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★PS2ゲームレビュー★

プロレスLOVE(愛)が試される1本
「ファイプロ・リターンズ」

  • ジャンル:2Dプロレスゲーム
  • 発売元:株式会社スパイク
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:9月15日



唯一無二のプロレスゲーム。それが「ファイプロ」だ!
 '89年に産声を上げた「ファイヤープロレスリング(ファイプロ)」シリーズ。「ザ・ビッグプロレスリング(データイースト/テクノスジャパン:'83年)」や「アッポー(セガ/サンリツ電子:'84年)」から綿々とプロレスゲームを追い続けてきたマニアたちは、PCエンジンで発売された初代「ファイプロ」に触れるや否や「うぉぉ! これこそ俺たちが待ち望んでいたプロレスゲームだ!!」などと狂喜乱舞したものだ。

 当時としては多い16人の登場レスラー、タイミング重視の駆け引き、シンプルな操作で多彩な技が使いわけられるツボを押さえた作りはもちろん、何よりもユーザーの琴線を刺激したのが“自分で試合を組み立てられる”こと。脳内妄想バリバリの“俺プロレス”を体言できる、懐の深さ。これこそが「ファイプロ」を唯一無二の存在に押し上げたポイントであり、PCエンジン、メガドライブ、スーパーファミコン、ゲームボーイ、ゲームボーイアドバンス、ワンダースワン、セガサターン、プレイステーション、ドリームキャスト、プレイステーション 2と、シリーズ作品に綿々と受け継がれた“古き良き伝統”といえる。

 だが、家庭用ゲームがポリゴン全盛期に突入すると、さすがの「ファイプロ」にも翳りが見えてくる。3D化されたレスラーが激しく動き回る新世代のプロレスゲームは、2D表現にこだわった「ファイプロ」にはない魅力でプロレスゲームの新たな形をユーザーに提示してくれた。「ファイプロ」シリーズも、プロレス新時代の息吹を取り込んだ新作をリリースし続けたが、2003年6月、その日は突然やってきた。

ありがとうファイプロ、さようならファイプロ。

 真っ白いパッケージに印刷された、上記キャッチコピー。裏面には「これが『ファイプロ』シリーズ、涙、涙の完結編!」の文字。シリーズ集大成、そして最後の作品「ファイヤープロレスリングZ(PS2)」のリリース。過去に何度か「これが最後」的なニュアンスをチラつかせつつ新作をリリースしてきた(まさにプロレス的な)経緯があるため「どうせまた……」とは思いつつも「スパイクもポリゴンで新作出してるしなぁ」、「これで打ち止めも有り得るかもしれん」などなど、古参ファイプラーをかなりセンチメンタルな気分にさせてくれた。

 だが、それ以上に「ファイプロZ」が切なかったのは、その前作「ファイヤープロレスリングD(DC)」よりも弱い部分が少なからず目に付いてしまったことだ。新キャラや新技などはともかく、レスラー表示の縮小、チープなサウンドエフェクト、寒々とした会場の雰囲気などなど、古参ファイプラーほど納得がいかない作りこみの甘さは「これがシリーズ最終作では悲しすぎる」、さらには「納得がいかない。徹底的にこだわった“ファイプロ”を作ってくれ!」という声を生み出していく。

 そして、2005年9月15日。「ファイプロ」は帰ってきた。プロレスゲーム界のド真ん中に……。

入場シーンなどの演出面もパワーアップ。各自の理想とするプロレスを追及するもよし、現実をトコトン反映させるもよし。幻に終わった夢のマッチメイクを実現してみせるのもいい



■ ファイプラーはマニュアル要らず? シリーズ伝統の操作系

 プロレスゲームということで、2D系だが使用するボタンはわりと多め。方向キーがレスラーの移動、□ボタンが小技、×ボタンが中技、○ボタンが大技、△ボタンがダッシュまたは組んでロープに振る、R1ボタンが間合い調節などの特殊操作、L1が乱れた呼吸を整える機能にそれぞれ対応している。

 各ボタンは、相手と離れている、組み合う、ダウンしている、コーナーポスト、エプロン、場外、タッグ技、凶器など、シチュエーションごとに内容が変化する。プロレスゲーム初心者の人は、マニュアルを見ただけで「こんなにたくさん覚えきれないよ!」とビックリされるかもしれないが、たとえば、コーナーポストに相手を叩きつけた串刺し状態でやれることは、「○ボタン+方向キー」で攻撃するか「R1ボタンで逆さ吊り」のふたつ。全部をまとめて考えると混乱するが、特定の状況で使えるボタンは限られているため、そのあたりを念頭におけばすぐに馴染めるはずだ。

 攻撃は、大別すると“打撃”と“組み技”の2系統にわかれる。打撃は、見た目そのままにパンチやキックを相手に叩き込めばいい。問題は組み技で、これは「ファイプロ」初心者が必ず悩まされるポイント。レスラーを相手と接触させ、組み合った直後、レスラーのグラフィックが“腰を落とした瞬間”攻撃ボタンを押すというタイミング命のシステムで、ジャストタイミングで入力に成功したほうが技を仕掛けられる。ボタンを押すのが早い、あるいは遅すぎると、逆に技を仕掛けられてしまう。これはコツ云々以前に「慣れる」しかなく、腰を落とし終わる瞬間にあわせてボタンが押せるようになるまで練習あるのみ。

組み合った後、腰を落とすタイミングにあわせてボタンを押すだけ。最初は難しいと感じるかもしれないが、要は慣れの問題。どうしてもダメという人は難易度を調整して少しずつタイミングを覚えよう


 攻撃ボタンの小、中、大は、そのまま繰り出す攻撃の強さをあらわしている。格闘ゲームと同じように考える人がいるかもしれないので念のため説明しておくと、これは小=隙が小さいなどという意味ではない。もちろん小技のほうが牽制向きではあるのだが、本作における小、中、大の区別は、あくまでも“プロレスの不文律”を再現するのが主目的。一般的なプロレスの試合では、最初から大技ばかり叩き込むといったことはほとんどなく、小技による牽制から徐々に中技、派手な大技へと移行していき、互いの見せ場を作りつつ最後はフィニッシュホールドでシメるというのが自然な流れ。

 ゲームバランスの面でも、相手が元気な状態で大技はかかりにくく、必然的に試合開始直後は小技の応酬になるよう調整されている。スタンディングの打撃は直撃することもあるが、元気な状態だとやはり自動的にガードされてしまうケースが目立つし、打撃の大技ともなればモーションが大きすぎてそうそう当たるものではない。大技を当てるには、小技や中技で試合を組み立てつつ相手レスラーにダメージを蓄積させて“フラフラ状態”を作り出し、そこに大技を叩き込むのが大原則。体力が減っている状態でダウン技をくらうと、引き起こされた際に一時的な行動不能状態に陥る。このとき、試合の主導権は完全にダウンさせた側にあるというわけだ。

 フラフラ状態は非常に不利だが、完全な無防備というわけでもない。正面はもちろんだが、たとえば背後から組み付かれた場合、腰を落とす瞬間同様に特定のタイミングで□、×、○ボタンを押せば“即反撃もしくは回避”が可能。フラフラ状態に限らず、ロープに振られた場合は、ロープに接触した瞬間に□または×、ダウン中であれば起き上がる前に□ボタンで「時間差起き上がり」、×ボタンで起き上がった直後が無敵になる「狸寝入り」、×ボタンと方向キー上下でゴロゴロ転がりながら場外まで逃げることも可能な「ローリング」など、駆け引きの要素となる回避システムが用意されている。

 ただし、フラフラ状態orダウンしたままの相手に対する打撃は、大半が一方的に仕掛けられる。旧シリーズから「大技の打撃→すぐに起き上がらせる→フラフラ状態→速攻で大技の打撃」などの大変ショッパイ攻撃ループが物議を醸し出してきた。旧シリーズ(たしかSFC版から採用されたはず)から連続3回目は喰らった側がすぐに起き上がれる仕様に変わったため、一方的にハメ殺されるという場面は少なくなったが、それでも対人戦などでガチでやられると相当苦しい。ストレス解消にはいいが、それ以外ではガチ対戦以外あまりやらないほうが(自分のスキルを上げるという意味でも)いいだろう。

ダメージが蓄積すると、起き上がった直後はしばらく無防備な“フラフラ状態”になる。この瞬間を狙われると非常に危険なのだ


 試合中にレスラーがとれる行動は、枚挙にいとまがないほど。「ファイプロ」を知らない人のために、主だった部分を列挙すると……

  • 立ち技、組む(正面、背後)、ダウン攻撃(仰向け、うつ伏せ、上半身、下半身、転がす、走りこんで追い打ち)、走る、ロープにふってカウンター攻撃(フェイントも可)、コーナーポストにふって攻撃(串刺し、飛び技、雪崩式)、コーナーポスト上からのダイビング攻撃、場外への飛び技、トップロープ越しに場外に放り投げる、場外の出入り(投げ入れ、投げ捨て)、、エプロンでの攻防、力比べ、ヘッドロックしたまま移動、ガードポジション、マウントポジション、バックマウント、対角線中央攻撃、凶器攻撃、受け、セコンド乱入、羽交い絞め、ツープラトン攻撃(連続串刺しまで可!)などなど
 ……このように、おおよそプロレスの範疇に含まれる動きは大半がフォローされている。後述するが、本作は総合、立ち技、デスマッチなど多様化した格闘技シーンを再現するためのルール設定なども可能で、プレーヤーのイマジネーション次第で夢のような戦いが至極カンタンに実現できる。総合や立ち技の選手をデスマッチのリングに上げたりと、何もかもが思いのままなのだ。

【対角線中央攻撃】
「ファイプロ・リターンズ」で追加された新要素のひとつ。リング中央で相手がダウンしたら、コーナーポスト側に移動して方向キーと○ボタンを入力。対角線中央攻撃技を持っている選手なら、特定のモーションから起き上がった瞬間を狙って自動的にダッシュ攻撃を繰り出す



■ 300人以上の選手と全18団体が登場 ~しかもエディットは自由自在!

 「本作に登場する人物・団体はすべてフィクション」というお約束を踏まえつつ……「ファイプロ・リターンズ」には、現実のプロレスや格闘技シーンを彷彿とさせるレスラーや団体がたくさん登場する。しかも、団体や軍団名、レスラー、果てはチャンピオンベルトにいたるまで、文字どおり自由自在にエディットできてしまうのだ!

 現実の団体を再現したい人はもちろん、オリジナル団体やレスラーを作ることも朝飯前。古参ファイプラーならば「ファイプロ」シリーズ新作は起動と同時にリネームしまくる(そして疲労のあまり力尽きる)のがセオリーだが、あえてそのままにしてフィクションの世界を堪能するのもいいだろう。

 エディットで作成可能な人数上限は、なんと500名! エディット項目の豊富さは「ファイプロ」シリーズの真骨頂ともいえる部分で、その充実度は掛け値なしに“過去最高”の仕上り。名前や必殺技の名称はもちろん、プロフィール、ファイトスタイル、パラメータ、技、CPUロジックなどなど、いちいち例をあげていたらキリがないほどの膨大な項目数を誇る。

 外観にいたっては、基本パーツのバリエーションもさることながら、上腕、下腕など各パーツごとに複数のレイヤーが設定できてしまう贅沢仕様。初めて「ファイプロ」に触れた人などは、ジェット機のコクピットに放り込まれた一般人よろしく、その圧倒的な情報量に「どこから手をつけたら良いやら……」と、ただただ呆然としてしまうだろう。

 とはいえ、ひとくちに膨大といっても、エディットのやり方はとてもカンタン。基本的には各項目のメニューから好きなパーツを選ぶだけで良く、それを組み合わせて現実のレスラーを再現したり、理想のレスラーを作り上げていくわけだ。あまりにも膨大な数にめげてしまった人には、モデルとなるレスラーを選んで、自分好みに少しずつ手を加えていく方法をオススメしたい。手順に慣れてしまえば、怪奇系から女子レスラー、果ては動物(着ぐるみ)やアニメに登場しそうな萌えキャラさえも、リング上の登場人物に仕立て上げてしまうことが可能なのだ。

これだけで延々と遊べてしまうほど超充実のエディットモード。初めて「ファイプロ」に触れる人はビックリすること間違いなし。2Dでこれだけデータを用意するのは本当に大変。スパイクがんばってます!


 エディットは、もちろんレスラーだけに止まらない。レフリーは、名前はもちろん、フォール、反則、場外カウントのスピード、乱入時間など各種スキルが変更可能。レスラー同様に外観が事細かに設定でき、正統派から反則無視のとんでもない人まで、まさに理想のレフリーが作れてしまう。団体の“別の顔”ともいうべきリングは、プリントされるロゴ、コーナー、コーナーマット、鉄柱、ロープ、マット、垂れ幕の色や種類などが複数から選択できる。絵心のある人向けに、団体のロゴを描くためのグラフィックツールまで完備されているさまは、まさに至れり尽せり。

 「無いものはエディットする」それがファイプラーの心意気。プリセットされたデータでもお腹がパンパンになるほどのボリュームだが、それ以上にコッテリと凝縮されたエディット機能の数々には、マニアならずとも肩までどっぷり浸かってしまうはず。コツコツとエディットするのが好きな人にとっては、いじくりがいのある極上のツールといえよう。

エディットできるのはレスラーだけじゃない。周辺まできちんとサポートしてしまうのが「ファイプロ」の凄いところ



■ ツボを押さえたルール設定とモード ~観客動員を競うマッチメイクモードが熱い!

 多様化するプロレスシーンを再現すべく「ファイプロ・リターンズ」に登場する各モードは、それぞれきめ細かいルール設定が可能になっている。

 大元となる形式には、通常ルールで行なわれる「ノーマルマッチ」、四方を金網で囲まれたリングで戦う「金網デスマッチ」、バラ線や爆弾などが設置された「バラ線発破デスマッチ」、場外に有刺鉄線を配置した「断崖爆弾デスマッチ」、プロレスにおける異種格闘技戦を再現する「SWA公式ルールマッチ」、立ち技格闘技のルールに基づいた「S-1ルールマッチ」、12角形のリングで試合をする「グルーサムファイティング」の7種類がある。

 7種類いずれにおいても、参加人数、2、3または10カウント、ギブアップ、フォール、エスケイプなどのオンリールール、試合時間、本数、リング、試合会場、設置凶器数、難易度、レフリー、ゲームスピードなどが事細かに設定できる。

 ゲームモードは、好きな条件や組み合わせで1試合だけ戦う「ワンナイトマッチ」、CPU含め3~32人まで参加できる「ワンナイトトーナメント」、CPU含め4~64人でリーグ戦を争う「オープンリーグ」、チーム単位で勝敗を競う「軍団対抗戦」、最大8人が入り乱れる「バトルロイヤル」、エディットモードで作成したベルトをかけて戦う「タイトルマッチ」、プレーヤーがフリーのマッチメーカーになって興行を打つ「マッチメイクモード」が用意されている。

一般的なリング。道場グラフィックもあるのだ バラ線発破デスマッチ。蛍光灯も選択可 金網デスマッチ。ルールが選べるのがいい


 「ファイプロ・リターンズ」で初登場となった新モード「マッチメイクモード」は、興行の内容に応じて与えられる評価ポイント「FP」をいかに稼ぐかを競うもの。本モードには、1年間12回の興行をマッチメイクする「シーズンプレイ」、1回の興行をマッチメイクする「コンペティションプレイ」、シーズンプレイとコンペティションプレイのランキングが閲覧できる「ランキング」の3メニューがある。

 「シーズン」はスタート直後に小さな団体や会場しか選べないが、「コンペティション」はどれでも好きな団体や会場を組み合わせられるといった違いがある。1回こっきりの「コンペティション」は、「シーズン」でプレイするための試金石といった印象だ。

 どちらにも共通するのは、団体、会場、対戦カードを決めて、ファンに指示される興行を打たねばならない、ということ。プレーヤーは、最初に与えられたFPを消費して、招聘する団体、会場、レスラーを決めていく。招聘するレスラーは必ずしも同じ団体だけで完結させずとも良く、必要があれば声がかけられる団体から適宜引っ張ってくることも可能。1回の興行は7試合までマッチメイクが可能で、それぞれ試合形式、ルール、レフリーなどが個別に設定できる。ただし、会場によってはデスマッチが禁止されているところもあるため、デスマッチに強い団体を招聘するときには注意したほうがいい。

 興行の評価は試合単位で、それぞれ観客からパーセンテージで意思表示される。結果がわかるのは全試合終了後で、各試合の評価、興行全体の満足度、獲得できたFP値がまとめて表示される。まだファーストインプレッション程度にしか触れていないのだが、筆者がざっとでプレイした範疇では、プロレスファンが「こんな試合が観たい」と思うような展開になれば、おおむね良好なスコアが獲得できるようだ。逆にいえば「これはないよなぁ」という結果に終わったときは、ほぼ間違いなく酷い評価が下される。たとえば、早い段階でリングアウトによる決着。これは消化不良もいいところで、どれだけ人選やテーマが良くても低い評価しか得られない。

「シーズン」は小団体からスタート。信頼を勝ち得ていくことで将来的にビッグマッチが仕掛けられるようになる デスマッチ、ミックスドマッチなども自由自在。ただし団体カラーやレスラーを活かすルールを考えないと満足な評価は得られない 興行の最後に評価と獲得FPが表示される。ショッパイ試合には遠慮なく低い評価が下される。マッチメイカーの腕の見せどころだ


 レスラーの操作はCPU、プレーヤーの選択が可能なので、極端な話をすれば全試合を自分でコントロールすることも不可能ではない。そうすれば、リングアウトが設定された試合でヒールレスラーの暴走に冷や汗を流すこともなくなる。だが、試合のコントロールにばかり集中すると……なんというか(これは筆者だけかもしれないが)モチベーション的な部分で“しらけて”しまうことがある。なんでもかんでもレスラーに迎合する客も最低だが、客に媚びるレスラーもまた然り。高評価を得ようとするあまり、操作中のレスラーらしからぬムーブをしていることに気付いたとき、なにやら妙な罪悪感にさいなまれてしまうのだ。

 遊び方は人それぞれだが、筆者的には、マッチメーカー気分を味わうなら全試合をCPUまかせにしたほうが面白さが増すような気がする。プレーヤーが直接操作すると、このルールで試合が成立するのか? この顔合わせで噛み合うのだろうか? などといった“ドキドキワクワクする部分”が希薄になってしまうように感じられるのだ。本来であれば噛み合うはずなのに、失敗することもあろうだろう。でも、それもまたプロレスにおける出来事。

 これまでも団体経営をテーマにしたプロレスゲームはいくつかリリースされているが、ここまで細かくさまざまな要素を考えさせられる作品はなかったように思われる。1年サイクルでコンパクトにプレイできるうえ、表示されるパスワードを公式サイトで入力して全国のプレーヤーとランキングを競うことも可能。実にチャレンジのしがいがあるモードといえるだろう。

マッチメイクによっては、ちょっとしたイベントが発生することも。マッチメイカーにとってはイレギュラーだが観客が楽しんでくれれば無問題



■ 3Dにない独特のテンポと流れ ~俺プロレスを体言する快感

 プロレスゲームも3D表現が主流になって久しいが、「ファイプロ・リターンズ」をプレイしていると、やはり“2Dでしか表現できない感覚”は大切だなぁと、改めて実感させられてしまう。

 語弊を恐れずにいえば“アクションコミックのコマ割りにも似たテンポの良さ”とでもいうのだろうか。コントローラーを通してキャラクタをインタラクティヴに動かすことで得られるフィーリング、欲しい絵やシチュエーションを断続的に創り出してく感覚が、本当にたまらない。

 ハードの進化が著しいゲーム業界ではあるが、3Dで代替できない2D表現というものが存在する以上「ファイプロ」シリーズに独特のカタルシスを求めているユーザー、さらには取り込める新規層というものが必ずあるはず。以前のレビューでも触れたが、プロレスや格闘技界の最新事情をギッシリ詰め込んだ「ファイプロ」がある以上、既存ファイプラーにとって代替物など“有り得ない”のだ。

 口の悪い人は「前作からほとんど変わってない」というかもしれないが、それはパッと見レベルの話であり、新規に追加されたキャラクタ、技、モードはもちろん、距離に応じてグラフィックがズームアップorアウトする演出、観客の声援など、前作の反省点もひと通りフィックスされている。ロード時間で若干待たされる感はあるが、じれったさにイライラするほどではない。

 筆者的な結論としては「ファイプロZ」に不満があった人こそ「ファイプロ・リターンズ」をプレイすべきであり、3Dじゃないとダメという人を除けば「これをやらずしてプロレスゲームを語るなかれ」と言いたいくらい。とにもかくにもプロレスが好きな人ほど楽しめる良作で、自分のプレイスタイルを振り返ると「実は相手の技をほとんど受けていない」、「とにかく打撃ばかり使ってた」、「一方的な展開でも満足」、「CPUが空気読めない返し方をしてくると超ムカツク」などなど、“自分がプロレスに対して潜在的に求めているもの”が浮き彫りになるほど良くできている。タイトルにも記したとおり、ある意味において“プロレス愛が試される”作品といえるだろう。


(C)2005 Spike All Rights Reserved.

□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□製品情報
http://www.spike.co.jp/fr/
【8月19日】スパイク、PS2「ファイプロ・リターンズ」
マッチメイクの興行評価を競う全国大会を開催場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050819/fr.htm
【7月22日】スパイク、PS2「ファイプロ・リターンズ」
プロレスラーの菊タローさんが広告に登場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050722/fr.htm

(2005年9月14日)

[Reported by 豊臣和孝]


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