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★DSゲームレビュー★

“もっと”に答えるボリューミーな最新作
漢字が加わりもっと脳が若返る!

「東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」

  • ジャンル:脳活性化ソフト
  • 発売元:任天堂株式会社
  • 価格:2,800円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(2005年12月29日)



 「あなたの脳は何歳ですか?」というフレーズや「脳年齢」という言葉がゲームファンのみならず、これまであまりゲームに眼を向けていなかった一般層のハートをもガッチリと掴み、ミリオンヒットとなった「東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」こと「脳トレ」。今回ご紹介するのは、松嶋菜々子さんがDSを片手に「グー、チョキチョキチョキ! パー」と喋りかけているCMでもお馴染みの続編「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング(以下、「もっと脳トレ」)だ。

 前作の「脳トレ」は、ほったらかしていると青年期を過ぎたあたりから衰えていくという脳の作用を「脳年齢」としてわかりやすく表示し、タッチパネルを生かしたトレーニングで若返らせようという、これまでにないジャンルのタイトルだ。通常のゲーム要素にある「ボタンで操作する」といったものではなく、DSの最大の魅力である「タッチパネル」による「書く」という動作、さらに本体に内蔵されているマイクを使用した「話す」要素が加わり、トレーニング内容は、特に普段ゲームに慣れていない方にも取っ付きの良いものになっている。

 テスト結果を脳の年齢として表示し、若返りを実感させていくという手法はわかりやすく、毎日トレーニングすることで新たなトレーニング項目が追加されるなど、毎日続けたくなるような工夫も光る。日々のトレーニング結果をグラフとして記録し、同じソフトで遊ぶプレーヤーとの比較をして楽しむこともでき、家族や恋人同士で遊ぶにも嬉しい内容になっていた。ボリューム満点のうえに1本のソフトで4人分のデータを記録できるお得感に加え、2,800円という低価格がさらにお得感と満足感をプラスしている。「脳を若返らせる」という、とくに日本人のハートにグッとくるキャッチコピーを含めて、大ヒットするのも納得のタイトルであった。

 そんな「脳トレ」シリーズの最新作である「もっと脳トレ」は、タイトルにある「もっと」という単語からもわかるとおり、前作よりもさらに脳を鍛えて脳年齢を若返らせたい! という意欲的なユーザーに向けた作品だ。筆者は前作も弊誌にてレビューしている。詳しくは前作のレビューをご覧頂きたい。

 前作のレビューでは、筆者の結果がどうあれ、脳が筋肉と同様に使わずにいると衰えるものであるということ、そして、鍛えれば脳は若返るということを実感させてくれた。本稿では、続編であり上級者向けでもある本作「もっと脳トレ」がどのような内容のものかをお伝えしていこう。


■ トレーニングは“もっと”増えて14種類! 漢字、書けなくなっていませんか?

 「もっと脳トレ」に収録されているトレーニングメニューは前作の9項目から、14項目にボリュームアップ。さらにリラックスのためのゲームとしてカラフルな細菌カプセルを並べて消すという、どこかで見たようなミニゲームも楽しめる。「もっと『脳トレ』を楽しみたい」という、本作を購入するユーザーの心理を満足させるに十分なボリュームだろう。むしろ筆者のような、1つのトレーニングをはじめると、その日のうちに他のトレーニングも全て済ませておきたくなる人にとっては多すぎるほどだ。「脳トレ」と「もっと脳トレ」のトレーニング全てを終えてもまだ満足できない、という人はどれだけいるのだろう?

 トレーニング項目は、前作同様にトレーニング終了後にカレンダーに押してもらえるハンコの獲得数で隠されていたものが出現する。今回楽しめるトレーニング項目を以下に紹介していくのだが、本稿執筆時点で筆者のプレイ内容ではまだ出現していない「時計判断」と「英語書取」に関しては紹介することができていないので、ご理解頂きたい。

【漢字書取】
出題される文章の線が引かれたカナ部分の漢字を、タッチスクリーンに書くというトレーニング。学校の授業などで使われてるような漢字ドリルのようなイメージだ。回答するスピードよりも正解率が評価のポイント。間違えてしまった問題は2度目以降のトレーニングで回答しなおすことも可能だ。問題数は公式サイトによると約4カ月分あるとのことだが、1回のトレーニングでは出題数は10問なので、約120日×10問、つまり1,200問あるということだろうか。実際の問題数はわからないが、プレイ中も重複する問題は見られなかった
【算術記号】
左画面に表示される穴あき状態の数式が成立するように記号をタッチスクリーンに書いていくというトレーニングだ。例えば、「1□5=6」となっていれば、+をタッチパネルに書き込むといった具合だ。1度のトレーニングでは20問が出題され、全問を回答する時間が評価のポイントとなる
【名曲演奏】
左画面に自動的に表示されていく譜面に沿って、タッチパネルの鍵盤をタッチし、曲を弾くという一風変わったトレーニング。一見、他の音楽ゲーム、音ゲーと呼ばれるジャンルの内容と大差が無いように思えてしまうが、楽譜表示の譜面に沿って、鍵盤を操作するというオーソドックスな演奏スタイルであることがポイントに思える。譜面を眼で追いながら鍵盤を的確に操作し、リズムを乱すことなく曲を弾くよう努力するのは脳によさそうだ。こちらは約2カ月分の曲数が収録されているということなので、60曲程度存在するのだろう
【聖徳太子】
DSから音声で発音された3文字の単語を聞き取り、タッチパネルに書き込む。トレーニング名にある「聖徳太子」は1度に10人の言葉を聞き分けたという人物。このトレーニングでは最大3人の発声した言葉を同時に聞き、できる限り聞きなおすことなくタッチパネルで回答していくことになる。DS内臓スピーカーの左右のチャンネルを使って、左スピーカーのみで発音される声、右スピーカーのみで発音される声、左右均等に発音し、センターで聞こえる声の3つが同時に聞こえるのだが、聞き取りづらい場合はイヤホンやヘッドホンを利用したほうがよいだろう
【漢字合成】
バラバラに表示されている漢字のパーツを組み合わせて、できあがる漢字をタッチスクリーンに書いていく。表示されているパーツを見て、頭の中に正解がおぼろげに見えてきているときは大変もどかしい。このトレーニングは正解率がポイントのトレーニングに思えるが、回答にかかった時間が評価のポイントになっている。すぐに答えが浮かばない問題などはじっくりと考えたくなるところだが、何度も試行錯誤していればいつかは正解にたどり着いてしまうため、それではトレーニングにならないのだろう。筆者もトレーニング中、ついじっくりと考える状態になってしまい成績のグラフが乱れてしまった。この点には気をつけたい
【記憶加算】
ディスプレイ画面に表示される足し算を次々に解いていく。足し算の式にある片方の数字は、正解後に次の問題にスライドし引き継がれるのだが、その問題が移り変わっている間に黒く塗りつぶされて数字が見えなくなってしまう。次の問題に移る前にその数字を覚えつつ、次の問題の式全体を把握する必要がある。頭の中では、計算を答えつつも、次の問題のために数字をひとつ頭に留めておかなければならないのだ。1度のトレーニング終了までに経過したタイムが評価のポイントとなる
【音読差分】
左画面に表示された文章を音読して覚え、画面が切り替わった後に変化した部分をタッチパネルで記入するというトレーニング。漢字で書かれていた部分がひらがなに変化していた場合は元の漢字を、逆にひらがなで書かれていた部分が漢字になっていた場合にも、漢字をタッチパネルに記入する。このトレーニングのポイントは文章を声に出して読み上げながらも、漢字で書かれている部分を記憶しなければいけないという、2つの作業を脳にさせるところにあるのだろう。事実、漢字で書いてある部分だけを覚えることに終始してみると、途端に難易度が下がってしまった。これではトレーニングの効果も半減だろう。しっかり音読して成果を自分のものにしていきたい
【日付計算】
日付を基準にした質問にタッチパネルで回答していく。「今日は何曜日?」と聞かれれば曜日を漢字で記入。「15日前は何曜日?」と聞かれればトレーニングしている日から計算して、曜日を答えることになる。日数の計算と、曜日に当てはめた計算を同時に頭の中で行なうわけだ。頭の中が混乱してしまうとリカバーが苦しいトレーニング。終了までにかかったタイムが評価に対象となる
【四字熟語】
虫食い状態の四字熟語が出題されるので、タッチパネルに虫食い部分の漢字を記入するというトレーニング。一見、単純に四字熟語を知っているかどうか、さらに漢字を覚えているかどうかがポイントになっていそうなトレーニングに思える。だが、曖昧に記憶している漢字を思い出す途中に、四字熟語の意味を頭に思い浮かべることがあり想像力を働かせることがある。そもそも普段の会話の中にもあまり出てこない四字熟語をこれだけ意識して思い浮かべるということも、普段使っていない脳の引き出しを開けるという意味合いで盲点なのだろう
【釣銭渡し】
ディスプレイ部にデジタル表示された金額と、お札や硬貨で表示される出されてお金を計算してお釣りを出すというトレーニング。内容だけ見てみれば引き算の暗算ではあるが、お札と硬貨でのやりとりであるため、「相手の出した金額の把握、買い物額との計算、お釣りを硬貨で出す」という工程が必要になる。どれだけシンプルに計算の工程を進められるかがポイントになる
【高さ数え】
落下していったブロックが、どれだけの高さに積みあがったのかを答えるというトレーニング。写真を見てもらうとわかりやすいが、「テトリス」のような画面になっており、縦軸はイロハという形式に分かれている。最初のブロックが落下している途中で画面のほとんどは見えなくなってしまうため、落下していったブロックの形と位置をひたすらに想像、記憶していくことになる。重要なのはブロックの数ではなく、最終的なブロックの高さを答えるという点であり、ブロックのない隙間は関係がない。頭の中で画面を想像し続けるという難しいトレーニングだ
【順位数え】
複数の人が競争していく中で、黒く塗りつぶされた人物が最終的に何位でゴールしたかを回答するトレーニング。追い抜け追い越されていく黒い人物の順位を常に把握し続けることになるのだが、やっかいなのが2~3人をいっぺんに追い抜いていったり、逆に追い越された時だ。頭の使い方としては引き算と足し算を常にし続けるような状態になるのだが、一度混乱してしまうと難しい。冷静な判断と競争の移り変わりについていけるスピードが必要なトレーニングだろう


 以上が「時計判断」と「英語書取」以外のトレーニング項目だ。前作と比べてトレーニング項目のボリュームが多いこともさることながら、今回の内容は文字や計算だけに留まらずバラエティ色の豊かなものが多い。また、最初に持つ印象として最も強いのは「漢字」を記述するものが目立つという点だ。前作では「日常で字を書かない大人」という盲点が捉えられていたが、今回は一歩踏み込んで「漢字を忘れてしまっている大人」がフォーカスされているようだ。

 筆者もライターという仕事をしているゆえ、漢字には一見強そうだが、みなさまもご存知のとおり、本稿ももちろんパソコンで作成しているため、漢字は日本語入力ソフトが変換している。それゆえ、漢字を書くとなると、思いのほか書けない自分に驚いた。パソコンにあまり依存していない方でもケータイ電話で忘れてしまった漢字を調べる、というような覚えがあるのではないだろうか。現在学生の方の日常がどのようなものかは筆者には少しわからないが、学生の時にはスラスラ書けていた漢字が、職種にもよるだろうが社会人になってからふと気付くと書けなくなっているということは非常に多いだろう。そういう意味合いでも、今作もまた「大人のDSトレーニング」なのである。

 一点だけ気になるのは、漢字の認識率だ。それ自体は非常に高いのだが、たまに漢字が少しだけ間違っていても正解と認識してしまうことがある。字自体が間違っているものを正解と認識することはないのだが、漢字を構成しているパーツの位置が微妙に間違っているときなどを正解と認識する場面が見られた。漢字の認識には書き順も考慮されているようなので、認識してくれないときや、誤認識が見られたときには、書き順や字の大きさなどを考慮してみるとよいだろう。


■ トレーニング後にはリラックスゲーム「細菌撲滅」で脳を休めよう

ある場所に隠されているリラックスゲーム「細菌撲滅」。一度隠し場所を発見するといつでも遊べるようになる
 「もっと多くのトレーニングを!」と求める方に向けたボリューミーな本作には、脳を鍛えるだけでなく、リラックスさせるリラックスゲームがひっそりと収録されている。筋肉が鍛え続けるばかりでは疲弊することがあるように、脳もまたトレーニング後にクールダウンさせてあげることが大切なのだろう。

 リラックスゲームは「細菌撲滅」というもの。写真を見ると、ゲームファンの方なら思わずニヤリとしてしまうものだ。細菌撲滅は任天堂の名作パズルゲーム「ドクターマリオ」ライクなパズルゲームになっており、上から降ってくるカプセルを細菌の色に合わせて並べることで細菌を消すことができるというゲーム。特徴的なのは操作方法で、カプセルの操作はタッチパネルで行なう。そのため難易度が上がっていくと、通常の十字キーとボタンの組み合わせでは難しい「カプセルの同時操作」をする場面も登場する。

 ゲーム中のBGMもまた、ドクターマリオのアレンジになっており、いかにもリラックスできそうな穏やかなアレンジがされている。しかし、このリラックスゲーム「細菌撲滅」を冷静に考えてみると、同時に落ちてきた複数のカプセルを効率よく処理できる順番を考えたりする必要もある。元のパズル要素にしても、カプセルが消えたあとの組み立てや消していく順番を考える必要のあるものだ。リラックスのため、と言いつつも、別の方法で判断力や構成力といった部分が鍛えられているようにも思える。リラックス効果を求めるものでありつつもトレーニング効果も期待できるというチョイスなのだろう。

【細菌撲滅】
教授が見守る中、カプセルを操作して色とりどりの細菌を消していくリラックスゲーム。楽しく脳を鍛えられることが醍醐味である本作だが、より見た目にもゲームらしいものがこっそりと収録されているのは嬉しい。ちなみにこのリラックスゲームはある場所に隠されているが、トレーニング後に教授が場所を教えてくれることがある



■ あなたの脳年齢は○○歳? 筆者の脳年齢チェックではお正月ボケの存在を確認

チェック問題の成績によって算出される「脳年齢」。実年齢より高い年齢が出たときのショックは思いのほか大きい
 さぁ、今回も前作のレビューに続いて、筆者の脳年齢を見ていこう。前作のレビューでは、最初に脳年齢を測ったときに「29歳」、それを踏まえてトレーニングを続けていくも、仕事の疲れもあり脳が疲労。徐々に脳年齢が上がり、ピーク時には「36歳」にまでなってしまったのである。その話が2005年の6月のこと。あれから約半年が経った。

 筆者は今年で28歳になる。まだまだ若輩であるものの、年々衰えていく心と体には多少の脅威を感じ始めている。さらに昨年プレイした前作の脳トレのおかげで脳年齢も気にかかる。恐る恐る「もっと脳トレ」での始めての脳年齢チェックを開始。チェックを選択すると、声を出せる環境にいるかどうかが問われる。ここでは「はい」を選択。最初のチェックは、CMでお馴染みの声で行なうじゃんけんこと「後出勝負」だ。

 「後出勝負」はディスプレイ側に表示されたじゃんけんの手に向かって、内蔵のマイクで勝負をするというものだ。重要なのは、こちらが勝つ手を発声するだけではないということ。画面の指示に従って、勝てる手を発音するときと、負ける手を発音する場合があるのだ。画面の手に勝てる手を発音したあとに、負ける手を発音するというのがなかなか難しく、リズムよくポンポンと答えているときはいいものの、一度ひっかかると口がスムーズに動いてくれなくなってしまう。早く答えなきゃ! という焦りも手伝って最初は半パニック状態である。

 何度かこのテストを行なって気付いたことだが、じゃんけんの手である「グー」、「チョキ」、「パー」というのは、いずれも発音の際の口の形が異なる。発音している最中の動きはもちろん、言い終わったあとの形も違う。特に言い終わったあとの口の形は、「グー」では少し口を尖らせて戻す、「チョキ」は口をイの形にしたあと戻す、パーは大きく開いて戻る。このチェックでは、この口の形が戻りきらないうちに次の問題がポンポンと表示されるため、思考が発音するべき手を考えるほうに一瞬持っていかれた時に、口がもつれてしまうのだ。特にグーやチョキの後にすぐさまパーと発音するときの口の形は苦しい。人間は慣れる生き物なので、スムーズに回答するには慣れもあるが、瞬時の判断力と冷静さが磨かれること。さらに、発音する手を考えることと、口をスムーズに動かすことの2動作がしっかりできる必要があるのだろう。じゃんけんという題材はうってつけというわけだ。非常によくできている。

【後出勝負】
CMでお馴染みの声で行なうじゃんけん「後出勝負」。写真中央では「パー」、写真右では「チョキ」と発音するのが正解だ


 さて、口がもつれるというパニック体験後に続いて登場したチェックは、2分間にできる限り多くの漢字を覚え、後に覚えている漢字を書いていくという記憶力が鍵となる「漢字記憶」だ。画面に表示されるのは36個の漢字。これを2分間で覚えるというのだから大変だ。ここで筆者はひとつひとつの漢字をそのまま覚えるのではなく、他の漢字と組み合わせて文章的に覚えるという記憶の仕方を用いた。記憶力の良し悪しだけがキーポイントになるように見えるチェックだが、覚える方法の柔軟さもまた、脳年齢という意味合いでは重要だろう。

 だが、その記憶方法を用いても一筋縄でいかない問題がある。それは回答を漢字で書かなければいけないという点だ。このチェックではそちらがあまり難しくならないよう比較的難しい漢字は使われないようだが、刻々と薄れていく記憶をなんとか頭にとどめつつ漢字を書いていくと、ふとした時に漢字の書きに気を取られて記憶がすっぽりと消えてしまうことがある。

【漢字勝負】
2分間で写真中央のような36個の漢字を覚え、その後に覚えられた漢字を回答していく「漢字勝負」。工夫のない覚え方だと相当に難しいだろう。覚え方に工夫をしてみるのがキーポイントだ


 3つ目のチェックは、タッチパネルに表示されている大小様々の数字の中から一番数値の大きい数字をタッチする「最高数字」。数字の字自体の大きさに惑わされずに数値が一番高い数字をタッチする判断力と速度が試される内容だが、いくつか回答していくと、画面上を移動する字も出現。どうしても動き回るものにまず目が向いてしまい、こっそりと点在している最高の数字を見落としたりすることがある。

 このチェックで一番印象に残る反応が、不正解の数字をタッチした瞬間に自分の中で「え、違うの!?」という思いが芽生えることだ。これは筆者だけかと思ったら友人もそのようで、なぜかタッチする数字に対して間違いなく正解は自分がタッチする数字である、と考えているようだ。タッチした数字が間違いであった瞬間「なぜ?」という思いに一瞬とまどいつつも、正解の数字が他にないかを探し始める。筆者、心理的な学などないのでこれ以上はわからないが、このチェックにおいては、最初に画面を見たときの判断力もさることながら、間違えたときの対応も試されるように思える。

【最高数字】
大小それぞれの数字の中から一番高い値の数字をすばやくタッチする「最高数字」。うねうねと画面上を動き回る数字も出現するため、判断を誤まることもしばしば


 というわけで、3つのチェックを終えて、筆者の脳年齢が算出される。この日は2006年1月1日。ちなみに今回のレビューは1月1日から1月21日までにプレイした範囲で執筆している。さて、2006年初日の筆者の脳年齢チェック、その結果はというと……「あなたの脳年齢は30歳!」少し実際の年齢よりも高めの脳年齢となったが、まずは上々の滑り出しだ。ここからトレーニングを続けて脳を鍛えていくことで脳年齢の若返りを目指す。だが、この後またしても前回と同じ推移をたどっていく事になる。

 そもそも最初に脳年齢チェックを行なったのは年末の休暇をゆったりと過ごし、十分に休養を取った万全の状態である。思えばこの日は、年末の仕事でギリギリまで脳を疲弊した後に、リラックスした休暇を迎えているというベストの状態だったのだろう。今年のお正月は、お正月休みの期間を過ぎて1月5日、6日が平日。その直後にまた3連休が入るという休みの長い期間であった。脳のトレーニングは毎日していたものの、ダラダラと休みを満喫していた。そんな中、2度目の脳年齢チェックをしてみるかな? と思い立ってみたものの、結果は35歳! 脳が休まりすぎて俗に言う正月ボケが如実に表われた結果だ。前回は脳の疲れを可視化してくれたと思えば、今回は正月ボケを可視化してくれるとは! やはり「脳トレ」は侮れない。

 思いなおして翌日からトレーニングに集中するも、そう簡単に正月ボケは抜けない。3度目の脳年齢チェックでは、正月ボケが抜けきっていない状態に加えて精神的に焦りすぎてしまい、気持ちは焦るが手は動かないという最悪の事態に。記録はなんと37歳! これはもう20代の人間には危機的状況である。約10歳も脳は老化しているというのだから、たまらない。ひどい結果が出ると人前ではネタ的に笑い話にできるのだが、心の中では笑えない。脳の年齢が10歳も老人だなんて、正直恐ろしいのだ。

 ここで筆者、一計を案じた。とにもかくにも正月ボケの状態は身が入らない。つまり、集中力が欠けている。集中して原稿を書くために筆者が一番多く取る方法は、イヤホンやヘッドホンをするというものだ。トレーニングの効果を上げるため、もっと脳トレをプレイするときには常にイヤホンでのプレイをするようにしてみた。効果はばっちりと現れ、4度目の脳年齢チェックでは32歳、5度目で30歳まで持ち直した。トレーニングのグラフにも緩やかではあるが上昇が見られる。集中力の話とは微妙に異なるが、3人の発音する言葉を聞き分ける「聖徳太子」については、イヤホンによって聞き分けやすくなったことが大きく、飛躍的に成績がよくなった。

 プレイした期間での最終的な脳年齢は、さらに一段落ち込んでしまい32歳。これは一概に言えないが、前作と比較して脳年齢の評価が厳しくシビアにつけられているような印象がある。シビアなのが脳年齢の算出なのか、年齢チェックの難易度なのかは定かではないが、もしかしたら前作に比べてより精度の高い算出結果が出るように進化しているのかもしれない。

【1月1日から1月21日までの筆者のグラフ】
1月の脳年齢チェックとトレーニングのグラフだ。左上が脳年齢チェック、他はトレーニングのものになっている。各グラフともに慣れによる向上が見られる。特に聖徳太子はイヤホンを使ったプレイに切り替えてからは飛躍的に結果が良くなっている。そのうえで聞き取りきれない言葉があるときは、脳の調子が落ち込んでいるときなのだろう



■ 「気まぐれイベント」、「ワイヤレス対戦」も“もっと!”ボリュームアップ

トレーニングの開始前に、たまに教授が持ちかけてくる「気まぐれイベント」。ダジャレを考えたり筆跡鑑定をされたりとバリエーション豊富だ
 「脳トレ」といえば前作でも面白かったのが、トレーニング開始前に教授から話しかけられて始まる「気まぐれイベント」だ。今回ももちろんトレーニング前の質問やお題は健在。俳句の五七五の最後の五の部分を考えるという「ここで一句」や、お題に沿ったギャグやダジャレを考える「オヤジギャグ」、さらに、タッチパネルに表示された無数の点をつなげてひとつの絵を作成する「点つなぎ」など、自由度が高くユニークな仕上がりになるものが増えている。

 気まぐれイベントで答えたお題の回答は、同じソフトに保存されている他のプレーヤーのデータと共に教授が見せてくれることもあるので、人に見られても恥ずかしくない内容のものにしておきたいところだ。

 一風変わった気まぐれイベントとして印象深いのは、筆跡で性格を判断してくれるという「筆跡診断」。出題された漢字を3文字タッチパネルに書くことで、その字の書き方や形、大きさから性格を判断してくれるというもの。これは川島隆太教授の専門ではないということで、診断後に「出典:魔法の筆跡テスト」と表示される。こういった本筋とは一見関係なさそうなイベントやおまけに関しても、しっかりと効果や証明がなされたものが使われているのである。

 16人まで参加可能なワイヤレス対戦も、前作では計算30問という計算の早解き対戦のみだったが、「もっと脳トレ」では、漢字合成を複数人数で行なう「対戦漢字合成」、2分間で25個の数字を覚える「対戦5x5記憶」、釣銭渡しの回答スピードで得点を競い合う「対戦釣銭渡し」など、対戦時に選べる項目が増えた。また、3人以上のときには、出題されるお題に沿った絵を各自で描いて、描き終わったあとに気に入った絵に投票するという「対戦お絵かき」も楽しめる。日常、身近な人の描いた絵を見るという機会はほとんどない。むしろもっと脳トレの対戦以外では皆無と言ってもいいだろう。身近な人の普段では見ることのできない側面を見れるという意味でも貴重だし、それになにより単純で面白い。

 前作でもマイクを使ったユニークな仕掛けとして印象深かったのが、タイトル画面でポリゴン顔の教授に声で呼びかけると反応してくれるというもの。今回はより凝ったものが用意されているようで、中でも一番凝っているのは、連続して3つの言葉を話しかけるというものだ。言葉の区切りには教授がうなづいてくれるので、しっかりと認識してくれているかを確認できる。隠された3つの言葉をしっかり伝えると、教授にある変化が起こる。この3つのキーワードを含めて、教授に呼びかけると反応してもらえる単語はトレーニング後の教授のメッセージにて教えてもらえることがある。

【点つなぎ】
タッチスクリーンに表示された点をつないでひとつの絵を作るという気まぐれイベント。これもかなり想像力が必要になるだろう。写真中央は筆者が書いたものだが、かなり苦しんで描いたものだ。正解というものはないのだが、回答後にはお手本を見ることができる
【オヤジギャグ】
お題に沿ったギャグやダジャレを考える気まぐれイベント「オヤジギャグ」かなり恥ずかしいが筆者が考えたものが写真中央と右のものだ。いざ考えてくださいと言われるとなかなか思い浮かばず苦労する。オヤジギャグもまた脳を使う行為なのだろう
【タイトル画面で教授に呼びかけると……】
前作に続いて本作でも、タイトル画面のポリゴン顔な教授にある言葉で話しかけると変化が起こる。教授が苦手だという食べ物の名前を伝えると、かなり嫌そうな表情をしたりと、今回もユニーク。ある秘密の言葉を言うと、教授に驚かされることも……



■ 脳を鍛えてもっともっと豊かなライフへ

 本稿の中でも何度か出てきたが、本作がどのような作品であるかは「もっと脳を鍛えるDSトレーニング」の「もっと」の部分が的確に表現している。もっといろいろな方法で脳を鍛えたい! 脳を鍛えつつ楽しみたい! という方にはこれ以上の存在はないだろう。「もっと!」と欲する気持ちを完全に満たしてくれる圧倒的なボリューム、前作からさらに一歩も二歩も踏み込み、かつ趣向の凝らされたトレーニング。さらにリラックスゲームも収録するというサービスぶりだ。この作品が2,800円で提供されること、そのコストパフォーマンスの良さにはただ驚かされるばかりだろう。

 老若男女を問わずヒットしているというシリーズだけに、基本のラインや操作性をほとんど変化させずに、すんなりと新たなトレーニングを楽しめる点も嬉しい。本シリーズには大胆な変化や複雑な仕組みはそれほど必要ではないだろう。内容が新しいこと、そして脳を鍛えるというポジティブな目的も含めて満足感が揺らがないことが最も嬉しいのだ。

 ここで告白してしまうと、筆者も前作を発売日に購入して脳を鍛えていったものの、昨年の11月12月には毎日トレーニングを止めてしまっていた。それは単純に日々が忙しかったこともあり、そしてストレートな言い方をしてしまえば他の楽しさに時間を回したということもある。こればかりは仕方ないというか避けられないが「人は常に新しいものを求める」のだ。筆者と同様に、いつの間にやら日々のトレーニングをおろそかにしてしまった方もいるのではないだろうか。

 本シリーズ最大のキーワードは「毎日トレーニングすることで脳を若々しく保つ」というものだ。それだけにもっと脳トレで気分新たに新鮮なトレーニングをすることができるのが嬉しい。「もっと脳トレ」で一通りトレーニングをした後に、ふと前作のトレーニングをプレイしてみたところ、また異なる部分の脳が作用するような感覚を覚えた。前作と本作を交互に楽しむだけでも、毎日脳を鍛え続けていくことの最大の敵である「飽きる」ということに対する大きな助けになるだろう。

 最後に。本シリーズがゲームであるのかないのか、それはさして重要なことではない。インタラクティブ性(双方向性)を持って、プレイしている人の気持ちを楽しく弾ませてくれることが確かであり、その気持ちは「脳を鍛える」という非常にポジティブな目的に支えられている。主観的で申し訳ないが、筆者が生き方として一番恐れるのは、何に触れても心が動かず静かに停滞したまま淀んでいき、いつしか沈んでしまうことだ。ゲームを遊んでいて思わず声が出る、笑う、夢中になれる。ゲーム的な楽しさが心を弾ませて精神の栄養となり日々を豊かにしてくれる。そして脳が同時に鍛えられ、よりクリアで活発な日々を過ごすことができるのなら申し分ない。心豊かに若々しい脳で生きる生活。あなたもひとついかがでしょうか?

(C) 2005 Nintendo

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□「ニンテンドーDS」のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/ds/
□「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」のページ
http://touch-ds.jp/mfs/mottotraining/
□関連情報
【2005年8月22日】発掘ゲームレビュー「東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050822/nou.htm

(2006年2月9日)

[Reported by 山村智美]



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