていないですね。 鯉沼氏 : 槍を持たせたのは、姉川の戦いで織田軍に突っ込んで11段まで切り崩したというイメージがあるので、どうしても猪突猛進に……というと言葉が悪いですが、真っ直ぐ突き抜けていくようなイメージで武器を持たせました。 ――髪が金髪なのは? 鯉沼氏 : これも「1」でやっているからですね。コイツだったら許されるかなという形です。だから今作でも金髪を黒く染めずに押し通しています。お市が戦国では一番綺麗だったという話と、長政とお市は政略結婚ながら仲が良かったという話が残っています。それなら当然、長政も格好いいだろうということで、こういう形になっています。 ――「無双」は硬派というイメージが強くて、割と現実にあってもおかしくないものだと思っていたんですが、武器に西洋のランスというのは異質ですね。 杉山氏 : ランスは確かにそう言われてみれば、異質かもしれないですね。でも、違和感はなかったんですよ。 鯉沼氏 : コーエーは歴史ものをよく扱うので、あまりあちこちから海外のものを入れていくのは、私どもとしてもいけないと思っています。ただ、ランスに関して突っ込まれると、「う~ん」という返事しかできないんですけれど(笑)。 杉山氏 : 硬派と言っていただけると、意図が伝わっていてありがたいなと思うんですが、うちは「型なしで何でもいいから面白そうなのを持って来て作ってしまおう」というスタンスではないんです。ベーシックな所は必ずあって、それを何処まで弾かせるかという意味では、「真・三國無双」より「戦国無双」のほうが弾けていると思うんですが、あくまでベースにあるのは史実で、その上で性格付けや武器をどうしようか、という作りをずっとしてきています。 長政についてはそもそもが洋風だったので、キャラクタの個性としてああいう風にしていますが、ベーシックなところで流れは押さえているつもりなんですよ。ですからストーリーについても、実際ははっちゃけたものもありますが、コーエーだからこういう切り口なのね、こういう解釈なのね、とわかるようにはしているつもりです。
鯉沼氏 : それはやっぱり、家康に過ぎたもの(本多忠勝)があれば、三成にも過ぎたものがあるわけで、外せないという形です。 ――キャラクタとしては、大きな刀を振り回すベーシックな武将ですが、そのあたりは何か意識されたのでしょうか。 鯉沼氏 : 慶次ほどかぶきものではないにしても、格好いい親父なのかなという印象があって、そこからでかいのを持っているというイメージでしたね。あとはチョイ悪親父という設定で頬の傷とか。あと、三成が華奢で冷徹なので、部下はがっしりとして厚みのあるタイプが欲しかったんです。ストーリー上も絡んできますが、仕える人が同じタイプだとやりづらいですから。
杉山氏 : それは逆ですよ。島津を出したかったので誾千代がいるんです。 鯉沼氏 : 関ヶ原で島津の大返しをしたかったんです。「戦国無双」には、白髪のお爺さんキャラクタがいなくて、義弘が年代的にもマッチするだろうというのもありました。あと前作は関東を中心としたものだったので、「2」は西のほうからも武将を出したかったんです。島津が出ると九州編も描きたいという話になって、対立する武将として選ばれたのが立花。いろんな武将候補がでたのですが、最終的には誾千代に決まりました。親父の道雪もいるんですが、時代が違いすぎましたね。 ――島津の武器が丸太槌なんですけど、これを選んだ理由はあるのでしょうか。 鯉沼氏 : 九州人ならではの豪快さみたいなものってあるじゃないですか。老将だけどがっしりとした巨体にしたいというイメージがありました。それに見合う武器は何だと考えて、大槌系で決まりました。
――直江兼続。このキャラクタを選んだ理由は?
鯉沼氏 : 関ヶ原の開始が、家康を挑発する「直江状」という歴史があるんですよね。後は、上杉、武田対決をもう一回描く中に直江がいれば、ストーリーに厚みが出せるというところです。 杉山氏 : あと背中に「愛」の字が書いてあります。 鯉沼氏 : 戦国時代で有名な「愛」と書いてある直江の兜があるのですが、それが保管されているところに資料の提供をお願いしました。兜だとあまりにそのままなので、背中に入れてあります。 ――実物そのままですか。 鯉沼氏 : そのまま入れてあります。もちろん許可もいただいています。 ――キャラクタ性としては、護符を使うキャラクタとなっているんですね。 鯉沼氏 : はい、ビームも出します(笑)。上杉謙信がそういうキャラクタなので。対抗ではないですけど、一応は仕えているので、同じような方向性にしました。
鯉沼氏 : 関ヶ原の戦いは豊臣政権の後に起きた戦ですが、秀吉にちょっと厚みを持たせるために入れました。 ――これも初期キャラクタとしては使えなかったのですが、三成を使ったときに出てきました。三成を子供扱いするシーンもありましたが、どんなキャラクタになっているのでしょうか。 鯉沼氏 : 姉さん女房ですね。あと、秀吉とねねの間に子供が居なかったので、秀吉の部下達を自分の我が子のように扱っていたような伝記もありますので、そういうところからポジションをつけています。 ――武器ですけど飛刀となっていますが、これはどういう武器なんでしょうか。 鯉沼氏 : 前作の、くのいちのような武器ですね。くのいちは今回退場してしまいましたけれど。アクション的に女忍者がいなくなってしまったので、女忍者として登場させています。 ――忍者キャラクタなんですね。 鯉沼氏 : “影ながら支える”ということで。 ――うまいですね。すごく納得しました(笑)。
杉山氏 : 後は武蔵ですかね。宮本武蔵。 ――これはどういうキャラクタなんでしょうか。 杉山氏 : 最強の剣士ですね。二刀流です。 ――やはり二刀流なんですか。 鯉沼氏 : たぶん、ご想像通りですよ。 ――ゲームでは、戦国時代でストーリーをつけなくてはならないわけですよね。これはどのように扱うのでしょう。 鯉沼氏 : ストーリーは……結構大変でした。 杉山氏 : まずキャラクタの個性を決めて、テーマを決めて、シナリオは……さすがに。 鯉沼氏 : 一応、関ヶ原には参戦していたんですよ。 ――なるほど、そのエピソードを元に。それまでは諸国を回っていたような話になるんでしょうか。 鯉沼氏 : 何ともお答えしづらいですね、武蔵は。ただ、ユーザーさんの要望が結構ありましたから。 杉山氏 : 最初から家康、武蔵でした。後は浅井とかもあったんですけど、圧倒的に人気が高かったですね。名前の通りもいいでしょうし。 ――ただ戦国武将というイメージはない……というか武将ではないですよね。 鯉沼氏 : 違いますね。一般兵士ですから(笑)。剣豪ということで、「無双」としてアクションが作りやすいというか、やってみたいという気持ちがあって、今回入れてみました。ほんとうに、最後の最後に飛び込んできたんです。 杉山氏 : 最強っぷりが凄いので、アクションキャラとしてプレイして欲しいですね。敵の攻撃を切り返すという特殊技が入っていて、チャージ攻撃を失敗しても、敵からの攻撃を切り返すんです。レベルをMAXにして最強のレア武器を手にいれると、地獄モードでも無敵とは言わないまでも、最強っぷりを発揮します。出るのは遅いですが、最後のお楽しみに。
杉山氏 : 実は政宗は、最初の設定では木刀じゃなかったんです。ただ、年齢が低いので刀はまずいだろうということで、音も「ぽんぽこぽん」という感じに変えたんです。ですから本来、政宗で表現したかったのは木刀ではなく、今回の銃なんです。
鯉沼氏 : 「1」でもデザイン段階では銃だったんですよ。ただ設定年齢が18歳とか16歳ぐらいとかだと、さすがに銃は、というのがありまして。同様にお市も、それで剣玉だったりします。今回は時代背景でも18歳以上になったので、これなら剣とか銃を持たせても大丈夫だろうということになりました。そうなると、全てのアクションを破棄しなければいけないという大変なことになってしまったんですけど。通常は剣で戦って、剣を収めて銃をだしてという形になって、面白いアクションができたかなとは思っています。
■ 兵士は「本当はもっと出せる」――シリーズ最高のチューニング ――敵の表現方法や出現方法も随分変わってますよね。前は5、6人がワンセットでいる感じでしたが、今回は鉄砲隊とかずらりと並んでいたりします。この辺りはシステムそのものが変わったということなんでしょうか。 鯉沼氏 : ハード的なスペックでは、「真・三國無双4」で出し切っていますので、あれ以上の改良というのはもう難しいのかなと思っています。ただ、もう一回見直して、敵のバリエーションもいろいろ増やしてみたいという話になって、そういうところの処理に重みを置いている形になっています。 杉山氏 : 今回は今までで一番、遠くまで見えているんじゃないでしょうか。敵もわらっと集まって来ますし、一騎当千感とともに共闘感というか、その戦場で共に仲間達と戦っていく感じはでてるんじゃないかと思いますね。 ――実際に触らせていただいた感じでは、「戦国無双」とは全然違うゲームですし、3Dエンジンが劇的に変わった「真・三國無双4」と比べてみても、違うと感じます。これまでは遠くの敵はただ見えるだけというイメージで、それはそれで臨場感を高めるひとつの演出としてはアリと思っていたんですが、「戦国無双2」になって遠くの敵もちゃんと動いてるように感じます。 杉山氏 : 一騎当千でという感覚よりも、どちらかというとタクティカルで、いろんなところで敵味方が動いているのがひとつのウリでもあるので、それが表現できたかなと感じてはいます。 ――3Dエンジンは「真・三國無双4」の改良版ということになるんでしょうか。 鯉沼氏 : 「戦国無双」と「真・三國無双4」をあわせた改良版ですね。もうほんとうに、技術的には限界ギリギリまできているので、細かい改良です。ほんとうに職人さんの小技みたいなレベルなので、人に言えるような形ではないんですが。 杉山氏 : 途中のバージョンをお見せしたいですよ。ほんとうにこれゲームになんのって、処理落ちばっかりで。今は処理落ちはほとんどないと感じられてると思います。 ――今までのシリーズで敵に囲まれた時に武器を振ると落ちることもありましたが、今回は本当に処理落ちがないですね。 杉山氏 : 本当は画面にもっとキャラクタを出せるんですよ。ただ出してみてもわけがわからなくて面白くない。だから、一番適度なところにしています。技術的に出せないと思ってる方々もいると思いますけど、出そうと思えば出せるんですよ、実は。 鯉沼氏 : 最初のバージョンでは、自分を見失うぐらい人が多かったんです。 ――そこからうまく落とし込んで、今の形が完成したと。しかし今でも結構すごい数の敵が出ていると思います。 杉山氏 : それなりに認識できる中では、一番メリハリがあってベストだと思っています。処理落ちの辺りはユーザーさんからも一番指摘されていました。鯉沼はプレイステーションの当初からずっとプログラムをやっていますので、そこは一番いい形でできた気はしています。ユーザーさんに喜んでいただけるとありがたいですね。 ――今回はAIの動きのおかげで、臨場感はいままでとは段違いだと感じました。遠くの敵が戦っているのもよく見えますし、適当に倒して進んでいてふと後ろを見てみると物凄い数がずらーっと並んでいたりして。AIも改良されているんでしょうか。 鯉沼氏 : 1から作り直しですね。二段鉄砲とか突撃兵とかをいれたかったので、そういったところで最初からやり直しています。同じようにはなるんですが、結構いろんなところを最初から作り直しています。 ――新しいAIのコンセプトみたいなものはあるのでしょうか。 鯉沼氏 : 自分も戦っているんだけど、周りに見える敵がこっちをずっと見ているのではなくて、こっちからも戦っている姿が見える。そういうのがやりたかったので、今言われて本当に嬉しかったです。 ――仲間の頑張りもいいですね。護衛している信長がどんどん敵に向かって斬りかかって、「ちょっと待ってくれないと死んじゃうよ!」というようなシチュエーションもありました。
杉山氏 : これまでのAIだと、武将の移動するルートが決まっていたんです。ところが今回は、近くの兵を倒しに向かったら、その後は別のルートから行くんですよ。人の考えに近いというか、よりリアルになっているのではないかと思いますね。
■ アクションやシステムの改良点 ――システムは「1」から180度変わってしまったというイメージがあります。猛将伝のシステムをある程度は流用するのかと思っていたのですが、戦ってる最中にレベルが上がっていくとか、技能を買うとか。これはどういった意図があるのでしょうか。 鯉沼氏 : シリーズもので弄りすぎると、わけのわからないものになるんですよね。ユーザーさん的にはアクションに深みがあるほうがいいとか、このまま簡単がいいとか。万人に受けるようなシステムって何なんだと考えたときに、どうしても同じシステムじゃなきゃいけないのか? という所に葛藤がありました。そこで今回は「2」であっても、あくまで新作、「新・戦国無双2」にしてみたいなと思って、チャレンジしてみたんです。 杉山氏 : 前作では成長要素などで、割とコアな感じのパターンだったのかなと思っています。例えば、敵の強さに補正がかかっていて、自分が強くなったと感じられないとか、うまく育てないと能力をフルには取れないとか。「戦国無双」は、自分が成長して強くなっていくと感じられることを「1」の時から目指していたんですが、それが上手く機能してない気がしましたね。今回はよりユーザーさんにわかりやすく、成長感を味わえ方向に寄せたつもりです。 ――リアルタイムでレベルが上がるのはなかなか気持ちいいですね。ステージの後半ぐらいになると攻撃回数が増えるので、強くなったのが一瞬でわかります。 杉山氏 : 誰でも簡単に入れて奥が深い、ボリュームがあるというのを目指しました。今回はスキルを極めてようと思うと、200時間、300時間ぐらいはかかっちゃうのですが、いくらボリュームがあっても、1個1個が面白くないとそこまでは続けてもらえませんから。 ――今回初登場の特殊技ですが、入れることに問題はなかったのですか。 鯉沼氏 : 無双って良くも悪くも、どのキャラも同じように扱えるってあると思うんですけど、キャラごとの差別化がちょっと少ないんじゃないかと感じていました。アクションゲームですから、キャラごとのアクションの差別化というか、操作感の違いを入れたかったですね。そうは言っても、無双シリーズを楽しんで頂いているお客さんに対して、メインとなるボタンを動かすわけにはいきません。弓矢はあくまでも弓キャラだけ、銃は銃キャラだけにして、そういう試行錯誤の中で、R1ボタンを空けることができました。そして、それを押しながら□ボタン、△ボタンのアクションをという形になりました。アクションに厚みを持たせて、アクションゲームとしての面白さをさらに広げたかったというところが全てですね。 杉山氏 : 実は、一番初めにこの仕様を出したときに、社内でも「それだいじょうぶなの?」という意見があったんです。実は「1」を作るときもいろんな新しいものを入れていたのですが、社内評価を経て、結局あの形におさまりました。でもR1ボタンは社内でも好評で、最後まで残りました。 鯉沼氏 : 「1」の時は緊急回避ですね。アクションのバリエーションを増やすということで入れました。 杉山氏 : アクションの幅を広げても、面倒にはしたくなかったんです。例えばアクションゲームで、このポイントでジャンプしないと飛べないから私にはできません、ということがありますが、やっぱり、鍛えればいけるようにしたいんです。だから、□ボタンだけでも十分楽しみなからクリアできる。そして時々違うボタンを押して、「あれ。こんな技もでるんだ」と。そういうアクションの幅ですね。最初から「無双」を知っている方、チャージも3、4とわかっていてやってくださる方には、さらに豪快に爽快に倒せるという仕様です。 鯉沼氏 : 開発側では、ガードをせずに□ボタンだけ連打でクリアできるかというチェックは結構やっていたりします。 ――新システムでは、「スティール」も気になります。これはどういう経緯で導入されたのでしょうか。 鯉沼氏 : これは新システムの一環でやってきたことです。成長でもスキルは覚えるし、敵からも奪えるし。ロールプレイング的に捉えています。装着アイテムをやめて、全て技能系に割り振ったものですから、敵を倒してアイテムを拾うというのができなくなっちゃった、ということもあるのですが。武将によって持っている技能が決まっていて、技能集めをし始めると、コイツよこせ! というのがあったりします。最終的にはコレクション要素ですね。スティールするにはコツがあるので、コレクターの人も楽しんでいただけると思います。あと武将を倒したときに、スティールと出るとさらに嬉しかったりするんですよね。売り買いや成長だけだと、ちょっと楽しみがないというか、薄い感じがしますから。 ――スキルはよろず屋でも買えますが、スキルのレベルの高いものは敵を倒すしかないというような仕組みになっているのでしょうか。 鯉沼氏 : 高いレベルの技能を獲るには、早く倒せば獲りやすいという仕組みはあります。アクションが上手ければいい技能を取れますし、自分のほうが相手より強くなればすぐ倒せるので、簡単に獲りやすくはなりますね。レアスキルも多少あります。収集が好きな人が集めて頂けるとうれしいですね。 ――他にシステム的に新しいところはどの辺りでしょうか。 鯉沼氏 : 今回、武器は一応4種類ありますが、攻撃回数は自分に付いているものなので、1武器でもいい付加を残しておけば、十分使える形になっています。あと変わったところでは、護衛兵が護衛武将のシステムになったことです。以前は最終奥義は2Pで近づいて同時に打たないと出なかったんですが、今回は護衛武将と最終奥義が出せるようになっています。 ――護衛武将に近づくと、間に雷みたいなエフェクトが出て、その時は強力な奥義が出せました。あれが最終奥義だったんですね。 鯉沼氏 : そうです。より出しやすくなっていると思います。 杉山氏 : 自分の成長感も味わえますけど、護衛武将も成長していくとかなり役に立ちます。最後の一撃を護衛武将がやるとスキルが出なかったりするので、邪魔なときもありますが(笑)。忠勝のような本当に強い敵に会ったとき、護衛武将が頼りになるかもしれません。 杉山氏 : 難易度に関しても、ごく普通にプレイしていただければ、少なくとも5面、6面ある普通の「無双モード」に関してはクリアできるようなバランスにしています。ただ、その後に出てくる隠しステージでは、武器に付加能力を付けるとか、もうちょっとレベルを上げるとかしないとクリアできないと思いますが。こういう面白いシステムがありますよと提示しても、100%それをやらなくちゃならないものだとすると、すごく敷居が高いように感じるじゃないですか。そうでなくて付加としてやれば、より爽快に、というようなキーワードでみなさんやっていただけるのではないかと思います。 後は、外伝モードであるとか、自分で難しいモードをクリアしてもっといい武器にしたりとかっていう所を、そういう幅。遊び方はいろいろあると思いますが、ユーザーさんごとにいろいろ遊んで頂けるような仕様になっています。 ――「戦国無双」からある城内戦ですが、「真・三國無双」にはないシステムです。これは差別化を意識しているんでしょうか。
鯉沼氏 : 三国志では砦という感じですが、日本はやはり城かなと。日本人の直感的なところで、城の中で戦うのは何となくイメージがつくと思うんです。それに日本の城はすごく綺麗じゃないですか。ああいうものを表現したなというのがあって入れたんです。前作は城外と城内を分けていたのですが、今回はシームレスに行き来ができるようにして、城内に居るときにも城外が危ない、というような駆け引きがあります。
■ 映像・音楽による演出面の強化
鯉沼氏 : そうですね。やはり見ていて楽しくなきゃいけませんから。一番頑張ったのは、奥義のカットインですね。格好よくできたかなと思います。 杉山氏 : 細かいところで爽快感を上げたり、気持ちよくプレイしていただけるように努めています。右スティックも使われていないかもしれませんが、今回はスーっとFPSのように曲がれます。ちょっと使いだすと「あれ」なんか凄い使い勝手いいよねっていうような、細かいところに気を使ってやっています。 ――音楽も気になるのですが、今回は和風な楽器を使ったちょっと変わった音楽が入っています。この辺りもこだわって作られているんでしょうか。 杉山氏 : 今回音楽は、向谷実さんに頼んで作曲してもらいました。昔からある曲についてはアレンジして、そのほかは作曲していただいて。また今回は曲の切り替えが多いんです。敵に攻撃して、4分の3くらい減らすと、最後の盛り上がり用の音楽に変わっていくとか。 鯉沼氏 : 演出の一環かなと思うんですよ、音楽の切り替えに関しては。千人斬るのも、ただ単純に千人斬るのではなくて、武将を倒した演出をして「やった」って思わせて斬る。そういうところをフォローして、盛り上がるところは盛り上げて、やばいときはやばいよというのを、音楽の切り替えで。そういうのがやはり大事かなと。 杉山氏 : 映像のほうは、演出、またはアクション要素などを、監督さんを立てて見てもらっています。映像だけで70本以上もありますので、注目していただければと思います。
鯉沼氏 : ゲーム中のイベントも監督さんに見ていただいているので、ちゃんとしたものになっていると思います。
――最後に1つ。ゲームモードに「双六」があるのですが、これは何ですか? 杉山氏 : 「双六」はですね、あくまでもオマケです。本当は「無双モード」だけでもよかったんですが、色々なユーザーさんがいるので、「無双モード」だけではなく、その途中で、ちょっとお遊びといったときにできるモードとして入れました。 鯉沼氏 : 基本はオマケなのですが、アクションが苦手な人が遊びにきたとき、「すごろく」なら4人までできるので、みんなで遊んでいただきたいです。こういう、みんなで遊べるモードがあってもいいということで、入れさせていただきました。もちろん、勝負どころはストーリーモードです。正月に出ていたら、ちょうど正月らしくてよかったんですけど。 杉山氏 : 残念ながら。 鯉沼氏 : もう3月になろうとしています(笑)。
――では、ファンの方々に一言ずつお願いします。 杉山氏 : 「1」を作ってから、色々な方からいろんな意見をいただきながら、やっと「2」が完成しました。是非プレイしてみてください。 鯉沼氏 : 全キャラクタのアクションを楽しんでいただきたいですね。アクションであるということを大事にして作ってきましたので。ムービーなどもかなり時間と手間をかけて作ったので、全部見ていただければと思います。
――ありがとうございました。
□コーエーのホームページ (2006年2月24日) [Reported by 志賀康紀/石田賀津男]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|