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日本ではまだまだ馴染みが薄いイベントだが、海外、特に北米では3,000人規模のLANパーティーも存在するほど、比較的ポピュラーなイベントだ。LANパーティは別名「Bring Your Own Computer(自分のコンピューターを持ってきてね)」略して「BYOC」とも呼ばれている。
アメリカではパーティの招待状に「Bring Your Own Drink(飲み物は持ち寄りでね)」という意味で略してBYODとよく書かれる。このスラングをもじったのがBYOCだ。今回はLANパーティーの概要とその楽しみ方を紹介する。 ■ 「メガデモ」からスタートしたLANパーティの歴史
「メガデモ」というのは、フロッピーディスク1枚(約1MB)に音楽やコンピューターグラフィックスを収め、そのカッコ良さやプログラム技術を競うというコンテスト形式の品評会である。当時はまだパソコン同士をつなぐネットワークは一般的ではなくフロッピーディスクにデータを入れて交換しあっていた。 その記事ではAMIGAを持った若者たちが会場にあつまり、1週間くらい泊り込んで「メガデモ」を作りコンテストをしていた。コンピューターがずらりとならんだ写真にとても興奮したのを鮮明に覚えている。数々のコンテストが開かれたが、当時最も有名だったのがデンマークやフィンランド等で開催された「ザ・パーティ」で、数千人が集まる巨大なパーティだった。 「ザ・パーティ」も'94年ごろからパソコン同士をネットワークでつなぐようになっていった。今でこそローカルエリアネットワーク(LAN)を身近に見かけるが、あの頃はネットワークを身近に体感できる場所としても「ザ・パーティ」は貴重な場所で、圧倒される量のケーブルや機器は、それを見るだけでもワクワクするイベントだった。 そしてWindows 95発売以後はAMIGAからIBM PCに移行し、インターネットの普及と同時に「DOOM」シリーズに代表されるネットワークゲームが浸透しはじめた。パーティの主役はメガデモからネットワークゲームに急速に移っていった。現在でも「ザ・パーティー」は毎年開催されているが、メガデモコンテストと同時にゲーム大会も行なわれている。 「DOOM」で有名になったid Softwareが'96年に発売した「Quake」はさらに多くの対戦ゲーマーたちを熱中させ、ゲーマーたちはid Softwareのお膝元アメリカのテキサス州ダラス市で「Quakecon」という名のイベントを開いた。会場内はLANパーティとゲーム大会という2つのコンテンツで盛り上がり、その後も毎年開催され続けている。今年も8月11日から14日まで開催される。 ゲーム大会とLANパーティは一体となりどんどん成長してゆき、今では大会の中からプロゲーマーを生むほどになった。私が取り組むeスポーツという文化の一部は、このLANパーティに参加するゲーマー達が生み育てたといって間違いないだろう。私が先月レポートしたCPLにも巨大なLANパーティが併設されおり、1,500人ものゲーマーたちがLANパーティに参加していた。 もちろんLANパーティはこのような巨大なものだけでなく、欧米を中心に家庭にPCを持ち寄るホームLANパーティや、学校で行なわれるスクールLANパーティ等が毎週のように行なわれている。変わったところでは2004年からベルギーで「LAN CAMP」というアウトドア派LANパーティも行なわれている。原っぱにテントを張って内ではゲームをプレイし、外ではプールやキャンプファイヤーで楽しみ、毎年約120人くらいのゲーマーが参加している。女性の参加者が多いのも特徴的なLANパーティだ。
LANパーティの開催情報が知りたければLANPARTY.comを訪れるのがよい。毎週の世界のどこかでLANパーティが開催されていることが一目でわかるはずだ。
■ それでは日本でのLANパーティは?
畳の上に並べられた折りたたみ式の机と椅子にPCとモニタが並べられ、最高のLAN環境で朝まで対戦が行なわれた。名前こそLANオフになっているがこのイベントが日本のLANパーティのはしりとなっている。「熱海温泉LANオフ」は「Quake」のクランMJ30sが企画・運営し年1回のペースで2001年まで3回開催された。MJ30sは「Quake」のファン集団魔人軍団の30代のメンバーたちが集まって作られたクランで、現在でも日本のFPSプレーヤー界の生き字引として知られている。 「熱海温泉LANオフ」にはクランメンバー以外でも参加可能で、後にWCG日本代表として出場したBRZRK選手、HIGH-WIND選手、5GO[GoG]選手、そして現在では我々GoodPlayer.jpのメンバーであるRockdoGGもいた。RockdoGGは'99年、自分のPCを持ってアメリカの「Quake con」にたった一人で参加している。彼は日本からPCを運んでLANパーティに参加した最初の人物だ。 その後、渋谷にオンラインゲームがプレイできるネットカフェNECCA渋谷店(現在は閉店)がオープンし、それを皮切りに大阪、九州と大都市を中心に、オンラインゲームをプレイできるネットカフェが増えていった。こうした結果、ただでさえ需要の少ないPCゲームの対戦ニーズは、ほとんどネットカフェに吸い取られLANパーティはなりを潜めた。 このころのネットカフェは韓国のPC房スタイルをそのまま模倣したものが多く、ほとんどのお店では小さなゲーム大会が開かれていた。しかしゲーマーたちは大会の時だけは店に集まるが、通常の日にネットカフェを利用することが少かった。こうなると、お店にとってはただイベントコストがかかるだけで売り上げに繋がらず、次第に大会をやめていってしまった。そんな状況から再びLANパーティを求める声が聞かれるようになった。 そして2002年大晦日、日本で初めてLANパーティと名前をつけたイベント「めっちゃ年末年越しLANパーティ」がNecca渋谷店で開催された。主催したのは当時私が所属していたAceGamer.net。場所こそネットカフェだったが自分のPCの持ち込みを可能にして、除夜の鐘を聞きながら年越しで対戦を楽しんだ。名古屋や大阪からPCを運んで参加したプレーヤーもおり、元日の早朝みんなPCを担いで帰宅していった。 その後もLANパーティは何度か開かれている。代表的なものを書き出すと下記の通りになる。 ・2003年7月「LANパーティ2003」 規模約25人 アンリアルトーナメントプレーヤー主催 ・2003年11月「CPL2003冬季大会日本予選」規模約35人 初のスポンサー協力LANパーティ ・2004年11月「名古屋LAN Partyイベント」規模30人 初の関東地区外のLANパーティ
そして今月19日から21日までの3日間。私も所属するLANパーティ運営団体「BIGLAN」の主催で、東京お台場でLANパーティを開催することなった。タイトルは「BIGLAN socket1」。募集人数は65人。今回のメインゲームは「バトルフィールド2」。エレクトロニック・アーツのバックアップを受けることができ、スポンサーも楽しいブースで盛り上げる準備をしている。私もMy PCで参加することはもちろんだが、運営に携わる人間として、なんとか「バトルフィールド2」の最高接続人数64人でのLAN対戦を実現してみたいと考えている。
■ LANパーティーで友達100人できるんです
また仲間とのコミュニケーションが深まれば試合の中身も濃くなってくる。最近の「カウンターストライク」、「コール・オブ・デューティ」、「バトルフィールド」といった各シリーズはチームで対戦するのが非常に楽しいデザインになっている。直接会ってチームメイトと作戦やテクニックを話すことによって連帯感が格段に上がってゲームも上手くなることは容易に想像できるであろう。格闘ゲームを家庭用でやるより、ゲームセンターでやったほうが上達が早いのと同じリクツだ。 現在、日本最強の「カウンターストライク」のプロチーム「4dN.psymin」。彼らは世界の大会で勝つためにはインターネットで対戦はすでに意味がないと言い切る。実際大きな大会の前にはチーム全員が海外に出向きLAN環境での練習をしにいく。大会の現場に併設されたLANパーティでは、普段なかなか対戦できない競合チームに積極的に練習試合を申し込む。こうやっていくうちにだんだん世界中に知りあいが増え、情報が多くなり勝つためにどうすれば良いのか答えが見つかってゆくのだ。 LANパーティーの楽しさはゲームプレイだけではない。自分の自慢のPCを見せるのも楽しみのひとつだ。秋葉原などのパーツショップに行くと光るPCのパーツを売っているのを見かける。光モノパーツ類にいまひとつ魅力を感じない人もいるようだが、私は大好物だ。 透明の窓が開いたケースにひとつでも光るパーツを入れるとやめられなくなる。まるでデコトラを手に入れたかのように自分のPCが愛おしくなり、次々に光るパーツを入れたくなる。この自慢のPCをどこへ持って行けばいいのか? そう、それがLANパーティの会場なのである。19日からの「BIGLAN socket1」でも、みんなで一番かっこいいPCを投票で選ぶコンテストを開催する。スゴイPCを持って集まってきてほしい。
まだまだほかにも楽しいことが沢山起こるのがLANパーティなのだが、パーティというだけあってやはり肝はコミュニケーションだと私は思う。10代から40代くらいまでいろんな人が会場にはやってくる。ゲーマーとして人に出会い、ゲーマーとして人と対戦し、ゲーマーとして人と別れて。おかげで私は世界中にゲーマー友達が100人以上できた。携帯電話のメモリはハンドルネームだらけである。日本ではまだなじみの薄いLANパーティだが、あなたもぜひLANパーティで良い友達を見つけてほしい。
■ 直伝。会場ににPCを運ぶコツ
私がどうやってPCを運んでいるのかを伝授しよう。まず電源を切ってケーブル類を完全に抜く。PCの横のふたを開けて。パーツ類のねじなどが外れていないかチェックする。そしてパーツの隙間に自分が着替えるTシャツや下着、タオルなど柔らかい布類を隙間に丁寧につめていく。パーツが曲がるほど強くつめる必要はない。 この準備過程はかなり重要なポイントだ。運んでいる最中にけっこうな確率でファンやパーツが外れることがあるからだ。外れるだけならいいのだが、外れたファンが中で転がってマザーボードや他のパーツを傷つけてしまうことがある。少し持ってみて重すぎるなと思う人はハードディスクをはずしてみるとかなり軽く感じるずだ。ちゃんと衣類をつめたらフタをきちんと閉める。車で運ぶ人はこれで終わりだ。あとはモニターと一緒にケーブルやキーボードマウスを忘れないように持ってくればよい。車を持っている友達を探して3、4人で乗りあえば交通費も安くすむ。 私は車を持っていないので電車で運ぶことにしている。これには2つの方法がある。まず1つ目は、LANパーティ用にタワーケースを運ぶバンドが発売されているのでそれを利用する方法。太いバンドでPCを簡単に縛れる構造で、かなり丈夫にできていてる。私も数年間使っている。国内ではGDEXでしか買えないようだが、GamersWearのEbagがお勧めである。これで後は肩から斜めにかけて歩くだけだ。思ったよりも運びやすく、電車に乗ればちょっとした注目も浴びることもできる。私はこの優越感もLANパーティの楽しみだと思っている。 もう1つは女性でも簡単に運べる方法だ。旅行用のスーツケースの中にPCを入れる方法だ。こうすれば他の荷物もまとめてスーツケースの中にいれることができてコンパクトにまとめられる。この場合もPCケースの中には衣類を入れて保護することを忘れてはいけない。スーツケースの中もPCを中心において地面からの振動がなるべく伝わらないように下のほうにクッションなどを入れておくとよい。LANパーティ会場もクッションは何かと役に立つアイテムだ。 書き忘れたが電車で移動する場合液晶モニタなら運べるが、CRTモニタを運ぶのはあきらめたほうが良い。会場にモニターレンタルがあるのでそれを利用するのが良いだろう。 あと運ぶのすら面倒な人は、到着時間を指定して宅急便で送ってしまうのも良い。受付で自分のPCが届くことを伝えておけば到着したら名前を呼んでもらえばOKだ。まだまだ様々な方法が考えられるが、自分なりの工夫をしてPCを運んでくるのも楽しいと思う。PCを運んでくるところからがLANパーティだ。
さて、ここまで知ってしまえばあとは参加登録をして会場に行くだけだ。LANパーティのキーワードは「友達」だ。一度参加すれば参加者はみな友達だ。一度我々の「BIGLAN」に参加した後は、友達とLANパーティを開催してみるのも良いだろう。LANパーティを開催してみたい人ぜひ会場で私に話しかけてほしい。できる限りの協力をすることを約束する。なぜならあなたは私のゲーム友達になるからだ。
□BIGLAN実行委員会のホームページ (2005年8月11日) [Reported by 犬飼“POLYGON”博士@GoodPlayer.jp]
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