【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

★PS2ゲームレビュー★

ホラーゲームの旬に「零」がプレイできる喜び
「零 ~刺青の聲~」

  • ジャンル:ホラーアクションアドベンチャー
  • 発売元:テクモ株式会社
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(7月28日)



 ホラーを題材にしたゲームは数多く発売され、今後のリリースも数多く予定されている。その数に比例するかのごとく、ホラーゲームファンの求める恐怖のハードルはグッと上がってしまったと思う。そんな舌(?)の肥えたホラーゲームファンが安心して手を出せるタイトルがテクモ株式会社からリリースされた「零 ~刺青の聲~」だ。

 テクモの「零」シリーズは和風ホラーをテーマにしたゲームで、その完成度とセンスの良さから高い評価を得ているシリーズ。その最新作「零 ~刺青の聲~」の世界から得られる恐怖感は大幅にアップ、「零」シリーズに対するファンの期待が裏切られることはない作品に仕上がっている。

霊の存在や気配、それらを日本人の脳裏に浮かびあがらせるハイクオリティなグラフィックだ
 「零 ~刺青の聲~」は主人公の黒澤怜が「悪夢の世界」の広大な日本屋敷を探索し、そこに潜む謎を解き明かすことが目的のゲーム。襲いかかる悪霊は特殊なカメラ「射影機」で撃退。主観視点のファインダーモードで撮影してダメージを与える独特のバトルシステムが本作の魅力の1つとなっている。

 屋敷の中を照らすのは主人公が持つライトの弱い光のみ。その光が照らす先には「何かが潜んで居そうな気配」のある空間が巧みに作られている。その気配はプレーヤー自身の想像力を掻き立て、確実に恐怖心を倍加していく…。そして、襲い掛かる霊との遭遇――静と動の恐怖が入り乱れる和風ホラーならではの世界が作られているといえるだろう。

 ちなみに「零 ~刺青の聲~」 はシリーズ1作目の「零~zero~」、2作目「零~紅い蝶~」とリンクしている。「零~zero~」の主人公に出演した雛咲深紅、登場シーンは少ないが「零~紅い蝶~」に出演した天倉澪といった縁のある人物が多数出演(プレイアブルキャラクタではない)。1本で独立した話ではあるが、過去の2作と深いつながりのある設定の「零 ~刺青の聲~」。「零」シリーズファンにとってマストタイトルであるといえる。


■ 射影機(カメラ)で霊を激射する

 霊を映し出すことができるカメラ「射影機」での戦闘シーンの根幹部分は過去シリーズから「零 ~刺青の聲~」へと忠実に継承されている。実際にプレイした感触は「零~紅い蝶~」の物がベースになっているという印象。画面構成がすっきりまとまっているため、戦闘はスムーズに慣れることができた。

 敵である霊は消滅と出現を繰り返し、プレーヤーキャラクタに突進してくる。障害物を通過してくる霊は目視では位置を捉えづらい。そこで画面右下にある「フィラメント」を確認する。主人公が霊のいる方向を向くとフィラメントは赤く点灯。霊の位置を感知したら、△ボタンを押して「射影機」を構える。

 ファインダー画面になったら、霊をサークルに捉え続けて霊力をチャージ。霊力を貯めた分まで霊にダメージを与えられるので、霊の接近に対してじっと耐えなければならない。おぞましい悪霊の姿がじりじりとアップになっていく姿は、プレーヤーの背筋が凍りつかせる。この敵の待ち受けの時間が「零 ~刺青の聲~」の戦闘の面白さの1つだ。

“シュボッ”というシャッター音が鳴るのも、骨董品のカメラのようでよい 霊を写した直後、視覚エフェクトの効果で霊の身体が飛散したように見える。たしかな手ごたえが伝わるはずだ
銃の弾丸に相当するのが「フィルム」。フィルム枚数は余裕があるので(難易度ノーマル)、安心してほしい 霊の接近を許し組み付かれてしまった時は、アナログスティックをガチャガチャして霊を振りほどく

霊の頭部をサークルに納めると「フェイタルフレーム」が発生しやすい。
 霊が遠くにいる状態でシャッターを切ってもよいのだが、それだとカス当たりとなってダメージもポイント(スコアのようなもの)も微々たるものになってしまう。大ダメージ&高ポイントを狙うためにはシャッターチャンスである「フェイタルフレーム」を狙っていく。

 ファインダー画面中央にある丸い円が赤く反応し、さらにフィラメント下の赤いランプが点滅する僅かな瞬間が「フェイタルフレーム」。この瞬間にシャッターを切ると、霊は大きくヒットバック。大ダメージを与え、高ポイントを得ることができる。だが、「フェイタルフレーム」は敵がプレーヤーキャラクタに最接近する直前。撮影に失敗するとプレーヤーは霊に掴まるというリスクがある。

 さらに霊がヒットバックしている最中にも「フェイタルフレーム」は出現。これを連続して撮影していくことで2Hit、3hit……と「コンボ」が発生し、高ポイントが狙えるというボーナスがある。

背景に敵がめり込んでしまうと、「コンボ」が途切れる。できるだけ広い空間で戦うのがベストだ 獲得したポイントは純粋にスコアとして楽しめるほか、「射影機」の機能強化にも使用できる

フラッシュは使用回数は現実に戻ると規定値まで回復する
 このように戦闘の流れはほとんど前作「零~紅い蝶~」の頃と変わっていない。「零 ~刺青の聲~」の戦闘の独自性は、3人のプレーヤーキャラクタがそれぞれの固有能力を駆使して戦えることにある。

 黒澤怜なら□ボタンを押すことで霊を怯ませる固有能力「フラッシュ」、雛咲深紅なら□ボタンを押すと一定時間霊の動きを遅くできる「御影石のお守り」が使用可能。男性キャラの天倉螢なら、□ボタンの「隠れる」で物陰に隠れることができる。固有能力で各キャラクタの弱点を補いつつ、プレーヤーならではの戦略をバトルに組み込んでいけるようになったのが面白い。


■ 陰のあるキャラクタたちが見せる名演技

 プレーヤーが使用できるキャラは3人。任意のタイミングで操作キャラを変更できるわけではなく、各章で使用キャラクタは設定されている。前の章のキャラでは通れなかった場所を通ることができたり、キャラクタの固有能力を駆使することでプレイの幅が広がっていく。

話が進むと、現実世界でも怜の身体に現れるようになる「刺青」。操作に関してのペナルティはないようだが……
【黒澤怜】

23歳のフリーカメラマン。オープニングでは恋人の優雨を亡くした悲しい事件が流れるなど、強い悲壮感を漂わせる女性。ホルターネックのキャミというコスチュームの青色が、日本屋敷の闇の中で妖しい美しさを放つ。

「零~zero~」といえば氷室邸。今回も氷室邸を連想させる場所が登場するが、深紅との関係は……?
【雛咲深紅】

「零」シリーズ第一作目の主人公に登場した少女。カメラマンの助手として、怜の家に住み込みで働いている。体力は少ないが、霊力が高い。特殊能力も敵の動きを遅くする「御影石のお守り」が使用可能なので、戦闘では先手を取りやすい。

□ボタンを押すとしゃがみ込み、霊をやり過ごせる。倒せない霊を巻くのに最適だが、普段は逃げたほうが早い……
【天倉螢】

「零シリーズ」第二作目の主人公「天倉繭」と「天倉澪」の叔父にあたる人物で、民俗学や都市伝説を調べているノンフィクション作家。霊力が弱いため、敵に中々ダメージを与えることができない。道を塞ぐ障害物を退かすことができる。

 この三人のキャラクタは、悪夢の世界で彷徨うという極限状態に置かれた人間を演じる。霊と遭遇した時のリアクションや、不安げに辺りを見回すなどのモーションが実に自然で、すこしも違和感がないのが素晴らしい。「日常の世界」が加わったとはいえ、キャラクタの笑った顔や怒った顔が皆無に等しく、常に切ない表情を浮かべているのも「零」シリーズらしくてよい。

 プレーヤーキャラに匹敵するほど魅力があるのが随所で登場する悪霊たち。半透明のモデルで描画されている悪霊たちが、スッと現れて廊下を歩いて消えていく。ただそれだけの事なのに、全身の血の気が引く。そして、静の恐怖ポイントである霊との遭遇から、動的な戦闘シーンという別のベクトルの怖さが恐怖感の流れをきちんと引き継ぐ。このジェットコースター的な恐怖感の創出は、もはや「匠の技」と呼べる技術だろう。

今回は古典的な脅かし方をするデモが多い気がする。プレーヤーキャラがライトを向けた先には何もない。しかし、安堵したプレーヤーが振り向くと……


■ 謎解きもキャラクタの固有能力が必要

フィラメントが青く光る場所を撮影すると、写真にヒントが浮かび上がる
 「零」シリーズの謎解き要素であるリドルや封印の扉は今回も健在。リドルは数字合わせのパズル、封印の扉はフィラメントが反応する場所を撮影し、写真に写り込んだ物をヒントにして対応した場所に移動。その場所の封印霊を撮影すれば封印が解けるというおなじみの解除方法になっている。

 今回はそれらに加え、深紅、螢の固有能力で謎を解く作業が追加された。身体の小さい深紅は床下などの狭い通路を這って進むことができるし、螢はその恵まれた体格を活かして、障害物を退けて通路をこじ開けることが可能だ。

 調査を進めていくと、謎に関連したメッセージや民俗学や伝統儀式の文献などが入手できる。それらを読解することができれば「悪夢の世界」にまつわる謎が明らかになっていくのだが、資料やメッセージは専門用語だらけで非常に難解。その難しさを理解させるためのシステムとして「手帳」がある。

付箋マークが現れたら、それは「手帳」に新たな項目が出現した合図だ。
 「手帳」は謎の一部が解明されたり、怜自身が類推した情報がリアルタイムで手帳に追加されていくというシステム。人物に対する考察はもとより、複雑な事象も怜の視点でまとめあげられているので、オカルトに疎い人にとってもわかりやすくて嬉しい。舞台背景や謎を読み取れないと今作の魅力は半減するので、手帳にはしっかりと目を通したい。

 謎解きで苦労する点があるとすれば、広い日本屋敷を歩き回る、ということだろう。屋敷は広い上に多層構造になっているので、各ポイントのつながりをメモしながら遊ぶといいだろう。地図は到達した場所が青くなるなど使い勝手はよくなってはいるが、重要な地点をマーキングできるといった便利機能が欲しかった。


■ 零シリーズの新たな恐怖「現実の世界」

 今作のプレイフィールドは日本屋敷の「悪夢の屋敷」だけでなく、怜と深紅の住む洋式の家「現実の世界」も用意されている。現代様式の家の探索は、「零」シリーズでも今作が初の試み。「現実の世界」は「悪夢の屋敷」とは異なり、手ごろな広さの一軒家だ。5分程度ですべての部屋をチェックできるのが楽でうれしい。

切迫感の漂う「悪夢の屋敷」とは対象的に、日常である「現実の世界」は緊張から解放される空間として存在する 怜の家は常に悲しみに包まれた沈んだ雰囲気。恋人を事故で亡くした怜、兄を失った深紅が静かに暮らす

さりげなくプレーヤーを驚かすのが怜の同居人である深紅。ボソボソとした話し方、生気の無い顔…地味に怖い気が…。
 この「現実の世界」へ飛ぶタイミングは各章の終わりが多い。ストーリー上、怜が夢から目覚めることで「悪夢の屋敷」から「現実の世界」へ強制的に移動するからだ。「悪夢の屋敷」で持ち込んだ情報を調査、整理することが「現実の世界」での主な目的だ。

 具体的には「悪夢の屋敷」で撮影した写真の一部を1階の暗室で現像、同居人である深紅に写っているものを調べてもらうこと。それと、届いた手紙のチェック、文献の調査くらいだ。「現実の世界」ですることは意外と少なく、物足りなさを感じる。

 「悪夢の屋敷」に比べて直球の怖さはないが、「現実の世界」が悪夢とリンクしていくという手法は今までの零シリーズにはない新たな恐怖ポイント。次第に「悪夢の世界」と同様に、どこかに何かが潜んでいるよう感覚、壁の染みですらも神経質に意識が芽生えてしまうから不思議だ。


■ シリーズ経験者でも思わずのけぞる新たな恐怖は夏のうちに味わいたい

 このゲームの隠れた恐怖の引き立て役が、アナログコントローラの振動。心臓の鼓動を模した一定周期のバイブレーションは、何者かが周囲に潜んでいるという恐怖感を高めてくれる。そして、霊が出現した瞬間には短く強い振動が入る。このタイミングも的確で、あらゆる角度から恐怖感を増幅させようとする。

 もちろん、ヘッドホン推奨の音の恐怖もプレーヤーの神経を締め上げる。ノイズ、家鳴り、そして何者かの呼び声、それらは常に何者かの気配を感じさせる上での重要な演出。筆者は階段から鞠が落ちるSEを聞いた瞬間、口からアイスを落として叫びましたとも……。

 筆者自身、「零」シリーズをプレイしてきたから、「さすがにもうこの手の恐怖には耐性ができているだろうな」と少し甘く見ていた。しかし、実際にプレイすると耐性どころか、筆者自身が思わずヒットバックするほどの驚きの連続。直球、変化球を織り交ぜて繰り出される怖がらせ方に新規プレーヤー、既存のファンの区別なくやられることだろう。

 ホラージャンルのゲームにとって、夏という季節はこれ以上は無いシチュエーション。「夏=怪談」という先入観を持つ日本人として生まれたなら、このタイミングで「零 ~刺青の聲~」をプレイすることで一層のシンクロ感が得られるはず。というわけで、せっかく夏に発売された本作、美味しいうちにぜひ! 遊んでおきたい。

(C)TECMO,LTD.2005

□テクモのホームページ
http://www.tecmo.co.jp/
□「零 ~刺青の聲~」のページ
http://www.tecmo.co.jp/product/zero3/index.htm
□関連情報
【4月8日】テクモ、PS2「零 -最新作-(仮)」を今夏発売予定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050408/zero.htm
【5月14日】テクモ、PS2「零 ~刺青の聲~」7月28日に発売決定。
映像DVDなどがもらえる予約キャンペーンを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050513/zero.htm

(2005年8月12日)

[Reported by 福田柵太郎]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c)2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.