★PS2ゲームレビュー★
重々しい威圧感がまとわりつくミステリー作品
「RULE of ROSE(ルール オブ ローズ)」 |
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■ 幻想世界からの脱出劇
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'30年代のイギリスを舞台にした3Dアドベンチャーゲームだ |
実は筆者は、既出の記事を読み、画面やデモシーンの印象からPS2「RULE of ROSE(ルール オブ ローズ)」を勝手にホラーゲームと思い込んでいた。だが、実際にゲームをクリアーしてみると、最後の謎が解けるまで緊張感の持続するミステリー作品であることが判明。今作をホラーゲームとして捉え敬遠している人には、ここでその誤解を解いておきたい。
「RULE of ROSE(ルール オブ ローズ)」は19歳の少女ジェニファーを操作し、戦闘や謎解きをこなして全8章(+α)の物語を体験するというサイコミステリー・アドベンチャーゲーム。敵の攻撃ダメージが蓄積し、ジェニファーの体力がゼロになるとゲームオーバー。
今作をプレイして強く惹かれたのは、プレイ時に深い没入感を得られたことだ。筆者はゲームの舞台となっている'30年代のイギリスの文化や風俗について大して知識も興味もない。だが、筆者が過去に仕入れたイギリスの記憶が映像や音楽によって拡大され、驚くほど見事に作品内に引き込まれてしまった。早速、そんな没入度の高い今作の雰囲気を伝えていきたいと思う。
■ シュールな世界を醸し出す子供たちの社交界ごっこ
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社交界の最下層にいるジェニファーは言いつけに従うしかない |
主人公ジェニファーを取り巻く状況は極めて劣悪だ。
孤児院に迷い込み、社交界ごっこをする自称貴族の子供たち(主人公より上位の貴族という位置づけ)に様々な命令を強要される。その命令に従ってアイテム探索をするのが、序盤のゲームの目的となる。
序盤の貴族の子供たちの冷ややかで奇怪で残酷な行動の数々が、プレーヤーを非現実的な世界へと導く。例えば、紙袋をかぶった少女たちが主人公を取り囲み「きれいにしてやるよ」と言いながら水を浴びせ、なおかつ箱に主人公を詰めるさまがプレリンダー映像で流れたりする。
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上位の貴族、ダイアナ、メグ、エレノアが魅せてくれる。ちょっとした筋肉の動きにも妖しさが光る |
ジェニファーや貴族の子供たちの感情が伝わってくるモーション、リアリティを感じさせるセリフ、奇行の連続……プレーヤーの感性に呼びかけるような映像群は、ジェニファー同様にプレーヤーの精神をもじわじわと追い込んでいくような力があるといえる。
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人魚姫の「ウォーッアアア!」という呻き声も軽くヤバイ |
人間同様、出現する敵も呪われているかのような凄まじさがある。「にんぎょ姫の章」で出てくる人魚型のボスは、少女の半身に荒縄を巻きつけて魚の鱗に見立て、天井から吊るされているという驚愕のデザインだ。その人魚姫がバンジージャンプのように何回も落ちてきては、滑車で巻き上げられていく。そんな悪魔的なデザインのクリーチャーと戦えるのは、今作でしか体験できない禁忌にも似た特権ともいえるだろう。
ゲーム中の音楽は、ピアノとヴァイオリンを基調とした曲が流れる。その哀しい調べは幻想的な物語の臨場感を補い、聴き手を作品世界につなぎ止めるのに成功しているといえるだろう。
筆者のお気に入りは、オープニングデモなどで流れるテーマ曲の“A love suicide”。これはシンガーの切ない歌い回しとピアノの旋律が悲壮感を漂わせるシャンソン。エンディングでは日本語歌詞も字幕で流れるので、その詩の意味性とゲームの回想を重ね合わせながらゲーム終了後の余韻に浸ることができた。ぜひ“A love suicide”はエンディングシーンで聞いてほしい。
1つ文句を言わせてもらうと、“A love suicide”を何度も聴き返したいのだが、サウンドテスト項目がゲーム内にしかない。これはスタンダードにサウンドテストをタイトルメニューからジャンプできるようにしてほしかったものだ。サウンドテスト項目の近いデータやエンディング直前のデータをいちいちロードするのは面倒でしかない……。
■ 理不尽さを感じる戦闘は不条理な世界観のエッセンス
ジェニファーの基本操作はスティックと2つのボタンを使うだけのシンプルなもの。方向キーまたは左スティックでジェニファーの移動、○ボタンがチェック全般(調べる、話しかける、扉を開ける)。ジェニファーが客観視点の画面の死角に入り込んでしまった場合、あらかじめカメラが用意されている場所であれば、R2かL2を押してカメラ方向を切り替えることができる。
敵を攻撃する場合はR1ボタンを押し続け攻撃体勢をとり、○ボタンを押すことで前方を攻撃する。素手、または近接武器を装備している場合はボタンの連続押しで小攻撃→小攻撃→大攻撃の連続攻撃を繰り出せる。連続攻撃の大攻撃をヒットさせれば、敵をふっ飛ばしてダウンさせることができる。
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敵の大部分は人間型の妖精。豚や魚や山羊の頭をした妖精もいる | 敵に抱きつかれたときは左スティックを左右に振ることで引き剥がせる |
筆者のプレイは、全チャプター通じてバトルの大半が接近戦だった。マニュアルの武器項目には拳銃も記載されているのだが、なぜかゲームクリアまで拳銃が見つからなかったので(探索を怠ったわけではないのだが……)、拳銃の使い勝手についてコメントしようがないのが申し訳ない。
華奢な少女がフォークやナイフ、斧で敵を攻撃していくというギャップが、このゲームのダークな部分を増幅させている。とはいえ、ジェニファーにも敵にも出血や部位破壊などの描写はなく、強いていえば敵が死亡したときにフィールドに血がにじむくらい。バトルの残酷表現は抑えられているといっていい。
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主人公の斧により妖精さん惨殺の図 |
ただ、戦闘にはイライラさせられることが多い。攻撃のほとんどは範囲が狭く、モーションが大振りで攻撃後の硬直による隙も大きい。攻撃の空振り中に反撃されないように、いちいち正確な方向調整をして攻撃を必中させる必要がある。バトルに関してはヒットアンドアウェイを中心とした地味なものであり、爽快感が乏しく面白みに欠けると言わざるをえない。
強制バトル自体は少なく、エリア移動すればバトルの多くは回避できる。マニュアルでも「可能ならば、できるだけ戦闘は避けましょう」と記載されているように、逃げてしまったほうが賢明だろう。むしろ、ものは考えようである。当たったのか当たらないのかよくわからないヒット判定や起き上がりに連続して攻撃を受けてしまう理不尽さも、不条理な世界観を演出するファクターということではないのだろうか?
■ 犬の行動が恐怖を和らげる
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強い信頼関係に結ばれているジェニファーとブラウン |
このゲームにはホラー要素が満ち溢れているにも関わらず、全編にそれほど強い恐怖は感じなかった。その要因として仲間の犬のブラウンの存在が、主人公の孤独感を和らげていたことが大きいと考える。
開けてほしいドアを前足でガリガリとする仕草も愛らしければ、主人の移動の邪魔にならないよう後方からついてくる忠犬ぶり。ホラーゲームは先に進むのが怖くて苦手、というプレーヤーにはブラウンを伴って探索できる今作を強くお勧めしたい。
また、単なるマスコットとしてではなくシステム的にもブラウンは重要な役割を果たす。3D形式のアドベンチャーには付き物のアイテム探索は今作も例外ではなく、ゲーム全体の中で大きなウェイトを占めている。そこにこのゲームでは、仲間の犬にアイテムを探知させるという効率の良いシステムを採用している。
犬のブラウンは1つのアイテムの匂いを嗅ぎ、対応するアイテムを発見することができる。まずはスタートボタンを押してアイテムメニューを開き、アイテムを1つ選択。次にアクションメニューから「FIND」にカーソルを合わせて○ボタンを押すことで「FIND」欄にアイテムがセットされる。
「FIND」欄にアイテムをセットした状態で△ボタンを押すとジェニファーが「GO!」とブラウンに命令する。ブラウンは匂いを辿り移動を始める。この後を付いて行けば、新しいアイテムが見つかるというわけだ。こうして次々と怪しいアイテムを「FIND」していくことで、連鎖的にストーリーも進んでいく。
【ブラウンの特殊能力FIND】 |
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入手した「銅製の葉っぱ」を例に説明しよう。怪しいと思ったアイテムを「FIND」欄に入れる。このアイテムを「FIND」して見つかる「FINDTARGET」は現時点では「???」となっている |
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△ボタンで「GO!」の指示を出すことでブラウンは動き出す。ドアなどの遮蔽物がある場合は、ジェニファーがドアを開けるなどしてフォローしなければならない。ブラウンを見失った場合は×ボタンを押せば戻ってくる |
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ブラウンが停止し吠え出した場所にアイテムが出現する。後は○ボタンを押して拾うだけだ |
忠犬ブラウンは戦闘でも役に立つ。「FINDTARGET」を解除し△ボタンで吠えさせることで敵を威嚇させることが可能。だが、あまり前面に出しすぎるとブラウン自体も攻撃に巻き込まれてしまい、一定以上のダメージを受けると動かなくなってしまう。シーン移動すれば一定量、回復するのだが、精神衛生上あまりよろしくないので□ボタンの「STAY」で待たせておくのもいいだろう。
■ ブランド買いするのも一興
デベロッパーはPS「MOON」、「UFO」などを手がけた「ラブデリック千駄ヶ谷工房チーム」の元メンバーが集まったパンチライン。今作と「MOON」はジャンルも内容も全く異なるが、「普通のゲームではありえない尖った世界観」は共通項といえる。今後の同社の作品への期待感を含め、一度手にしてみるのも一興ではないだろうか。
クリアまでのプレイタイムは13時間7分。1つの章の中の推理、戦闘、イベントシーンそれぞれのバランス配分が良く、飽きが来る前にエンディングまで到達することができたと思う。セーブ場所で現在直面している謎のヒントが与えられるので、根気良く頑張れば誰でもエンディングまで到達できる難易度といえる。
アドベンチャーの中には、最終的な真実をプレーヤーの判断に任せっきりにした挙句うやむやで終わらせてしまうすっきりしないタイプの物が少なくない。その点、今作では謎に対しての考察材料となる情報が多く提示され、全ての謎がきちんと繋がった感じがした。ゲームクリア後に「再プレイして、細部の謎まで解き明かしたい」と思わせる今作は、ミステリーアドベンチャーの良作といえるだろう。
(C)Sony Computer Entertainment Inc.
□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.playstation.jp/
□「RULE of ROSE(ルールオブローズ)」のページ
http://www.playstation.jp/scej/title/ror/
□関連情報
【2005年12月16日】不条理な世界で少女が翻弄されるサイコミステリー
SCEI、PS2「ルール オブ ローズ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051216/ror.htm
(2006年2月10日)
[Reported by 福田柵太郎]
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